幼女戦記 〜ターニャの家族を添えて〜   作:焼け野原主任

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どうもどうも、焼け野原主任でございます。

今回はちょいと筆が乗って二作目です。

ではでは、どうぞ…。


第十話、軍大学編

帝都ベルンの参謀本部にて。

額には冷や汗とも取れる脂汗をかいたレルゲン中佐が参謀本部の第一陸軍晩餐室に中ばヨロヨロと歩いて向かっていた。

 

かつて、帝国陸軍は参謀本部内部に豪勢な晩餐室を設置せしめた。

もちろん、質実剛健を望む陸軍将兵からの評判は良くなかった、が。海軍の一言が全ての言説を一変させてしまった。

曰く「陸軍は晩餐室も無駄が多い」と、それに陸軍も反応し今度は陸軍が海軍の予算削減を勧告した。曰く、「ホテルで戦争に行く奴らの気が知れない」と。

 

「(だからと言って、意地になって会議まで晩餐室で開く必要も無かろうに。北方、西方の視察を終えて帝都に戻ってからのすぐの呼び出し。別にその事自体はいい、ただ問題なのはその議題だ!)レルゲン中佐、入室します」

 

「よく来てくれた、これを見てくれ」

 

すでに待っていたルーデルドルフ准…いや、少将に書類を渡される。

 

「…反対です、絶対に反対です」

 

その言葉に少将はいささか納得していない顔をし、

 

「レルゲン中佐、貴官の意見は尊重するが主観的な意見は排除せねばならん、現状においては待望の戦術改善策では無いかね?」

 

そう答える、確かにそれはそうだ。だが、だとしても!

 

「彼らに即応連隊を持たせるのは反対です。全滅するまで前進を止めない性質を持っています。ただでさえ貴重な魔導師や装甲戦力をすりつぶす行為に他なりません!」

 

彼らは危険すぎる。まして、移動中の列車内で読んだゼートゥーア准将の執筆したあの論文「今次大戦の形態と戦局予想」、あれこそ、あれこそあの邪悪な二人の悪魔の戦争の仕方と似合いすぎている。

 

私の頭の中には、悪魔のような笑みを浮かべこちらを嘲笑う姉弟の姿が浮かぶ。彼らはその手に鎌を持ち、銃を持ち、ありとあらゆる魂を無慈悲に喰い散らかす。彼らは死神だ、悪魔のような死神だ。

彼らはすでにただの一将官としての物差しでは計りきれない。ましてや子供の物差しで計ることなどできやしないだろう。

 

「貴官が何度も主張しているそれだがな、軍大学の教官らは彼らは兵を愛しむと評している。参謀旅行時の報告を見たまえ、塹壕で凍える戦友のために起床ラッパよりも早く起き、皆に白湯を運んでいたとされている」

 

「銀を磨くような美談がまた増えましたな」

 

「戦場においても、「戦闘意欲は旺盛、なれど損害を忌避する正常な感覚を保持す」これは評価としては特優だ」

 

「彼らの士官学校時代に貴官が抱いた危惧を否定しようと言うわけではないが、最終的に彼らも軍大学で教育を受け、成長しているように思える」

 

「兎も角、帝国には優秀な人材を遊ばせておく余裕はないのだ、参謀本部の決定だ。貴官ならそれが意味するところは分かると信じる」

 

「っ…、失礼しました」

 

私はガタリと立ち上がり、もう遅かったことに後悔する。

もう決定事項だったのだ、何が参謀本部をそこまで彼らよりにさせているのだ。エレニウム九五式にしろ、軍大学、そして連隊長の就任。

気がつけば全てが彼らを戦場へと導いている気がする。まさに、手ずから死を刈り取る死神のように。

 

「そうそう、レルゲン中佐、貴官に相談がある人がいると作戦課から聞いている、至急…と言うほどではないが今日中にとのことだ」

 

「は、分かりました。移動手段に指定はありますか?」

 

「特に無いらしい。着けばわかると、私もそうとしか聞いていないのでね」

 

わざわざ作戦課が自分のような人事課の中佐に何の用だ?まぁいい、とりあえず向かうとしよう。

 

「了解しました、向かいます」

 

 

ーーーー時刻は変わって同日同じ場所の夜ーーーー

 

さて、晩餐室に着いて晩餐に手を付けたは良いがこれが不味い、クエン酸をそのまま入れたんじゃ無いかという酸っぱさに煮込んだことによる驚異的な塩味。脅威的にはこれは某艦隊これくしょんに出て来た金剛型二番艦のカレーといい勝負するんじゃないかと言うレベル…、いや、流石にこちらの方がマシか。

弟は…サラダとパンだけには手を付けているようだが目の前にあるこのクソマズイシュラハトプラットにだけ一口もつけていない。

流石に礼儀でもこれは食えないか。

だとしても、パンはK-Brotだしサラダは鉄条網だしで、まぁひどい。

 

姉さん、大丈夫ですか?少し小刻みに震えていますが…。

 

大丈夫…いや大丈夫じゃ無いなこれ、家に帰ったらとりあえず何か作ってくれ。

 

わかりました。

 

二人だけで通じ合う謎の問答をしているとゼートゥーア准将が話しかけてくる。

 

「昇進おめでとう。どうだね大尉達、この参謀食堂の名物は」

 

ん?大尉だと?

 

「は、率直に申し上げるなら常在戦場を思い出す見事なものだと感服いたします」

 

大尉、と言うことはもしかしてこの会食って…。

 

ああ、多分そうだろうな。

 

「はっはっは、見事な回答ではありませんかなゼートゥーア准将、いっそ常在戦場食堂と名付けてみてはいかがですかな?」

 

ターニャの返しに笑い、もう半ば参謀食堂のクオリティ向上は諦めた発言をしているのは人事局のコードル大佐

 

「それでも、少しばかり美味しいものを食べたいですけれどもね」

 

「全く、これではここも立体化された塹壕ですかな?」

 

「であればここも要塞にしますか?」

 

「はっはっは、全くもってその通りだ」

 

弟よ、笑えん、全く笑えんぞその冗談は。

 

「さて、ここからが本題だ、本来であれば今自分のいるところにレルゲン中佐がいる筈だが彼は今作戦課の方に行っているので代理として私が来た」

 

「改めて、昇進おめでとうターニャ・デグレチャフ大尉。アーデルハイト・デグレチャフ大尉来てもらったのは昇進のことだけではない。貴官の配属についてだ。一応、貴官らの戦功によりできる限り希望を考慮する形となっている」

 

「「ご配慮有難く思います」」

 

懐かしいかな、私が前世人事に所属していたからわかる。要するにこれは聞くふりだけはしてやろうと言うメッセージだ。

人事を司る人種は建前で動く、油断するなよ弟。

 

はい、姉さん。

 

「貴官らにはこのような書類が回されてきた」

 

ほう、いずれも第一線の部隊、引く手数多というところか。

 

「ああ、それと参謀本部からも一枚出ている」

 

ほらきた、これが本命だ。

 

「先ほども言ったが貴官の武功により人事局は選択を強制しない。好きなものを選びたまえ」

 

「よりどりみどりで困りますね〜」

 

「同じく、迷ってしまいます」

 

さて、そうは言うが実際には選択権などない様なものだろう。

決定権を持つ参謀本部がうちに来いと言うのだ、断ればどんな貧乏くじが待っているか…。

 

「だが、いつの時代も楽な仕事という物は無い、参謀本部が君らに何を命ずるかは知らないが、幸運を祈るとだけは伝えておこう」

 

「「は!」」

 

「(このような時でも息ぴったりだな…さすが銀の双翼と言ったところか)」

 

「では、デザートをご一緒できないのは残念ですが、小官はこれにて、レルゲン中佐の迎えに行って参ります」

 

「ご苦労だったコードル大佐、また後ほど」

 

「はっ!」

 

大佐は立ち上がってからピシッと敬礼をし、食堂を退出する。

 

「_____さて、貴官らの事だ、実務的な話の方がよかろう。参謀本部付きの配属だ、直属の上官ではないが、私の下に着いてもらったと思ってくれて構わない」

 

「「はっ、お世話になります」」

 

「(まさか、齢十一と九つの部下を持つ日が来るとは、しかし両方とも十二騎士に数えられるほどの才を持つ上、野戦帰りとなればその問題も些細なものに思える。レルゲン中佐の言った通り、異常であるのは間違い無いが…)大尉、参謀本部はすぐにでも君らに連隊を任せるつもりがある」

 

「は、両名ともに光栄であります」

 

「(中隊指揮どころか大隊指揮を経ず、連隊を預けられる事に戸惑いすら感じられない。きっと今すぐにでも兵を率いて戦う覚悟があるのだろう)よろしい」

 

それに彼らには数少ない軍大学を経た魔導士官としてより広範なる活躍を期待している。

 

「ただ、与えられるのは新編の装甲魔道混成連隊になるだろう」

 

「新編でありますか」

 

「そうだ、組織の常だ、締める面倒ごとは多い、貴様らは明日にでも編成官の辞令を参謀本部から受け取るだろう」

 

「編成官ですか?随分と古式めいた役職ですが…」

 

「僕らの大尉昇進はこの連隊編成任務のためですか?」

 

随分に優秀だな、実に頼もしい。弟に自分の孫娘を嫁がせてやりたいくらいだ。

そう、頼もしすぎて目の前の軍人が子供に見えなくなるぐらい。

 

「大尉で連隊隊長は流石に難しい、連隊編成の功で姉は中佐に、弟は少佐に揃って無理矢理昇進させておく」

 

「二階級特進でありますな、小官はまだ存命でありますよ?」

 

「痛いところを突いて来たな、まぁその点に関しては問題ない。連隊編成の上で必要な事として就任時に少佐に昇進させておく」

 

「随分無理矢理な昇進ですな?これではもう少しで姉弟揃って将軍になってしまうかもしれません」

 

「ははっ、冗談はやめてくださいよ、姉さん」

 

自分で言っといてなんだが面白く無い冗談だ、師団長ともなれば余計後方でエリートコースが遠退くじゃないか。

 

「はっはっは、面白い冗談だ」

 

なるほど、悪くはない案だ、いつか旅団…いや師団を任せる時が来るかもしれん。その時も、彼らは前線に出て指揮を取るのだろうか。

 

「それはともかく、実質的に私は連隊長、弟は連隊副長と認識して良いのでしょうか?」

 

「全力で取り組め、中佐と少佐、連隊長と連隊副長の席は確約しよう」

 

彼ら自ら大隊が欲しいと言っていたことを忘れたわけでは無いようだ、今でこそあの少将の口出しで連隊になったが彼らの並々ならぬ決意と覚悟がなければここまで話は進まなかっただろう。

 

「ありがとうございます、周囲の反感を買うことを前提で申し上げても良いでしょうか」

 

「今更構わん、口にしたまえ」

 

「は、両名ともに編成に関しては全権が与えらると。認識してもよろしいでしょうか」

 

直訴によって手にしたと言う外聞を気にしているのか?用心深いな、参謀としては合格だ。

 

「概ね言った通りだ、連隊兵員や装備は可能な限り充当する」

 

「魔道大隊は四十八名以下、装甲大隊であれば二個は用意できるし戦車や装甲車も百五十両迄確保可能だ」

 

「四十八名ですと増強大隊ですか、ありがとうございます」

 

「そして戦車の数が多いのは有難いです、これで展開力が早くなります」

 

「ただ、西方および北方からの引き抜きはできん、連隊は貴様らの本業と実験的要素を集め装甲航空魔道連隊となる」

 

「指揮系統はどうなるのでしょうか」

 

「即応の観点から参謀本部直轄だ、編成番号はV600番台を用意している。何か質問は?」

 

「両名とも特には、事務的に進めてください」

 

「ならば六〇一だ、基本的に貴様らの上官はいない、喜べ、本部直轄だぞ」

 

二人ともがニヤリと不敵に笑い。

 

「まさに、我が世の春ですね」

 

「全くだ、誰だって嬉しいだろう」

 

士官として現場に立ち、尚且つある程度の自律的な指揮権を擁する。要するに自分で戦争をしつつ指揮ができる立場だ、優秀な連中にとってはさぞ楽しい事だろうに。

 

「編成に期限は?」

 

「期限はないが早いに越したことはない」

 

「わかりました、両名ともにせいぜい選抜に望みます」

 

「貴様らが実力でもぎ取ったのだ、誇っていいぞ」

 

「驕って堕ちるより、謙虚に生きますよ」

 

内心舞い上がってるかと思えば実に冷静だ、彼らは自然体に恩恵を享受しようともそれに溺れることはなく、それ所かその分も義務を果たさんとする。

実に稀有な指揮官だ。貴族的と言っても良いだろう。

 

「結構、その様子ならば問題ないだろう。ならば期待しているぞ大尉ら」

 

「「はっ!ありがとうございます!」」

 

 

どうして!!

 

 

こうなったのだ(ですか)!!

 

 

To Be continued…。




さてさて、如何だったでしょうか。
ここから先、原作とも漫画版ともアニメ版とも違う展開になっていきますので、お楽しみに…。

(本編書くのが楽しくて幕間書けないのは内緒)

そして今回から戦車連隊で使う戦車の種類をアンケートで決めたいと思います。
本編だとすでにアフリカ侵攻時点で四号戦車H型が出ているので現時点でも長砲身四号はあるだろうと言うことで。
まぁティーガー最初期生産型ならワンチャンあるかも…?

戦車の種類

  • 二号戦車のみ
  • III号戦車のみ
  • 二号戦車と短砲身IV号戦車の混合
  • 三号戦車と短砲身四号戦車の混合
  • 長砲身IV号戦車
  • ティーガー重戦車
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