辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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強襲

 所属が不明だった宇宙船の動向を監視していた傭兵達だったが、中央工廠はサイレンを鳴らして迎撃体制に移行し始めた。これが意味することは一つ、あの船は統治機構側の存在ではないようだ。

 

「迎撃するということは…こちらHQ、所属不明船はレジスタンスと判断する」

 

「派手におっ始める気だぞ、地下から航空機が出る!」

 

「…なんだこの数は」

 

 地下から地上へと繋がる半分ほど埋没した滑走路によって、大量の航空機が空へと放たれる。六基ほどカタパルトがあるらしく、レーダーはあっという間に光点で埋まった。

 

「敵機の情報は?」

 

『N-08の大気圏内仕様、電熱ジェットと巡航用のプロペラを切り替えられるタイプです。武装は対地攻撃用のロケットやミサイルですが、対艦用の大型ミサイルも抱えてますね』

 

 傭兵の問いに対し、司令部のミナミコピーが偵察機からの情報を元にそう話す。型番やスペックを見るに少々古いが、それでも装備している兵器の火力は確かだ。

 

「頭を抑えるには最高の機体だな、この星じゃあ鴨撃ちも良いとこだろうよ」

 

『防衛軍が持つ対開拓民用の戦力でしょうね、コピーからの分析は以上です』

 

 航空機達は宇宙船へと殺到するが、地平線の先から放たれた光が一瞬にして数機を撃墜する。掃海艇が相手にするのはジェット機よりも遥かに高速なデブリだ、この程度の対空戦闘はお手のもの、ということだろう。

 

 カタパルトの冷却が終わったのか、航空機の第二陣が飛び立ち始める。彼らは最初こそ上空に陣取っていたが、迎撃を受け急激に高度を下げていた。

 

「総員衝撃に備えろ。船から複数の飛翔体が発射された、到着まであと1分も無い!」

 

「畜生、宇宙でぶっ放すようなものを地上で簡単に撃ちやがって!」

 

 格納庫の人型兵器達は各々近くにあった柱を掴み、姿勢を低くした。上空では中央工廠から放たれた迎撃ミサイルが飛び立つが、飛来した全てを撃ち落とすことは叶わない。対空砲が最後の悪あがきを行うも、それは遂に着弾した。

 

「…こちらHQ。飛翔体は中央工廠の外周、市街地に着弾した」

 

「お構い無しだな、これは」

 

「焚き付けてレジスタンスを呼び寄せたのは我々だ、目を逸らすことは出来ない」

 

 レジスタンスの掃海艇は速度を緩めることなく、中央工廠へと向かって来ている。あのレーザーで撃たれれば、強固な装甲などないコンテナ船は一瞬で吹き飛ぶことだろう。

 

 遂に目視出来るようになった船から放たれた光は、市街地に新たな大通りを作ってしまった。建物は一瞬にして限界を止めないほどに破壊され、その熱量により家屋から発火が相次いだ。

 

「掃海艇から人型兵器が出た。奴らの突入部隊とカンナギが鉢合わせるのは避けたい、全機出撃せよ!」

 

『スモークの展開と同時にハッチを開きます、ご武運を』

 

 煙が立ち込める中、カンナギが船外へと出る。そして少し距離を取った後、段々と走る速度を上げながらメインシャフトへと向かう。

 

「船と距離が十分に離れたらECMを使う、全開で行くぞ」

 

『カンナギは兎も角、周りで何がどう壊れるか分かりませんよ!』

 

「知ったことか、やるぞ!」

 

 掃海艇から放たれたレーザーによって出来た街の傷跡を使い、建物の合間を通り抜けるようにして飛ぶ。脚部の推進器と慣性制御装置を用いて、傭兵は衝突という可能性をまるで無いかのように機体を操った。

 

『ECM起動します』

 

「…こんな機動なのに、身体が殆ど揺れない?」

 

「センサの保護問題なし。揺れないのは、コイツが良い機体だからかな!」

 

 カンナギが進路上に現れた防衛隊と思わしき機体を蹴り飛ばし、確実にコックピットを潰す。目撃者は出来るだけ消すのが今回の方針だ、無論出来る範囲でだが。

 

 中央工廠まであと少しというところで、目の前に無人航空機が墜落した。彼が何かと思って空を見ると、機体周囲の航空機がフラフラと統率なく、かろうじて飛んでいる。

 

『上空の敵機にまで影響が出てますね、電子戦装備でもないのにこれですか』

 

「やっぱり強力過ぎるな」

 

 中央工廠の中心部を囲う壁を飛び越え、メインシャフトの入り口を閉ざす巨大なハッチに狙いを定める。本来なら即座に対応する筈の防衛設備もカンナギの妨害に晒され、あらぬ方向へ機関砲を乱射している。

 

「モード拡散、大穴開けるぞ」

 

『照準、出力調整良し』

 

 ビームは細く収束し切らずに放たれ、ハッチに大穴を開けた。そしてその穴に機体を通し、そのまま加速しながら更に下へと降下する。速度を緩めるのは最後で良い、傭兵はそう考えながらサブアームが持つ盾を前に構えた。

 

『壁面に動体検知、迎撃設備です』

 

「ECM下でも動く、というより単純な構造なだけか」

 

 油圧ピストンによって、メインシャフトの壁面から四角いコンテナが飛び出す。そして一基につき数十発のロケット弾が放たれ、空中で炸裂する。

 

「弾頭のセンサはレーザーか、赤外線か!?」

 

『全妨害手段効果なし、ローテクですよ』

 

「時限信管か!」

 

 慣性制御装置によってばら撒かれた破片は機体に直撃することはなく、どれもが盾に弾かれていく。ロケットを放つ砲台は周囲に対してお構い無しに攻撃を続け、その爆発は自分よりも上にある設備や同型の砲台を根こそぎ破壊する。

 

「メインシャフトの迎撃設備、あるとは分かっていたが」

 

『アイギスでも行けるかどうか、秋水ではバラバラでしたね』

 

「トバリと局長代理に感謝だな!」

 

 やられてばかりではない、傭兵は盾の間に隙間を開け、機体頭部に装備された機関砲を放った。目標は展開途中のコンテナ砲台群だが、口径に見合わない火力を発揮した機関砲弾により次々と破壊されていく。

 

『…ポイント通過、減速を』

 

「着いたか」

 

 そこには数機の人型兵器がおり、手に持つ銃で果敢にカンナギを撃っていた。しかしその全ては有効打にならず、出力を絞って放たれたビーム砲によって瞬く間に爆散する。

 

 脚部の推進器が唸りを上げて逆噴射をかけると、機体の速度はみるみるうちに下がっていく。撃破したばかりの人型兵器の残骸を吹き飛ばしながら、傭兵達は遂にメインシャフトの最奥へと降り立ったのだ。

 

「こちらカンナギ、降下に成功した。後は上手くいくことを願ってくれ、以上だ」

 

「こちらHQ、無事の帰還を祈る」

 

 隊長からの短い返答を聞き、傭兵は彼らしいと思いながら周囲を見渡した。数個のハッチがあるが、どれがメインフレームに繋がるものかを調べる必要がある。しかし真上から響く異音に対し、ミナミが指示をとばす。

 

『早急にこの場を離れましょう、砲台の残骸が降り注ぎます』

 

「…そりゃ不味いな!」

 

 地図と照らし合わせ、目標のある方向へ続くハッチを蹴破る。その裏で待ち構えていた敵機はECMで機能を狂わされ、手に持った火器は壁を撃つ。

 

「悪いね」

 

 カンナギはハッチを破壊した勢いのままに突撃し、機体をぶつけに行く。うろたえる人型兵器はその衝撃によって転ばされた挙句、傭兵の容赦のない一撃でコックピットを踏み潰された。

 

『この奥ですね、急ぎましょうか』

 

「だな、地上は大変なことになってそうだ」

 

 トップが獅子身中の虫と化した治安維持隊、町を焼きながら迫るレジスタンス、そして激化する状況に冷や汗を流す傭兵達。多くの勢力が一斉に動き出し、中央工廠の防衛隊司令部は大混乱に陥っていた。破壊し尽くした筈の宇宙船が現れたこともあるが、この星において最も重要な施設である工廠の地下への侵入を許したからだ。

 

 この戦いは既に誰かが制御できる範疇を超えていた。どの勢力も今手を引いても意味がない、引く意味もない。傭兵達がこの状況で生き残るためには、早急に目標を達成し、この場から脱出するしかない。

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