辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第三話 起動

「なんだありゃ、旧式と旧式の殴り合いかよ!」

 

向かった先で見つけたのは、人型兵器同士の近接戦が繰り広げられる異様な戦場だった。本来ならここまで接近する必要など無さそうなものだが、その理由は彼らの手に収まっている武器が原因だろう。

 

「…安物の小口径弾をばら撒く機関砲か、第二世代相手には効き目が薄いぞ」

 

戦っている二機が何者かなどは知ったことではない、今はどさくさに紛れて逃げようとしているトレーラーを追わなければ。それに奴らから少しでも離れたい、人型兵器には効かなくとも多脚車両の装甲程度なら貫通されるからだ。

 

「どこの誰だか知らんが便乗させてもらう、千載一遇のチャンスってヤツだ!」

 

トレーラーは目の前だ、車輌の操縦をAIに任せて外に出る。随伴している車輌は居るが、武装も積んでいないタダのトラックだ。護衛は争っている二機のどちらかだろう、戦闘が終わる前に機体を取り返さなければ。

 

「トラックに機銃の一つでも載せておけよ、人型相手に効かないのは分かるが」

 

戦争慣れしていない連中ということか、それとも全て割り切った肝の太い奴らか、ただ単に余裕が無いのか…。想像しても仕方ない、多脚車両のパワーに物を言わせて随伴車輌を押し除けてトレーラーと並走させる。

 

「よっと!」

 

距離が縮まったのを見て飛び移り、機体を覆うシートを掴む。多脚車両には離脱命令を送って退避させ、愛機のコックピットを目指す。航空機から見られると人型兵器は目立つため布で覆ったのだろうが、これでは真っ暗だ。

 

「なんで動かないのよ!」

 

「いやなんで乗ってんだよ!」

 

何か光っているなと思い覗き込めば、コックピットハッチが開いて計器の光が漏れていた。中には監視カメラに写っていた女が入り込んでおり、何やら弄り回していた様子だ。

 

「それは俺の機体だ、お取り込み中らしいが返して貰おう」

 

「助けに行かないと仲間が危ない、見捨てろって言うの?」

 

「そのために持ち主を殺して機体を奪い取っても良いわけか、さぞ良いご身分なんでしょうなぁ!」

 

彼女はコックピットの中にいる、拳銃を使えば貫通して機体に傷がついてしまう。だが彼女が懐から銃を抜くのを見てこちらも銃を抜き、事態は膠着する。

 

「後で返す、貸して」

 

「盗人の言葉を信じるほどおめでたい人生は送ってない、今すぐ降りろ」

 

「…なら、ここで壊す」

 

そう言って取り出したのは手榴弾、コックピットの中に放り投げられれば大惨事になる。特に操縦席の背後にはAIブロックが存在するのだ、万が一のことがあると非常に不味い。

 

「やめろ」

 

「なら貸して」

 

「…強情だな泥棒女、分かったよ」

 

銃をホルスターに納め、両手を挙げる。相手が持っている火薬式拳銃なら当たりどころが悪くとも軽い打撲で済む、これはそういう服なのだ。

 

「折衷案ってのはどうだ、交渉の余地はあるだろ?」

 

「言ってみて」

 

彼女に聞く気はあるらしい、恐らく第一声からして彼女は機体を動かせないからだ。

 

「お前はあの戦っている人型を助けたい、俺は愛機を返して貰いたい」

 

「…そうね」

 

「利害の一致だ、助けてやるから俺を乗せろ。どうせ起動の仕方も分からんだろうしな」

 

彼女は頭に付けた通信機から聞こえて来る声に耳を傾け、再度こちらを見る。それに対して腕を組んで肩をすくめ、どうするか問いかけた。

 

「トレーラー止めて、機体を使う」

 

「よし来た!」

 

「でももう一つ、私も後部座席に乗せて」

 

厄介な要求だったが、仕方ないので奥に押し込む。それに後部座席のすぐ背後にはアレが収まっている、機体さえ起動すれば無力化するなど造作もない。

 

「…良いだろう、手榴弾は置いていけ」

 

「何故よ」

 

「そんな安物の信管を信用出来るか、コイツの機動力を舐めてもらっちゃ困るね!」

 

正直何かに引っ掛けてピンが抜けるのが非常に怖い、彼女が見せた銃の持ち方を見るにド素人なのは丸わかりだ。

 

「いいか、舌を噛むなよ」

 

「馬鹿にしないで、操縦経験くらいあるわ」

 

「はいはい、そうですか」

 

腕に取り付けていた装甲板を取り外し、操縦席の両脇に置かれているグローブのようなものに手を通す。それは装甲板の裏に存在したコネクターと勝手に繋がり、ヘルメットの中に投影される視界には接続完了の四文字が表示された。

 

「接続終わり、機体を立ち上げるぞ」

 

機体のOSが数秒と経たずに立ち上がり、コックピットのディスプレイには製造元である企業のロゴが表示された。ヘルメットと機体のシステムは完全にリンクし、見ている視界はメインカメラの物に置き換わった。

 

「自己診断結果…問題無し、脳波読み取りも出来てるな。あと10秒で動かせる、何か武器はあるのか?」

 

「何も持って来てないわ、想定より大きい機体を載せるので精一杯だったから」

 

「…マジかよ」

 

そこは盗んで来ておいて欲しかったが、流石に持ち主としては何も言えない。どうしてこんなことになったのやらと頭を抱えるが、ひとまず愛機に乗り込めたことを喜ぼう。

 

「だがまあ大丈夫だ、固定武装がある」

 

機体の腰に取り付けられた鞘が傾き、広げたマニピュレーターの位置へと持ち手が動く。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「この機体、カンナギ弐型は格闘戦用の人型兵器さ」

 

そして引き抜き、抜刀。

今のご時世に実体剣など笑われるかもしれないが、慣れれば存外に使い勝手が良い。熱で溶断するタイプの武器は良く火災の原因になる上、自分まで溶かしてしまいがちだからだ。

 

「正にサムライってね、どっちを斬ればいい」

 

「緑色の背が低くて厚着してる方、海賊の機体」

 

「了解だ泥棒女、仲間ごと斬らないことを祈りな!」

 

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