辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第三章
空の支配者


 傭兵が愛船コルベットを出すと決めた瞬間から少し後のことである。中央都市から指揮を取っていた防衛隊の司令官は、突如現れた謎の飛行物体に対し、排除するようにと命令を出した。予定よりもかなり前倒しにはなるが、反乱の可能性がある開拓民の拠点にも同時多発的に攻撃を仕掛ける。

 

 レジスタンスを打倒し、協商連合の商人どもに掃除したこの星を売り渡し、また宇宙へと帰る。かなり省略してはいるが、彼らの考えはこの程度だった。商人達が何故この星を欲しがるかについては謎が多いが、この星から出たい元海賊達にとっては、そんなことはどうでもよかった。

 

「…飛行物体への攻撃は全て失敗しました。反撃により出撃していた無人航空機12機が撃墜され、付近の飛行場も大きな被害を受けています」

 

「少なくとも掃海艇クラスか、厄介な。周囲の街ごと吹き飛ばしても構わん、早急に片付けろ」

 

「では、核融合弾の使用は」

 

「許可する、どうせ多少壊しても変わらん星だ」

 

 レジスタンスの戦力は侮りがたいが、かつて壊滅に追い込んだ植民星本来の防衛隊の装備を使いまわしているに過ぎないと司令官は認識していた。中央工廠の掃海艇も破壊を免れたうちの一隻だったようだが、そう数は多くもない。隠しドックや衛星軌道上でモスボール状態にされているかつての海賊艦隊を出せば、後は宇宙からの砲撃で殲滅するだけだ。事実、彼の想定通りであればそうなっていただろう。

 

「核融合弾、全て迎撃されました!」

 

「所属不明の飛行物体が加速、誘導弾と思わしき物体を射出しています!」

 

「厄介な、動かせる武装浮遊艦を全て出せ。首都防衛に充てていた戦力だが、奴を野放しにしておくわけには…」

 

「敵誘導弾が更に子弾を放出…いえ、この機動は……」

 

「何だ!」

 

「これは誘導弾ではありません、航空機です」

 

 誘導弾だと思われていた存在は周囲に存在していた防衛隊の施設を狙っては正確な攻撃で粉砕、そして離脱しては次の地点へと飛んでいく。まるで事前に入念な偵察でも行っていたかのような動きに防衛隊の防空網は役に立たず、投下される爆弾一つで部隊がまとめて吹き飛ばされていく。

 

「マッハ20以上で飛ぶ航空機だと、なぜ無事でいられる!?」

 

「これは、レジスタンスの戦力なのでしょうか」

 

「敵艦の予想進路に向け、浮遊艦隊全艦で砲撃を叩き込め。ミサイルもだ、出し惜しみはするな!」

 

「は、はい!」

 

「協商連合め、息のかかった戦力を潜ませておいたのか…いや、そうだとしか考えられん」

 

 中央工廠の治安維持局局長から、この星で生産されていない筈の人型兵器が局長代理を攫って逃げたという報告が来ていた。その機体が強力な電子戦装備を有しているようで詳しい情報は得られなかったが、数枚の写真とノイズ交じりの映像でも、その機体の異常さは理解できた。

 

「敵艦、レーダーから消失しました!」

 

「何故急に映らなくなった。妨害か、それとも死角に入られたか」

 

「不明です、一瞬で姿を消しました」

 

 星外から来た船だとすれば、この星の技術水準で太刀打ちできる相手ではない。レーダーに堂々と姿を晒して攻撃を始めたのも、こちらを混乱させるための策だろうと指揮官は考えを巡らせる。今やるべきは時間稼ぎと対抗策の用意、つまり眠らせていた宇宙船を起動させなければ勝ちはない。

 

「ドックへの秘匿回線で船の起動を行うよう要請する。浮遊艦隊は首都防衛に二番艦と四番艦を残し、敵艦への迎撃に出すぞ」

 

「それではレジスタンスの戦力を抑えきれなくなる可能性が…」

 

「あの船が一直線に首都へ来てみろ、我々は一瞬のうちに蒸発させられるぞ!」

 

 指揮官は所属不明艦のことを協商連合が送り込んだ戦力だと考えたため、その無差別攻撃を恐れた。協商連合は情け容赦のなく金勘定しか頭にない商人集団だと言われており、企業によっては倫理よりも損得が前に出る。この騒動を収められない現統治機構と邪魔なレジスタンスに一銭の価値もないと来れば、核融合弾による殲滅など損切りのための必要な手段と考えるだろう。

 

「ドックから連絡ですが、その」

 

「どうした!」

 

「襲撃を受けているそうです。相手には青い盾を構えた、例の機体が居ると」

 

「……クソッ!!」

 

 頼みの綱はあっさりと切れた、彼らは傭兵の取った行動によって完全に後手に回らされている。圧倒的な性能差を持つコルベットが地上で暴れまわり、傭兵本人は敵の宇宙船という最大の脅威を一気に抑えた。この指揮官にとっては悪夢のような状況だろう、今もコルベットから発艦した数機の航空機によって、各所に配置していた筈の戦力を刈り取られている。

 

ーーー

ーー

 

「交易拠点に接近する防衛隊の戦力はこれで全部か、あっけないもんだな」

 

『今回の事態に際して地方の反乱を抑えるため部隊を動員したようですが、動きが急に活発になれば居場所が分かりやすくて助かります。古い暗号通信なんて一瞬で解読できますしね』

 

「技術の差ってのは恐ろしいな、一方的だぜ」

 

 以前から傭兵が飛ばしていたステルス偵察機だが、自分達へのバックアップ以外にも防衛隊の拠点捜索を行っていた。非常に優れた航続距離と各種センサーを備える彼らはローテーションの合間にせっせとこの星を調べ、脅威になりそうな部隊をリストアップしていたのだ。

 

『元々防衛隊の数はそこまで多くはありません、ここまで潰せば交易拠点の周辺で組織だった行動は不可能でしょう』

 

「じゃ、俺達はこっちに集中するか」

 

 コンテナ船を動かすためにはカンナギとのケーブル接続が必要だが、接続さえしていればそれ以外は自由だ。彼は粒子砲を構え、隠しドックに駐留していた防衛隊へ攻撃を加えていた。

 

「傭兵から艦橋へ、隊長殿は聞こえてますかね」

 

「ああ、聞こえているが」

 

「俺のコルベットは周囲の敵を蹴散らしながら真っ直ぐこっちに向かってる、到着まではこの船の護衛をしながら敵と撃ち合っていれば大丈夫だ」

 

「だが制圧はどうする。複数の宇宙船が収められているドックだぞ、面積も構造も…」

 

「大丈夫だって言ったろ。陸戦用のユニットも用意してあるのさ、前の仕事のせいでちょいと定員は割ってるけどな」

 

 隠しドックを守ろうとして地下のエレベーターから現れた人型兵器達は、出力を絞ったビームによってコックピットを焼かれた。それ以外の車両部隊はカンナギが肩から放つレーザーによって溶かされ、例外なくその戦闘能力を失っていく。

 

「やっぱりカンナギで旧式の第二世代機の相手をすると戦闘にならねぇな」

 

『ひどい光景ですよ、ホントに』

 

 傭兵のコルベットが到着する頃には、地上で迎撃にでた防衛隊の戦力は殲滅されていた。アイギスをはじめ他の機体達は、それを黙って見ている他なかったのである。

 

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