辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第六十九話 利用と協力と

「…無人機のAIユニット、まさかそんなものを鹵獲しているとは」

 

「詳細は不明だがな」

 

 傭兵はトレーラーに乗り、砂煙の中で突如現れた地下通路へと案内された。どのような意図で整備された施設なのかは分からないが、そこで機体に乗ったまま情報交換を行っていた。

 

 レジスタンスが興味を惹かれたのはやはり無人機のAIと思わしき代物で、その話が出た途端に目の色を変えた。反抗勢力からすれば現状の戦力差をひっくり返せるかもしれないのだ、興味を持つのも当然だろうか。

 

「こっちが欲しいのは中央工廠が地下で何をしているか、それについての情報だ」

 

「統治機構の内情に踏み込む気ですか」

 

「覗き見をするだけさ、だからアンタらが何をしようとこっちは手を出さない」

 

「その際の混乱に乗じさせてもらう、と」

 

「そうなるな」

 

 傭兵が交渉の場で戦えているのは、ミナミが用意した映像のおかげである。二人が話すテーブルの上にはゲリラの陸上艦と交戦した際の記録映像が流されており、無人機が映る場面だけを切り取って編集されていた。

 

「…分かりました、そのお話に応じるとしましょう。ですが我々の作戦決行日時を詳しく教えることは出来ません」

 

「それはこっちの行動で幾らでも左右されるだろう、問題ない」

 

「強気ですねぇ、たった数機の人型兵器で何が出来るとは思いませんが」

 

「市街戦じゃあ質が大事なんでね」

 

 レジスタンスはAIユニットの強奪計画を練るだろう、彼らとしてもこれが中央工廠に持ち込まれるのは避ける他ない。それならばコンテナ船から奪えば良いとも考えられるが、既に貨物は艦長達が別の場所へと移送済みだ。

 

「雑多な鹵獲品は既に売却済みだが、重要そうな代物はオークションに出す。既に手続きは終わっているんでな、奪うならそこだ」

 

「…なるほど」

 

「こっちとしてはアンタらが奪ってくれた方が助かる、頑張ってくれよ」

 

 無人機のことをレジスタンスが何処まで知っていたのかは不明だが、映像を食い入るように見るスナイパーの態度からは少々察することが出来る。この星では最高クラスの隠密性能を持つ機体がどうして必要になったのかと考えると、仮想敵があの異常な回避能力を持つ無人機かもしれない。

 

「最後に一つ聞きたいんだが、良いか?」

 

「答えられる範囲であれば」

 

「地下から脱走した彼女達についてだな」

 

 レジスタンスとの連絡手段を持っていた辺り、地下にまでスパイを潜り込ませているのだろうか。しかし脱出と同時に特務部隊が動き出し、区画一つが封鎖されるという事態へと発展した。

 

「貴方達が回収しましたか、こちらに引き渡してくれれば多少の謝礼はしますよ?」

 

「どう使う気なのかは気になるが、もう身内になったんで無理だ」

 

「…随分とお優しいようで」

 

「あの区画封鎖は早過ぎた、アンタらの情報が漏れてるんじゃあないか?」

 

「それに関しては貴方が気にすることではありませんよ」

 

 傭兵が相手に質問する瞬間、ミナミはセンサーを総動員してスナイパーのことを見ていた。呼吸、脈拍、表情、視線など様々な要素を調べ、彼女は少し動揺しているという結論を導き出した。つまりはそう言うことだろう、一筋縄では行かなさそうだ。

 

ーーー

ーー

 

 砂嵐に紛れて中央工廠へと帰還した傭兵達は、オークションの準備を進める仲間達と合流していた。殆どの人間が動き回っているが、傷に不安が残るナナ達人造人間組はコンテナ船内で休養だ。

 

「慌ただしいな…」

 

『オークションが何事も無く終わるとは誰も考えていませんからね、当然かと』

 

 格納庫で整備を受ける人型兵器は六機、大所帯になったものだ。内訳としてはレンヤのアイギス、屑鉄長男のタンブルウィード、傭兵とフジカネが乗る秋月が予備機含めて三機、となっている。

 

「傭兵殿か!」

 

「カザマキじゃないか、どうした」

 

「どうしたもこうしたもないさ、話が幾つもあるぞ」

 

 彼女は各方面との調整に出向いていたらしく、見慣れないスーツ姿で現れた。手に持つタブレット以外にも大量の書類を抱えており、見るからに激務だ。

 

「先に会議室で待っている。トバリ殿も話があると言っていたので、先にそちらを聞いてきてくれ」

 

「分かった、こっちの報告もそこで」

 

 カザマキ嬢と離れた傭兵は格納庫内を歩き回り、酷使される機体の面倒を見ている整備士トバリを探した。予備機として搬入された秋月は機体各所に設けられたハッチが開けられており、正に準備中といった有様だ、

 

「色々と弄ってるみたいだな」

 

『アイギスはまた装備を追加するようです、拠点防衛仕様とでも言ったところでしょうか』

 

 慣性制御装置を取り付けるために背中へと張り出したフレームは剛性が高く、装備を追加するには打って付けらしい。陸上艦に乗り込んだ時はベルトで弾倉ポーチをどうにかくくり付けただけだったが、あの時とは何もかも違う。

 

「トバリー、こりゃまた凄い機体を用意してるみたいだな」

 

「傭兵さん!」

 

「今帰ったとこだ、機体は格納庫に戻してある」

 

「後で見ておきますね。秋月の予備部品はまだ余裕がありますし、万全な状態にして…」

 

 彼女の作業服には汚れが目立つが、内部構造が剥き出しになったアイギスを見るに奥にまで手を入れているのだろう。慣性制御装置の整備に関しては誰も経験がない、見よう見まねでどうにかしているようだ。

 

「アイギスはコンテナ船の防衛を担当するので、使える装備を掻き集めました。火力も中々ですが、防御力も上がってますよ!」

 

「なんだ、もう戦力の配置は決まってるのか」

 

「ええ、厄介なことが分かりましたので…」

 

 そう言って彼女は腕を組み、アイギスに取り付けられようとしている筒を束ねたコンテナを見た。外部に書かれた文字からは、対空ミサイルであることが推察出来る。

 

「航空戦力が来るのか」

 

「ドローンやヘリ程度なら機関砲で叩けますが、戦闘機がある可能性が出て来ました」

 

「これほどの基地だ、無い方がおかしいと考えるべきか」

 

 予想以上の重武装に身を包む人型兵器を見つつ、開催が迫るオークション当日がどのような有様になるのか、傭兵は嫌な予感を胸に覚悟を決めた。




アイギスの設定画は準備中です
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