辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第三十八話 準備

「…誰だコイツらは」

 

「屑鉄兄弟、大会の参加者で使えそうだったから拾って来た」

 

「拾って来たとはなんだ拾って来たとは」

 

「事実だろ、ほら行った行った」

 

騒がしいのが増えたと言わんばかりに隊長はため息を吐いたが、それはそれとして使える戦力が増えたのは良いことだ。彼らの機体は格納庫に運び込まれ、街の防衛のために協力することを条件に修理が行われるだろう。

 

「偵察の結果はどうだ、トバリから重力制御装置の話を聞いた時点で嫌な予感はしているんだがな」

 

「大砲やらミサイルやらのハリネズミ、どう足掻いてもアレは止められないな」

 

「…お手上げか、こうなるかもしれないとは思っていたが」

 

真っ直ぐ街に突っ込んでくる陸上艦を止める手立てはない、町への被害は避けられないだろう。ホバークラフトに乗って難を逃れた傭兵だったが、帰ったとしても敵は追ってくる。

 

「町を囲っている壁を上手く使うしか無いな、入り込んでくる人型は人型で相手するしかない」

 

「休んでいる者も叩き起こして準備を進めている、予備機以外はすべて稼働する見込みだ」

 

「それで計何機だ?」

 

「32機だ、町の外に居た部隊も呼び戻している」

 

相手の数が不明なのでなんとも言い難いが、一つの拠点に配備されている数と考えれば相当なものだ。だが問題は第二世代機が存在しないということであり、屑鉄兄弟と連携しても片腕を損傷させるにとどまったような相手が来れば防衛体制はいとも簡単に瓦解するだろう。

 

「陸上艦から第二世代機が出てきてもう滅茶苦茶、連れて来た奴らの損傷もそれが原因なんだ」

 

「生きて帰って来たということは、勝ったのか?」

 

「片腕をぶった切った、外見からして頭部以外はこれまた協商連合製だとは思うんだがなあ…」

 

全員がアレほどの腕かどうかは兎も角、第二世代機はあの一機だけではないだろう。それに問題はあの雨霰と降り注ぐ砲弾だ、あの投射量では戦う前に全滅する羽目になる。

 

「人型兵器以外の戦力は?」

 

「機関砲を装備した装甲車が大半だ、戦車の類いはその…放棄を命じられてな」

 

「あー…」

 

「だから主砲を装甲車に載せて装輪戦闘車にしてある」

 

「凄いな、とんでもない詭弁だ」

 

「戦車は放棄したさ、戦車はな」

 

この程度のことも確認して処罰しない程度には統治機構とやらがザルなのだろう、治安維持隊の機転によってある程度の火力は保持しているということになる。

 

「これを町を囲う壁の上に並べて陸上艦への攻撃に使いたい、効き目はあるか?」

 

「あの巨体と本来の用途を考えると外から撃っても止まらないとは思うんだが…後付けされた武装は装甲が薄い、砲塔の誘爆を狙えば内部にまでダメージが通る可能性はある」

 

「分かった、砲手には武装を狙うよう指示しておく」

 

通常兵器でただ叩いても勝つことは出来ない、だからこそレンヤにあの機体を使って貰うのだ。作戦はある、だが上手く行くかは未知数だ。

 

「これで()()()の戦力は充分か?」

 

「ああ」

 

「…誰に聞かれているか分からん、これ以降の話は地下格納庫でするぞ」

 

「他の参加メンバーは?」

 

「もう集まってる、護衛が必要な者もいるからな」

 

ーーー

ーー

 

治安維持隊が駐留する基地の地下には巨大な格納庫が存在しており、住民の避難所としても機能していた。傭兵を回収したホバークラフトやレンヤが乗ることになった謎多き機体もエレベーターを通じてこの地下空間に運び込まれており、隊長やカザマキの息がかかった信頼できる整備士達が整備や調整に当たってくれている。見事帰還した傭兵に帰りを待っていた人々が駆け寄るが、それもほどほどにして地図が広げられた机の周りに皆が集う。

 

「諸君らも分かっているとおり、彼我の戦力差は圧倒的だ。このまま戦っても勝てないのは目に見ている、ここまでは良いな」

 

隊長は赤い駒を地図上に置きつつ話を始めた、聞く人々は皆真剣だ。

 

「そこで我々は敵艦に向け突撃、乗り込んで内部から破壊工作を行う。目標の陸上艦に関しては詳細なマップデータではないが、協力者によって大まかな構造は判明した。順に説明しよう、レンヤ!」

 

「突入の際は私が搭乗する機体の慣性制御装置によって砲弾を全て逸らし、一気に接舷します。消費電力は莫大なものになりますが、他の機体から電力供給を受けることで軽減する手筈になっています」

 

以前傭兵が乗り込んだ際に発動させたアンチデブリシステムは物理砲弾に対してはめっぽう強く、どれだけの弾幕だろうとも軌道を変えられては役には立たないだろう。試作機だったからかシステム面は未完成と言っていいものだったが、既にミナミとカナミの二人によって手直しがされている。

 

「ありがとう、次は…」

 

「ボクが生活していた場所だから大きな間違いはないはずだけど、万が一のために全力でナビゲートするよ!」

 

「…だそうだ、彼女を頼ってくれ」

 

ゲリラから追い出されて来たアルビノ少女は自分を逃がすために死んでいった仲間たちの仇を取るために協力してくれたが、それによって明らかになったのは増改築を繰り返して歪かつ不安定な構造を抱えた陸上艦の姿だった。武装を乗せたとは言っても外装に張り付けただけであり、固定すら不十分な有様だ。

 

「狙うべきはここ、人型兵器用の外部デッキ。ここは砲台不足を補うために機体が乗り出して銃を撃てるようになってるから戦闘中は多分開放されてるし、閉まってても他のハッチと違って後付けだから簡単に壊せるはず」

 

「よし、では内部に入った後だが」

 

『私がお話します』

 

手を挙げたのはミナミであり、彼女の手にはスティック型の記録媒体が握られていた。

 

『最寄りの管制室に侵入し、陸上艦のコンピュータに対してありとあらゆる種類のマルウェアを叩き込みます。重力制御には非常に高い演算処理能力が求められますので、妨害すれば今まで軽減していた自重があの違法建築物を襲うでしょう』

 

「その分野は専門外だが、上手くいくのか?」

 

『古いシステムなので穴が多いんですよ、私でも把握していない程の数と種類のものを投入するのでどれかは通るかと』

 

彼女が持つ趣味の一つはマルウェア収集であり、その成果物は傭兵が船の外に捨てろと思わず言いたくなるような代物ばかりが揃っている。そんなものを数十年以上前からアップデートも何も行っていないシステムが受けたらどうなるか、想像するのは容易いだろう。

 

『お任せください、あの九龍城モドキの中身をかき回してやりますよ…』

 

ミナミは満面の笑みを浮かべた。

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