辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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挿絵が滅茶苦茶上手く描けた。


第二十〇話 XH-09

「さて、やっとご開帳だ」

 

貨物区画の再奥は本来ならコンテナで埋め尽くされている筈だが、保護シートで巻かれた上にワイヤーで固定されている18mほどの何かに占拠されていた。

 

「…おっと?」

 

『これは、人型兵器でしょうか』

 

ワイヤーを握ってそれによじ登り、覆うシートをずらして中身を見る。そして何度か確認した後、傭兵は腕を組んで機体にもたれかかった。

 

「第一世代じゃない、第二世代のシャーシだ」

 

『部品不足が原因で治安維持隊ではもう運用出来ないとされていた機体群が、何故彼らに隠して運ばれていたのでしょうか』

 

「怪しくなって来たな」

 

さらにシートを剥がし、コックピットハッチを探し出す。手動開閉用のハンドルを引っ張り、非常に重いそれをどうにか開けて中に滑り込む。

 

「データだけ回収する、機体は惜しいが乗って逃げるには目立ち過ぎるんでな」

 

『船のメインハッチを開ける必要がありますから、スカベンジャーの目を引くのは確かですね』

 

「いい面構えなんだがな」

 

記憶媒体を接続ポートに差し込み、データの吸い取りを試みる。全てをコピーし切るのは多少時間がかかるが、セキュリティ周りの解除も少し面倒だ。

 

「電源は…あるな、燃料電池も満タンで人工筋肉も新品と来た」

 

『少し通りは悪いですがこの通信帯域でその機体と私を繋げます、コピー作業はお任せください』

 

「助かる」

 

ミナミが遠隔操作で機体のシステムに触り始めた瞬間、船全体を振動が襲った。元々傾いていた船が更に傾く程の衝撃が加えられたようで、機体を固定していたワイヤーが何本か音を立てて切れた。

 

「奴ら何をしやがった!?」

 

『恐らくメインハッチへの攻撃です、直接ここに来ようとしている可能性が高いかと』

 

「滅茶苦茶だ、思い切りが良すぎるぞ!」

 

爆発音は段々と近くなっている、恐らく邪魔になる隔壁を次々と吹っ飛ばして迫って来ているのだろう。脱出しようにも爆発に巻き込まれて死ぬ可能性が出て来た、今コックピットから出るのは危険過ぎる。

 

「作戦変更、コイツを使って迎え打つ!」

 

『機体の操縦権限を確保します、30秒ほどお待ちを』 

 

「了解だ、俺は使える武装を探す」

 

機体の自己診断機能を使って装備を調べるが、輸送中だったこともあり何もない。あるのは自衛用のナイフだけ、心許ないが無いよりマシだ。

 

「…刃物一つか」

 

『パイロットとしてマスターを登録しました、続いて全ての権限を委譲中』

 

「脳波操縦方式は使えるか、第二世代なら対応してる筈だ」

 

『右下のポートに接続して下さい、互換性は…こちらで合わせます』

 

機体の様々なシステムが書き換えられ、設定は傭兵に合わせて調整される。燃料電池が出力を上げ、人工筋肉に力が入る。頭部のカバーが上がり、人間の眼を模したメインカメラが開眼する。

 

「コイツの名前は?」

 

『XH-09、すみませんが一部の機能の有効化に手間取っています』

 

「動くなら問題ない、寝てるとこ悪いが立ってもらうぞ!」

 

ワイヤーを引きちぎり、シートを手で剥ぎ取る。バランサーに物を言わせて傾斜した格納庫でも機体を直立させ、爆発音が響くハッチを睨む。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「へぇ、多少重いが第一世代とは大違いだな」

 

取り出したナイフも手に馴染む、悪くない代物だ。ミナミはまだシステムと格闘中だが、機体はなんとか動かせた。

 

 

スカベンジャー達は爆薬やロケットランチャーを使い、船の中を無理矢理進んでいた。船体中央には都市用のインフラ設備が収まっていることもあり、生活水準の低い彼らにとって喉から手が出るほど欲しいのはそれだ、

 

「砂嵐に乗じた奴は俺達だけじゃ無かった、なら一番良い物だけ掻っ攫って逃げんのが正解だよなァ!」

 

廃品を漁る彼らは一枚岩ではない。様々なグループに分かれていて、更に仲も良いとは言えないのが現状だ。だからこそ傭兵が単独で潜入したとは気付ける筈もなく、他のグループが手を出して来たと勘違いをしていた。

 

「あのアホ共が着てった装備は惜しいが、まあ釣りが来…」

 

最後のハッチを破壊した後、目当てのコンテナは無かった。あるのは何かを固定していたと思われるワイヤーとシートだけで、それも外されていてもぬけの殻だ。

 

「いつの間に奪いやがったァ!?」

 

コンテナではないが、何かがあったのは間違いない。先を越されたと思った男は怒り狂い手に持つ機関砲を辺りにぶっ放したが、その音と閃光に紛れて接近してくる人型兵器を察知することが出来なかった。

 

「クソッ!何処のグループが…あ?」

 

音もなく、まるで豆腐を包丁で斬るかのような抵抗の無さで刃が突き立てられた。騒ぎ立てていた男の身体は上下に分かれる形で切断され、コックピットまでナイフが貫通していた。

 

『一機撃破』

 

第一世代と比べれば余程人に近いシルエットを持つ人型兵器がナイフを引き抜き、動けなくなった男の機体を蹴り倒す。コックピットの中がどうなっているのか知りたくもないが、死んだのは間違いないだろう。

 

「うわっ!うわぁあああ!」

 

「撃てッ、兎に角撃つんだ!」

 

『機能有効化完了、アンチデブリシステム起動』

 

「は?」

 

その人型兵器は船体が振動を始めるほどの力を帯び、流れを捻じ曲げる。そして飛来する弾丸全ての軌道を逸らし、機体に命中する筈だったそれらを船体に食い込ませた。

 

「こ、コイツ何を」

 

「良いから撃つんだって!」

 

本来なら宇宙船に搭載されるような慣性制御機関は莫大な電力を消費するものの、砲弾程度なら全て逸らして見せるだけの力がある。大気圏内で使ったために大気の向きまで捻じ曲げてしまい、強風が吹き荒れた。

 

「なんだ、なんなんだ!?」

 

残った機体が弾を撃ち切ったその時、彼らの背後から20mm砲の発砲音が響いた。

 

 

背後からスカベンジャーを襲ったのは、ミナミによって操縦された傭兵の機体だった。

 

「助かった!この機能をOFFに出来なくてな、電力切れで死ぬところだった」

 

『やはり問題のある装備だったようですね、結果的には起動して正解でしたが』

 

急遽起動した試作機はバッテリーの電力が無くなるまで慣性制御機関をぶん回し、機体が緊急停止するという体たらくだ。

 

「アンチデブリシステムの名の通り、飛来物が無くなるまで稼働し続ける仕組みになってるんだろうな」

 

つまり撃たれ続けると電力切れまでその場で動けない、色々通り越して呆れる仕様である。だが試作機というのだから仕方ない、いきなり戦場に連れ出したこちらが悪いとも言える。

 

「…砂嵐が晴れる前に退散しよう、この騒ぎじゃ他のスカベンジャーも集まってくる」

 

『廃品回収はまた後日ですね』

 

「収穫はあったが、この機体どうしような」

 

予備のパーツも無いため運用するのに難がある上、統治機構が治安維持隊に隠していたような機体を大会で乗り回すわけにもいかない。つまりまあ、格納庫の隅にでも置くくらいしか選択肢が無い。

 

「いつか使える時が来るだろ、砂嵐を出たら隊長にどうやって報告すればいいんだろうな…」

 

色々あったが切り抜けることに成功した二人は船を出て街へと帰る。大会のための廃品回収は、傭兵が頑張り過ぎたお陰で思わぬ顛末を迎えたのであった。

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