今回はちょっと難産でした。
では、どうぞ。
「そういえば、ルーデルドルフ閣下と面会を頼みたいのだがよろしいですか?」
「それどころかもう既にお呼びがかかっている、今すぐにでも、との事だ」
「は!」「了解です」
どうも皆様、帝国軍魔導中佐ターニャ・フォン・デグレチャフと、
弟の帝国軍魔導少佐、アーデルハイト・フォン・デグレチャフです。
今は、冬季攻勢おける参謀本部の真意を確かめるためにルーデルドルフ少将閣下の元へ着いた所です。
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北方ノルデン帝国軍駐屯拠点
ルーデルドルフ少将執務室兼参謀本部北方派遣団臨時司令部。
我々は葉巻を燻らすルーデルドルフ閣下の背中をジトリとにらむ。
それを感じ取っているルーデルドルフ閣下は少しどうしたらいいかと困っている表情で口を開き始める。
「君らの言わんとすることはわかる」
「閣下、率直に申し上げますが目下の情勢を勘案すれば冬季攻勢は無謀です!」
「なぜ、お止めにならないのでしょうか」
「二人とも、私は本音で話してほしい」
「閣下、謹んで申し上げますが我々は参謀将校であります」
確かに、言いたいことは多々ある。
ですけど、閣下の前だからこそ、帝国の参謀たる姿を固守しなければならないのですよね…。
「(駄々をこねるのを我慢する孫たちと言うのもかわいい物だな)」
「御諮問に対してはこれ以上のことを申し上げうる立場にないと両名ともに思考いたします」
「なるほど、わかりやすい。結構だ」
「ご理解いただけましたか、ありがとうございます」
厳寒期の戦争…、それこそ機械兵器を取り扱う近現代戦において寒さは最大の敵である。また、歴史上季節の変わり目での短期決戦は数少ない例を除き失敗する。
なぜか?天候というのは非常に気まぐれだからだ。
そして、厳寒期になり進軍が止まるとその止まった内に相手は体制を立て直す。
それこそ、ドイツ第3帝国がロシアの冬将軍にその足を止められた内に、共産主義者共は体制を立て直し猛反撃に出た。
そこから先は語るまでもないだろう。
それほどに、冬というのは近現代戦において猛威を振るうのだ。
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[side:ルーデルドルフ]
ふむ、面白い意見表明のやり方だ。礼儀正しくもあり、辛辣でもあり…。
二人とも物言わずとして参謀将校として許されないほどの罵詈雑言をたぎらせている。と物語っている。
我が国の官僚どもにも見習ってほしいが…。
その考えに、一瞬ゾワリと背中が疼く。
彼らのセンスは帝国を超えている?そんなバカな、齢十一と九つの子供であろう…。
「…ゼートゥーアのやつが高く買うわけだ」
小声で私はそう呟く、よし、ならば…。
「よろしい、ならば本題だ」
私はそういうと書類入れからノルデン戦域の地図を取り出し、机の上にバッと拡げる。
「問題の冬季侵攻だが…、牽制作戦として見た場合どう評価すべきだろうかデグレチャフ君達」
「ほぼ間違いなく、助攻としては完璧なタイミングであります。…失礼、別の主攻を前提とした、陽動という事でありましょうか」
自らの主張である春季でなく、冬季攻勢での意見を振られ手持ちの材料できちんと思考出来るか否か、デグレチャフらの意見を聞いたが…。
悪くない。
参謀将校に必要な醒めた感情を持ちつつ、前線指揮官として猛勇を振るえる稀有な人材だ。
__いや、この頭の回転の速さは…、慣れ?
師団や軍団を率い、戦域規模で戦況を俯瞰し、兵や兵器を消費する思考を持った者がたどり着けるある種の境地でなかろうか。
「この冬季攻勢が複数の戦場へ与える影響を、予測してみたまえ」
[side:デグレチャフ]
「少なくとも、フランソワ共和国や後方諸国の目がノルデンに向くことで、ライン戦線での攻撃発起点が誤魔化されるというメリットは…」
はっ。と、ある考えが浮かぶ。
これを利用して閣下はフランソワに一大攻勢を仕掛けるおつもりか?
だとしても、現在のラインの戦況や現状の戦略予備を考えるとかなり難しい話ではある。
「加えて、上手くすれば義勇軍などの敵増援をノルデンに拘束できる見通しもあるわけだが」
確かに、それもあり得なくはない。だが、それを考えるとやはり補給線が持たないだろう。
レガドニア協商連合+義勇軍…、それほどの部隊を相手にするならばやはり万全を期す必要がある。
万全を期すまで待つのであれば目標の冬季攻勢は見送らざるを得ないだろう。
それ程にまで、万全を期すには準備がいるのだ。
ふーむ、どうしたものか…。
「(…姉さん、一つ思いつきました)」
「(なんだ?)」
「(別にわざわざ
「(ああ、まぁ確かにそうだが…)」
確かに正面突破する必要はない…、ん?待てよ?
「閣下、お言葉ですが、北方戦線に対しフランソワ共和国がライン戦線が手薄になるほどの増援を出すとは思えません」
「逆説的に、冬季攻勢はノルデンにおける戦略目標を担うための…、陽動作戦と見られるでしょうと僕は考えます」
「…、続けたまえ」
「率直に申し上げますと、」
「「敵戦線後方を扼するおつもりではありませんか?」」
[side:ルーデルドルフ]
全く驚かされる、帝国の頭脳たる参謀本部が冬季攻勢に見出した方針を…。
「我々が命じられたのは空挺作戦への準備です、北方軍主力である種の陽動を行い…後…方に…。後方に?」
一介の中佐が自身の閃きによってその答えを導き出そうとしているッ…!!一体何の根拠でッ…!!何の経験を以ってッ…!!
「どうしたのかね?中佐」
[side:デグレチャフ]
このシチュエーション。どこかで見た記憶がある。
聞いた覚えがある…、どこで…、何時…?
間近に迫った冬、見えざる義勇軍の脅威、海を隔てた補給拠点、陽動、前線での敵戦力の拘束…。
「後方への襲撃…なぜか?後方の補給線を断つため…」
考えるうちにいつの間にか声に出ていたのを聞いたのか。眼前のギョッとするルーデルドルフ閣下をよそに、私は思考を続け散らばった記憶のピースを組み直す。
なんかのニュースで見ていた、いや、ニュースだけでない。地形の類似性…、何かが引っ掛かってはいるが思い出せん!
一体何だったか…、くそ、名前が出てこない…!
「(まるで、上陸作戦ですね…)」
上陸作戦?ああ、そうだ、
仁川上陸作戦!そうだああそうだ!あのコミュニスト共の背中を思いっきり蹴飛ばした愉快痛快なあの才覚乏しきマッカーサーが思いついた奇跡の作戦!ただでさえ伸び切った補給線を失い、思いっきり分断された限界寸前のコミュニスト共は見る見るうちに背後から国連軍に包囲をかけられ文字通り瓦解し殲滅された会心の一撃!!
「閣下!」
いつに無く、大きな声を出してしまうがそのまま私は続ける。
「敵主力が前線にひしめき合っている状況下にあっては敵後方の上陸作戦は一つの解決策ではありませんか?」
「敵の主力を完全包囲に持ち込み、かつ敵の兵站線を利用し我が方の兵站限界を維持するのです」
「北方方面軍主力で敵主力を拘束しての、航空魔導師による空挺降下…、たとえばそう、オース市への空挺降下」
そう、かの仁川上陸作戦成功後の国連軍も仁川から繋がる補給線を利用して自軍の兵站を保った。
なれば、我々も歴史に学ぼうではないか。
「おそらく、我々の目標はオース市への空挺降下によるオースフィヨルドの沿岸砲台を沈黙させ、大規模上陸作戦を敢行…」
「つまるところ、北方方面軍の冬季攻勢を上陸部隊の為の陽動だとするおつもりでしょうか??」
[side:ルーデルドルフ]
…凄まじいな、我々帝国の頭脳たる参謀本部が練りに練って絞り出した一つの作戦を、このような自分の孫くらいの年齢の子供に暴かれるとは…。
双銀、恐ろしきかな。
「…二人とも、ゼートゥーアの意見を耳にしたのか?」
私がそう聞くと、二人は何のことやらとキョトンとした顔をして
「は?仰っていることがわかりかねます」
やはり、この姉弟は何の事前情報もなく、あの地図と状況分析だけでこの結論を導き出したというのだ。
嫉妬したり軽蔑する気はないが、少し気味の悪いモノを感じる。
我々にとっては二人がヴァルキューレのようにしか見えないが、片や敵方からは悪魔と呼ばれ、片や死神と呼ばれている。
ふむ、なるほど、士官学校時代にあの論文を書いただけの事はある。あの時は鉄道部を、戦略課を、そして今度は参謀本部を。
聞けば、彼らは帝国と秋津洲皇国の同盟の為、外交使節や関係各所への挨拶回りをしたり。新型中戦車の開発にも顧問として招かれている。
帝国の為、この姉弟が働きまわっている事は数知れない。
それには、我々もハッとした。考えれば、帝国は軍事的優位を背景にした棍棒外交的な立ち回りに必然的になってしまっていた。
だが、彼等はギブアンドテイクで秋津洲皇国と国交を結ぼうと働いている。
これは、戦争の仕方しか知らない我々にとってある種の成長であると考えている。
こう考えると二人はまるで、我々の随分先をどんどん歩んでいるような…。
…おっといけない、空想癖はまた後だ。
「ふむ…興味深い…、意見具申だったと言うべきだろうな」
「結構、やはり貴様の部隊を使うとしよう。中佐、少佐、貴様らの部隊は軍港にて待機しろ」
「「はっ!拝命いたします!」」
「重要な任務、光栄であります」
「(外見だけ見れば…、お使いへ喜んでいく子供だが…)」
いやはや戦争とは、何が起こるかわからない物だな。
「揚陸戦に際して、先遣の空挺降下だ。貴様の部隊には全軍の先鋒となってもらう」
「貴官らには…大いに期待している」
これほどの頭を持った先鋒、悪くない。
前に進む為、槍の矛先として大いに役立ってくれるだろう。
そう言って、私が彼らの後ろに来たところで、アーデルハイトが一つの疑問をぶつけにきた。
「閣下、一つよろしいでしょうか?」
「何だね少佐」
「閣下がこの様な腹案をお持ちであるのであれば、北方方面軍の攻勢を牽制するよう小官に示唆する必要は無かったのではありませんか?」
ふむ確かにその通り、攻勢に出ようとする北方方面軍を牽制し、嫌な蟠りを無理に作りたくはない。
「(かねてよりゼートゥーアが主張していた補給の問題。隠すほどのことでもないか)」
「何、ゼートゥーア少将の条件だ」
「は?」
「彼に言わせれば、レガドニア協商連合など放り捨てて、内戦戦略の充実を図るべきだと」
[side:デグレチャフ]
少将閣下のその言葉に、私は少し驚いた。
やはり、私の真意は間違っていなかったのだと、ここで再確認する。
「どちらも一理あるが故に、もし北方方面軍が同意したならば貴様らをラインに送ってせっせと我々は越冬の準備に取り掛かったことだ」
何が原因なのかわからない。
閣下らの才覚かかもしれない。
私やアーデルハイトが外交戦略を以って場を整えたせいなのかもしれない。
どちらにしろ、現実として、参謀本部の中枢でパラダイムシフトが起こりつつある。
よかった…、参謀本部は、帝国は泥舟ではないと、心の中で安堵する。
であれば、この家族と共に、平和な未来を勝ち取るまで、戦い続けよう。
私の未来の為、祖国の為。
弟の…、為に。
To Be continued…。
お読みいただきありがとうございます。
いやはや…、ちょっとずつ、ちょっとずつ参謀本部の思考が変わっていってますね。
次回!オースフィヨルド攻撃作戦!
では、また
幕間ネタ
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ターニャとアーデルハイトのイチャラブ
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アーデルハイトとバートリー少尉
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総統閣下シリーズ
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連隊各中隊長ズの何か