幼女戦記 〜ターニャの家族を添えて〜   作:焼け野原主任

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どもども、焼け野原主任です。

訓練と錬成が完了したとみなされ。南方に配属されたデグレチャフ一行。
そこでは一体何が起きるのか?

ピンコロさん

コメントありがとうございます!

では…、どうぞ…。


大戦の開幕
第十四話、ダキア戦役1


統一歴一九二四年九月二十四日

 

ランシルヴェニア地方 トゥラーオ群の帝国軍野外演習場

 

第六〇一編成部隊

そこには、査閲に来たレルゲン中佐やその他企業の幹部がいた。

 

「このノロマども!尻を引き摺ってないでさっさと高度を上げろ!未だ八千だぞ!」

 

「ほら貴様等!戦車が其処を突破したぞ!さっさとそこに突っ込め装甲車!」

 

そんな次々と常識が覆される光景を見てヘンシェル社の幹部、アルグス・フィードリヒが豊かに蓄えたその顎鬚をさすりながら話す。

 

「これは…新型重戦車を任せた甲斐がありましたな、少佐殿」

 

「ありがとうございます、お陰で固く守られた塹壕の突破に役立ちそうです」

 

「そうかそうか、コイツは正面装甲は102mm、側面装甲も82mmある。フランソワの主力火砲はシャットアウト出来る上に搭載されているのは開発競争で負けたのポルシェ社の共同で開発した8.8cm高射砲を改良して作られた砲塔だ。こうやって元気に動いてくれてありがたいよ」

 

「ありがとうございます。そして長砲身の四号戦車の配備にも協力してくださってありがとうございます」

 

その言葉にアルグス氏はフォッフォッフォと笑い。

 

「何、構わんよ。可愛い孫に誕生日のプレゼントをあげる様なものだ。二人とも、今日は誕生日なのだろう?」

 

「はい、お心遣い感謝します」

 

彼はこの六〇一部隊の装甲部隊編成の為、新型のティーガー重戦車や改良型長砲身を載せた四号戦車の配備に尽力してくださった。

それも軍や企業にすらかなり無理を言って引き渡してくれたらしい。感謝しないと。

 

「そうそう、儂の会社が経営しているレストランの席を一つ取っておこう。誕生日だ、たんとお食べ」

 

「何から何までありがとうございます」

 

 

そんな様子を私は遠巻きに見ていた。

ふむ、私の弟も企業とコネクションを取ったか、それも相手は開発大手のヘンシェル社と来た。これは手強いな。

私が持ってるコネクションといえば…、ポルシェの社長とは一応関わりがあったな。ああ、あとクルップ社のホスマン殿とも関わりがあったな…。そしてあのクソMAD(シューゲル)もだな。

 

「おい、アーデルハイト、お前の隷下の部隊、あんななっているが大丈夫か?」

 

「え?あ!おい貴様等そこを開けるなと言ったろう!敵は綻んだ所から直ぐに突っ込んで来るぞ!」

 

「よろしい、ならばこれでどうだ?」

 

九七式を起動し、敵兵のダミーを大量に出して作戦行動を取らせる。

 

「ほらほらどうした!早く迎撃体制を組みたまえ!教えただろう!」

 

どうやら効果はテキメンだったようで、少し綻びが生じるが、戦車を中心にした防御体制をすぐさま整え、ダミーの敵兵の襲撃を凌いだ。

 

「ほうほうこれはこれは、練度が高いですなぁ…」

 

「いえ、まだまだです。塹壕というのは四方八方から敵が来る上、入り組んでいるため戦車にも接近されやすく、戦車と歩兵の相互援護ができなければ直ぐにやられてしまいます」

 

そもそも、塹壕戦になったらすぐさま重砲で炙り出してからの方が早いのですけどね。

 

ちなみに、編成の内訳は

 

第六〇一部隊

連隊司令部、司令官ターニャ・フォン・デグレチャフ中佐、副司令アーデルハイト・フォン・デグレチャフ少佐

L航空魔導大隊四十八名、同司令官ターニャ・フォン・デグレチャフ

 L第一(司令)中隊、隊長同司令官

 L第二中隊、隊長マテウス・ヨハン・ヴァイス

 L第三中隊、隊長ヴィリバルト・ケーニッヒ

 L第四中隊、隊長ライナー・ノイマン

L混成自動車化装甲特殊増強大隊二百九十名、司令官アーデルハイト・フォン・デグレチャフ少佐

 L直掩魔導中隊、中隊長同司令官アーデルハイト・フォン・デグレチャフ

 L第一装甲中隊、隊長ゲーニッヒ・フォン・オーレンドルフ

 L第二装甲中隊、隊長アルベルト・ホーテン

 L重戦車中隊、隊長アルバート・エルンスト

戦車総定数両五十両である。

 

そうして何事も無く査閲式が終わりを迎えるかと思われたが、急いでやってきた通信兵によりそんなことは無くなった。

 

「こっ…国境から電文!『緊急、軍団規模ダキア軍我ガ国境ヲ侵犯中』!」

 

その電文に査閲に来ていた集団がざわつく。

 

「査閲式中止!中止!総員直ちに集結せよ!繰り返す!現刻をもって第601編成部隊は第二〇三混成装甲魔導連隊に任命!」

 

「国境司令部につなげ!」

 

大慌てで退避する査閲団を尻目にレルゲン中佐はまだ冷静だった。

 

「世界大戦…まさかそんな…」

 

「全くです、なぜ帝国が世界を相手にしなければならないのでしょうか。ダキアの間抜け共、フランソワ辺りに唆されたのでしょうか?」

 

「よほど、世界の為に、揃って帝国に焼かれたくて仕方ないのでしょうか?とんだ国際協調主義ですね?」

 

違う、この姉弟の怒りは世界大戦に向けられている。帝国対世界という、狂った前提を元に憤っているのだ。

 

「ふふ…、いやはや面白い、かかって来い豚野郎…いや」

 

「相手になってやる、とでも言うべきでしょうか?」

 

なんてことだ、神よ。あなたはこれを望んだのかと背筋がゾワリとした。

目の前の悪魔達の軍隊を目の前に。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「神よ!千載一遇の機会に感謝します!」

 

「先ほどからターニャ中佐はどうされたのだ?アーデルハイト少佐」

 

「いや…、さっき通信兵にダキアの航空戦力をお尋ねになられて…」

 

「空軍はなんと言っているのだ?」

 

「即応で上がった偵察機からは接敵なしと…」

 

 

そんなことを話していると、中佐が少し狂気的な笑みをこぼし。

 

「空に…我に仇なす敵航空戦力不在?」

 

ああよもやダキア大公国がここまで終わっていたなんて。

敵を過小評価する愚は絶対に犯さんが、これほど嬉しい誤算はない!

 

「素晴らしい1日になりそうだ」

 

まぁ…、そうは言うがこの襲撃で弟とのディナーがお陀仏になったのは頂けない。わざわざヘンシェル社の幹部の方が善意で用意して下さったと言うのに…、許さんぞダキア。

 

まぁいい、絶対的な制空下での戦闘。心が躍る!

 

 

ーーーーーーー

 

アルペン山脈で苦行を乗り越えた連隊にすら足りなかったもの、それは実戦経験だ。

いついかなる時代、いくら厳しい研修をしてでも、新人はやらかしてくれるのだ。

だがこれはついている、初の実戦が主戦場である北方ノルデンや西方ラインでは、せっかく育てた連隊員やわざわざ配備してもらった重戦車を失っては敵わない。

 

「現刻をもって、我々は二〇三混成装甲魔導連隊は戦闘配置につく!ヴァイス中尉!」

 

「は!デグレチャフ連隊長殿!」

 

「中尉、再集結と弾薬配布の指揮をとれ、それと、セレブリャコーフ少尉を連れてこい」

 

「では姉さん、僕は戦車大隊の方へ行って参ります」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

スタスタと、僕は司令部を出て戦車の格納庫へ向かう。

 

「バートリー少尉、連隊の中隊長の面々は?」

 

「は、問題なく集まっております」

 

「ならよし、では、アイシャ・シュベルツ中尉!」

 

「は、お呼びでしょうか」

 

金髪を後に纏め、凛々しい表情で答える彼女は、東部方面軍第一〇二魔導中隊出身のアイシャ・シュベルツ中尉。

彼女は六〇一編成時に大隊で余りが出たため装甲連隊の上空を守る直掩中隊に配属となり、直掩中隊の副長を拝命している。

 

「貴官は直掩中隊の指揮を取れ、僕は上空から装甲連隊の指揮に専念する」

 

「は、ですが少佐殿一人で大丈夫ですか?」

 

「何、相手は前近代の兵農混合集団です。そのお陰か、上空を守る戦闘機は一機もいません」

 

「だから、燃料が許せば我々装甲連隊だけで奴らの脅威になりうるのです」

 

そう、ダキア語の勉強ついでにダキア公国について姉さんと一緒に調べてみた。

 

ダキア大公国は国家の基盤すらまともに整えられていない、いわゆる小国だ。

近代国家たる緻密な暴力装置を持つ帝国とは比べるべくも無く、烏合の衆と言える。

元々装甲中隊の参謀次官だからこそ言える、まともな対戦車兵器どころか擲弾すらも持たない兵士が戦車にできることなど何も無い。

黎明期の戦車であればドアをこじ開けて突入することもできようが、今の戦車に対してはそんな事も出来ない。

 

「二人とも、侵犯時、ダキア側から準備砲撃や制空戦はあったと思いますか?」

 

「流石にあると思いますが…」

 

「小官も同意見です」

 

「正解は、ありませんでした。まぁ言うなればその程度の連中って事です。我々完全武装の戦車部隊が、蹴散らしてやりましょう」

 

「「は!」」

 

士気は上々、まぁ我々は味方の戦果を無くさない程度(・・・・・・・・・・・・・)に前衛を破壊し尽くしてやりましょう。

楽しみです。上空に脅威が無いのなら直掩中隊と戦車で電撃戦ができる。

僕は、そんな期待を胸に連隊の集合場所へ向かう。

 

「ターニャ中佐、二〇三混成魔導装甲連隊所属第一混成自動車化装甲特殊増強大隊。到着しました」

 

「ご苦労、諸君、この様に我々には戦車もいる。彼らの活躍に負けず、我々も殲滅してやろうじゃないか」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

航空魔導師や戦車がズラリと並び、出撃準備を整える。

アーデルハイトが麾下の部隊に号令をかける。

 

「装甲大隊!魔導中隊!準備はいいか!」

 

「第一中隊!問題ありません!」

 

「第二中隊!同じく!」

 

「重戦車中隊!いつでも行けます!」

 

「第二〇三混成魔導装甲連隊!出撃!」

 

魔導士が颯爽と飛び立ち、戦車のエンジン音が唸りを立てて発進する。

向かう途中、友軍の集団が前方に見える。

 

「中佐殿、前方に友軍集団が見えます。国境警備隊の部隊かと」

 

「通信を繋げ」

 

「は」

 

「こちら二〇三混成魔導装甲連隊、越境中の敵軍への遅滞戦闘の為急行中、敵情は如何なるや?」

 

『こちら国境警備隊、ダキア大公国軍の先鋒部隊はおよそ三個師団、こちらの把握する位置情報を送信す。敵戦列の物量に対し我が方不利と判断し戦略的撤退中』

 

戦列だと?

 

えぇ…幾らなんでも馬鹿じゃないですか?

 

「こちら二〇三、了解した。撤退を継続されたし。また装甲大隊が通る為展開域に注意せよ」

 

「国境警備隊了解。…ご武運を」

 

我々の上空を飛び去る魔導大隊を見て、国境警備隊指揮官は思う。

 

「彼らは…死ぬ気だな。いくら戦車がいてもたったの一個連隊ではどうしようもない」

 

「わ…、我々も共に遅滞戦闘を行うべきでは…!」

 

部下がそう意見を呈するが

 

「___いや、我々は後退し後備えの部隊と合流。強固な防衛線を敷くのが定石だ。彼らは…二〇三はその時間を稼ぐために…」

 

「…っくぅ!」

 

部下が悔しそうに膝を打つ。

 

「彼らの献身を無駄にしてはならん!我々は断固撤退を継続すべきだ!」

 

「そう言えば…噂では最新鋭の魔導装甲連隊がこちらに駐屯していると…」

 

「それはもしや彼らでは無いのか!?」

 

「…彼らを率いる連隊長と副長は、かの銀翼突撃章を叙勲された猛者だとか…」

 

「そんな部隊が帝国の窮地に対し自らの身を犠牲に帝国の領土を守らんとするのか…」

 

「英雄だ、我々は今、英雄の姿を目撃しているのだ…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

[side:アーデルハイト]

 

「少佐殿!ティーガー百十一号車が擱座しました!」

 

「何?」

 

姉さんがダキア軍の先鋒集団を蹴散らしている時。我々は新型故の故障に悩まされていました。

とりあえず、擱座した車両の元へ近寄り、状態を聞こう。

 

「何処がやられた?」

 

「前側の転輪に泥が溜まって動かなくなっています」

 

「できる範囲で掻き出せ。走行不可能な損傷を負うまでは進軍するぞ」

 

「「「「「は!」」」」」

 

「よし、百十一号車はここで待機し我々は進軍を続ける」

 

そんなことを話していると何処かから数発砲弾が飛来し、ドドォと音を立てて着弾した。

 

「なんだ!」

 

「四時方向に敵戦車二両確認!菱形です!」

 

「戦車だと!?」

 

ふむ、奴ら戦車をもっていたか…、が菱形だと?

第一次世界大戦を経験していないと言うのにそんなものが…。いや、戦車登場の黎明期に作られた車両だろう。

とりあえず…。

 

「ティーガー〇三四号車は左を、〇七五号車は右を!応射せよ!」

 

ズドンと轟音を立ててティーガーH1型の8.8cmが火を吹き、二両の菱形を破壊する。

 

「やはりコイツの火力と装甲は高いな。エルンスト中尉」

 

「はい、ですが足回りに問題があるのは面倒極まりない」

 

「"厚い皮膚より早い足"、だったか」

 

「少佐殿、なんですかその言葉は?」

 

「ああ、グデーリアン殿の言葉だ、幾ら堅い装甲があっても迅速に進軍できる足…つまり機動力と信頼性がなければならないということだ」

 

「西方にいるハインツ・グデーリアン将軍の言葉でありますか、なるほど」

 

僕はヘルメットを外し、少し伸びた髪を纏める。

そうしていると、周辺偵察に出ていた直掩中隊のアイシャが降下してきた。

 

「ご苦労様、で、近辺に敵影は?」

 

「はい、少佐殿。近辺の偵察に出ておりましたが敵戦列二個師団を発見いたしました。戦車が数両配備されているようです」

 

「あそこに転がっているような奴か?」

 

「いえ、このように両側面に機銃が四基搭載されたのが五両確認されました」

 

菱形戦車の雌型が五両?対戦車戦を想定していないな。こんな小国でも戦車を運用している所は評価するが。

もしかしてさっきの雄型が対戦車戦か防御陣地突破の役を担っていたのか?

それは悪いことをした。ならばさっさと出会ってやろうじゃ無いか。

 

「そこに向かうぞ」

 

「「「「「「へ?」」」」」」

 

「だから行くぞ、百十一号車、泥は掻き出し終わったな?」

 

「で…ですが…師団ですよ?」

 

んー…、確かに、師団という呼び方をしてしまったのが悪かったな。

それで大隊の皆が勘違いしてしまっている。

 

「ならこう言い換えよう、旧型の戦車や銃で武装した1万ちょいの郡集団と行ったところか」

 

「…え?…え?(我々を不安にさせないために冗談を言ってくださるとは…)」

 

「さて、我々の大隊員にあんな奴らに倒されるような者はいないと信じているぞ?」

 

そう言って、僕は大隊のメンバーににこやかに微笑む、これで大隊の士気アップだ!

 

「(少佐殿のあの笑顔!徹底的に殲滅せよとのご命令だ!)」

 

「さて諸君、戦争の時間だ。と言っても、少々歯応えの無い相手かもしれんがな」

 

「諸君、実を言うと今日は僕の誕生日だ。それを知ってか、ダキア大公国が誕生日プレゼントとして訓練の成果を示すための標的を用意してくれた」

 

「諸君らはこれを引き潰してもいいし機銃で撃ち抜いてしまってもいい。だが砲弾は使いすぎるなよ」

 

「「「「「「「了解!」」」」」」」」

 

「よろしい!では諸君。地獄を作るぞ」

 

自分はそう言い放ち、心の中でニヤリと微笑んだ。

 

To Be continued…




お読みいただきありがとうございます。

さて、"何故か"戦車をもっているダキア軍。
そして数多く出てくる実在企業の面々!
弟とのディナーをダキアに邪魔されたターニャの怒りは何処へ!?

次回、ダキア死す!デュエルスタンバイ!

幕間ネタ

  • ターニャとアーデルハイトのイチャラブ
  • アーデルハイトとバートリー少尉
  • 総統閣下シリーズ
  • 連隊各中隊長ズの何か
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