幼女戦記 〜ターニャの家族を添えて〜   作:焼け野原主任

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どもども、いろいろ突っ込み過ぎたせいで思ったよりもレガドニア編が長くなりそうな焼け野原主任です。


では、どうぞ…。


第二十二話、思わぬ邂逅1

「初めまして双銀殿。私、秋津洲皇国海軍少将の山口多聞と申します」

 

今、私の目の前には、人殺し多聞丸と言われた男がいる。

秋津洲皇国…、と言うかほぼ大日本帝国海軍の海軍服に包まれたでっぷりとしたその体からはえもいわれぬオーラを感じ、垂れ下がった目は一見優しそうに見えるが…その瞳孔は覇気たっぷりだ。

彼はドイツ語で話していたが…、こちらは元日本人、日本語で喋れる。

 

[初めまして山口殿。小官は帝国軍魔導中佐、ターニャ・フォン・デグレチャフと申します]

 

[おや、秋津洲語が喋れるのかね]

 

山口少将が少し目を開いて驚くが、まぁそこは皇国軍人。直ぐに空気を取り戻す。

 

[はい、少し勉強しましたので。そしてこちらが…]

 

[僕が弟の帝国軍魔導少佐、アーデルハイト・フォン・デグレチャフです]

 

[ふむ、姉弟揃って軍属とは。何というか…]

 

[違和感の塊ですか?]

 

[いや、俺の所にも居るのでね。子供の魔導師は]

 

[それはそれは…、必要が無くなる日が来るといいですね]

 

弟の言う通り、自分でも忘れそうになるが私らだって子供だ、そう簡単に戦場に出ていい年頃ではない。

 

[side:多聞丸]

 

この姉弟、会った時は何者かと思ったが…。

何度も死線を潜り抜けているだけあるなぁ、覇気が普通の軍人の持つそれと違う。

そして、流石に帝国の軍事的外交戦略の一部を担ってるとはいえ秋津洲語話者とは思わんなぁ…。

となると可能性はいくつかあるが…。

 

[ふむ…、少し聞くが君、長く白い髪と、それと同じ色をした髭をした巨躯の半裸のおっさんに出会ったりしたかね?]

 

[は?]

 

____

 

急にそう問われてしまった。

一瞬何を言っているのだと思ったが、私の記憶の中でその特徴に該当する奴は一人しかいない。

 

そう、存在X(神を自称する悪魔)だけだ。

 

山口多聞は、それに会ったのか?

そして、だ、それを知っていて尚かつ私にその質問をしたことを考えるに彼もまた私と同じ転生者?

…なんかいつだったか似たような展開の漫画を読んだことがあるな。

 

 

だが、何故私が転生者であることがバレた?

 

[(日本語で話しててよかった)何故、その質問を?]

 

[秋津洲…、もう日本でいいか。に来ていないと思われるのに日本語がかなり流暢なのでね。もしやと思ったが…、当たりかね?]

 

[そういう山口閣下こそ、そうじゃないのですか?]

 

[ふむ、それもそうだなぁ。轟沈する飛龍艦上で走馬灯でも見てたら自称神によってこの世界に連れてこられたって感じかね]

 

過去世界でもそんな事やってるのか存在X。

そう思うと、少し苦笑いしてしまう。

 

[さて、話は変わるが我々皇国海軍本来の目的は双銀との接触でね。君らがどこにいるかがわからん状態だったモンでなぁ、とりあえず皇国上層部の判断の元連合王国に向かって支援は停止させた。その後に運良く帝国の海軍を見つけたモノだからとりあえず接触を図ったワケだ。そしたらビンゴ、こうやって会えるとは思わなんだ]

 

[…はぁ…]

 

言っている事がわからない、いや、連合王国の一件は理解できるが何故そこで行動に移すのか理解に苦しむ。

 

[…で、わざわざここまで来て頂いて貰ってなんですがご用件は?]

 

弟がそう聞く、そうだ、それがわからない。

接触…と言うに何か用があると見ている、ただ会いに来たわけではないだろう。

 

[用件は…、

 

二人とも、皇国に来てくれないか?]

 

 

 

 

[[は?]]

 

本日2回目の困惑、秋津洲皇国…要するに日本へのスカウト、と言うことだ。

 

[何故…でしょうか?]

 

[何故と言われてもな…、これは海軍のお偉方が決めた事でね。皇国の魔導戦力増強の為に軍事顧問として来てほしいと]

 

これは…、国外とはいえ後方勤務のポストが手に入ると言うことか?

それならこのチャンスを逃すハズも無いが…、

 

[それは二人にとって誠に嬉しいお誘いですが、流石にこの場で全ては決められませんので]

 

[ふむ…、双銀は前線勤務を望んでいると思っていたが、違うのかね?]

 

それは違う、弟との安全な後方勤務を獲得する為に戦ってはいるが普通に前線勤務なぞまっぴらごめんだ。

 

[確かに、それもある意味間違いではありませんが…、家族と平和に過ごせれることができればそれでいいのです]

 

[なるほど、相わかった。白銀は平和を求めて、戦い続けると]

 

[軍事顧問の件は参謀本部や外務省に問い合わせてくださいな、山口閣下]

 

[ああ、そうするとしよう]

 

山口閣下はそういうと長門が停泊している方へ戻って行った。

 

「…」

 

よっっしゃぁぁぁ!!!!

他国の高官からの実質的な後方勤務の約束!やはり頼るべくは神よりも権力だ!

これで私は軍事顧問として皇国へ向かい、皇国魔導師への軍事教練に励みながら故郷で安全に幸せに暮らせる!!

山口閣下がどこかへ向かった頃に私は大きなガッツポーズをした。

 

「姉さん、よかったですね!」

 

喜びの余り目をキラキラさせてアーデルハイトが私の方を見る。

 

「ああ、全くもって喜びだ!」

 

[side:多聞丸]

 

あの姉弟の元を離れ、戦艦長門に戻る途中に私の副官が私が話しかけてきた。

 

「司令官殿、本当に良いのですか?」

 

「ああ、私は海軍の上層部と、自称神にそう言われただけでね」

 

「またその自称神ですか、なんて言ってたんです?」

 

「「彼の姉弟を前線から遠ざけろ」とな、全く、お()の考えてることは全くもってわからんなぁ」

 

「全くです、いくら神でも子供が戦うのは見たくないという事でしょうね」

 

副官が同意の意を示す、全くもってその通りだ。

だが、私の勘が何となく示している、あの神が考えている事はそんな単純な事では無いのだと。

 

「なぁ"飛龍"、お前、アレで良いのか?」

 

隣にいる黄色の着物に緑のスカートを着けたボブの髪型の魔導師に聞く。

 

「良いんじゃないのかな?多聞丸…いや、"父さん"だって私が戦場で戦うのは嫌でしょ?」

 

「お前にそう言われちゃ仕方ねぇか。まぁそりゃそうか、マトモな奴なら子供が戦うのを見るのは嫌だろうな」

 

俺はそう言い切るとふぃー、とタバコを蒸し、雲一つ無い青い空を見上げる。

 

「(何の因果かまた帝国海軍で戦うことになるたぁな、そしてこの世界じゃ魔導師とかいう前の世界じゃ御伽話の存在だった物が一般的に知られている。皇国じゃあ何故か魔導師の数はあの合州国…、前世の米帝が持つ数すらも軽く越す。皇国ではそれを利用した魔導師を中核にしたドクトリンが一般的だ)」

 

「(何故この世界に呼ばれたのかはわからない、だがなぁ自称神サマ。貴公の希望は思ってる通りに叶わない気がするんだよなぁ…)」

 

この何ともいえない不安は、後に世界を揺るがす大事件に繋がる事を、俺はまだ気づかなかった。

 

 

 

[side:デグレチャフ]

 

「姉さん姉さん、早く行きましょうよ!」

 

「ああ、そうだな…、だがアーデルハイト。少しいいか?」

 

「何ですか?」

 

何故お前は秋津洲語が喋れる?(・・・・・・・・・・・・・・)

 

私が先ほど話した事からの疑問を投げかける。何故こんなにも日本語が流暢なのか、私はまだいい、転生前が日本だったから。

だが、なぜアーデルハイトが喋れる?もちろん私は教えた覚えも無いしアーデルハイトが勉強をしている所を見た事がない。

 

「…」

 

「答えろ」

 

数秒の沈黙の後、アーデルハイトが話し始めた。

だが、そこから先を聞かなければ良かった。

 

「…僕は、一回殺されました。ルーシー連邦との戦いで都市部に包囲をかけられ、相手の物量差で二〇三連隊は壊滅。捕虜として捕えられた僕と姉さんは…、姉さんは…」

 

「…」

 

弟の言葉に何も言えなかった、だが、何故か自然と腑に落ちてしまった。

ルーシーに捕虜になった私とアーデルハイトは筆舌に尽くし難い行為を受け、私は舌を噛み切って自殺したと言う。

第二次世界大戦末期になり、火事場泥棒的に日本に宣戦布告したソ連が占領した樺太や、北方領土でやった事を考えれば可能性はあるだろう。

と言うとは、私は今の人生前世含めれば三周目と言うことになる。

因みに、日本語は私が教えたらしい。

しかし、残念なことに今の私には2週目の記憶がない。だが、存在Xは私に対して信心を起こす為にまた再度人生を歩ませようとするのか?

 

だとしたら、実に外道であるとしか言いようがないだろう。

 

存在X、私は絶対に貴様には屈しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん…?でもちょっと待てよ?

 

だったらあの時の存在Xの発言と矛盾が生じる気が…。

 

〈貴様にとって大切な物は大切で不可侵であってほしいだろう?〉

 

…まさか、あいつは私に戦えと言うのか?

 

確かに私にとって家族は大切だ、今私の目の前にいる血を分けた弟だって…。

 

 

大切な…ことに…、変わりない…。

 

 

 

 

ならば何故、二週目の世界で私は弟を守れなかった?

それは…、私が無力だったから…。

 

無力だから?ならば今世でやることは?

私は…それを償わなければならない。

 

ならば、貴様のやることは何だ?

たった一つの肉親を守れなかった罰を、この世で償わなければならない…。

 

ギシギシと、私の心の中で何かが歪み、その歪みはやがて脳を蝕む。

 

「もう、大丈夫だ…。姉さんが、守ってやるからな」

 

私はそう言って目の前の弟を笑顔で抱き寄せたが、自分のその目は笑っていなかった。

私の中で、歪んだ決意が生まれ落ちた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

そこから少し時間は経ち、帝国軍の海岸線に面した特設試験場に我々はいた。

私ら以外にも何人か人がいるが、それは全てこの戦車の開発関係者である

 

ブロロロロ、と戦車のエンジン音が試験場に響きわたる。

 

試験場内に設置された障害物を乗り越えながら、新型中戦車パンターが走り続ける。

 

「フォッフォッフォ、思った以上の成果ですな」

 

もうこの手の話には付き物になったアルグス氏を始め、砲開発に携わったアリア氏。

秋津洲皇国からの技術士官や外交官である伊集院氏など、錚々たる面々が集まっていた。

 

どこからも感嘆の声が聞こえ、試験が終わった時には自然と拍手が起きていた。

 

「お疲れ様です、エルンスト中尉」

 

「ありがとうございます少佐殿、いや〜…、新型と思って少し緊張しておりましたがティーガーと操縦系統を共通化してるんですね」

 

「ああ、そうすれば訓練課程の短縮が可能だからな。後生産性の面でもティーガーの変速機をほぼそのまま載せてるから部品も共通性が多い」

 

できる限りの規格の統一化、今回は重量57tのティーガーを支える変速機をほぼそっくりそのまま載せた。だからティーガーの生産ラインを切り替えることで精密部分の生産を簡略化できると言うことだ。

因みに今回の試験では各戦線で配備されたティーガー初期型の問題点を一部解消した改修型の試験も行われた。

 

改修内容は…。

ギアの摩耗を減らす為に変速機のパーツそのままに構造を変更、ある程度の高速でも故障なく長距離の行軍が可能になった。

因みに、故障の問題でモーター駆動により変速機を省略できるポルシェ社案のティーガーをある程度生産し行軍距離が長くなりやすい東部戦線に配備する案が出ている。

 

車体に搭載していたSマイン発射装置を廃止し、車体後部に煙幕散布装置を搭載したといった小改修である。

 

 

 

一通り試験が終わり、来賓紹介へと移る

 

「改めまして、パンター戦車を製造するに辺り、ご助力くださったノルデン戦友会、帝国軍人友の会の方々、生産の引き継ぎを行ってくださったMAN社の方々。共同開発に携わったヘンシェル社、クルップ社の方々。そして、支援にあたり各所に呼びかけを行ってくださりました帝国軍魔導中佐ターニャ・フォン・デグレチャフ氏、同魔導少佐アーデルハイト・フォン・デグレチャフ氏___」

 

 

 

 

「はぁ…やっと終わったか」

 

 

 

[おや、双銀殿]

 

 

長ったらしい来賓紹介が終わると、聞き慣れた日本語が聞こえてきた。

 

[…何用ですか?山口閣下]

 

[いや、君らがここにいると聞いたんでね、ちょっとした連絡ついでに立ち寄ってみたんだが…]

 

[…関係者以外立ち入り禁止ですよ?]

 

[そもそも寄る予定だったんだ、この話そのものは伊集院くんに聞いていたのでね]

 

[(おいおい…)]

 

そう思いつつ伊集院憲昭氏の方を向くとめちゃくちゃ此方に頭を下げていた。

…彼も気苦労が絶えないな…。

 

[わかりました、して、その通達とは?]

 

[ライン戦線がひと段落ついたら皇国への軍事顧問としてしばらく行ってきて欲しいとのことだそうだ]

 

[(な…!)]

 

パァ、と自然と頬が緩んでしまう。

 

ついに念願の後方勤務、そしてあの懐かしの故郷日本へ行けるのだから。

 

[やったぁ!]

 

突然、弟が私に抱きついてくる。

突然のことだったので対応が取れず、よろめいてしまう。

 

[おわ、アーデルハイト!]

 

[これで、やっと我々の魔導師のまともな演習相手が来そうだ]

 

 

…………………ん?

 

 

To Be continued…。




お読みいただきありがとうございます。

ようやっとライン戦線がひと段落ついたらと言う条件の元念願の後方勤務を手に入れたデグ様。

良かったですね(目逸らし)

幕間ネタ

  • ターニャとアーデルハイトのイチャラブ
  • アーデルハイトとバートリー少尉
  • 総統閣下シリーズ
  • 連隊各中隊長ズの何か
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