辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第三十七話 砲撃

「弾が当たらん、なんだコイツは」

 

「ゲリラの隠し球さ、どうしても俺達を潰したいらしい」

 

「第二世代機相手に四機か…傭兵、足を引っ張るなよ」

 

「そっちこそな!」

 

周囲には建造物の残骸が転がっており、ホバークラフトを装備した屑鉄兄弟は動きを制限されてしまう立地だ。しかし彼らの阿吽の呼吸から繰り出される連撃は相手に回避を強要する、回避の瞬間を捉えれば有効打を与えられるかもしれない。

 

「当たらねえ…だが何故奴は撃ってこない!」

 

「分からん」

 

「分からんとはなんだ使えねぇな!」

 

相手は傭兵に放った攻撃を最後に、屑鉄兄弟が現れてからも回避のみに専念している。手に持った機関砲とナイフは使う気配が無く、ただ踊るように回避を続けている。

 

「こっちが弾切れになるぞ、どうする兄者」

 

「手伝え傭兵、近接戦を仕掛けるぞ」

 

「指示に従え!」

 

『元気の良い方々ですね』

 

彼らは槍を構えるが、次男の獲物は傭兵が叩き切ってしまったがためにただの棒と化している。それを彼は悪態を吐きながら投擲、即座に80mm滑腔砲に持ち替えた。

 

「ホバーに合わせるのは至難の業だが…最近の機体は同じような動きをするんでねぇ!」

 

兄弟間の連携攻撃を二度観察した傭兵はその流れを読み、邪魔をしない絶妙なタイミングで飛び込んで鉈を振るう。それは惜しくも避けられたが、それによってか次男の散弾は敵の塗装に傷をつけた。

 

「俺達の連携に割り込んで来やがった!?」

 

「少しは動けるらしいな、ペースを上げるがついて来れるか?」

 

「任せろ、伊達に傭兵やってないからな」

 

ホバークラフトの滑るような動きから繰り出される攻撃と瞬発力を活かした傭兵の攻撃、槍と鉈というリーチの差も回避を難しくしている。

 

「このまま押し込むぞ」

 

「くたばれェ!」

 

三男が横薙ぎに振るった槍は明らかに命中する軌道だった、だがそれは相手が振るったナイフによって阻まれる。ほぼ全ての物体を切り裂ける程に鋭利なそれは槍に使われている鋼材など簡単に切断し、更にはすれ違う瞬間にお返しと言わんばかりの蹴りをお見舞いした。

 

「ぐおわっ!?」

 

「フォローする、立て直せ!」

 

遂に攻撃を始めた敵機の砲撃は三男にトドメを刺しかけたが、それを傭兵は分厚い胸部装甲で受け止める。戦車の複合装甲を移植したそれは貫通を許さず、傾斜した装甲板の上で弾いて見せた。

 

「ナイフが厄介だな、鉈ごと斬られるぞ」

 

『カンナギの刀でも持って来ないと正面からの格闘戦は無謀です、今は隙を作って射撃を叩き込むしかありません』

 

「だろうな!」

 

傭兵はコックピットを狙って突き出されたナイフを避け、それによって前に伸びた腕に向かって鉈を振り下ろす。だがそれも当たらなかったため、頭部の機関砲を放って隙を潰しつつ背後へと跳ぶ。

 

『頭部機関砲命中、流石にこの距離では限界があるようです』

 

「この距離からなら当たる!」

 

「腕一本分が必中距離か、無茶苦茶だな」

 

屑鉄兄弟の長男は傭兵と入れ替わるようにして滑り込み、足元を狙って穂先を振るう。そしてそれに合わせて次男と三男が滑腔砲から散弾を放ったが、相手が前へと跳んだことでそれは外れる。

 

「コイツ!」

 

「兄者から離れろォー!」

 

懐に潜り込んだ敵機はナイフで左腕を斬り落とし、機関砲で右脚を撃った。ホバークラフトを狙ったその砲撃は命中し、装備を穴だらけにしてその機能を失わせた。

 

「腕一本分だったな!」

 

しかし長男は全く怯まず、槍から手を離して滑腔砲に持ち替えた。そして敵の発砲とほぼ同時に引き金は引かれ、至近距離から散弾が撃ち込まれた。散弾といっても弾の一つ一つはダーツ状になっており、装甲車くらいの装甲なら夜空の星空の如く大量の穴を開けることが出来た。

 

「駄目だ、第二世代の装甲にそんなもん通じないぞ!」

 

「クソッ、徹甲弾を込めておけば…」

 

当たりやすい散弾を込めていたが故に有効打にならなかった、関節部にでも当てられれば話は違ったかもしれないが、相手は銃口に対して分厚い肩部装甲を押し当てたのだ。砲身は圧力の逃げ場がなくなったことで割れてしまい、内部機構にも損傷があったのか次弾を撃てない。

 

これで一機撃墜と言わんばかりに敵機はナイフを振り上げて逆手に持ち替える、アレが振り下ろされれば胸部を貫通されて中のパイロットはお陀仏だ。しかしそれを許す屑鉄兄弟ではない、次男が体当たりを仕掛けたのだ。

 

「その汚ねぇ手をどけて前みたいに避けるんだな、当たる気ならこっちの質量を舐めるなよ!」

 

腕を組んで前に出しコックピットを庇いながらの突撃を敢行する次男だったが、敵の機関砲がそれを拒む。放たれる砲弾は頭部を吹き飛ばし、両腕を抉り飛ばした。

 

「うぉぉぉお!?」

 

「無茶しやがる、死ぬなよ!」

 

『こっちだって相当な無茶ですよ』

 

今にもコックピットを撃ち抜かれそうな次男を突き飛ばし、傭兵は30mmを放ちながら前進した。敵機は流石に避ける気になったらしく、トドメを刺そうとしていた長男の機体から離れて砲弾を躱した。

 

「よくも兄者達を…俺だって、俺だって屑鉄兄弟だァーッ!!」

 

三男はいつのまにか投擲姿勢を取っており、回避の瞬間を狙って槍を投げた。それは刃を失っていたが敵機の意表を突いて命中し、その衝撃は大きな隙を生み出す。

 

「初めてバランスを崩したなァ!」

 

それにホバークラフトを切り離した長男が飛びかかり、残った片腕で思い切り殴り付けた。安全装置を外したことで人工筋肉はその力を最大限に発揮し、関節部やフレームを歪ませながら放ったその一撃は敵機を空中に押し留めた。

 

「傭兵!」

 

「任された!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

虎の子のロケットモーターを点火すると同時に跳躍、敵機との距離は腕一本分以下に縮まる。装甲の隙間、関節部を捉えた一撃は第二世代機の片腕を斬り飛ばした。

 

「傭兵の野朗、当てやがった!」

 

片腕を失った第二世代機は頭部を傭兵に向けたかと思えば、背中に装備していたコンテナを開けた。すると閃光と共に煙幕が広がり、センサーも敵機を捉えられない。

 

「煙に何か混ざってやがる、レーダーもダメか!」

 

『振動検知、敵機跳躍!』

 

「マジかよ」

 

損傷が大きい次男を庇うように動いた長男と三男をフォロー出来る位置に動いた傭兵だったが、煙幕が晴れた頃には敵機の姿は無かった。残されていたのは切断した片腕と、その場で跳躍したと思われる足跡だけだった。

 

「…逃げたのか、あの状況で?」

 

「なんだか知らんが助かったな……傭兵、良い動きだったぞ」

 

「足は引っ張らなかったろ?」

 

「そうだな、その代わりに腕をぶった斬ったか」

 

両腕と頭部を失った次男の機体だが、脚部には損傷がないので自走出来るらしい。長男はホバークラフトを失ったが脚は動く、まだ戦闘能力は喪失していない。

 

「これからどうする、あの資料によれば砲撃が来るんだろう」

 

「治安維持隊のホバークラフトが回収に来る、そのポイントまで逃げるぞ」

 

「俺達合わせて4機だぞ、乗れるのか?」

 

「乗るのは二機だ、そっちの次男と三男は自前のホバーがあるだろ」

 

偵察を終えた後は信号弾の合図によって隊長が用意したホバークラフトが来る手筈になっている、なんと人型兵器を6機も載せられる大型機なので心配は要らない。

 

「…つまりだな、砲弾が飛び交う中でそのポイントとやらまで走ると?」

 

「そうだ、足を引っ張るなよ!」

 

陸上艦は全身に備えた火器を会場に向け、鉄の暴風を放った。榴弾が炸裂し、ロケット弾が大会運営の本部を丸ごと耕してしまう。

 

「兄者!本当について行って良いのかよ!」

 

「他に生き残る方法が思いつかんのだ、今は信じて走るしかない」

 

四機は砲弾の雨の中、ひたすらに走る。屑鉄兄弟はボロボロになった次男の機体を支えながら先導する傭兵にどうにかついて行くしかない、生き残っていた他の選手が砲撃に巻き込まれて死んでいくのを尻目に前へと進んだ。




キャラ紹介
:陸上艦

【挿絵表示】
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