今回は…わりかし漫画版準拠になります。
ピンコロさん
コメントありがとうございます!
忠犬友の会さん
誤字報告ありがとうございます!
統一歴一九二五年十二月五日
レガドニア協商連合国内アーネルスネ港。
第一管理棟内では、レガドニアの中枢たる十人評議会の面々が佇んでいた。
「敗北…か」
「ええ、敗北です。レガドニア協商連合
「まさか、アルビオン連合王国が手のひらを返すとはな…」
オース市の陥落によりレガドニア協商連合は事実上敗戦した。
だが、政府要人を第三国に逃れさせ、政府機能の一部を存続させることで仮初に近いが国はまだ滅んでいないと言う主張ができる。
これを亡命政権と称する。
これの受け入れ先としてレガドニア協商連合政府はアルビオン連合王国を選択していたのだが、
フランソワも受け入れを受諾しているが、彼の国ではいずれ帝国に負け、結局結果は変わらない。ならばもうこの際潔く降伏してしまった方がいいだろうというのが十人評議会の出した結論である。
「…遂に降伏文書に署名する時が来たか」
「はい、我々は帝国に負けたのです。前政権の政治的ナショナリズムによる帝国との係争地への大規模な行軍、これが始まりでした」
「我々は戦争が始まる前から敗色が濃厚だった。フランソワやアルビオンの支援がなければ我々はダキアの様に早々と負けていただろう」
そもそも、帝国と我が国では国力差が圧倒的である。相手は潤沢な金属資源を掘り進められる事に起因した兵器の大量生産。
それに石油資源も秋津島皇国との同盟により石油資源が売り渡され、ダキア内にあった油田を占領し石油問題も解決された。
…何だろうな、この感覚、これが初めてではない様な感覚だ。
いや、違うだろう。帝国ならこうすると頭の中で分かっていたからこそ二度目のような感覚になるのだな。
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[side:アンソン]
「お父さん!一緒に行けるんだね!」
「ああ、そうだ」
私はオースフィヨルド防衛戦で左腕を失い、傷痍軍人として後方に下がった。
これでも軍属と言う立場上、運の良い事に家族を国外へ逃がせることが選べる立場であったのは喜ばしかった。
そして、幸か不幸か私も傷痍軍人として家族と共に国外へ逃げることが許された。
いや、他の軍人は家族と共にあれない中、左手一本の犠牲で家族と共に平和に暮らすことが出来るのは運がいいとしか言えないだろう。
もちろん、国を置いて逃げるなど到底許された行為ではない。
だが、この体で国に尽くせることなど高が知れている。
「あ、お父さん」
「ん?どうしたメアリー」
「出航までにちゃんとお髭は剃ること!」
「ああ、分かったよメアリー」
死神にこの手で引導を渡せなかったのは口惜しいが、この体ではそんな事も出来ないだろう。
そう言えばあの死神共は姉弟…だったか?確かそんな話を聞いたことがある。
「(考えてみれば、いくら死神とは言え私とて家族を引き離さんとしていたわけだな…)」
やはり、そう考えるとかの姉弟にはちゃんと後方で親と共に静かに暮らして居て欲しい物だな…。
結論として、子供を戦場に連れて来るべきでは無い。もし、子が戦場で死んで仕舞えば、私とて悲しみに明け暮れるだろう。
子が親より先に死ぬ以上の親不孝はないのだから。
家族と触れ合う機会が少なかったからこそ、私は戦う事に疑念を抱きにくかったのかもしれない。
考えてみれば当たり前だ、誰にだって家族はいるのだから。
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帝国北方領域海岸都市の高級レストラン。
[side:デグレチャフ]
今、私の目の前には所狭しと並べられた料理の数々が並べられ、その料理の数々に舌鼓を打つ。
素晴らしい、前線では望み得ない丁寧な仕事の数々、これぞ人類が愛すべき文化の検証である事間違いなしだろう。
そして、その料理の先では在郷軍人会の方や企業の幹部、そしてまたもやいる山口閣下とその副官兼通訳などのお歴々も話に花を咲かせていた。
「いやはや、皇国の海軍の将軍もこられるとは、双銀殿の人望も厚いのですなぁ」
「いえいえ、私の方からいらしたのですから。双銀殿には煙たがられるかもしれませんがな」
「そんなことはありません、かの山口閣下が来られるのは予想しておりましたので」
「それにしても、お二人がノルデンの方から持ち帰られた蒸留酒は見事な物ですな。それに、山口閣下の持ち寄られた醸造酒もシンプルで料理に合いますな」
「こちらの大吟醸以外にも多く持ち寄っていますので、よければお届け致しましょうか?」
「おお、それはありがたい」
[(おい待て山口多聞、お前そんなに持ってきていたのか。)]
通訳に聞こえないよう、小声で話す。
[(君もいるかね?ラベルは日本語だからそう簡単には読めないぞ)]
[(有り難く頂こう、因みに白龍はあるか?)]
[(ああ、持ってきている)]
[(なら頼んだ)]
同じ転生者ということで、いつの間にか砕けた口調で話しているが当の本人も気にしていない様子だ。
因みにこの前砕けた口調で話していた事に気付いて謝罪したが…
[俺は別にかまわん、それに精神年齢は互いにそんな変わらんのだからね]
だそうだ。何というか…、やはり多聞丸は多聞丸なんだなと思った。
さて、一時間ほどの会食も終わり、これから中央に戻ろうと思うが…。
「中佐殿、お電話になります」
「(電話…だと?)」
メインディッシュを食し、デザートを食べ終わった後。
席を離れる頃になると、ウェイターがそう言ってやってきた。
「もしもし」
『ターニャ中佐とアーデルハイト少佐かね?参謀本部のゼートゥーア少将だ』
電話の相手は上司であるゼートゥーア少将だった、一体何の用事だろうか。
『すでにルーデルドルフにも伝えているが貴官らの二〇三連隊は一回中央に戻って来てくれ』
「は、移動手段に制限はありますでしょうか?」
『特に無い、ああ、アーデルハイト君、四号戦車は現地部隊に引き渡しとなる』
「了解いたしました」
『そう言えば、そこに今秋津洲の将軍はいるかね?』
山口閣下のことだろうか?
「はい、山口多聞少将閣下がいらっしゃいますが…」
『なら良かった、その方に変わってくれるか?』
「は」[山口閣下、お電話が]
[私にかね?]
[はい]
山口閣下と通訳が電話の方に向かい、通訳が私が手渡した受話器を取る。
五分ほど話した後、途中で閣下が受話器を持ち、また五分ほど話した後閣下が黒電話特有のカチンという音と同時に受話器を置いた。
[双銀達、私も君らと共に中央に行く]
[わかりました]
[了解です]
「ご苦労(様だ)」
そう言って私とアーデルハイト、山口閣下はウェイターにチップを渡す。
おいおい渡しすぎだろ、ウェイター困るぞ。
「御三方、いかがなされましたかな?」
「申し訳ありませんが軍令です、小官らはこれにてご退席させていただきます」
「また、お誘いいただければ幸いに存じます」
彼らは思った、唐突な軍令に対しここまで落ち着きを払った態度を取れる兵がいただろうかと。
現実味のない光景である、軍服を着た十二歳と十歳の子供が軍令を受け職場へ向かう姿は神々しくも見え、その会食に居合わせたすべての有力者達が、双銀が戦場で舞う為のならば幾らでも援助しようと思わせるほどの、印象を与えていた。
その様子を見ていた多聞丸は、
「(ふむ…、幾ら彼女らが戦争を離れるような働きをしようと彼等無くては戦争は成り立たないだろうなぁ…)」
「(つまり、ある意味あの姉弟は戦場から離れられない呪縛を知らず知らずの内に自分らに科してしまってるのだろう)」
「(これはかなり面倒だぞ?自称神のおっちゃん)」
その一連の流れを持って、その三人がウェイターと共にレストランから出る。
「御三方、お車が到着しております」
「(気の利くボーイが知らせたのだろうか、チップを惜しまなくて正解だった)」
「誠にありがとうございます」
そう言って弟が一礼する。
それに慌てたボーイが
「と!とんでもございません少佐殿!中佐殿!どうかご武運を!」
「なんだ?私らを知っているのか?」
「失礼ですが、ノルデンの戦果は号外新聞にて出回っております。白銀を知らない者はこの北方都市におりません」
「そうか、それは嬉しいがその手の話と言うのは誇張されて伝わるのが常だ。あまり真に受けない方がいい」
「はっ!(なんて謙虚な…)」
山口少将と共に車に乗る。
「クラート伍長、一時帰営する。山口閣下がいるから余り飛ばすな」
他国の高官が乗っているのだ、飛ばしすぎて不快な思いをさせては今後に響くかもしれない。
「構わん、行け」
そう山口閣下が言った、あのなぁ…。
「…だそうだ、飛ばせ」
「
さて、一時帰営するからには部隊の集結を行わねば。
さて…移動の間戦略的な事を考えてみよう、大局的に見れば北方でのカタが着き始め、戦域全体を睨んでの防諜を徹底した配置転換を行っている。
戦果を挙げた二〇三連隊を新聞で報じる事によって他国は当然、我々が中央に戻ったと考察するだろう。
ゼートゥーア閣下はそんな他国の考察通りに我々を中央に戻すと言うのだ。一体何を考えている?
字句の通りただパンターを受領しに行くだけの話ではないだろう、可能性が一番高いのはライン戦線への再配置だ。
北方が片付いた今、次に蹴りを付けるはフランソワの連中だろう。特に否定する要素もない。だが行動が早すぎやしないか?
…いや、それだけ補給線にボロが出始めていると言う事だろうか?ふーむ…。
[なぁ、弟よ]
[何でしょう姉さん]
[今回のゼートゥーア閣下からのお呼び出し、どう思う?]
[さぁ…、少なくともパンターの受領だけではない気がします。おそらく西方ラインへの転属の可能性が高いかと]
[お前もそう思うか、ゼートゥーア閣下が何をしたいのか…]
[戦略的に考えると補給線の逼迫により早期の決着が望まれるのだろう。だとすると…]
[敵後方の補給拠点を扼する?]
[その通りオース市の様な補給拠点を襲い、補給を麻痺させる事が出来ればそれはいいが…]
[ですが、流石に二度目のオースはできないんじゃないかと…]
[それもそうだ、それならまだ前線への補給線を叩いた方が実現性がある…]
…ん?そうか、確かに固く守られた補給拠点を攻略し破壊しきるには人的資源の摩耗が酷い。それこそ
そう考えると、現状拠点ではなく補給線を叩くのはいい案に思える。急降下爆撃機や魔導師で敵補給線を叩く事で敵の補給を滞らせる。
敵の内線戦略の破綻を促すのだ。
これは一回やるだけでは無い、定期的にやることで効果を発揮する。
特にこの膠着した現状、敵の主要な補給路を叩くことで補給の面での優勢を保持することは大事だ。
そうだ、補給以外の後方拠点…、例えばそう、敵司令部の破壊。
……やはり電撃戦か、確かに人的資源が少なく、長期戦に持ち込み難い帝国にとっては自然とこの結論に落ち着く。
現在、西方ラインにいるハインツ・グデーリアン少将。そして南方にいるロメール少将ことエルヴィン・ロンメル少将。
何という事だ、前世の第二次世界大戦の電撃戦の立役者達がいるでは無いか。
そして、先の大戦ではクルスク戦まで待たなければならなかったパンター戦車や兼ねてから計画されていたティーガーなどの新規装甲戦力の開発が我々(特に弟の働きで)早々と行われ、フランソワ戦に投入されている。
因みに話によるとティーガー戦車でフランソワ戦車三十両を撃破した化け物がいるらしい。
途中、山口閣下と共に中央への移動の列車に乗り換えるも私の思考は止まらなかった。
ガタゴトと走る列車に揺られながら、頭の回転をさせる。
ーーーーーーーーーー
場所は変わり、数時間前の帝国軍参謀本部。
そこには、戦務参謀や情報参謀、作戦参謀の名だたる面々が会議をしていた。
だが、会議と言うには異様で、カチ、コチ、と時計の音が響き渡るぐらいの静寂を議場が包んでいた。
「…」
それもそうだ、今回ばかりは異例中の異例。
大元帥閣下…いわば皇帝、ウィルヘルム三世がこの会議に出席していたのだから。
誰もが発言を渋り、気まずい雰囲気が漂う。
「…ふむ」
皇帝陛下は手元の資料を見て何か納得した様な表情をするが、その声すら参謀らにとってびくりと体を震わせるものであった。
「この、第二〇三混成魔導装甲連隊の指揮官…、ターニャ・フォン・デグレチャフと言ったか?彼女に師団を与えてみてはどうだね?」
この爆弾発言は、先ほどの声よりも参謀達を震わせる声であった。
To Be continued…。
お読みいただきありがとうございます。
さて、皇帝陛下の爆弾発言のせいで余計に大規模にストレスが伸し掛かりそうなデグ様。
弟との平和な後方生活を手に入れることができるのか?
最近、投稿期間が長くなってしまい申し訳ありません。
これからもクオリティを保持したまま投稿期間の短縮を図ろうと思います。
幕間ネタ
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ターニャとアーデルハイトのイチャラブ
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アーデルハイトとバートリー少尉
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総統閣下シリーズ
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連隊各中隊長ズの何か