辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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陸戦隊

『凄い…わね……』

 

「これが、コルベット?」

 

『いやこれ駆逐艦クラスよ、絶対嘘ついてるわ』

 

 全長300m、中央工廠で現れた掃海艇のおよそ倍にもなる。横幅もそれなりにあり、搭載されている武装は多種多様だ。この星に来る前の仕事で消耗しているとのことだが、外から見る分にはそうとは思えなかった。

 

「こちら傭兵さんだ。隠しドックの制圧のために陸戦部隊を降下させる、撃つなよ~」

 

『誰が撃つもんですか、というか陸戦隊まで搭載してるの?』

 

「なんでもありだ、逆に何が無いんだろう」

 

 コルベットの重力制御により格納庫からゆっくりと降りてくるのは複数の多脚車両で、傭兵が使っていたものと違い兵員輸送が可能な内部スペースを有している。この規模から察するに、傭兵は戦力の殆どを無人化したPMCの長だったのだろうか。

 

「メンテの最中だったんでな、出すのは久しぶりだぜ」

 

 武装したアンドロイド達はミナミとは違い、顔に表情はない。ただ装甲板とセンサーがあり、フレームも剝き出しで親しみやすさとは正反対の位置にいる。

 

『展開開始します、流れ弾にご注意を』

 

「しばらく待ってくれ、すぐ制圧するさ」

 

 傭兵とミナミはドック内部へ次々と突入するアンドロイド達へ指示を飛ばしつつ、各区画を次々と制圧していく。アンドロイドの装甲はレールガンによる攻撃を想定したものであり、手に持つ火器もまたレールガンだった。火薬式のライフルで武装した防衛隊の兵士たちは太刀打ちできず、壁の裏に隠れても圧倒的な貫通力でもって遮蔽物ごと撃ち抜かれる。

 

『第五区画に開けた場所がありますね、倉庫のようです』

 

「エレベーターを通じて多脚を突入させる、どの機体が一番近い」

 

『エレベーターシャフトを制圧中の機体が二機いますので、片方を向かわせておきますね』

 

「頼んだ」

 

 多脚車両は蜘蛛のようにケーブルを伸ばし、エレベーターシャフトの柱にアンカーを撃ち込んだ。アンカーの先端に取り付けられていたガラスの容器が潰れ、中に封入されていた樹脂が固まりながら広がることで、アンカーをより強固に固定する。

 

『ケミカルアンカー、正常に硬化。突入開始します』

 

「そっちは大丈夫そうだな。電子戦装備の第六小隊と突入用装備の第十二小隊で指令室の制圧出来るか」

 

『余裕ですね、自爆が怖いですが』

 

「そうなりゃ宇宙船に直接乗り込んで奪うだけだ、最悪コントロールパネルがなくてもなんとかする」

 

『それなんとかするの私ですよね』

 

「バレたか」

 

 二人は談笑しながら、死体の山を築いていく。降伏した兵士は拘束しているようだが、大多数の兵士は出会い頭に殺傷されているため、降伏出来なかった者の方が多いだろう。機械の兵士達に殺されたくないのであれば、最初から武器を捨てて両手を挙げておくことだ。

 

『12区画からは非戦闘員ばかりになりましたね、レールガンを非殺傷モードに切り替えて対応に当たらせます』

 

「頼んだ、トバリの親族も居るかもしれないしな」

 

 アンドロイド達はスピーカーから降伏勧告を流しながら、一糸乱れぬ動きで地下施設を制圧した。指令室の一つを制圧した部隊の働きによりシステムは乗っ取られ、彼らを守るはずの防衛設備は防衛隊に牙を剥いた。そして区画間を隔てる隔壁は全て開け放たれ、組織的な抵抗は30分と持たなかったことをここに記しておく。

 

「よし、終わったな」

 

『船を奪いましょう、それと捕虜への対応もしなければ』

 

「早く終わらせないと不味いぜ、奴ら地上で核融合弾なんてぶっ放しやがった」

 

『発射してすぐに撃ち落としたので、彼らの発射基地が吹き飛びましたけどね』

 

 傭兵のコルベットに向かって放たれた核融合弾はその威力で持って持ち主の基地を焼き払い、砲撃を行った浮遊艦隊は反撃によって全て地に伏していた。レジスタンスはこの機を逃すわけにはいかず、一気呵成に突撃を敢行している。

 

「それにしても情報を持ち帰って色々考える前に大戦争だ、これは早急決着のためのプランを考えなきゃ不味いぜ」

 

『ですねぇ、落とし所も正直見えませんし…困ったものです』

 

ーーー

ーー

 

 モスボール処理とは、何かあった際に使えるよう使わなくなったものを保管する際に行うもので、劣化しにくくなるよう処置されている。ドックの中に収まっていた海賊船も数年に一度メンテナンスと試運転は行っていたようだが、それ以外はこの処理を施されて放置されていたようだ。

 

『動かせる船の数は三隻のみ、後は他の船の修理のために部品を取られて動きません』

 

「…酷い状況だな、ドックというよりか墓場の方が似合う有様だ」

 

 船の状況を調べた傭兵のアンドロイドが報告したのは、十何隻という船達のうち、たった三隻だけが動くという事実だった。本当に防衛隊が有する船はこれだけなのだろうかと、皆は首を傾げた。

 

「情報があります、正確性には欠けますが」

 

「聞こう」

 

「宇宙にも放置された艦艇があると聞きました。一部の戦闘艦は大規模な改造を行った結果、重力下に下ろせなくなった…と」

 

「本命はそちらか」

 

 局長代理からの言葉を聞き、隊長は深く頷いた。統治機構の内部情報を抱えていたが、中央工廠から脱出する際の混乱で、情報の共有は進んでいなかった。宇宙から一方的に攻撃されれば、流石のコルベットでも危険だろう。

 

「統治機構を叩き潰すためには最大の戦力である宇宙船を破壊しなければならない、だがそれは地上と宇宙の二つに分けて保管されていた。こちらが動かせる宇宙船は傭兵のコルベット一隻のみ、このドックの船もすぐには出せん」

 

「隊長さんよ、部隊を二つに分けるしかないんじゃないか」

 

「コルベットと、その他か」

 

「宇宙は俺とミナミでどうにかするさ、カンナギと陸戦隊の半分は置いていくからドックを頼む。多分レジスタンスが来るからな」

 

「カンナギを置いていくのは、大丈夫なのか」

 

「人型兵器は陸戦用だ、宇宙じゃあ使い道が無いんだよ」

 

 使えないわけではないが、それくらいなら宇宙専用の兵器を使った方が余程強力だ。しかしコルベット一隻で残りの宇宙船を叩けるだろうかと隊長は思案したが、この船と傭兵を信じることにした。

 

「最後まで付き合ってもらうぞ、傭兵」

 

「任せなさいって」

 

 着陸したコルベットの格納庫に戻されていたカンナギはコックピットを開け放ち、レンヤとカナミの二人にパイロット権限を付与した。そして保管されていた機体たちにも電源が入り、他の仲間達を受け入れるべく横に並ぶ。

 

「機体は用意した。総力戦になる、絶対に死ぬなよ」

 

「待て、機体だと?」

 

「カンナギは予備機が損傷しちまって無いんだが、別の機体ならある。性能的には2.5世代ってとこだが」

 

 傭兵の大盤振る舞いによって、隊長達は制圧したドックを防衛出来るだけの戦力を得た。彼らは何も隠さなくなった傭兵の力に少々驚きつつも、ここまで来たらやるだけやると言わんばかりに、宇宙へ飛び上がっていくコルベットを見送ることにしたのだった

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