辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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サイゼで書いた、いいよねサイゼ。


第二十四話 稼働

『試験項目は全てクリア、後はマスターの慣らしだけです』

 

「前とは比べ物にならないトルクだぞコイツ、補助ありでも重量が増えたんで四肢の動きに引っ張られる!」

 

『人工筋肉の出力制御と脳波制御の噛み合わせがまだ完全ではありません、そのまま操縦を続けて下さい』

 

「絶対に乗りこなしてやるからな、クソッタレェ!」

 

遂に完成した新生トバリカスタムは傭兵の手で演習場を走り回っていた。かなりの重武装だが、速力は下がるどころか上がっている。

 

「跳ぶぞ!」

 

『着地は丁寧に、ですよ』

 

腰に取り付けられたロケットモーターが火を噴き、跳躍して機体が宙に浮いた瞬間から更に上へ上へと押し上げた。

 

「ブースターとは、こりゃもう第一世代とは呼べないな」

 

『実質的には1.5世代機とでも言うべき性能と化していますね』

 

「これで優勝出来なきゃ傭兵引退だ、もう一度跳ぶぞ!」

 

ロケットモーターの使用回数は限られているが、それでも瞬間的に得られる推力は莫大だ。

 

「いいな、この手の現地改修機ってのは」

 

 

「…乗り熟してるぞ、あの傭兵」

 

「天才っているもんなんだな、アンドロイドが補助してるからってあそこまで動かせるのか?」

 

「さあな。だが直す前のオンボロで俺らの隊長に勝ってるんだ、万全な状態だったらと考えると寒気がするぜ」

 

双眼鏡やら望遠鏡やらで覗く者と、演習場上空の無人機から送信される映像を食い入るように見る者で二分されていた。自分達で作り上げた機体を一目見ようと集まった非番の整備士達だが、初乗りだとは思えない機動に腰を抜かしていた。

 

「ロケットモーター、あれは半ばお遊びだったんだが…本気で使うと言うとは思わなんだな」

 

「トバリの嬢ちゃんがピーキーな機体でも問題無いと言った理由が分かるわ、ありゃどんな機体でも乗って見せる人材だ」

 

脳波での操縦を見たことがない人々は滑らかな動きを見て口々にそう言うが、傭兵自身の技量によるものも大きいのが事実だ。そうでなければ戦車並みの装甲と火力を持ちつつ、今まで以上の筋力を得た機体を操れはしない。

 

「凄い…」

 

それの生みの親とも言えるトバリは、演習場を駆け回る機体の姿に息を呑んでいた。移動手段として乗って来た多脚戦車のカメラで機体を追っているのだが、段々と動きのキレが増している。

 

「ど、どうですか、傭兵さん!」

 

『ハッハー!最高だぞコイツはァ!』

 

やけにハイテンションな傭兵は跳び上がった瞬間に多脚戦車に乗る彼女を見つけ出し、マニピュレーターでサムズアップの形を作り向けて見せた。

 

『クセが分かってきた、重さを活かして無理に止めないのが大切だな。最初に入れる力を調整して…最低限の力で止める!』

 

「センサはどうですか?」

 

『よく見える、今までの画質の悪さなんてもう忘れたぞ!』

 

第三世代機と言う化け物に乗った彼でさえ興奮を抑え切れない機体となれば、彼女の仕事は果たされたと言っていいだろう。肩の力が抜けた彼女はキューポラを開き、大きく伸びをした。

 

「すまない、トバリ整備士か?」

 

「カザマキさん?」

 

いつの間にか隣には四輪駆動車が止まっており、操縦席には青い制服に身を包んだ女性が座っていた。

 

「傭兵殿は凄いな。生身でも機体でもあの強さとは、是非商会に…」

 

「大会に専念したいので、その話はまた後日」

 

「これは手厳しい、冗談だよ」

 

「…ですよね!良かったです!」

 

トバリ自身も少し不自然だと思うところはある、何故なら彼が異様に協力的だからだ。大会に優勝して船を修理するための機材を取り戻したいという滅茶苦茶な回り道を二つ返事で承諾し、それからというもの自身の実力を活かして出場のために必要なものを次々と用意して見せた。

 

「少し聞きたいんだが、傭兵殿は何者なんだ?」

 

「流れの傭兵だそうです」

 

「それだけじゃないだろう、傭兵だと言うことは本当だと確信してはいるがね」

 

彼女は傭兵のことをより詳しく知りたいらしい。疑うのも無理はない人物であるのである意味当たり前の行動だが、彼が宇宙船に乗って外から来ているという事実は伏せなければいけない。そうなると現統治機構がどう動くか分からないからだ。

 

「…本人から聞いて下さい、貴女が信頼されているのであれば聞ける筈です」

 

「なるほど。信頼されるよう頑張ってみるよ、教えてくれてありがとう」

 

「いえ、お気になさらず」

 

二人の仲はあまり良くないようだ、データリンクによって多脚車輌から音声を拾っていたミナミは人間であれば溜め息を吐いていただろう。

 

問題だらけだった機体は一線級の状態にまで押し上げられ、支援体制も治安維持隊がバックについたことで万全だ。前途多難だと思われていた大会出場は今や入り口、大会優勝は皆の視野に入りつつあったのは言うまでもない。

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