辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第八話 調達

三人はどうにかOSを書き換え、何度か倉庫内で歩行試験を行っていた。しかし動きはぎこちなく、パイロットである傭兵はハッチを開けて見ていたトバリに話しかけた。

 

「…これさ、姿勢制御系のセンサ死んでね?」

 

「嘘でしょッ!?」

 

『死んでますね、応答が有りません』

 

どうにかバランサーから得た情報を元にミナミが無理矢理直立させているそうだが、関節部のセンサが死んでいては自分が今どのような姿勢なのかを知ることが出来ない。

 

「ここは平らだからギリギリ歩けるが、不整地は無理だな」

 

『五感を使わずに歩けと言われているようなものです』

 

「おかしいですよ、前のテストでは動いたのに…」

 

「なら歩行の衝撃で死んだんじゃねぇの?」

 

傭兵は機体を座らせ、三人は今後のために会議を行う。倉庫で使われていたらしい黒板を持って来たトバリは、チョークで議題を書き始めた。

 

「機体はこれから分解整備、関節部のセンサは新しいものと取り替える必要があります」

 

「どこで新品を調達するんだ?」

 

「…今回の大会で需要が増す人型兵器のパーツ類は値段が高騰しています、到底手に入れられません」

 

つまり何処からか自力で調達する必要があるが、この星でそんな部品を仕入れられる場所があるとは思えない。

 

「この倉庫に置いてあるのは今までの大会で所有者が死んで、更に価値もなくなるほど破壊された人型兵器です」

 

「ゴミ置き場にされてるじゃねぇか、お前ん家」

 

「それはいいんです!…兎に角、このスクラップから使える部品を探します」

 

そうはいっても機体は漁られた後のように思える。傭兵がライトを片手に何機か覗き込んでみれば、どれも操縦席が丸ごと抜き取られていた。恐らく機体を回収した人間がここに置きにくる間に抜ける物は抜いて来ているのだろう。

 

「…本当に大丈夫かよ」

 

「や、やるしかないんです!」

 

ピカピカだったのは外見だけかと溜め息を吐きながら、彼は立ち上がった。多脚車両に積んできた装備を端末で確認しながら、偵察機の飛行ルートを街の上空から周囲へと切り替える。

 

「トバリはここを頼む、俺は宝探しにでも行ってくるよ」

 

「えっ…」

 

「ここにある機体より、外に放置されてる機体の方が望みがあるだろ。保管状態は悪いだろうが、部品はある筈だ」

 

元々作業用として設計されていた第一世代機は内部に異物が入り込み難い構造になっている。その分関節の柔軟性は大きく損なわれているのだが、今回のような状況では望みを託すに足るだろう。

 

「ほ、本当に帰って来ますよね!見捨てたら許しませんよ!」

 

「俺らは一蓮托生だろうが、通信機置いてくぞ」

 

『30分毎に定期連絡を行いますので』

 

彼らは手際よく準備を済ませ、使っても良いと言われた工具を車両に積み込んで居なくなってしまった。完全に置いて行かれた彼女だったが、自分の仕事をするために残骸へと歩き始めた。

 

「…どうやって放置されてる機体を見つける気なんだろ」

 

ーーー

ーー

 

倉庫から出た傭兵とミナミは街を少し見て回りつつ、偵察機がそれらしい物体を見つけるのを待つつもりで居た。大会の開催が二週間後に迫るということもあってか、歩いているだけでもあちこちで人型兵器が目に入る。

 

「お祭り気分って訳か、海賊の奴らは存外にも上手く人間を転がせるらしいな」

 

『この星で大金を手にする方法がこれくらいしか無い、ということなのかもしれませんが』

 

「どうだかねぇ」

 

これだけ技術が進んでも貨幣という物は残る物で、特に各勢力が開拓を進める勢力地の外縁では多用されている。電子上で管理した方が余程楽なのは確かだが、技術レベル相応の使い易さというものもあるらしい。

 

「さて、機体のセンサ以外にも必要な物が有るんだが知ってるか?」

 

『武器ですか?』

 

「正解、あのハンドガン一丁ってのは正直キツい」

 

格闘戦用の武器でもいい、何か手数を増やすための装備が居るのだ。それにあの後確認したところ弾薬はマガジン二つ分しか無いとのことで、複数の敵機に囲まれれば一瞬で弾切れだ。

 

「出来るなら色々と調達したい、協商連合の紙幣が流通してるなら俺の手持ちも使えるかと思ったが…」

 

『市場は大賑わいですね、ここまで多くの人間が集まるとは』

 

「俺もそう思った、これは完全に出遅れてるな」

 

開催は二週間後、つまり他のチームは最終調整にでも入っているだろう。しかしこちらは機体の部品不足で動けない、残された時間で完全な状態にまで仕上げるのは難しい。

 

「つまりなんだ、俺達は戦う前から負けそうって話だな」

 

『由々しき事態です』

 

「ホントだよ」

 

しかしここまで人間が集まればトラブルも起こるもので、何処からか銃声が聞こえてきた。こういうこともあるのかと思っていたが、ヘルメットのセンサによれば案外距離は近いらしい。

 

「そこらの路地でやってるのか、まあ物騒な」

 

そう思って距離を取ろうと別の方向に向かったが、向かった先でも銃声がする。

 

『町中で銃声が観測出来ます、安全な場所はもはや無いかと』

 

「何が起こってんだよ」

 

鳴り響く銃声に驚いているのは彼らだけではなく、町の住民も悲鳴をあげている。つまりこれは日常茶飯事などではなく、立派な異常事態ということだ。

 

「UAVを呼び戻して上から状況を見る、今は巻き込まれんよう逃げ…」

 

路地から出てきた貧相な格好をした男は手に持った銃をこちらに発砲、傭兵は少し身を捩ったものの銃弾を身に受ける。それを見たミナミは持たされていたリボルバー拳銃を抜き、躊躇なく引き金を引いて応戦した。

 

『命中、無事ですか?』

 

「また肩に当たりやがった、効くワケないから安心しろ」

 

体中に装備されていた装甲を取り外したとしてもそれは対レールガン用のものなので、装甲服が元々持っている防弾能力は衰えない。時代遅れの火薬式火器など、余程の大口径でなければ喰らっても死なないだろう。

 

「さて、と」

 

『どうされますか、マスター』

 

傭兵は散弾銃で撃たれたことで一瞬にして穴だらけになったコートを捨て、腰に吊るしていたホルスターから武器を引き抜いた、

 

「降りかかる火の粉は払うってことで、暴れてる奴らにはご退場願おうか」

 

 

【挿絵表示】

 

 

取り出したるは持ち込んでいたレバーアクションライフル、人類が宇宙に進出することすらままならなかった時代の骨董品だ。しかしこの惑星でも満足に動く程度の信頼性はある、防弾チョッキも着ていない奴らを撃ち殺すには十分だ。

 

「火器の使用はご自由に、俺達に銃を向けてきた野郎を片っ端から狩りつくすぞ!」

 

『了解です』

 

 

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