辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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すみません加筆しました


第五十七話 新進気鋭

「…派手に暴れ過ぎたか?」

 

「絶対そうっス」

 

 大会で大暴れをしたという経歴不明の傭兵が中央工廠に現れて一週間、彼は誰もが手を付けなかったような案件を次々と解決していった。捨て駒としてPMCに雇われた後、これまた無名の新人と共に塹壕を制圧して見せたのだ。

 

「俺達2人で噂になってるな、良かったじゃないか」

 

「いやいやいや、全ッ然良くないっスよ!」

 

 砂賊の集団は蹴散らされ、要人警護ではヒットマンが絶滅するのではないかという手腕を見せ、金さえ積まれれば行方不明だったペットすら見つけた。プロの仕事ぶりというのはこういうものだ、そう実績で語っていた。

 

「ここまでついて来れるとも思わなかったがな、助かった」

 

「女だからって甘く見られたら商売上がったりっスよ」

 

 仕事の後、コックピットから降りて来たのは女性だったのだ。安物のパイロットスーツは汗で水浸しになり、肘や膝などは補修の後が目立っていた。通信機越しだったので気が付かなかったが、傭兵は珍しいなと感じたようだ。

 

「十分な報酬は手に入ったしな、次はどうするか…」

 

「あの、質問なんスけど」

 

「どうした?」

 

「なんでそこまでして、急にビックになろうとするんスか?」

 

 スパイなので情報収集のためです、と馬鹿正直には言えないだろう。かといって巻き込んだ以上、ある程度話す必要があるのは事実だ。

 

「有名になれば良い仕事が入ってくるからな、アンテナを高くして金になる情報を掴みたいのさ」

 

「確かに割は良くなるかもしれないスけど…」

 

「それよりお前は本格的に稼ぎ始める前に機体を乗り換えろ、なんなら用意してやるから」

 

「何処まで巻き込む気なんスか!?」

 

 頭を抱える彼女だったが、渡された分け前を見て態度を変えた。本来なら数日かかる依頼を1日で終わらせて回っていたため、支払いが遅れてしまっていたのだ。これで煙に巻けただろうか、彼女はもう何を話していたのかも抜け落ちていそうな顔をしている。

 

「こ、これって…」

 

「振り込まれた依頼料の半分、お前の取り分だ」

 

 しっかりと支払われた依頼額が乗った書類を共に渡し、取り分を誤魔化してはいないと言外に告げる。縦に置いてもそのまま自立するような分厚さの封筒は、彼女の目にはもう爛然と輝いて見えていた。

 

「は、ははは、半分!そんなにくれるんスか!?」

 

「そりゃお前、背後から撃たれたくないからだが…」

 

 組んだ相手が満足する報酬を渡さなければその後が怖い、今回の場合は等分するのが良いだろう。彼女がどのような使い方をするのかを見れば、今後の付き合い方も考えられる。

 

「こんなに分厚い封筒、初めて見たっス」

 

「いいから盗まれない場所に隠しておけよ、帰るまでに殺されたらこっちが困るんだからな」

 

「ウス!お疲れッした!」

 

 そう言って彼女は懐へ封筒を仕舞い込み、何処かへ走っていった。興奮していて周りをよく見れていないので尾行は容易だろう、傭兵は防弾装備の上に外套を着込んで後を追うことにした。

 

「悪いがこれで馬鹿みたいな使い方をしたらコンビ解散だ、ソイツは手切れ金ってことになっちまうんだが…」

 

『さっきから聞いてましたけど、また現地協力者を金で釣ってるんですか?』

 

「金だけじゃなくて実力も込みで魅せてるんだよ、多分」

 

 人聞きの悪いことを言うのは通信機越しに話すミナミで、今も謎のAI相手に悪戦苦闘しているらしい。息抜きがてらに話しかけて来ているのだろう、人型兵器に乗っている時以外は少し抜けている所のある傭兵を心配しているというのも有る気がするが。

 

「なら話が早い、無人機飛ばしてくれ」

 

『空から追えばいいんですね、あんまり下手な演技はしないで下さいよ?』

 

「任せろ、俺はタダの傭兵ってことになってる」

 

『我々は潜入捜査員として三流ですけど、タチが悪いことに傭兵としてなら一流ですからね』

 

「便利なことに実力は嘘をつかない!しかも語れる範囲でしか語らん!」

 

 大多数の人間は中央工廠と呼ばれる建物の外で暮らしている、傭兵が居るのも外側に築かれた街の方だ。地平線の先にまで広がる家屋に統一性はなく、無秩序に建設されたことが伺えた。

 

『曲がりましたよ、その奥です』

 

「かなり街の中心からは外れていくな、治安も良くなさそうだが」

 

『銃を剥き出しにしての携行は御法度だと聞いたのですが…』

 

「ここじゃ警官の目も届かんらしい、危なくなって来たな」

 

 すれ違う人々の身なりも段々と見窄らしくなって来た、こちらを見る目も少々危険だ。そこで外套で隠していた小銃を取り出し、折りたたみ式の銃床を展開して見せる。

 

「丸腰と思われて襲われても困る、こっちも抑止力を使わせてもらうさ」

 

 防弾装備と自動小銃、この辺りに居る人々では勝ち目がないだろう。しかし高価な装備というのは逆に襲う理由にもなり得る、油断は出来ない。

 

「…迷彩服を引っ張り出してくるべきだったか?」

 

『それはそれで悪目立ちしそうですが』

 

「だよなぁ、アレはこの星じゃあ高価すぎる」

 

 そうして彼女の背を追い続けた所、またもや雰囲気が変わった。大人が消えたのだ、身の丈に合わない武器を手にした子供ばかりが目に入る。彼らも傭兵を見たことで警戒を強めたようで、引き金に指をかけた。

 

「これ以上は入れんな、無人機はどうだ?」

 

『問題なく追えてますよ、何か話してるみたいですがマイクの性能が悪くて拾えませんね』

 

「調整出来るか?」

 

『もうしてます、繋げますよ』

 

ーーー

ーー

 

 彼女は集まった子供達に分厚い封筒を見せ、使い道について話し合っていた。食糧、医薬品、衣類、その他の生活必需品などなど、彼らが欲しい物は幾らでもあった。

 

「良かった、なんとかなりそう」

 

 安堵の表情を浮かべる彼女は共に働いていた時とは違う口調で、ある程度リラックスしていることが伺える。しかしそんな彼女の背を叩き、わあわあと騒がしく話し合う子供達を尻目に話しかける少年が居た。

 

「姉ちゃん、どうやってこんな量を?」

 

「そりゃあ…あの拾い物で稼いだんだよ、仲間と組んでね」

 

「本当に?」

 

 人型兵器に乗ったばかりの素人が稼げる額ではない、大抵駆け出しは機体の維持費と弾薬費に報酬が消えていくものだ。今回の稼ぎは高額な依頼を短時間で解決した傭兵の手腕によるもので、ここまでの額は本来稼げない水準だ。

 

「取り敢えずこれで当分の生活費にはなるよ、だから…ね?」

 

「…分かった、あんまり聞かないよ」

 

「薬を買えばまだ間に合う子も居る、手分けして買い出しに行こうよ」

 

「うん、みんなを集めるよ」

 

 集まっている子供達はかなりの数だ、見ていた傭兵とミナミも何処からか集まってくる彼らに驚かざるを得なかった。それに誰もが武器を持っている上、中には明らかにサイズが合っていない装備を着込んでいる者すら居た。

 

「…いつまで使って貰えるか分からない、確かに装備を整えないと一人じゃあ稼げないか。でもお金は必要だし、みんなじゃなくて自分に使うのはどうなんだろう」

 

 彼女には彼女なりの葛藤があるらしい、素の彼女というのは思っていたより繊細なのかもしれない。傭兵は彼女が誰かの紐付きでは無かったことに安堵しつつも、その立ち位置故の危うさに目を向けていた。

 

 これから先、中央工廠での傭兵業にて気にかけることが増えたようだ。ミナミは面倒な案件だなと思いつつも、傭兵のために孤児と思わしき彼らについて調べ始めるのだった。




アニメ作って遊んでます、そのうちお披露目出来るかと
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