辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第四十八話 傭兵改め運送業者

 新たな拠点となる陸上コンテナ船だが、側面には大きくカザマキ商会の社名がペイントされた。街の中からかき集められたコンテナも積み込みが始められ、格納庫には人型兵器関連の機材が設置されている。

 

「…コイツらを連れて行くとはな」

 

「まあまあ、頼りになるんだよ」

 

 隊長と傭兵の前に立つのは完全装備の屑鉄兄弟で、治安維持隊の協力によって分解整備の末に改修まで施された長男の機体が背後に駐機されている。機体色は灰色に改められ、船の護衛と言い張れる姿になっていた。

 

「中央工廠までの航路はゲリラの影響で大いに荒れた、警戒網の隙間には大量のスカベンジャーが蔓延っていると考えると…」

 

「自然な選択だってわけよ、傭兵の奴も見る目あるな!」

 

「兄貴の機体しか載せられないのはちょいと悲しいけども」

 

 ホバーユニットは便利だが、それ専用に改造された機体が必要というのは少々ネックだ。整備への負担と搭載機数の少なさから見て、残念ながら三機のうち一機のみを搭載することとなった。

 

「これで傭兵、レンヤ、屑鉄長男で三機か」

 

「残り一機はもう決めてる」

 

「何にするんだ?」

 

「ふっふっふっ…予備機だな!」

 

 三機全て稼働させたら後がない、余裕を持たせるためには普段使いをしない機体は必要だ。余裕がなければ機体が戦闘によって損傷した場合、修理が終わるまでパイロットを遊ばせておかなければならないのは大きなデメリットと言える。

 

「ゲリラから状態の良い機体を掻っ払った、それを整備してちょいと改造してもらった後積み込む予定だ」

 

「堅実だな、いい案だ」

 

「問題は整備班の負担が大きいことだな、改造に改修にと激務続きなんじゃないか?」

 

 治安維持隊が全面的に協力してくれるとはいえ、流石に働かせ過ぎな気がすると傭兵は感じたようだ。このコンテナ船を動かせる状態にしたのも彼らだ、ここまでの技術者集団は得難いだろう。

 

「その通りなのが現状でな。一緒に働いている傭兵のメカニックも、文句の一つや二つ言ってるんじゃないか?」

 

「文句は聞かないが疲れてはいるみたいだ、俺の機体がもうそろそろ完成しそうだとかなんとか…」

 

「最後の追い込みというわけか」

 

 遠征のための戦力は着々と整えられつつある、後は準備が終わるのを待つだけだ。しかしそう簡単に事が進むかと言われるとそうではない、この状況を受けて統治機構が動かない訳がないのだ。

 

ーーー

ーー

 

「…あの馬鹿がやられるとはな、失敗作とはいえ研究室の機体を与えたというのに陸上艦ごと失うとは」

 

「取り返せばいいだろう、あの街は元々消す予定だった筈だ」

 

「奴らは躊躇なく解体を始めた、その過程で大量の兵器が鹵獲されたと言えばそれが無理というのが理解出来るかね」

 

 初老の男性と長髪の女性が双眼鏡で覗く先には解体作業の進む陸上艦があった、大型の重機が集っている様は死体に湧いた虫を連想させる。無惨なものだ、無敵を誇っていた筈の船は今や身体を削がれつづけるだけの存在に成り果てた。

 

「どうやって倒したんだ、ゲリラごっこをしていた連中からの報告は?」

 

「事前にUAVの運用部隊を潰して情報を奪い、陸上艦への移乗攻撃を敢行した…とのことです」

 

「出来過ぎじゃあないか」

 

「恐らく我々からの離反者が居るでしょうね、あの街は前々から我々の手に噛み付く機会を伺っていたと考えるのが妥当かと」

 

 少々検討外れな考察だが、イレギュラーが居たという一点については間違っていない。それが離反者程度で済むものではないのが問題なのだが、残念ながら今の彼らには情報が少な過ぎた。

 

「例のユニットが帰還していないというのも不自然ですねぇ、何かあれば自動的に離脱する手筈だと聞いていたんですが」

 

「整備不良で打ち上げられなかった、とか」

 

「あり得る話ですが、それを調べるのが私達の仕事ですよ」

 

 陸上艦の中では重力制御機関を止められた際の衝撃で多数の死傷者が出てしまったが、治安維持隊にとっては結果的に逃げられるのを阻止することが出来た。それによって大多数の船員が捕えられたが、それでも運良く逃げ出した者達が居た。

 

「ですが…何故貴方達のような、下も下な奴らしか生き残ってないんでしょうか。これでは情報も期待出来ませんねぇ」

 

「指揮に当たっていた方々は、砲台の崩落と誘爆によって全滅…」

 

「いいんですよそんなことは、全く面倒なことになったものです」

 

 二人は双眼鏡を下ろし、駐機させてあった第二世代機に向かって歩き始める。その機体には砂漠用の迷彩が施され、機体のシルエットを隠すための外套も装備されているという隠密仕様だ。

 

「調査は続行します、幸い動きが活発になっているので人員を潜り込ませるのは簡単でしょう」

 

「監査だって言い張って正面から行けばいい」

 

「それは後から来る部隊の仕事ですよ、それに我々二機では最悪負けます」

 

 海賊率いる統治機構もやられっぱなしではないようだ、彼らも相当な腕利きに見える。気になる言葉は複数あるが、彼らの誤算は敵に宇宙から来た傭兵が居たことだ。

 

「このまま監視を続行しますか、お前達は交代して見張りを」

 

「わ、分かりました」

 

 彼らが生き残りの中から密偵に使えそうな人員を選ぶ間、未だ上空を飛び続ける傭兵の偵察機が自らを捉えていることに気付くことはなかった。

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