幼女戦記 〜ターニャの家族を添えて〜   作:焼け野原主任

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どもども、焼け野原主任です。

今回から秋津洲編に移っていきます。

では、どうぞ…。


秋津洲皇国編
第三十話、幼女、秋津洲皇国へ


統一歴一九二六年、六月三十日。

 

大きな黒い葉巻型の鯨のような物が徒党を組んで地中海海中を航行している、まるで鯨の群れのようである…、が。

その漆黒の鯨の群れの正体は、帝国と秋津洲皇国の技術交換を担う帝国皇国間連絡船団の内の一つ、第四次帝皇連絡潜水艦隊。

そしてその艦隊の旗艦、帝国軍特務輸送潜水艦『バーティッツ号』艦内。

 

第二〇三混成装甲旅団臨時司令部兼帝国軍東方派遣艦隊本部。

 

「ふむ、割と居住性は悪くないな」

 

ぶっちゃけ、この時代の潜水艦など居住性は二の次でとにかく隠密性を重視した代物、いざ乗る時は一体どれだけ狭い物かと覚悟したが…。

意外にも内部は広く、戦車などを格納する輸送スペースを設置してもまだここまでの広さを保った上でここまでの隠密性を持たせることができるとは思わなんだ。

どうも、潜水艦バーティッツ号艦内に設置された司令部兼派遣艦隊本部のベッドに座っている私はターニャ・フォン・デグレチャフ魔導大佐だ、ちなみに弟は私に膝枕されている。

 

「まぁ、この潜水艦は外国の要人の輸送にも使われますんでねぇ。それなりに居住性はよくなるんですわ」

 

「そういうものか」

 

「へい、そうでやンす」

 

私の目の前で飄々と話すヨレヨレの服と同じぐらいよれよれした風体をしている彼は我々にとってはある程度見知ったガリア・ルーデル海軍中佐。この連絡艦隊の司令官であり、この連絡艦隊をここまで三回とも全て無傷で成功させてる怪人だ。

 

さて、なぜここにいるかというと遡る事七日前…。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

統一歴一九二六年、六月二十三日。

 

帝都ベルンの中央参謀本部内の議場。

そこでは、先のブレスト軍港襲撃のマンシュタイン少将の独断専行、そしてターニャ・フォン・デグレチャフとアーデルハイト・フォン・デグレチャフの軍法会議が行われていた。

議長が壇上に立ち、会議内容について話す。

 

「本事例におけるマンシュタイン少将、およびデグレチャフ両名の責任において追及することは本法廷の道義的責任にあれど、帝国憲法及び判例における関連法規を鑑みるに、本法廷に於いてマンシュタイン少将およびデグレチャフ両名は法的権限においては範疇外と思われる」

 

議長が壇上で判決文を読み上げる、他にもいくつか言っている様だがまぁ端的に言えば無罪だ。

 

だが、ここまでやって処分無しは無理だろう。

少し覚悟を決めて参謀本部のゼートゥーア閣下の執務室の戸を叩いてみたが…

意外にも、私の秋津洲皇国派遣に関しては変更はないらしい。

 

ゼートゥーア閣下いわく…

 

「マンシュタインから話は聞いたぞ、まさか、貴様がそんなことに気がついていようとはな」

 

「光栄であります」

 

「それでだ、問題の秋津洲派遣だが…そのまま執り行う事にする」

 

「本当ですか?」

 

意外だ、最悪の場合取り消しという可能性も孕んでいたが、伊集院氏や山口閣下が口聞きしてくれたのか?

…いや、これは高度な政治性を擁する案件だ、軍部の判断でそう勝手にキャンセルなど出来ないのだろう。

 

「ああ、この独断専行はマンシュタインによるものだからな。敵視の目もマンシュタインにしか向かない」

 

「なるほど」

 

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…と言った具合だ。

 

ぶっちゃけ、あそこでもしマンシュタイン少将が居なかったらこの手から勝利が溢れていたかもしれない。

不穏な芽は摘み取る事が出来たのもある意味運が良かったと言えよう、連合国に凶悪な指揮官と呼ばれただけあるマンシュタイン少将がこの事に気付き、行動に移した。

ある意味前世を知る人かつあの二回の大戦を実際に経験している、下手をすればこれ以上無いレベルのジョーカーかもしれない。

 

「にしたって、姉弟共々仲が宜しいんですねぇ」

 

「ああ、十年間ほぼ一緒だからな、一時期離れたこともあるが」

 

「そうなんでやすか、俺は海賊の時から十年間一緒だった弟に戦争で死なれましてね。仲の良い兄弟とか姉弟を見ると弟のことが頭に浮かぶんですわ」

 

「それはそれは…、悲しい事ですね…」

 

…何か思いもよらない人物の思いもよらない過去が明かされたな…。

 

「ほいじゃま、失礼させていただきやす。家族は大事にですぜ、大佐殿」

 

彼は少々皮肉っぽい口調でそう言った後、司令部から退出し部屋のドアをふわりと閉める。

ふむ、潜水艦乗りは全ての行動が静かであると聞いたことがあるが、どうやら本当のようだ。まぁ確かに潜水艦の中で変に音を出してソナーに拾われて居場所がバレては潜水している意味がない。

一応そのソナーに対する対策もこの潜水艦は取ってはいるが、用心するに越したことはないからな。

 

そう思っていると、突然頭がふらりと揺れる。

 

「頭が痛い…」

 

この頭痛の原因は何か、まぁいわゆる酸欠だ。

二酸化炭素自体は空気を吸入し固体アミンや液体アミン酸を使って化学的に吸着除去しているものの、海中に潜ると換気不良によりどうしても艦内の酸素濃度が薄くなり、吸入できる酸素が薄くなってしまって窒息のような状況に陥ることがままある。

それにこの時代の潜水艦なんぞ酸素ボンベの予備もあまりないだろう。

そして潜水艦は航行する限りそれ以外の有害物質も発生するが…、それはシュノーケル航行時に排出する事でなんとかしている。

これが内部に液体酸素タンクを搭載している非大気依存型(A I P)潜水艦であればこの問題を専用燃料である液体酸素タンクから供給することもできる。

 

現代の原子力潜水艦であれば航行中に海水を電気分解することでエンジンが動く限り無尽蔵に酸素を供給することができるがそんなもの多分五十年ぐらい待たないといけないだろう。

 

(…そういえば、あの艦長まさに映画『Uボート』の艦長のような見た目だったな)

 

身に纏われたヨレヨレの海軍服、目の下にくっきりと刻まれた深い隈。無精髭は生えていなかったがその代わりと言うべきか髪がボサボサの頭。

こんなところで再現しなくてもよかろうに…、と思ったがまぁ特に関係ないだろう。

 

…少し寝るか、いくらこの世界でもスエズ運河が開通しているとは言えこの潜水艦隊が丸ごと潜水したまま通過できる深度はない。その為地中海の一部を補給の為経由し、そこから希望峰航路を使って進むルートを取らなくてはならない為かなり時間がかかる、到着まであと数日あるんだから寝てても問題ないだろう。

 

膝枕していた弟の頭を枕に寝かせ、私も据え付けられているベッドに一緒に寝転がる。

そのベッドを柔らかさを背中で感じる、ふと横をみるとすやすやと寝息を立てている弟の姿があった。

 

弟の可愛さ、愛くるしさを目の前に感じながら私の意識もその微睡の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

統一歴一九??年??月??日

 

敵国領内市街地

 

砲撃の轟音で私は目を覚ました。

周囲は砲撃や爆撃でボロボロに砕け散った家屋の瓦礫が撒き散らされ、破壊された戦車がその市街に骸を晒している。

一体何があったのか…、そうだ、私はこの市街の死守を命じられ、今は旅団総出で対処しているところだ。

 

すぐ様近くにあったMP30を手に取り、九七式を起動させ旅団と通信をとる。

 

「旅団総員!現状報告!」

 

少しの静寂が訪れる。その静寂の意味する所は…、全滅?

普通の思考であればその心配は少ないが今は苛烈を極める市街戦、その可能性も十分にあり得る。

だが、その心配は杞憂に終わった。

 

『ザザッ…大佐殿ご無事で!』

 

酷いノイズだが宝珠から旅団員の通信が聞こえる。

流石にそんなことはなかったようだ、歴戦の旅団員が全滅など本当に私の精神が持たない。

 

「ああ、なんとかな。現状は?」

 

『は、現在第一装甲連隊と連絡が取れずにいます、旅団司令官不在、及び副司令官が任を遂行出来ない状態にありますのでその次に階級が高いエルンスト少佐が指揮を取っております』

 

「わかった、まだアーデルハイトは回復しないんだな?」

 

『…はい、幸い身体に欠損はありませんでしたが出血が酷く現在輸血中です』

 

その報告に宝珠をギリリと音がしそうな程握りしめる、だが、ここで苛立っても事態は好転しない。

できる限りどうにかして本体と合流せねばならんだろう。

 

「そしてここは…どこだ?」

 

___教えてやろう。

 

刹那。周りの空気が一変した、周囲の黒煙は止まり、戦車の残骸で燃え盛る火はゆらゆらとゆっくり動く。

ふと、後ろから声がした。これは正しく…。

 

「…またか存在X、一体何がしたい?」

 

___何、少し貴様の記憶を見せただけだ。

 

「記憶…だと?」

 

___一周目の世界の話だ、覚えていないのか?

 

ああ、そういう…。

 

「ああ、弟から教えられた以外は全くな」

 

___そうか、随分とボケたな?

 

「黙りたまえこの老害悪魔め」

 

持っていたMP30を目の前の悪魔に連射する。だが、その弾は何かに阻まれ届かない。

 

___無駄だ、私を打ち倒せるは同等の奇跡を持ってのみ。

 

「……、はぁ…」

 

流石に無駄かと自分の中で結論付け、銃を持ったまま少し項垂れる。

 

___そうだな…貴様の持つエレニウム九五式であれば、かすり傷ぐらい付けれるかもしれんが。

 

「誰がお前の前で使うかあんな物!!…んで?今度は人の夢まで入ってきて何がしたい?」

 

___これがこれから有り得る未来かもしれないという事を見せただけだ。

 

「は?一体どう言うことだ?」

こんな激しい市街戦が起こってたまるか!

 

___だからだ、これが有り得るかもしれない未来だ。分かっているだろう、この市街戦の行末を。

 

「…まぁな、だからなんだと言うのだ?」

 

___少なくとも、何の因果か貴様の国は一周目の世界とは違う未来を歩もうとしている。その所為か周りの国々も対応を変えている。蝶の羽ばたきが嵐を起こしたと言う事か、なるほど。

 

「…何が言いたい?」

 

___だがな、近い内に起こるであろう大戦の先。貴様は地位や名誉、手塩にかけて育成した旅団員。そして、挙句には家族すら失う事になるだろう。

 

「…いつだか弟が言っていたな、姉さんが死ぬ、と」

 

___そうだ、そして貴様に二つ選択肢をやろう。

 

「…なんだ?」

 

___エレニウム九五式を我々に返却し、ただの優れた将兵として帝国の行末を見守るか。それとも、さらなる恩寵を受け、より力のある我々の使徒として自らの手でさらに歴史を動かすか。どちらがいい?

 

「随分な大盤振る舞いだ、一体何が目的で?」

 

___前にも言ったはずだがな、我々は汝に罰を与える為に転生させたのでは無い。まぁ本来サクッと思い知らせて輪廻の輪に戻すつもりだったが…、こちらの手違いで貴様は想定以上の茨の道を歩んでいる。それに対し、我本来の目的である汝の人間性の進捗はこの統一歴でなし得るだけの成果を見た。

 

___つまりだ、汝が望むならこの戦争から足抜けさせてやってもいい、汝自らが選び賜え。

 

 

「だったらこの戦争を今すぐ終わらせ、飢えと貧困を無くしてください神様」

 

___それは無理な願いだ、我々は信心なくては存在出来ないのでね。

 

「はぁ〜…、まぁそう言うと思ったよ。わざわざ跪いてまでやった意味がないじゃないか」

 

___まぁいい、秋津洲皇国でゆっくりと考えたまえ。まだ猶予はあるからな。

 

「そうさせて頂こう、腹が立って仕方ない」

 

___そろそろお目覚めの時間だ。ほら、弟が呼んでいるぞ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

統一歴一九二六年七月一日午前五時。

 

第四次帝皇連絡潜水艦隊旗艦『バーティッツ号』

 

「姉さん、姉さん」

 

少し心地よく無い夢を見終わり、重い瞼を開けると。ゆさゆさと弟が私の体を揺らして起こそうとするのが見える。

 

「何だ…アーデルハイト…今何時…」

 

「ほら、姉さんいきましょう?」

 

起きるや否や唐突にアーデルハイトが私の手を引っ張り連れて行く。

 

「あ!ちょっと待て!行くってどこだ!?」

 

途中チラリと鏡を見たが結構な寝癖がついていた。

いやまて寝癖ぐらい直させてくれアーデルハイト!

 

そんなことを言う暇も無く弟に連れられ、潜水艦の開いたハッチから外に出る。

多分寝てる時に電池の再充電の為に浮上したのだろう、ハッチを開け放っているのは多分船内の換気も兼ねてるからか?

 

「ほら、あれを見てください!」

 

弟が指刺した方向に目をやると、見事なまでに真っ赤に染まった朝焼けが見えた。

 

「うわー…」

 

思わずそんな言葉しか出てこなかった。まさに旭日、秋津洲…日本へ向かうのかと実感する。

 

「日ノ本の国…、我日出処の天子(われひいずるところのてんし)とはよく言ったものだ」

 

「ですね…、でも、朝焼けということは…」

 

「もちろん、これから天気は荒れるだろうな。まぁ我々は海中に潜っているわけだからあまり影響は無いが」

 

だが、この綺麗な朝焼けを見ると妙に胸騒ぎがするのは気のせいだろうか。

 

To Be continued…。




お読みいただきありがとうございます。

なんか色々と急展開すぎて御免なさい。

さて、次回はちょっと視点が移ります…。ではまた。

秋津洲皇国の魔導師エース

  • 居る
  • いらない
  • いっぱいいる
  • ドーモ、ソウギン=サン、ニンジャデス
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