辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第三十六話 強襲

「大会襲撃の手順をもう一度確認しておくか、資料出してくれ」

 

『これですね、表示します』

 

ゲリラが立てた計画によれば陸上艦による突撃が第一段階らしく、突っ込んで来た後は大会会場に人型兵器を放つとのことだ。船に搭載された火器は大会全域を射程に収める、戦車砲があろうと正面からは太刀打ち出来ない火力の差だ。

 

「陸上艦の武装については流石に書かれていないが、攻撃地点と使用火器をみればある程度は分かるな」

 

『大会運営が存在する地点に対地ミサイル、都市型障害物にロケット弾による面制圧、後は各砲座による射撃とありますね』

 

「こんなのが街に来たら一瞬で火の海だぞ、ここで少しは消耗させたい所だな」

 

『元はテラフォーミング用の車輌です、ここまでの改造を施しているとなると弱点はあるかと』

 

隊長は迎撃設備の準備を進めているようだが、ロケット弾の飽和攻撃を防ぎ切れるとは思えない。やはり105mm砲で武装を削るのが今後を考えると最適か、しかしその場合は反撃が怖い。

 

『UAVが砂嵐を観測…ですがこれは…』

 

「どうした、映像回してくれ」

 

『一部が突出したように振る舞っています、砂嵐がここまで直線的な形になるとは不自然極まりないかと』

 

「陸上艦が突っ込んで来てるなら船体が見えないとおかしい、まるで船を丸ごと砂で包みながら走って…」

 

傭兵はそこで合点がいったかのように手を叩き、それを後部座席のミナミは不思議そうな目で見た。

 

「重力制御か!」

 

『私達の船にも搭載されているアレですか』

 

「よくよく考えるとあの巨体で追跡を振り切って砂嵐まで逃げ込むなんざ無茶な話だ、重力を操って見た目より軽くしてるんだろう。そしてそれを応用すれば周囲の砂を巻き上げて!」

 

『砂嵐を形成するという訳ですか』

 

「厄介だな…」

 

誘導兵器はかなりの影響を受けるだろう、遠距離から弱点を撃ち抜いて…という作戦は白紙になった。得意な距離に持ち込むための装備だと考えられるが、足元の砂を舞い上がらせるという特性上地雷除去にも使えるかもしれない。

 

「用意してもらった地雷はもしかすると役に立たないかもしれん、目論見が外れたな」

 

『無いよりマシかと』

 

「屑鉄兄弟に陸上艦が来たと伝えておいてくれ、俺はトバリに連絡を入れる」

 

『お任せを』

 

トバリは大会会場から少し離れた位置のテントにて待機しており、隊長の部下数人が護衛としてついて来てくれている。ゲリラの攻撃が精度の悪いロケット弾による面制圧だと分かっている以上この場に留まるのは危険だ、早々に離脱してもらう。

 

「トバリ、奴らが来た」

 

「わ、分かりました、荷物を纏めて離脱します!」

 

「やるだけやって俺も逃げる、先に街に帰っていてくれ」

 

「…その、作戦の成功確率を上げるためとはいえ、本当に残るんですか?」

 

「囮になっての情報収集は俺が言い出したんだ、今分かったことを纏めて送信するから持ち帰ってくれ」

 

重力制御装置を搭載している可能性が濃くなった以上、地雷や長距離砲撃による撃退は無理だと思った方が良い。最早街にまで引き込んで戦うしかないだろう、辛い戦いになるのは確実だ。

 

「どうにか奴の弱点は見つけてみせるさ、信じてくれ」

 

「分かりました、信じます」

 

傭兵は彼女との通信を終え、半壊したビルへと登る。そしてその上から地平線を見れば、砂嵐を纏った陸上艦の姿がよく見える。

 

「…来てるな」

 

『待ってください、何か射出されて来ます!』

 

「計画を変えて来たか、まあ当然と言えば当然だが」

 

砂嵐を突き破って現れたのはかなりの大きさを持った物体で、ロケットブースターによって打ち出されて来たらしい。

 

『レーダー波キャッチ、あの飛行物体からです!』

 

「ただの無誘導弾じゃあ無いわけか、だがミサイルにしては大き過ぎ…」

 

ロケットブースターは燃焼を終えた数秒後に切り離され、飛行物体は大会会場へと落下を始める。しかし落下する前に外壁が次々と外れ、中から何かが現れて地上へと消えていった。

 

「…何か入ってたな」

 

『サイズからして大型の多脚車両か、人型兵器ですね』

 

「単身乗り込んで来たか、余程自信があるらしい」

 

自分を消すために送り込まれた尖兵、といった所だろうか。UAVからの情報によれば着地してすぐに移動しており、こちらの位置を把握しているのか建物の残骸を盾にしている。

 

「邪魔者を片付けないと危なっかしくて狙撃なんて出来ないな、先に奴をどうにかするぞ」

 

『敵機交戦開始、他の参加者と遭遇したようです』

 

「他の選手が生きているうちに潰せると良いんだが…」

 

105mm砲は置いていく、敵が砲撃を行う市街地跡からは少し距離があるので巻き込まれないことを祈るのみだ。30mm砲に徹甲弾を込め、ビルから滑り降りる。

 

「第二世代機の装甲を30mmで抜けるかどうか、せめて40mmが欲しかった所だな」

 

『同じ箇所に何発か命中させるしかありませんね、支援します』

 

「戦闘用と作業用の差ってやつかねぇ」

 

第二世代機は材料工学のブレイクスルーが起きた後に作られているため、重量は第一世代機と同等であるにもかかわらず防御力には大きく差がある。なんと火薬式の120mm砲に耐えるというのだ、第一世代が30mmで穴だらけになることを考えると優秀にも程がある。だからこそレールガンやビーム兵器といった武器が主流になっていくのだが…この話は別の機会にするとしよう。

 

「景気よく撃ってるな、横から叩き込んで様子を見るぞ」

 

『動きが早い…補足されてます!』

 

「マジか!?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

謎の機体は既に遭遇した選手を仕留めており、振り返ってこちらに発砲する。咄嗟に跳躍して直撃を避けるものの、肩部の装甲板がいとも簡単に抉られた。

 

「あの大きさで30mmか!」

 

『四肢を破壊されかねません、離脱を考えると脚部への被弾は許容できませんよ』

 

「分かってる、お返しをくれてやるさ」

 

牽制のために頭部の機関砲を放つが、それを敵機は身を捩るだけで避けた。ならばと傭兵は後ずさりをしながらも頭部を動かして砲弾をばら撒いたが、それも踊るような数回のステップで回避した。

 

「なんだあの反応速度、人間業じゃあないぞ!?」

 

『無人機でしょうか』

 

「あんな有機的な避け方は見たことがない、コイツはとんだイレギュラーだな!」

 

レンヤとの模擬戦で照準器の向きから砲弾の軌道を読むという曲芸を見せてはいたが、あれは相手がまだ未熟かつそれなりの距離があったために出来ただけだ。引き金を引けば砲弾が命中するのが一瞬のこの距離で避けるというのは第二世代機であっても不可能に近い。

 

「操縦系統とパイロットを直結してやがるのか、そうじゃないと説明がつかん」

 

『我々も繋いでいるようなものですが』

 

「幾ら改造しても第一世代の限界ってのがある、トラクターが戦車に勝てるか!」

 

先陣を切って突っ込んでくるだけの腕はあるようだ、傭兵が第二世代機に乗ってさえいれば多少苦戦はするかもしれないが負けないだろう。だが性能差は歴然、火力は同等かそれ以上、見た誰もが勝てない戦いだと言うだろう。

 

「そいつが一人で突っ込んで来た馬鹿か!」

 

「ゲリラ共、俺達屑鉄兄弟が来たからには!」

 

「スカベンジャーの縄張りを荒らした報いをォ!」

 

傭兵を攻撃しようとした第二世代機だったが、その動きは突如飛来した散弾によって咎められる。少し前に聞いたばかりの走行音、ホバー特有の騒音が今は心地よい。

 

「「「受けてもらうぞッ!」」」

 

長男が振るう槍は華麗にいなされ、次男が放った散弾も横に跳ぶような鋭い跳躍によって当たらない。三男は着地の瞬間を狙ってライフルの引き金を引いたようだが、頭部を狙ったそれは首を僅かに傾げることで避けられた。

 

『連絡を入れた甲斐がありましたね、来てくれるとは』

 

「陸上艦の接近に気が付いたのかもな、これで状況は五分って所か」

 

目の前の曲芸師が何者なのかは分からない、だが倒さぬことには陸上艦が野放しだ。

 




キャラ紹介
:謎の第二世代機

【挿絵表示】
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