辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第七十話 懸念と作戦と

「来たか、レジスタンスの反応はどうだった?」

 

「興味はあるみたいだな、行動に出てくれりゃ良いんだが」

 

「レジスタンスが来なければ小規模な侵入に留めるだけだ、計画に変更はない」

 

 会議室へと入った傭兵を出迎えたのは、カザマキ同様スーツ姿の隊長だった。交渉と情報収集を同時に行っていたらしい、相変わらず働き者だ。

 

「さてと、どの順番で報告するかだが…」

 

「まずは前提条件となるオークションについて、この私が説明しよう!」

 

 傭兵の問いに対して自信満々に手を挙げたカザマキに、隊長はどうぞと言わんばかりに頷いた。それを見た彼女は個人用の端末を机型のディスプレイに繋ぎ、集めて来た情報を表示した。

 

「オークションの開催場所は巨大な市場のど真ん中、当日は非常に多くの人が集まることになるだろう。しかし盗難や妨害防止のため、運ばれてくる競売品とオークション参加者の間には100mもの間隔が設けられる」

 

「まるでスポーツか何かの会場みたいだな」

 

「人型兵器も間に入って護衛を務める、火器こそ持たないがな」

 

 表示された地図を縮小し、会場の周囲に視点を移す。ドローンの侵入を警戒してか、複数の対空レーダーと機関砲が用意されているのが分かる。当日は治安維持隊も配置されるらしく、生半可な戦力では競売品の奪取など不可能だ。

 

「競売品は会場直下の格納庫から、エレベーターを通じて移送される。だがそこまで深い場所にあるわけではなく、会場付近にある別の場所から侵入は可能だ」

 

「別の場所…空撮じゃあハッチがあることしか分からないな」

 

「恐らくは搬入口だ、会場のエレベーターは小さく一度に運べる数が限られているからな」

 

 前日までにこのハッチを通じて競売品は運び込まれ、会場直下の格納庫に安置されるのだろう。レジスタンスが攻撃するならここが目標かと考え、傭兵は顎に手を当てた。

 

「なるほど、よく調べたな」

 

「重量制限周りを聞くついでにな、褒めても良いぞ?」

 

 自慢げな彼女だったが、情報に穴があるのには気がついているようだ。当日の治安維持隊の配置は分からず、対空火器や自律砲台も屋根に遮られていれば見ることはできない。

 

「ドローンの空撮と分析には限界があった、そこで隊長の出番だ」

 

「彼女に代わって私が説明しよう」

 

 隊長は部下達と共に、会場の周辺を探っていたようだ。場合によっては作業員に扮しての潜入も行ったらしい、かなり危ない橋を渡ったようだが全員が無事に帰還しているのは流石と言ったところか。

 

「外側に向けられた複数の機関砲銃座が確認出来た、20mm機関砲が12門、40mmが6門もある。更に地対空ミサイル、対戦車ミサイルも配備されている」

 

 歩兵達の間では費用対効果の悪さからミサイルの類は嫌われる。何故なら人型兵器の跳躍により避けられやすく、ミサイル側の機動性を高めると炸薬量が減り、更にはコックピットに直撃させなければ一撃で撃破できないからだ。

 

 人型兵器の四肢というのは非常に邪魔で、どれか一つを吹っ飛ばしても反撃が来る可能性が高い。対戦車戦と同様に複数の発射機による同時攻撃が望ましいが、安価で大量に投入される陸戦兵器である人型兵器に対しては、あまりに費用対効果が悪い。

 

「会場はハリネズミだな」

 

「レジスタンスもすんなりとは盗めまい。ここからは憶測になるが、砲台はまだあるだろうな」

 

「根拠は?」

 

「構造に違和感があったので潜り込んでみたが、大口径弾の給弾機構を見つけた。最低でも四箇所に速射砲があるぞ」

 

「…会場ですらこの有様ってことは、もしかすると隠れてる武装は思ったより多いのか」

 

「だろうな、中央工廠の地下は砲台と地雷で埋め尽くされていても不思議ではない」

 

 レジスタンスにとってはなかなか難しい仕事になりそうだが、その隙を突こうとしている傭兵達もまた厳しい状況である。壁に囲まれた中央工廠の生産設備とその地下、調べたい対象についての情報は全く手に入らなかったのだ。

 

「交渉したレジスタンスの件だが、興味は引けた」

 

「奴らが動くのなら我々もそれに乗じることができるが、結局は出たとこ勝負だ。連れてきた部下全員分の人型があるなら、このような博打には頼らんのだが…」

 

「それに関してだが、水先案内人が用意できそうだ」

 

「本当か!?」

 

「ナナだよ。彼女達は中央工廠の地下から脱出して来たんだ、協力してくれるとさ」

 

 とはいっても地下の空間全てを把握しているわけではないが、彼女がボディカメラで撮影した範囲でもかなりのことが分かった。特に地下から地上には巨大な縦穴が存在しており、上手く使うことが出来れば一気に最深部近くにまで到達できる。

 

「この縦穴、便宜上メインシャフトとでも呼ぶか。コイツには複数の横穴がつながっていて、複数の区画にアクセスできる可能性がある」

 

「だが貴様の秋水では上下の移動は難しいだろう、エレベーターを使えるかどうかも運次第だ」

 

「降下にはトバリカスタムから取り外したロケットモーターを使う、着地するときの減速は出来る筈だ。上昇は…うん、考え中だ」

 

「片道切符で行くつもりなら止めさせてもらうぞ、特にカザマキ嬢が許さんだろうが」

 

「そうだぞ傭兵殿!」

 

 考えがないわけではなかったが、確実性に欠けるものであることは確かだった。中央工廠の戦力が動き出せば、傭兵達程度物量の差で簡単に潰される。だからこそレジスタンスを利用するのだが、問題は彼らが行う奇襲の効果がどれだけ持つかだ。

 

「まだ少しばかり時間はある、落ち着いて作戦を立てるとしよう」

 

ーーー

ーー

 

 地下の情報が乏しく、夜まで続いた作戦会議に大きな進展はなかった。仕方ないと気分を切り替え、傭兵は拠点であるコンテナ船のクレーンから街を見渡している。乱雑に建物が集まっただけ、ゴミ箱をひっくり返したかのような景観が笑えて来る。夜景は存外にも綺麗であり、眠らない街とでも称したくなるほどに明るい。

 

「ロケットモーターの取付、終わりましたよ」

 

「ありがとう、これで降下は出来るようになったな」

 

 階段を登って来たのは自分の仕事を終えたトバリであり、工具一式を外して作業服もはだけさせていた。格納庫での作業は暑かったらしく、片手には大きな飲料ボトルが握られている。

 

「登ってくる手段がないなら飛び降りるのは無しですよ」

 

「メインシャフトに昇降機はあるはずだがなあ」

 

「秋水では駄目です、いい子ですけど性能が足りません。カンナギを使いませんか、追加装備も全て積んでありますよね」

 

「統治機構のお膝元で使えば隠し切れない、海賊は目の色を変えて来るぞ」

 

 今まで運よくカンナギの存在が露見しなかったのは、運が良かったからだ。鹵獲機であるアイギスが目立ったこと、陸上艦の指揮官クラスをまとめて吹き飛ばしたか捕虜にしたこと、単純に使った時間が短かったこと。色々あるが、どれも一つ違えば相手に見られている可能性はあった。

 

「それでもです。貴方が死んだらあの船はどうするんですか、私が直すんですから受け取ってくれないと困ります」

 

「…そうだがなぁ」

 

「今まで以上に目を付けられるリスクはありますけど、現状では貴方を失うことのほうが私たちにとってもんだいです。隊長を説得する必要があるなら私も!」

 

 既に傭兵の宇宙船は交易拠点のドックに入港させてしまっている、いつかは統治機構にも知られてしまうだろう。遅かれ早かれだ、作戦を成功させるためには秋水よりもカンナギを使う方が余程良い。

 

「分かった、乗ろう」

 

 カンナギの演算処理能力に頼っているコンテナ船の重力制御機関は止める必要がある、大仕事になるだろう。

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