辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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名前をミスってたので修正しました


第六十〇話 ぶらり市場巡りの旅

「…で、何か言うことはありますか?」

 

『「すみませんでした!」』

 

 ボロボロになった機体が担ぎ込まれて来たのはコンテナ船の格納庫であり、二人を睨むのはメカニックのトバリだ。戦闘続きでそろそろ大規模な解体整備が必要だなと思った矢先、メンテどころでは無くなってしまった。

 

「直すにも腕と足のフレームが折れてます、これじゃあ使い物になる以前の問題ですよ」

 

「…つまり?」

 

「メカニックとして言えば、修理するより新しい機体を買ったほうがよっぽどマシです」

 

 思い出のある機体であることは事実だが、だからと言って割に合わない労力をかけるというのは非効率的だ。それに中央工廠の市場には大量の人型兵器が出回っている、傭兵の稼ぎを考えると調達したほうが早いというのは道理だろう。

 

「やっぱりか、そろそろガタが来る頃じゃあないかとは思ってたんだが…」

 

「フレームは手を入れていたとはいえ、最初から使ってましたから」

 

 傭兵がこの星に来てから初めて乗った機体だが、三度の改造を経て疲労が溜まっていた。流石に乗り換える頃だろう、有り合わせの機体でどうにかしなくても良くなったと考えればいい。

 

「というわけで、同じ機種で三機調達して来て下さい。出来れば予備の部品と、このリストにある武器弾薬も追加で」

 

「分かった、市場に客として行くのは初めてだな」

 

「お土産も期待してますから、今日は何事もなく帰って来て下さいね」

 

「任せろ!」

 

 どうせ何か撃ち合いでもして帰ってくるんじゃあなかろうか、そんな気持ちを胸にトバリは傭兵を見送った。彼女も逞しくなったもので、彼の背中が見えなくなった時にはスクラップと化した機体の解体作業に戻っていた。

 

「…まったく、人騒がせなんですから」

 

「なんだ嬢ちゃん、ノロケか?」

 

「あーはい、そうですそうです!」

 

 不貞腐れた表情を整備士達にいじられつつも、彼女の手が止まることはなかった。

 

ーーー

ーー

 

「というわけでだ、案内頼む」

 

「私も市場全体に詳しいわけじゃないっスけど、それでもいいなら…」

 

「フジカネの買い物もする必要があるしな、今の装備を見るに色々と買わないと不味い」

 

「買ってくれるんスか?」

 

「…まあ仕方ない、いいだろう」

 

 真っ先に立ち寄ったのは露店ではなくしっかりとした店舗を構えた店であり、そこには幾つかの防弾装備が陳列されていた。傭兵から見れば古い型のものばかりだが、火薬式の小銃から身を守れるならば十分と言える。

 

「ナカガワ繊維の設計図を使ってるのか、工廠のプラントは…まあそれなりの精度だな。技師がある程度メンテしてるのか?」

 

「凄い値段しますけど、コレ」

 

「人型兵器と比べりゃ安いだろ、コックピットの中で怪我したくなきゃ着るんだな」

 

「…状態の良さげな第一世代は買える値段だと思うっスけど、まあそう言うなら」

 

 試着した後に購入、着たまま市場を回ることにする。この星の生産設備は作られてからかなりの時間が経っている筈だが、作られた物を見ると存外にも状態は良い。

 

「ふーむ、壁の中が気になる所だな」

 

『生産設備を維持出来る人材は限られていますし、消耗する部品を輸入する必要もあります』

 

 高度な生産技術を保つには様々な手段を講じる必要がある、そうでなくては中央工廠がここまで賑わっている筈がない。海賊が何をしたのかについては謎が多いが、やはり情報が足りないとしか言いようがない。

 

『これだけの規模で完全な資源の循環を行えるわけがありません、やはり輸入のルートは存在するかと』

 

「宇宙船か、巡洋艦クラスまでならやれるが…」

 

『暴れても解決しないのが問題なんですよね』

 

 個人間のレーザー通信で声が漏れないよう話す二人だが、着慣れない防弾装備に身を包むフジカネは歩くのもやっとのようだ。彼女は元々着ていた服を鞄に押し込み、やっとのことで店を出た。

 

「どうだ?」

 

「動き難いッス」

 

「身体に合うよう内部が変形するから心配するな、5分も歩けば気にならなくなる」

 

 防弾装備が高級品である所以は製品自体の高さもそうだが、そのメンテナンスにある。何重もの特殊繊維で構成された装甲部以外にも、長時間の着用を可能にする内部機構、身体の動作で発電する回生装置、更には動作を補助する人工筋肉…

 

 つまり買えても維持出来なくなるのだ、使い続けるためには買った時の何倍もの資金が必要になる。それを知る傭兵はフジカネが着る分に加えもう一着、更に手際よく消耗品を購入リストに書き込んでいた。

 

「メンテはこっちでやってやる、ミナミが出来るからな」

 

『だから二着買ったんです、大事に使って下さいね』

 

 歴戦のアンドロイドはなんでも出来るのだ、傭兵が出来ないことを補う形で彼女は自身を成長させている。

 

「りょ、了解っス」

 

「じゃあ次は銃だな、そのボロい短機関銃は危なっかしいから使うのやめろ」

 

「銃スか、自分あんまり分かんなくて…」

 

「一人前の傭兵コンビになるんだ、格好は相応しくしないとな」

 

 傭兵自身は交易拠点で購入した小銃を使い続けていたが、それはその性能の高さ故だ。時代遅れの火薬式とはいえ設計は当時でも最高峰、職人の腕も合間って動作と精度は快調の一言だ。

 

「小銃を買おう」

 

「アサルトライフル…高級品っスね」

 

「そうなのか?」

 

「いやまあ、最近金銭感覚が狂ってるだけで貧乏だったんで」

 

「そうか、早めに慣れたほうがいいぞ。大金だって使えば無くなるんだ、使い道はキチンと考えないとな」

 

 銃砲店には人間用の武器の他、人型兵器用の火砲も並べられていた。銃なら露天でも取り扱っているが、どうせなら高品質なものが欲しい。生身の時に命を預けられる武器には金を賭けた方がいいに決まっている。

 

「7mm小銃弾を使う銃を見繕って欲しい、予算は…これくらいで」

 

「なるほど、ではご案内しますのでこちらに」

 

「自分、行く感じっスか?」

 

「試し撃ちもある、ミナミの話を聞いて決めてくれ」

 

 ミナミが有する各種診断機能があれば、下手な銃を掴まされるないだろう。傭兵が二人について行かずに見送ったのはある理由があるようで、彼はケースの中に収められた銃を見て回り始めた。

 

「お客様、何かお探しで?」

 

「火薬式じゃない銃があると聞いて来たんだが」

 

 傭兵が視線を向けた方向には、人の背丈程もある巨大な狙撃銃のようなものが置かれていた。

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