辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第六十一話 対物電磁投射狙撃銃

「20mmの専用弾頭を使う電磁加速式の狙撃銃でして、威力は最低出力でも鋼板なら300mmはブチ抜きます」

 

「へぇ、最大出力なら?」

 

「銃身の負荷を度外視するなら…倍は行けますよ」

 

「気に入った!」

 

 そう言って傭兵は現金の入った鞄を店員に見せ、購入する意思があることを伝えた。長らく飾られたままであったその銃はカウンターの上に降ろされたが、あまりの重さに店員も血相を変えていた。

 

「少し触っても?」

 

「大丈夫ですとも、バッテリーと弾は抜いてありますので危険性はありません」

 

 軽量化を考えない耐久性と威力だけを考えた設計、これは歩兵用のレールガンが普及し始めたばかりの時代の代物だろう。しかし運用経験が充分になかったことで、様々な状況に対応するための工夫が凝らされている。

 

「何やら普通じゃないな、このスコープは?」

 

「中央工廠製、ロイド社が設計した複合センサ搭載型です。暗視に赤外線、もちろん光学までバッチリで、弾道予測機能も付いてます」

 

 傭兵は重いはずのそれを軽々と持ち上げ、各部位を確認してはテキパキと脳内で評価していく。店員も相手が素人ではないと確信したようで、真剣な表情で在庫の確認をし始めた。

 

「なるほどね、電磁波対策は?」

 

「元々弱い分銃本体より一つグレードが上です、核融合弾が落ちても動きます」

 

 店員の言うことを鵜呑みにするわけにはいかないが、外見からして物は悪くなさそうだ。ガタつきや歪みも感じられず、砲身の取り外しは少々コツが要るが問題はなさそうだ。

 

「試射したい、射撃場を借りても?」

 

「…ち、地下室ですので、最低出力でお願いします」

 

「すまない」

 

 渡されたバッテリーを肩当てに差し込み、システムが立ち上がるのを待つ。スコープは電力が無くともレンズを通しての狙撃は可能らしく、それを覗き込んだ先で数倍に拡大された的の端には起動中だと分かる文言が表示されている。

 

「マガジンの弾数は?」

 

「20発です、実弾と違い細く出来ますので」

 

「良いね」

 

 こういった電磁加速式兵器の小型化、高性能化の背景にはバッテリーやコンデンサの進化がある。人類が宇宙に出る前と比べて何十倍も大きな電力を素早く出力し、そして素早く貯蓄することが出来るのだ。

 

『何かと思えば…目を離すとコレですね、どんなオモチャ買ったんですか』

 

「協商連合の個人用レールガン、タイプ21の中期仕様だな。中央工廠じゃあこんな代物まで作るらしい」

 

 用意された的に撃ち込んでは照準を補正し、マガジンが空になるまで撃ち続ける。補正が終わった後は殆どピンホールショットと言える状態であり、土嚢から舞う砂埃だけが撃った先で動いていた。

 

『私も見たことはありますけど…』

 

 撃ちながら適当に会話しつつミナミに調べさせたが問題は無し、ソフト面でもハード面でも状態は良好だった。彼女は呆れた顔をしていたが、傭兵は嬉しそうに弾丸を使い切った。

 

『第一世代機を生身で相手するおつもりで?』

 

「コックピットには入らないが…まあ、防弾装備対策かな」

 

 二人のすぐ近くでは店員に教えられて小銃を撃ちまくるフジカネの姿があったが、ミナミが防弾服にインストールさせたらしい射撃支援ソフトのお陰で初心者とは思えない腕前を発揮していた。

 

「フジカネのアレは支援ありきか、下駄を履かせるのが早くねぇか?」

 

『あのタイプは身体で覚えさせた方が早いですよ、弾は買わせたので練習はこの後みっちりやらせます』

 

「ならいいが。すみません、これに追加で注文したいんですがー!」

 

「はい!」

 

「この銃と予備砲身を三つ、バッテリー四つと弾倉が八個、弾は取り敢えず200発で」

 

 メモを携えてやって来た店員は電卓を弾いて出て来た金額に苦笑いしたが、傭兵は依頼で稼いだ金を使い一括で支払った。本来なら大人数で受ける依頼を二機で成功させているため、取り分はかなりの額なのだ。

 

「後は機体だが、荷物が増えたし一度車に戻るか」

 

『色々と買うものはありますからね、まだ回りますよ』

 

「やっぱりお金持ちっスね…」 

 

 この日はコンテナ船で使っている買い出し用のトラックを借りて来ており、三人はトラックへと乗り込んだ。二人乗りなのでミナミは荷台の上だが、彼女は座席よりもこちらの方が好きらしい。

 

「この先か、すぐ近くなのにそのまま入れないんだな」

 

「防犯対策っス、人型兵器で暴れられると洒落にならないんで」

 

 人型兵器は他とは区画が隔たれており、盗難を防ぐためか壁すらある。治安維持隊に所属している青い塗装の機体も立っており、警備は厳重らしい。検問を通るために組合の身分証明書を用意し、トラックを止めた。

 

「身分証明書はお持ちですか?」

 

「二名とアンドロイド一機です」

 

「銃火器の持ち込みは制限されていますので、申し訳ありませんが置いていって頂くことになります」

 

 ヘルメットを外して素顔を見せ、本人確認を済ませる。そして当日限りの立入許可証を手渡され、トラックも写真を撮られた。

 

『アンドロイドも持ち込み禁止みたいですね』

 

「すまん、見張り頼んだぞ」

 

『了解です、お高い防犯装置に成り下がっちゃいましたねぇ…』

 

 車とミナミを置いて、傭兵とフジカネは格納庫ばかりが立ち並ぶ区画へと足を踏み入れる。パイルドライバーからの入金手続きは既に終わっており、購入出来る機体としては第二世代機も視野に入るだろう。

 

「さあ行くぞ、良さげな機体を探すとしよう!」

 

「乗ってた機体がジャンク品同然に見えるっス」

 

 交易拠点とは規模も品揃えも違う、傭兵は何を買うかと周囲を見渡しながら顎に手を当てた。

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