辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第十六話 風巻

「…近接戦か、避けたかったんだがな」

 

『どうされますか?』

 

「このまま飛んだら跳ねたりの射撃戦を長く続ける方が機体に悪い、こっちの方が早く終わるのは事実だ」

 

傭兵は手に取った鉈をセンサで確認し、ざっくりとした大きさと重さなどを測定して重心を割り出した。その情報を元にミナミが動作を補正、慣れ親しんだ武器でなくとも機体にぶつかると言ったヘマはしない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「準備終わり、叩きのめすぞ」

 

『了解です』

 

同じ鉈を構える隊長機に正面から接近し、間合いを図る。精密かつ素早い動きというのが苦手な第一世代機では防御に難があり、太いフレームと重機譲りの高トルクに物を言わせた攻撃の方が上手く動けるため、先手を取って一撃叩き込みたい所だ。

 

「前方に跳躍してそのまま殴る、機体の負荷は?」

 

『脚部の人工筋肉破断率は12%、まだ問題なく稼働します』

 

「了解、20%超える前に終わらせないとな!」

 

数歩助走を付けた後、空中に跳び上がる。そのまま縦に鉈を振り下ろし、相手の機体を殴り付けた。

 

「おっと」

 

相手は鉈で防御しては不味いと感じたようで、咄嗟に肩部の装甲でこちらの攻撃を受け止めていた。相手が何か手を打とうとする前に行動することが近接戦で勝つ秘訣であり、後手に回ることは負けを意味する。

 

「少し近すぎるな」

 

頭部の機関砲を相手のカメラに向けて放ち、ペイント弾がレンズを覆う。それと同時に膝蹴りを相手の腹に喰らわせ、操縦者とコックピットを揺らした。

 

「…中々やる」

 

『これほどか、傭兵!』

 

「アンタもな、最初の一撃で倒す気で居たんだが!」

 

片腕は破壊判定を貰ったらしく、隊長機は片腕で鉈を構える。だが攻撃の手は緩めず、撃破判定をもぎ取る為に鉈をぶつけ続けた。

 

『左腕制御系にエラー、原因を探ります』

 

「元スクラップだ、武器を振るえばこうもなる!」

 

しかし相手の機体を崩す前に、こちらの機体が音を上げ始めた。先の戦闘で得られた部品を使ったとしても時間が足りなかった、寧ろここまでよく持った方だろう。

 

「コイツの半分は寄せ集めの部品で出来てるんだ、治安維持隊の機体と比べるのは酷ってもんだろ」

 

『…左腕伝達系に応答なし、動作止まります』

 

「奇しくも双方片腕か、勘弁してくれよ」

 

力の抜けた片腕が鉈から離れ、傭兵の機体も片手で鉈を構え直す。直したばかりの両足も良くない状態であり、ベテラン二機の相手をした際に無茶をさせ過ぎたのがいけなかった。

 

『どうした』

 

「機体の動作不良だ、煽ってるわけじゃない」

 

そのまま数回刃を交えるが、燃料電池の出力が安定しない。恐らく壊れた何処かが悪さをしているのだろう、そうでなければ中古品の寿命が来たということになる。

 

『補助電源に切り替えま…』

 

「どうした」

 

『予備のバッテリーは買えなくて載ってないんでしたね、機体はいつ止まってもおかしくありません』

 

「貧乏人は辛いな!」

 

ふらつく機体を一度立て直し、姿勢を低くして隊長機に突っ込む。相手は鉈を振って来るが、お構いなしに機体同士を接触させた。

 

「これで最後だ、頑張ってくれ」

 

足を引っ掛けて接地面を浮かせつつ機体の上部を後ろに向けて押すことで、相手の機体は重心を中心に空中で回った。まるで柔術の投げ技か何かのように、数十トンもある機体が転ばされたのだ。

 

「頭打って死ぬなよ!」

 

『なっ!?』

 

大きな音と振動が演習場に響き、粉塵が舞う。空を飛ぶ無人機が接近し、倒れた機体がどちらなのかをゆっくりと確認した。

 

「これで合格か?」

 

『そうだとも、ここまで負けたのは久しぶりだ』

 

撃破判定を下されたのだろう、隊長機は通信は飛ばして来ても機体を立ち上がらせようとはしない。

 

『カザマキ嬢の目は確かだったな、本当に』

 

「なあ、あのお嬢さんは何者なんだ?」

 

『この町で中々大きい影響力がある一家の出身だ、代々運が良いと聞くな』

 

あの敵に向かって一人で突っ込んで行った兵士は、良いところのお嬢様だったらしい。偶然彼女を助けたともなれば疑われるのも当然だ、そういうことかと傭兵は少し項垂れた。

 

『だがカザマキ家の人間に見初められるような人物は大抵アタリだからな、私自身は元より疑ってなど居ないさ』

 

「見初められる、ねぇ…」

 

『それがどちらの意味だと思うかはお前次第だがな、彼女とは上手くやれよ』

 

見初めるという言葉には複数の意味があるが、それを思い浮かべた傭兵は更に項垂れた。それを見たミナミはこの惑星に来てからは女難の相でも彼にあるのかと、少々心配になった。

 

『カザマキ嬢はマスターに好意を持っているようですね』

 

「治安維持隊のパイロットが知ってるんだ、こりゃ公然の事実になってるぞ」

 

彼女は見るからに素直そうだ、聞かれたことにもハッキリ答えてしまうことは何度か話しただけでも分かる。

 

「面倒なことになりそうだ、謝ることから始めないとな」

 

『ですね』

 

傭兵はこれが吊り橋効果かと呟いた後、ミナミと共に謝る際の言葉を考え始めるのだった。

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