[side:アンソン]
「自爆…、だと?」
「スー中佐!もうこれ以上は限界です!敵増援に補足されます!」
「…目的は達成した。離脱するぞ!」
「「「「「了解!」」」」」
場所は変わって帝都ベルンの帝国参謀本部の人事局人事課長室。
「…奴がまさかノルデンにいるとはな…」
ある書類と睨めっこしているのはレルゲン少佐
「(魔導士官学校での教官等が語る彼女のエピソードの数々。)」
その内の一つである自分も目撃した野外練習演習中の些細なトラブル。
その時一号指導生であったターニャ・デグレチャフ一号生は彼女の命に抗命した二号生をその場で軍法に乗っ取り抗命罪として処刑しようとした。そう、なんの躊躇いもなく。
「士官学校を次席で卒業、北方における部隊研修後にノルデン動乱に遭遇、そのまま北方方面軍において奮闘。その赫赫たる戦果をもって現場指揮官等から連名で推薦…」
…銀翼突撃賞、生存中に授与されることはほとんど稀な勲章。基本的に指揮官等が連盟での推薦でのみ授与される勲章。
「まさか自分が生きている内に授与者が現れるとはな…、だが、子供だ。兵器として完成された子供など…そら恐ろしい以外の何者でもないな。白銀、ターニャ・デグレチャフ」
だが、問題はもう一名いる。同じく現場指揮官等から連名で同勲章の推薦が届いているアーデルハイト・デグレチャフ。
彼はターニャ・デグレチャフと血の繋がった弟であり。士官学校を次々席で卒業、姉と同じ航空魔導士であるが…。
「銀狼…、アーデルハイト・デグレチャフ。彼もまた異常…彼に至っては士官学校の一号指導官の頃、不正を働いていた指導官を鉄パイプで滅多打ちにした他。つるんでいた二号生等も処罰した。」
あまり思い出したく無い事件だ、結局その後アーデルハイト一号生は軍法会議で不正を暴いたことで無罪、そして軍内での評価が上がり、不正を働いた一号生等は謹慎処分となった。
「姉が兵器なら弟は憲兵か、全く…、彼ら二人でその辺の軍隊の規律は守れそうだな…」
[side:ターニャ]
場所はノルデンより少し離れた野戦病院、そこの奥のベットで二人の少年兵が横たわっていた。
「アーデルハイト、生きているか?」
「ええ、しぶとく生き残ってます。でも…」
「ああ、言わんとする事はわかる」
自分のすぐ側に置かれている銀翼突撃賞、それに弟も同じ物をもっている。
全く、銀翼の名に恥じぬ銀色にライフルと杖が交差し、羽を広げた鷹が誂えられた悪魔じみた勲章。
「全く、なぜにこんな物が授与されたのだろうな、だがアーデルハイト、どうやら休んでいる暇は無いようだ」
勲章のすぐ側に置かれた辞令、それは新型宝珠の試験パイロットの為に後方への転属だ。
銀翼突撃賞の所為でエースとして最前線で馬車馬がごとく働かされると思ったが全く、後方勤務は良い物だな!
おっと、満面の笑みをしては弟に悪い印象を与えてしまうかもしれん。真面目な顔だ。
[side:アーデルハイト]
姉さん…、真面目な顔をしている…。それ程までに前線に居たいのか…、いや多分違うんだろうな。
「姉さん」
「ん?どうしたアーデルハイト」
「試験部隊への配属、楽しみですね!新型って一体どんな物なのでしょう?」
姉に向けて満面の笑みで喜びを伝える。これで姉も素を見せてくれるだろう、いや見せて欲しい。
もう姉しか、家族はいないのだから。姉の事をわからなきゃいけないのはもう自分しかいないのだから。
眩しい、弟の笑顔が眩しい。まさか私の心を読んだのか?
「…そうだな」
「…なんでも言ってください姉さん、僕は姉さんのたった一つの血の繋がった…
家族なんですから」
弟が笑顔で返してくれたならこちらも笑顔で返さなければ。
あまり上手く笑顔が作れなかった気がするがまぁいいだろう、家族、家族か…。
『よくやったな!__!』
『やっぱり、私たちの息子ね!』
…前世では親は自分の心持ちを理解していたかどうかわからない。だが、心配させまいと頑張っていたことで少なくとも心配はしていなかった…、と思う。
だが、目の前にいる私の弟は自分を心配して、笑顔を作って励ましてくれた。
…我ながら良い弟を持ったな。
「さて、我々もある程度回復したのだから少しの休養を楽しもうじゃないか。そこから先は…我々の舞台だ」
「そうだね!姉さん!」
ドアの先にいた軍医は先ほどの様子を覗き見ており。
「彼らは家族で戦い続けるという心持ちを持っている…これは上に報告せねば…!」
そこから時間が経ち、凱旋パレードの終わった後、私と弟は人事局に移動した。
「喜べ、本国戦技教導隊付きの内示と総監部付き技術検証員としての出向要請だ」
やったー!ついに待ち望んだ後方勤務だ!素晴らしいキャリアを積むために申し分ない配属先!
っと、ここであからさまに喜んでは私の評価に差し障る。まだ笑うな、表情筋を硬く持て!
弟よ、乗ってくれ
「…エースは後方のお守りになれと言うことでしょうか」
姉さん、なるほど、戦意を低く見られない為にですね!
「同意見です、我々はプロパガンダの為に来たのではありませんよ」
「ッ…!」
ゾワリと、自分の背中を何か冷たい刃物で撫でられたような感覚…、これは到底齢九歳の子供が出して良い物ではない!
「(ノルデンであの様な死線を潜り抜けて尚、帝国軍人として最前線を希望しているというのか!?)」
「(こちらは最前線など二度とごめんだ!幼子を戦場へ出す罪悪感を覚えてもらいたい!)」
「(いくら銀翼突撃賞を授与されたからって前線には出たくないですもん!)」
「(彼らの戦意は一流の将兵のそれだ!彼らをただの幼子と認識してはいけないだろう!)」
「(上にデグレチャフ姉弟は前線に戻りたがっていると言う事を伝えておこう)」
「兎も角、上は貴官等を評価している、兵站総監部による新型宝珠のテスト、それには貴官等のような優れた魔導士が必要不可欠なのだ。何か異議は?」
「ありません、ターニャ・デグレチャフ、アーデルハイト・デグレチャフ両名配属先命令を受領いたしました」
「これより、クルスコス陸軍航空隊試験工廠に向かいます」
クルスコス陸軍航空隊試験工廠、アーデルハイト、ターニャ・デグレチャフ少尉の個室。
ぐ…、体がだるい…、これはただの魔力消費による物ではないな…。
仕事に行きたくないとか言う無能を数多くリストラしてきたがなるほど、こういう心情だったか。
「アーデルハイト…、起きてるか…」
「姉さん…、起こしてください…」
「貴様は母親に起こしてと頼む子供か…子供だったなそういえば」
どうやら弟もそれなりにダウンしている様だ…、まぁそりゃあ仕方ないだろう、あのイタリアの着発信管の手榴弾並みに不発率が高い代物だとは聞き及んでもいない!
だが起きねばなるまい…、私は軍人でここは軍隊、どんな理不尽も受けなばならない。たとえどんなやる気のない任務であろうとも!
「おはようございます。Drシューゲル」
「おやおやデグレチャフ姉弟、今日も時間前配置とはやる気十分の様だな」
「はい、では我々は行ってまいります」
同試験工廠上空高度一万二千地点
『現在高度一万二千、デグレチャフ少尉意識はありますか?』
「こちらターニャ・デグレチャフ、アーデルハイトも一応意識はあります」
「こちらアーデルハイト・デグレチャフ、ハッキリ言って生身だとこれ以上の高度は不可能と判断します」
従来の宝珠では限界高度は六千、それ以上は推進力や諸々が足らず重力を振り切ることができない。
よって、私とアーデルハイトの見立てでは航空魔道兵は小回りの良さと制空力、対地能力を生かす運用が必須。
そう、さながら攻撃ヘリのような。
だが、この試製演算宝珠エレニウム九五式は全くもって勝手が違う。エンジンと同じで足らないなら増やしてしまえといいう発想の元宝珠核が4個に増設されている。
そのため魔力を底なしに食う上に少しでも集中力を乱すことがあれば…。
「うわっ!機関部宝珠核温度急上昇!」
「おいアーデルハイト!大丈夫か!?って私のも!」
「異常発生!パラシュート降下をする!管制!聞こえるか!」
『了解しました、いますgちょドクトル!?やめてください!離れて!離れてください!』
『ええい黙りたまえ!無線をよこせ!』
まさか…
『またか!またなのかねデグレチャフ両名!』
うるさい!無線先に怒鳴り散らかさないでほしい!
「言わせていただけるのであれば!私の方こそまたかと言わせていただきたい!」
『君が集中を欠くからでないからかね!!それでも軍人かね!!』
「帝国軍人の職務は間違っても欠陥品のご機嫌取りではありませんよ!」
『何ぃ!?貴様欠陥と言ったか!?』
あのMADめ!さすが安全機構は機能美が無いから除外したかったという人間だ!これが飛行試験でなく射爆試験であったなら私らは今すぐにあのMADに誤射してやりたいことだ。
『この4核同調と言う技術が!!ど!れ!ほ!ど!革新的な技術であることがなぜわからない!?』
「ドクトル!我々が望んでいるのはあくまで実用的な水準です!」
『その為に実験をしているのでは無いのかね!?』
だめだこのMAD、言葉が通じない。
よし、出そう、転属届。
幕間ネタ
-
ターニャとアーデルハイトのイチャラブ
-
アーデルハイトとバートリー少尉
-
総統閣下シリーズ
-
連隊各中隊長ズの何か