辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第三十〇話 報告

「被害無しか、流石だな」

 

「報酬額分はキッチリ働くのが傭兵だ、鹵獲したUAVは好きにしてくれ」

 

「そうさせてもらうと言いたい所だが…UAVの存在を突き止められなかったのはこちらの落ち度だ、報酬には少し色を付けておく」

 

「話が分かる依頼主は好きだぜ、今後ともご贔屓に頼む」

 

傭兵はそう言って居なくなり、エレベーターを使って格納庫まで降りていく。隊長は完璧とも言える戦果と出来の良い報告書に目を回していたが、二人分の足音を聞いて姿勢を正した。

 

「隊長、帰還しました!」

 

『同じく、五体満足よ』

 

「よく生きて帰ってきた、話を聞こうか」

 

レンヤには傭兵に与えられた依頼を通じて彼を見定めるという任務が与えられており、アンドロイドであるカナミに逐一監視をさせていた。しかし同じアンドロイドであるミナミの手によって自我を確立したり、レンヤが新たな操縦技術を手に入れたりと監視任務は波乱に満ちていた。

 

「今回のUAVは事前の調査通りスカベンジャーのものではなく、ゲリラの機体でした」

 

「やはりか」

 

「彼がゲリラ側のスパイだとすればUAVを撃墜せずに鹵獲するのは不自然かと、我々を騙すために機密保持を放棄したとも考えられますが…」

 

『UAVに保存されていたデータは暗号化されていたけどチンケな奴らのやり方同様ね、弄られても居ないし彼女なら読めなくすることなんて簡単だった筈よ』

 

基地でも怪しい動きは全くなく、街でも不特定多数の誰かと接触することは無い。今のところは白、だが黒である可能性も現状捨て切れてはいない。

 

「…スパイにしてはらしくない、だがアンドロイドと一緒に活動する奴が居ればある程度話題にはなる筈だ」

 

「ここまでの腕の持ち主が無名というのも不自然、と言うわけですね」

 

「今のところ出自として考えられるのは壊滅した防衛隊の生き残りという所だな、防弾装備も当時様々な型が配備されて居たと聞く」

 

情報を集めても治安維持隊に協力的な一傭兵、ということしか分からない。怪しい動きは無いのだが、存在自体が怪しい。

 

『つまり監視を続けるしか無いってことよね』

 

「そうなる、もしもの時のために腕を磨いておけ」

 

「は、はい!」

 

ーーー

ーー

 

それなりの額の報酬が手に入った傭兵一行だったが、それで遊びに出かける余裕はなかった。延期された開催日は目前に迫っており、機体の慣らし運転も終わったのでラストスパートをかけると言うわけだ。

 

「トバリカスタムは戦車から移植した長距離砲撃用の装備を有していて、強化された機体フレームは大口径砲の反動にも耐えます」

 

「…おう」

 

「なのでこの105mmライフル砲が運用可能なわけです」

 

『製作は進めていたとはいえ、思ったより物騒なのが出てきましたね』

 

その大型武装は持ち手や装填機構、カウンターウェイトを納めるストックなどを合わせると機体全長に匹敵する。砲弾はベルト式のマガジンに収められ、回転することで砲弾を選択、装填するらしい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「安い粘着榴弾は沢山仕入れられましたが、成形炸薬弾や徹甲弾は品薄で…」

 

「第一世代に徹甲弾撃ち込んだら二機並べても背中まで貫通するぞ」

 

『オーバースペックですね』

 

「兎に角!この武装なら遠距離から一方的に敵機を蹂躙できます!」

 

通常の火器は治安維持隊からの持ち出しで有り余っており、それらの弾薬も調達出来ている。それらと被らない隠し玉があるというのは大きなアドバンテージだ、熟練のパイロット達がレジスタンスの攻撃によって多数脱落しているというのも初見殺しが通じやすい状況を作り上げている。

 

「いやまぁソフト面を担当してたミナミから進捗は聞いていたが…よく完成させたな、解体した戦車の主砲をここまで改造するなんてな」

 

「整備士の方々が知見を貸してくれました!」

 

「あの集団は今に至るまでに何を経験して来たのか心底気になる」

 

「固定した状態での試射は終わってます、是非撃ってみて下さい」

 

そう勧められ、傭兵は言われるがままに機体に乗り込んでその武装を手に取った。手を貸してくれたであろう整備士達も射撃場に集まって来ており、皆が興味津々だ。

 

「模擬弾とはいえ弾道は本物と同じだ、当てて行くぞ」

 

『照準から誤差の修正まで全てこちらでやります、標的の指示を』

 

「頼もしい限りだな、目標指定したぞ」

 

『オンザウェイ!』

 

中央の的を指定すると、すぐさま初弾が放たれた。それは多少山なりの軌道を描いた後、的から少し外れた場所に着弾した。一見無茶な改造をしている割には素直に動く、やはり腕は確かなようだ。

 

「修正射」

 

『精度は悪くないです、想定より上手く動いてますね』

 

「そうだな、コイツは大会を掻き回すための武器に化けるかもしれん」

 

『ですが同じようなことを考える参加者も居るのでは、何かしらの改造機が大半を占めると聞き及んでいますが』

 

「スナイパーは確かに多いだろうな、効力射」

 

『命中…で、どうするんです?』

 

「火力に物を言わせるしか無いな、潜伏している場所を榴弾で吹っ飛ばすとか。もし使えないのだとしても何度か使えば相手はどうしても長距離砲撃に警戒する必要が出てくる、サッサと投棄してもお釣りがくるさ」

 

大きく遠回りしたものの、そのお陰でやっと本来の目的に挑むことが出来る。命懸けの大会に普段乗っている機体とは比べ物にならない旧式機で出場すると言うのに、どうにも興奮する傭兵の姿があった。

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