辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第十四話 実力

「誰だアイツに二丁目を渡しやがったのは!」

 

「ボンクラの3番機だ!」

 

「再装填の隙を狙え、腕は二本しか無いんだか…」

 

二つの機関砲を苦もなく操る傭兵は不用意に身体を出した機体に向け一斉射、6番機の左半身を塗料で染めた。

 

「馬鹿野郎、弾を活用させてどうする!」

 

「交互に撃つせいで弾切れになるのがこっちより遅いんだ、タイミングを見誤った」

 

しかし胸部は装甲が厚い、20mmでは致命打とならないために片腕の破壊判定だけで済んだようだ。

 

「撃破判定じゃなくてもそれだけ汚したんだ、整備班に殺されるぞ」

 

「ここで死んだ方が汚れが増えなくて助かるかもな!」

 

現在は治安維持の5番と6番機が傭兵と戦っている、一対一の次は二対一というわけだ。しかし数の差は覆され、前回同様に傭兵が押している。

 

「おわっ!?」

 

「姿勢を低くしろ、遮蔽の高さが足りてないんだから!」

 

人型兵器が隠れるには小さい建物が彼らの足を引っ張り、思うように射撃戦を展開出来ない。本来なら被弾覚悟で撃ち合うのだが、反応速度が違い過ぎて一方的な攻撃を受けるのだ。

 

「横に飛んで20mmを避けるとか、アレホントに第一世代か?」

 

「あのメカニック、乳がデカいだけじゃねぇな…」

 

「お前カメラ望遠に切り替えてたのそれが理由かよ、マジで×××に脳味噌移植してんじゃねぇの!?」

 

片方が再装填を行う間にもう片方がカバーに入る、理想的な連携だ。しかしそれは二対一という数的有利が一時的に無くなる瞬間であり、傭兵は一気に距離を詰めた。

 

「やべぇ来るぞ!」

 

「まだかかる!」

 

片腕を失った状態での再装填は中々難しい。出来ないわけではないが、かなりの時間を要するのは確かだ。

 

「早くしろ、二機で撃たなきゃ避けられる!」

 

弾幕を張って接近を止めようとするが、被弾覚悟で突っ込んでくる機体を止めることは出来ない。有効打になりやすい脚部は背の低い建物で隠され、攻撃に使う上半身は遮蔽の影響を受けずに撃つことができるという演習場の特性を活かしての突撃だ。

 

『5番機、赤玉四発、頭部カメラ被弾、破壊判定です』

 

「サブに切り替える、カバー!」

 

このような状況にも慣れているようで、5番機のパイロット機体を遮蔽の影に隠しながらコックピット内でスイッチを弾く。

 

「分かってらぁ!」

 

やっと再装填が終わった6番機が身を出すが、目の前には既に傭兵の機体が迫っていた。既に片方の弾は切れたようで、いつの間にか一丁だけを手に持っていた。

 

「待たれてたか」

 

武器を持っていた右腕に被弾してしまい、左腕はもう破壊されているために両腕を喪失したことになる。固定武装として股間に7mm機銃を持つものの、下半身が隠れるこの場では撃ったとしても遮蔽物に阻まれる。

 

『6番機に被弾、赤玉複数、右腕破損』

 

「すまん、やられた」

 

「呆気ねぇなオイ、しっかりしてくれよ!」

 

視界の狭いサブカメラで傭兵を捉えたが、引き金を引く前に画面から居なくなった。前進するために行われた低く鋭い跳躍は、二機が隠れる遮蔽の側面へと機体を辿り着かせてしまったのだ。

 

「視界から消えやがった!?」

 

「横だ横!左側面!」

 

傭兵の手により20mm機関砲が放たれたが、咄嗟に身を捩った5番機は正面装甲で砲弾を受け止める。仕留めるつもりで弾倉を使い切った傭兵は弾切れになり、撃ち合いは一瞬の静寂に包まれた。

 

「舐めんなクソ傭兵、勝ったぞォ!」

 

五番機は20mm砲を構え直して引き金を引こうとしたが、カメラで捉えた敵機の動きに目を見開いた。

 

「予備あんのかよ!」

 

回避するわけでもなく、再装填を試みるわけでもなく、ただ片手で拳銃を抜いて構えていた。瞬きをした程度の時間だった筈だが、相手の砲身はこちらに向いていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ぶっ倒れろォーーー!」

 

双方が引き金を引いたが、5番機はすぐに撃つのをやめた。それは紫色の塗料が胸部のサブカメラの視界を塗り潰したからだ。

 

「何撃ちやめてんだお前!」

 

「…紫色ってことは、アレ40mm砲かよ」

 

『5番機が被弾、紫一発、コックピット損傷により大破判定です』

 

40mm弾をコックピットハッチに装備されたサブカメラに命中させれば、加害範囲を考えて即死判定となる。砲身が短いために精度の低い拳銃で狙って行うのは至難の業だが、それをここまで接近することで補ったのだ。

 

「あー、俺ってまだ死んでなかったよな」

 

「喜べよ、追加で汚して貰えるぜ」

 

両腕を失った6番機は股間の7mm機銃を放つが、40mmを二発叩き込まれて大破させられた。

 

「こんな短小で勝てるかァ!」

 

「無いものねだりするなよ、それにお似合いだぞ?」

 

「演習終わったら覚えてろよテメェ」

 

扱い難い大口径拳銃を用いての弱点狙撃、このような芸当を模擬戦の中でやってのけられるパイロットは治安維持隊にすら居るかどうかというレベルだ。

 

「隊長殿、二機ともやられましたわ」

 

『…そこまでの相手か』

 

「何発か当ててますがどれも正面装甲、してやられましたね」

 

彼ら二人は相当な熟練者であり、実機の搭乗時間はかなりの長さだ。連携も取れており、一対一の戦闘で疲弊した傭兵を刈り取るつもりで当てたパイロットだった。

 

『分かった、こちらも全力で当たろう』

 

「仇を頼みます」

 

そう連絡を入れた5番機だったが、何やら近付いて来た傭兵が機体に手を伸ばすのを見て苦笑した。

 

「機体の身包み剥ぐ気かよお前、ド変態だな!」

 

「いやーん、誰か警察呼んでェー!」

 

ノリノリで甲高い悲鳴を挙げる6番機のヘタクソな演技に5番機は爆笑、傭兵は死人は喋るなと言わんばかりに40mmをもう一発叩き込んだ。

 

『お前らが警察だろうが、ふざけてないで反省しておけ』

 

通信機越しに隊長が深い溜め息を吐いたのが分かる、腕は良くとも性格には難ありの部下を統率するのも大変なのだろう。




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