辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第十五話 隊長

「…部下が世話になったな、傭兵」

 

『なんだ通信か、禁止じゃあなかったか?』

 

「最早建前はどうでもいい、もとよりこの演習は上層部が貴様を見定めるために行われたものだからな」

 

『へぇ、じゃあ合格はどうやったら貰えるんですかねぇ』

 

隊長機は遮蔽から出て、迫る傭兵の機体の前に立つ。双方武器は下ろしており、ひとまず様子見といった雰囲気だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「カザマキ嬢の推薦と言うので何かと思えば、ここまでの腕とはな」

 

『俺は街中での戦闘にちょいと巻き込まれただけなんだが』

 

「貴様はその戦闘が起こる数日前に街へ現れた、偶然にしてはタイミングが良すぎると思わないか」

 

この隊長が疑っているのは傭兵とゲリラとの繋がりであり、万が一にも内通者を協力者に選ぶわけにはいかない。だが彼は流れの傭兵であるため情報は少なく、調べたとしても何か出てくる訳でもない。

 

『あー、つまり俺にスパイの疑いがあると』

 

「奴らは手段を選ばない、ゲリラを大量に撃ち殺して目の敵である筈の治安維持隊に協力したとしても…信じ切るには少々足りんそうだ」

 

回収された死体はどれも的確に弱点を狙い撃たれており、明確な殺意があったことが窺える。操縦技術から歩兵としての射撃戦を熟し、重要人物の護衛まで行える人材がゲリラに居るだろうか。

 

『だから試されてるって訳か、俺も奴らは好きじゃないんだがね』

 

「まあいい、この場でその腕は証明されつつあるさ」

 

部下の機体が遮蔽の裏から現れ、合計3機による弾幕を浴びせる。それを横に跳躍して避け、背の低い建物の影へと逃げ込んだ。

 

「この状況、連戦に次ぐ連戦…切り抜けられるとしたら本物のパイロットだ」

 

現統治機構に首輪を付けられ、訓練や機体を制限されている彼らとは違う。傭兵として戦地を渡り歩き、過酷な環境で自らを鍛え上げた彼が乗る機体からは、治安維持隊の人間が今まで感じたこともないような気配を発している。

 

「隊長、前進しますか?」

 

「ああ」

 

3機が足並みを揃えて前に進み、頭を出させないよう交互に制圧射撃を加え続ける。傭兵の二丁機関砲でもそうそう撃ち合えない現在の状況、普通のパイロットならそのまま死ぬだろう。

 

「そのままだと撃たれて死ぬか、一か八かで飛び出して死ぬかだが」

 

「ロックオン警報はありません、このまま接近し…」

 

傭兵が飛び込んだ場所から少し離れた建物に、機体の動体センサが反応する。何かと思って見てみれば、機関砲だけが遮蔽から出てこちらを狙っていた。

 

「いつの間に移動した!?」

 

「撃ちます!」

 

機関砲のガンカメラを利用して撃つ気だろうが、視界の狭い上に射撃姿勢も滅茶苦茶なこの状態では盲打ちに等しい。散開することで砲撃を避けるよう指示をした直後、部下の機体が被弾した。

 

「直立もままならない高さだぞ、そんな姿勢で撃てるようなモーションパターンを設定しているとでも言うのか…?」

 

「肩部装甲に被弾、まだやれます!」

 

「遮蔽に隠れろ、アレを使う」

 

そう言って取り出したのは、人型兵器用の手榴弾だ。普段なら市街地への被害を考えて使用しないのが定石だが、そうもいかなくなった。

 

「この手の炙り出しはルール無用の大会内ではよくある手だ、どう対応するか見せて貰おう」

 

「遮蔽に向けて投擲します、援護射撃を!」

 

「任せておけ、相手を遮蔽へ釘付けにする」

 

人型兵器の腕を使えば、そこらの迫撃砲とは比較にならない炸薬量の弾頭を投擲することができる。射程距離は短いものの、その精度と加害範囲は榴弾砲にも劣らない。

 

「は?」

 

しかし部下の機体が投げようとして信管のロックを外した直後、傭兵の機体は身を乗り出して砲撃を行なった。マニピュレーターにペイント弾の直撃を受け、グレネードは手から落ちる。

 

「退避しろ、退避!」

 

「間に合いませ」

 

爆音が響き、大量の塗料が部下の機体の下半身を染める。グレネードはその殺傷能力から一定の範囲に入っていれば撃破判定となるルールであり、今この瞬間あの機体は爆散したことになる。

 

『2番機被弾、手榴弾、大破判定』

 

『7番機被弾、赤玉三発、胸部及び肩部、損害なし』

 

「被弾箇所をコントロールした!?」

 

あの一瞬でグレネードだけを狙撃し、被弾を最小限にした上で再度身を隠した。信じられない芸当だが、それが目の前で行われたのは紛れもない事実だ。

 

「は、はは、多対一などハンデにもならんか」

 

試す気で挑んだが、分かったのは圧倒的な技量の差だ。ベテランだった5番機と6番機のペアを倒している時点で分かっていたようなものだが、あの傭兵は治安維持隊のパイロットよりも強い。

 

「傭兵、話がある」

 

『今度はなんだよ、さっき話しただろ』

 

「一対一の近接戦で終わりにしよう、これ以上そちらの機体に負荷を与えるのも良しとする所ではあるまい」

 

『…まあ、有り難いね』

 

ほんの少し言い淀んだ傭兵に多少の疑問を抱きつつも機関砲を捨て、持ち込んでいた武装コンテナを開く。そこには保護カバーが取り付けられた鉈のような武器が二つ入っており、その両方を手に取った。

 

「上層部に付き合うのも今日までだ、カザマキ嬢はとんでもない逸材を引き入れたようだと報告しておく」

 

『なら最後に負けるわけにはいかないな、チャンバラなら大の得意でね』

 

投げ渡された鉈を器用に空中で受け止めた傭兵は、手慣れた様子で何度か振った後に片手で構えて見せた。

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