辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第六十八話 協力と内通と

 傭兵とその仲間達は新たな協力者を迎え、次の作戦を練っていた。今回の目玉は陸上艦から回収した物品を中央工廠へと売り付けること、これには大きな注目が集まる筈だ。

 

「中央工廠は都市の中央にあり、高い壁に囲まれている。ここ最近で調べた限りでは、搬入される資材の量と搬出される製品の量からして、地下に巨大な製造ラインがあると思われる…か」

 

『私が書いた報告書ですか、何か気になる箇所でも?』

 

「いや、面倒なことになるだろうと思ってな」

 

 傭兵は今回の作戦を実行する前準備として、レジスタンスと接触する役割を与えられた。隊長は回収品の売却交渉、レンヤと鉄屑兄弟は船の護衛を担当している。

 

「地下に入り込んで情報を引っこ抜くとしても、工作機械の動作ログから得られる情報なんてたかが知れてる。狙うとしたらデータベースだが、何処にあるか分からん」

 

『地下の構造に関してはほぼ全てが不明です。孤児達が使っていた地下通路が下に通じているとは聞きましたが、使えるかどうかはまだ分かりませんね』

 

「難しいところだな…予定の時間まであと何分だ?」

 

『5分ほどです』

 

 傭兵とミナミは売れ残っていた人型兵器、二四型「秋月」に乗り込んでいた。そして中央工廠からは少し離れた場所で、随伴機である多脚戦車と共に何かを待っている。

 

『周囲に機影無し、コソコソとカメラを向けている奴も居ないかと』

 

「前回の不意打ちはお前のせいじゃねぇよ、有り合わせのセンサが悪いんだ」

 

『言い訳はしませんし、慰めもいりませんよ』

 

 支援用のアンドロイドにも矜持というものがある、傭兵は肩をすくめた。何故ここで時間を潰しているのかといえば、件のレジスタンスと接触するためだ。

 

「傭兵さん、通信機に連絡が」

 

「繋げられるか?」

 

 通信機を手にこちらへ連絡を寄越したのは、多脚戦車に乗るナナだ。船の医療設備で処置を受けた後、傭兵と共にレジスタンスとの接触を図っている。

 

「口頭で伝えろと言われています」

 

「そうかい、なんて言ってるのか気になるな」

 

「ええと、このまま待機しろと」

 

 近くには来ているのだろうかと傭兵は考えたが、機体の対空レーダーが警報を鳴らしたことで遮られた。背中に搭載された機関砲塔が上部に展開され、何かを狙い始めた。

 

「無人航空機です、小型の…ドローンですね」

 

「なるほど、姿は見せない気か」

 

 コックピットの二人は撃ち落としてやろうかと引き金に指をかけたが、無線通信が飛んできた。ドローンはあくまで中継機でしかないらしい、無線の主人が何処にいるのかだが、探し当てるのは難しそうだ。

 

「ああ…すみません、撃ち落とさないでくれると助かるんですがねぇ」

 

「レジスタンスは機材の数に余裕が無いのか?」

 

「そんなところですよ」

 

 レジスタンスは姿を見せる気がないらしく、回りくどい手を好むようだ。ミナミは周囲をあらゆるセンサーで調べていたが、機体の背中側に動く物体を捉えた。

 

『光学迷彩、周囲の色と同化する生物の擬態模倣型ですね。各種電磁波の反射率はかなりの低さですが、完璧ではありません』

 

「敵の装備は?」

 

『不明ですが、恐らく狙撃仕様かと』

 

 少し距離があるため避けられないわけではないが、有効な反撃出来る手段が少ない。手に持つ40mm機関砲は中間距離用のセットアップで狙撃には向かず、背中のタレットは射程不足だ。

 

「…このまま話を続けるか、無線に再度接続」

 

『分かりました』

 

 敵機は動かずにこちらを狙い続けている、センサー類が警告を鳴らさないのを考えると完全に光学でのみ照準しているのだろうか。

 

「話の続きをしても?」

 

「勿論ですとも、ええ」

 

「こっちは成り行きでここまで来ていてな、この子の通信機に従っているだけだ。人質だの金だのは抜きで、できれば穏当に終わりたい」

 

「…あくまで善意の協力者と、なるほど」

 

 擬態を続けるスナイパーは動かない、ここからどう話を広げるかが腕の見せ所だ。傭兵自身と仲間全員の生命を保護しつつ、出来る限りの情報を集め、とある目的を達成しなければならない。

 

「周囲には貴方以外の機体を発見出来ませんでしたし、通信を受信はしても発信はしていない」

 

「合格か?」

 

「及第点ですよ。貴方も何に接触しようとしているかは、理解しているのでしょう?」

 

「まあな、そうなると悪意の協力者になるか?」

 

「知っているのならそうなりますね、少しは話の分かる人のようで」

 

 善意と悪意は道徳的な意味合い以外に、知っているか否かという使い方がある。法律上では後者として使われるが、傭兵は交渉相手を利用する気で話しているため、二つの悪意を持っていると言えるだろうか。

 

「単刀直入に聞こう、レジスタンスは彼女達を何に使う気だ?」

 

「統治機構から保護するだけです、我々が与える仕事はして貰いますが」

 

「あっさり言うんだな」

 

「こちらも戦わなければ食い扶持を稼げませんので」

 

 この星で使われている脳波制御技術が何世代も前のものというのは少々不可思議だが、彼女達がパイロットとして有用であることは確かだ。

 

「抵抗があるのであればこちらへの保護を断っても構いません、貴方はかなり腕の立つ傭兵とお聞きしていますしね」

 

「流石の情報収集能力だな」

 

「お噂はかねがね。交易拠点でゲリラを迎え撃ち、中央工廠ではパイルドライバーに打ち勝ったと言われれば興味を持つのは当たり前ですよ」

 

「お褒め頂き光栄だね」

 

 相手も腹を探るつもりらしい、傭兵からすれば良い流れだ。敵に情報というカードを切らせつつ、こちらも適度に手札を見せる。

 

「ゲリラについてはどこまで?」

 

「…ああ、統治機構の差し金だった」

 

「それでしたら話が早い、統治機構と敵対する覚悟はお有りで?」

 

「付け狙われ始めたんでな、遅かれ早かれだ」

 

「であれば、場所を変えてお話するべきですね」

 

 機体が振動を検知したかと思えば、何処からともなく巨大なトレーラーが現れた。人型兵器の輸送が可能なタイプで、それに乗り込めということだろう。

 

「現時点で貴方が信用出来るとは思いませんが、協力者としては非常に魅力的です。お互いに利用し合うというのが最適では?」

 

「そうだな、同意するよ」

 

 傭兵は警戒を緩めずにトレーラーの荷台に向かったが、乗る前に立ち止まった。そして武器を持たない左腕を真っ直ぐ伸ばし、握り拳から人差し指と親指を伸ばした。

 

「最後にひとつ、狙うならもっと擬態を頑張りな」

 

「…参りましたね」

 

 レジスタンスとの交渉は始まったばかりだ。

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