辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第五十五話 中央工廠

 峡谷を抜けてから数日、遂に目的地である中央工廠付近にまで辿り着いた。傭兵達が乗るコンテナ船と同レベルかそれ以上の船も航行しており、レンヤ達の住む地方の交易拠点とは規模が違うことがよく分かる。

 

「目的地を目前に渋滞か、なんともなぁ…」

 

『物流は活発なようですね、色々な情報が得られそうです』

 

 この大量の船は何処に何を運んでいるのだろうか、地方に来ていないということはそれだけの需要を持つ都市が付近に存在するということになる。傭兵とミナミは艦橋の窓から周囲の様子を伺っていたが、それを見て一人話しかける者が居た。

 

「壮観だな、傭兵殿」

 

「カザマキか、ここまで大型車両が集まるってのも中々見なくてな」

 

 ここまでの輸送量が求められる場合、鉄道に似た輸送システムが整備されることが殆どだ。それなのに非効率な大型車両での輸送がこの星の主軸となっているのには、何か独自の理由がありそうに思えてならない。

 

「残念ながら殆どの物資は統治機構がある中央都市とその周辺に送られる、地方に配られるのは全体の2割程度だ」

 

「そこまで需要に差があるのか?」

 

「実際の人口比は中央とそれ以外で…6対4くらいだとは思う、第二世代機の部品供給停止前はおおよそそれくらいの割合で物資が運ばれていたな」

 

「じゃあ交易拠点にこの船があったのも、その時の名残ってわけか」

 

「往来も活発だった、海賊が何を考えて体制を変えつつあるのかは分からないが…商人としては血涙を流すばかりさ」

 

 交易拠点も昔はより大きな商談があったらしい、今も周囲を束ねて物資をやり取りしているあたり自力は相当高いのだろう。送らなくなった物資は何処に行ったのか、そしてどのように使われているのかは調べなくてはなるまい。

 

「話にあった中央都市はやっぱり大きいのか?」

 

「内部は実際に見たことはない、けれども中々大きな都市だったぞ。何やら巨大なドームが幾つかあるのには驚いた!」

 

 環境隔離用の居住ドームだろうか、やはり中々大きな開拓計画だったというのは間違いなさそうだ。それにこの緑のない星で人類が過ごせているということも不可思議だ、恐らく大量の酸素を供給して気流に乗せるシステムが何処かにあると考えていい。

 

「ドームか…」

 

「中央工廠にもあるぞ。背の高い建物に限れば、そろそろ見えてくるのではないか?」

 

 そう言われると気になる物で、どうにかして目的地を目に収めたくなった。しかし艦橋からの景色は周囲の陸上艦で遮られている、もっと上から見る必要があるだろう。

 

「クレーンに登れば見れるか?」

 

『行けますね』

 

「ちょっ…!傭兵殿ぉ!?」

 

 二人は艦橋を離れ、クレーンの上へと繋がるエレベーターへ乗り込んだ。そしてアンテナをメンテナンスするために設置された階段を経由して更に上へと向かい、移動中に身に付けた安全帯のフックを手すりにかけた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「…おお、思ったよりもデカいな」

 

『工場施設を中心に街が広がっているようです、かなりの規模ですね』

 

 分厚い壁に囲まれた街の中央には高度な生産施設が置かれ、その周囲を大量の建物が覆っている。地表は何かしらの建造物で埋まり、後付けされたであろう送電網は見ているだけで感電しそうな危うさがある。

 

「第二世代機の製造ラインがあるのにも頷ける、地図が欲しい所だ」

 

 大型車両の渋滞に悩まされつつも、彼らを乗せたコンテナ船は中央工廠へと進んでいる。無事に入港出来るのは数日後になるだろう、それまでに情報収集をどう進めるか再度確認しておかなければならない。

 

ーーー

ーー

 

 荷下ろしと売却交渉が始まった裏にて、一部の者達は会議室に集まり今後についての話し合いを行っていた。

 

「カザマキ嬢、説明を頼む」

 

「うむ!単刀直入に言うが今回の滞在期間は3ヶ月だ、我々はそれまでに一定の成果を出さなければならない」

 

 3ヶ月、この巨大な人口密集地を調べ上げるには短過ぎるタイムリミットだ。それにスパイ活動を専門にしている人間など居ない、何も出来るとは思えない状態だが、彼らには秘策があった。

 

「陸上艦の残骸を売りに出す以上、我々に統治機構が注目しない筈はない。そして明らかに重要そうな謎のコンテナを餌にして奴らの動きを見るというわけだ」

 

『そうは言っても、解析がまだ終わってませんよ』

 

「船が止まっている間はカンナギをフルで使えるからな、どうにか終わらせるしかない」

 

 傭兵にそう言われ、ミナミは24時間働くことになりそうだと愚痴を溢す。解析でミナミは手を離せず、人型兵器に乗れる者はローテーションを組んで船の護衛に当たらなくてはならないため、自ずと街へ出られる人員は限られてくる。

 

「パイロットからも一人は出せるか…傭兵、諜報に覚えは無いのか?」

 

 隊長も自分の部下を使い情報を集めるようだが、それでも手数は多い方が良いだろう。表向きにはただの交易ということもあり、大きな人員を動かすことが出来ないというのも痛かった。

 

「畑が違い過ぎるが、方法が無いわけじゃあない」

 

「何だ、その方法とやらは」

 

「俺の名前通りに働くのさ、機体もメカニックも一流だしな」

 

 この街の規模だ、傭兵の需要はあるだろう。傭兵の腕ならば何処ででも働けるだろうし、何よりある一件で知名度は多少あった。サンドロワイヤルの映像は中央にも届いていたのだ、襲撃までの大立ち回りは見ていなかったとは言わせない迫力がある。

 

「大会の映像で多少は名前が売れてるだろ、偽者と言われたらどうしようもないが…」

 

「そういうことなら一応交易拠点の方で身分証明書は作っておいた、書類も含め不備はない筈だ」

 

 そう言って隊長から手渡されたのはICカードと本人確認書類、居住地や経歴等が書かれた書類だった。でっちあげられた内容だが、どれも統治機構の書式に則っている。

 

「マジかよ、用意周到だな」

 

「持っていけ、門前払いは喰らわんはずだ」

 

 ミナミのサポートが欲しいところだが、仕事もある上に慣れない土地で目立つアンドロイドを連れ回すのも良くない。傭兵は新たな街に来て早々に、パイロットとしての働き口を探すことになるようだ。

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