辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第二十三話 改造

大量に購入した部品を搬入した傭兵達は、治安維持隊の手を借りつつ作業を始めた。結局買うことになった戦車は早々に解体され、今や車体装甲も機体に移植するために溶断されている真っ最中だ。

 

「俺はミナミと一緒にシステムの調整か、脳波読み取って動かすんなら本人がいた方が良いのは道理だな」

 

『他のパターンも欲しいですね、急に昂ったりしてくれませんか?』

 

「無茶言うなよ」

 

独立して動くのは、台座に固定された腕だ。傭兵のヘッドセットを介して繋がっているそれは動作確認のために様々な手の形を作っており、手動操作が主流なこの街では異様な光景だろう。

 

「マニピュレーターの制御はここまで柔軟じゃなくていいんだがな、もう少し固く調整出来るか?」

 

『分かりました』

 

この調整はデッドゾーンを増やすと表現できるだろうか、過敏すぎる反応は第一世代には合わない。

 

「…下手に自由度があると戦車砲をぶっ放すときに取り落としそうだ、思考のブレがあってもそのまま握り続ける方がいい」

 

トバリは狙撃用に戦車から取り外したライフル砲を使う気のようだ、既にどのように改造するかの図面も書き出していた。ミナミに入れておいた設計支援ソフトを介して最適化したものの、驚異的な速さと言っていい。

 

「機体の頭部はフレーム以外取り替えるレベルだな、というか機体全体がそうなるのかもしれないが」

 

『設計図によるとパイロットの生存性を出来る限り高めた機体になるようです、不安がる必要はありませんよ』

 

トバリの指示で動く治安維持隊の技師達は思いの外楽しそうにしながら作業に当たっており、パイロット達ですら覗きに来ていた。工作機械は連日金属の塊から部品を削り出し、装甲板を溶接するバーナーは常に火花を散らし続けている。

 

「こんな改造は隊じゃ絶対に出来ないからな、腕がなるってもんよ!」

 

「行き当たりばったりで弄り回してたガキの頃を思い出すなァ!」

 

「廃棄予定の部品あるだろ、捨てるくらいならコイツらに使わせてやれ」

 

「全部持って来ます!」

 

昔取った杵柄と言える改造技術を振るうのは年老いた技師達であり、久しぶりに単純な整備と修理以外に手を出せたことを非常に喜んでいた。部下達もそれを見て学ぶためか作業に参加してくれており、人手不足に悩まされることはない。むしろ治安維持隊の整備体制の方が心配になるほどだ。

 

「…ま、まあ、楽しんだ上に手伝ってくれてるならいいか」

 

『このペースなら余裕を持って完成するでしょうね、そうなれば新たな機体の調整を我々が死ぬ気でやるだけです』

 

「俺、お前が居てくれて本当に良かったって思ってるよ」

 

『もう何十年の付き合いだと思ってるんですか、AIを労うならまたオプション装備でも付けてくださいね』

 

「星から出たら楽しみにしててくれ」

 

 

機体の改造作業は順調に進み、今度は武装の製作に移ることになった。傭兵が使う装備であるため、武器の方向性等に関してはしっかりと話し合う必要がある。

 

「頭部のセンサ類は戦車から移設、火器管制及び索敵レーダーに関しては戦闘車両向けの物を流用しました」

 

「…頭に滅茶苦茶詰め込んだな」

 

「偶然購入出来たECM、電磁波妨害装置に関してもミナミちゃんの協力があって運用可能です。作業用の装備しか持たなかった以前とは大違いです!」

 

弾道に関してもミナミ頼りではなく、自力で演算が可能である。放つ弾丸がどう飛ぶかを全て理解出来る機体が弱い筈がない、第一世代機としては破格の性能だ。

 

「天才だぜ嬢ちゃん!」

 

「こんなカスタム機に乗れるのは街の中でもお前くらいだろ、ウチのパイロットが嫉妬しそうだな」

 

整備士達も機体がある程度形になったことで多少落ち着いたかと思ったが、武器を作ると聞いてまた集まって来た。機体の際には参加していなかった者もおり、専門家が聞きつけてやって来たらしい。

 

「なあトバリ、ライフル砲をどうする気なんだ?」

 

「手持ちで使えるようにします、マニピュレーターでの装填は現実的ではないので自動装填装置も形を多少変えて載せるつもりです」

 

ここまでの狙撃能力を持った機体は大会の中でもこの機体くらいだろう、戦車砲ともなれば人型兵器の装甲など紙一枚に等しい。

 

「気に入った、最高の武器になりそうだな」

 

「あとは20mmマシンガンと30mmライフル、80mm滑腔砲に関しても…」

 

「何処から持って来た、オイコラ」

 

「俺達が趣味で作ってたもんだ、隊じゃあ規定以外の装備を運用出来なくて埃かぶってたんでな…使って欲しい」

 

「アンタらか!」

 

エレベーターで地下からやって来た大型トレーラーには彼らが手慰みに作った武装が載せられており、どれも既存の兵器を大きく改修したものと思われる形状をしていた。現統治機構により第二世代機の保有が実質的に禁じられた他、火器に関しても制約を受けていたようだ。

 

「改造品は治安維持隊じゃ運用出来なくなってな、砲身に穴を開けてスクラップにしろと言われたんで隠しておいたんだ」

 

「…で使えそうな奴が来たんで引っ張り出して来たと」

 

「整備はしている、性能に問題はない筈だ」

 

武器の数と種類に悩む必要は無さそうだ、大量の火器が積み上げられていく。どんなものかと傭兵が品定めをしていると、トバリが整備士達と話し始めた。

 

「ではスクラップの放出ということで、一丁につきこれくらいでどうでしょう」

 

「いや嬢ちゃんそりゃあ…」

 

「これだけ手伝ってくれてるんですし、パーっとやるには丁度良くないです?」

 

「…それもそうだな!なぁ!」

 

「だな、有り難く貰ってくぜ!」

 

整備士達は仲間と共に飲みに行き、久しぶりのどんちゃん騒ぎを楽しんだようだ。協力してもらっている整備士達に何かしておいた方が良いだろうと言う話はしていたが、トバリは上手くやってくれたようだ。

 

「慣れたもんだな、ここまで上手く回るとは正直思ってなかった」

 

「昔の家族を思い出すんです、なんというか…空気が似ていて」

 

「そういうことか」

 

彼女も船の修理工一家として過ごしていたのだ、この街の技術者達との付き合い方というものを知っていたらしい。

 

「アイツらが飲みに行ったなら俺達も行くか、三人でさ」

 

「えっ」

 

「俺達が稼いだ金だ、多少の余裕はあるんだし食費に当ててもいいだろ?」

 

喫茶店に行った後気になったため、周囲の飲食店はある程度リサーチ済みだ。彼女と共に何か食べに行っても責める人はいないだろう、それに何かと働き詰めだ。

 

「息抜きも必要だぜ、ほら行くぞー」

 

『このパスタ…本当に小麦から使っているんでしょうか?』

 

「ミナミちゃんも食べれるんですか!?」

 

『味は分かるようになっているので、一口だけいただきます』

 

三人は仲間になってからこの街で初めて豪華な食事を口にした、高い店だけあってなんだかんだ美味しかったと言っておこう。

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