辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第三十二話 潜伏

「箱だな」

 

「箱ですね」

 

遺言のような紙切れで指定された場所に来てみれば、そこには四角いコンテナが置かれていた。地面を見れば最近動かした後もあり、少しでも目立たない場所に移動させたことが分かる。

 

「なぁ、これ開けたらボカンって…」

 

「教官、開けてください!」

 

「防弾装備があるからって無敵じゃねぇ!」

 

わあわあと言い合う男二人を尻目に、アンドロイド二人は二度目のため息を吐いてから動き出した。

 

『はいはい、人間はどいてくださいねー』

 

『私達のセンサーで色々と調べてみるから、レンヤは離れておいた方が良いわよ』

 

そうして二人が箱を見ること数十秒、ミナミはポーチからダクトテープを取り出した。そして2人がかりで箱を開かないようにぐるぐると巻き始め、それを見た傭兵達は何事かと数歩後退りした。

 

「…な、なぁ、何してんだ?」

 

『これ、中身人間です』

 

『多分ゲリラよ、このまま運んでいきましょ』

 

4人はそれぞれコンテナの角を持ち、えっちらおっちらと狭い路地を抜ける。絵面は相当酷い上に1人は血濡れ、更にはコンテナの内側から叩く音すらする始末だ。

 

「今の俺たちって何に見えると思うよ、タチの悪い人攫いか?」

 

『レンヤさん達が居なかったら捕まってますよね』

 

その異様な光景に街の人々は距離を取ったが、大通りで待っていた迎えの装甲車では双眼鏡を構えた隊長が今度はなんだと頭を抱えていた。

 

「…不発弾とは言わんよな」

 

「安心してくれ、コンテナ詰めのゲリラだ」

 

隊長は頭を抱えた、さもありなん。

 

「歩いて帰って来いと言いたくなったな、爆発の危険性は無いんだな?」

 

『みんな同じこと聞くんですね』

 

「…無いんだな、ならもう載せろ」

 

装甲車の中でコンテナと同乗したい者はいなかったらしく、皆が車輌の上に登って座り込んだ。爆発したら上に居ようと危険なのは変わらないが、中に居る運転手は気が気ではないようなのが可哀想だが。

 

「何はともあれだ、潜伏していたゲリラを捕まえてくれて助かった」

 

「で、これからどうするんだ?」

 

「情報を引き出したい、遺言を受けて助け出した一市民だと偽って箱を開けてくれ」

 

「丸投げじゃねぇか」

 

「お前はあまり街やらゲリラやらに詳しくない、下手なボロも出さんだろう。それに難しいのであれば我々が代わる、試しにやってみてくれればそれでいい」

 

ーーー

ーー

 

倉庫の一角にて、ダクトテープで巻かれたコンテナを開けようとする傭兵の姿があった。他の荷物の影にはレンヤ達が潜み、傭兵の同意のもとで監視を行っている。

 

「…結構巻いたな、面倒だし切っちまうか」

 

取り出した単分子カッターはテープのみならずコンテナまで簡単に切り裂き、蓋を開ける頃にはひたすら中の人間が震える音のみが聞こえて来ていた。

 

「これでよし、大丈夫かー?」

 

「揺れまくって吐きそうだよ、ボク生きてる?」

 

「さあ、生きてるんじゃねぇの」

 

「冷たっ、いつにも増して塩対応だ…ね…?」

 

コンテナから出て来たのはガスマスクと耐塵装備で着膨れた子供だ、傭兵を見て固まってしまっている。

 

「誰ェ!?」

 

「そこからかよ」

 

「ウワーッ!!逃げた先でコンテナに押し込まれて放置されて、助けが来たかと思ったらテープでぐるぐる巻きにされてぇ…」

 

「よく分かったな」

 

「音で分かるよ馬鹿ァ!内側から叩いても反応してくれないし!」

 

喚く彼女は声も背丈も幼く見える、ゲリラの工作員には到底見えない。装備は生存のためのものばかり、銃の一つも持っていないのだ。傭兵は泥棒女を見逃す際に誰かを連れて逃げていると取れるような言葉を彼女が残していたことを思い出し、二人はその後の追撃をどうにか生き延びたということだろうか。

 

「あなた誰!」

 

「血だらけの奴にこんなもん渡されたんで拾って来た」

 

「えっ、あっ、じゃあ」

 

「すまん、もう泥…彼女は死んでる」

 

ガスマスクのせいで声はくぐもっているが、確かに泣いているようだ。奴に対しては良い思い出など一つもないが、身内には良い顔をしていたのだろうかと傭兵は思った。

 

「悪いな、何も知らなくて」

 

「良いんです、いいんですよぉ…」

 

取り敢えず慰めなければならない、少々長引きそうだ。思い切りむせ始めたのでマスクを外そうとしたが、不慣れなのかやけに手間取っている。

 

「手袋が邪魔!」

 

力任せに外されたグローブがコンクリートの床に叩きつけられた、元気なのは良いことだが半ばヤケクソになっている証左だろう。

 

「手伝うよ、これ外せばいいのか?」

 

「それです、お兄さん良い人ですね…」

 

ガスマスクを外した所、ここまで着込んでいた理由が少し分かった。肌から髪まで白く、色素が薄いのだ。この星の環境で彼女が生き続けるのは非常に難しいだろうし、ここまで成長出来たのも奇跡だろう。

 

情報収集は続行だ、彼女の警戒心を解きつつ段々とゲリラに関する情報を引き出していかなければならない。しかし根掘り葉掘り聞けば怪しまれるのは必然、ゆっくりと段階を踏む必要がある。

 

「そのですね、記憶媒体を受け取りましたか?」

 

「これか」

 

「それを然るべき所に届けなければいけないのです、まあそのためだけにボクがここまで来たわけではないんですが…」

 

「届けるのか、危険な場所は御免なんだが」

 

「大丈夫です!治安維持隊の方に渡せば良いだけですから!」

 

ゲリラ側が治安維持隊に届け物とは笑うしかない、これには傭兵のみならず隠れていた二人も首を傾げた。泥棒女は他を出し抜けるだのなんだのと言っていたが、内容を確認しなければなんとも言えない。

 

「治安維持隊ならまあ大丈夫だが、お嬢ちゃんゲリラ側の人だろ」

 

「…そんなコト、無いですけど」

 

「コレを渡して来た女性は俺の機体を盗んでドンパチやってたんだよ、それもゲリラ連中が使う第二世代機と一緒に」

 

「そ、それは、不幸な行き違いか何かが」

 

傭兵が笑いそうなくらい彼女は狼狽えつつも、現在唯一の協力者に対して身内が過去に窃盗を働いた事実をどうにか飲み込もうとしていた。どうするべきか決めかねているようだ、今押せば聞き出せるかもしれない。

 

「過ぎた事だし気にして無いが不信感はある、説明して貰ってもいいか?」

 

「分かりました、ゲリラと防衛隊はグルです」

 

傭兵のヘルメットから映像と音声を中継し別室で見ていた治安維持隊の面々だったが、隊員が呆気に取られる中で隊長は一人天井を見上げて悪態を吐いた。




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