「転属」
「ですか」
「ああ、どうやら上はエースを遊ばせておく余裕はない様でな、ターニャ・デグレチャフ少尉は第二〇五強襲魔導中隊第三小隊長、アーデルハイト・デグレチャフ少尉は第一〇二重攻撃魔導中隊第二小隊長だ」
統一歴一九二三年、レガドニア協商連合の越境侵犯に対し帝国はこれを好機と見て果断なる対応を持ってこれに応じた。
本来、有事に際して帝国軍参謀本部が策定した事前計画によれば北方の対協商連合軍は国境線でも持って撃退すれば十分な戦域という位置付けであったが、『予防的な一撃』を持って以後の国防を有利に運ぶべく増強された帝国軍北方方面軍は協商連合に逆侵攻を仕掛けた。
だが、それをより起こるのは対帝国包囲網の崩壊を意味し、世界各国が対帝国への動きを見せていく。
まず動いたのはフランソワ共和国。といっても、動かざるを得なかった、と言うのが実情だろう。
「喜べ両少尉、姉は対フランソワ共和国のライン戦線に、弟は北方ノルデンの戦線へだ」
「「ありがとうございます」」
これであのクソMADから解放される!!
「(あの嬉しそうな表情、流石は白銀と銀狼か)」
教導隊の私すら前線に駆り出されるほど切迫している戦況を鑑みると、前線配置はやむを得ない気がする。
「では、ターニャ・デグレチャフ、アーデルハイト・デグレチャフ両名、失礼いたします」
だが、あながち悪い話ではないと捉えるべきだな。やっと部下を得ることができるのだ。前まで弟も准尉だったがノルデン管区の戦闘で少尉に昇進してしまったからな、自分一人でやってきたことの分担もできるし盾がわりにもできる。
弟と離れてしまうのは少し悲しいがライン戦線で戦果を挙げ!その功績と経験で弟と共に教導隊に復帰し今度こそ安全な後方でエリートコースだ!
[side:アーデルハイト]
僕はノルデン戦線へ、姉さんはライン戦線の転属、ここで戦果をあげて姉さんと共に教導隊に復帰し後方で静かに暮らそう。
「姉さん姉さん」
「ん?なんだ?」
「僕らの後方勤務の為に、頑張りましょう」
「そうだな、だがアーデルハイト」
「ん?どうしました?」
「そう言うことを言うのは場所を選んだ方がいい」
ああ確かに、ここは軍施設だし、何より中央ですものね。
姉さんとの未来の為に。
アーデルハイトと私の安全な後方勤務の為に。
たった一つの、家族の為に。
場所は変わって帝国軍集積地臨時指揮場。
「第二〇五強襲魔導中隊第三小隊に配属されました、ターニャ・デグレチャフ魔導少尉であります」
「只今を持って本中隊に配属となりました」
「少尉。よく来たな、ひとまず歓迎しよう、中隊長のイーレン・シュワルコフ中尉だ」
そして、アーデルハイトの居るレガドニア方面前線指揮場。
「歓迎しよう。銀狼、アーデルハイト・デグレチャフ少尉。私が第一〇五重攻撃魔導中隊の中隊長、アルベルト・フォン・ハインリッヒ大尉だ」
「はっ、自分はアーデルハイト・デグレチャフ少尉であります。原刻を持って第一〇五重攻撃魔導中隊第二小隊に配属となりました、お世話になります。」
「結構、手際よく行こう、銀狼殿」
軍人は共に戦う戦友を選ぶことはできない。見る限りだけど、ハインリッヒ大尉は割と正統派の帝国軍人。
中隊長で大尉、年齢から逆算しても軍務経験は十分でしょう。
無能な味方は有能な敵より恐ろしいと言うのは歴史が物語っている。そう考えると、恵まれている方だ。
[side:ハインリヒ]
目の前にいるガキはここ北方ノルデンにて実戦経験を持つ。参謀本部から中央の教導隊から引き抜くといっていた。
それに銀翼突撃賞保持者が来るといっていた。どんな叩きあげのベテランが来ると思っていたが。こんな子供とはな。
経歴に嘘偽りがなければ身動き一つせず佇みて言葉を待っているこの子供は、このノルデン戦線を打開しうる戦力として派遣されて来たのだろう
「少尉。率直に聞こう」
「なんでしょうか」
だが、良い兵士が良い指揮官たり得るかはまた別の話だ。
「我々第一〇五重攻撃魔導中隊は定数三個小隊であるが、協商連合との戦闘ですでに一個小隊強と酷い損害を受けている」
「貴官は幼年学校出の新任からなる小隊を…、上手く指導できるかね?」
小隊員は兎も角、指揮官まで新兵では話にならない。
ただの新兵ばかりで揃えられた小隊など無い方がいい、返答次第によっては使い潰す必要もあるだろう。
「それが、ご命令ですね?」
ほう?
「なればこそ、小官は指導ではなく、"教育"をして御覧にいれましょう」
「…ふむ、よろしい。銀翼突撃賞の名に恥じぬ働きを期待する」
「はっ!」
「よろしい、早速だが状況の確認だ」
「よろしくお願い致します」
ハインリッヒは部隊に見立てた駒を棒で器用に動かし、配置を指示する。
「貴官も承知の通り、現在我々北方軍は協商連合に対し優位に戦闘を継続している。だが、エルムフルトからマルカリュードに掛けて敵が長大な防衛網を敷いている。我々はこの防衛網を突破、ないし破壊し、味方部隊の浸透を援護する」
我々帝国北方方面軍は協商連合に対し優位に進むものの、協商連合本土に差し掛かったのち、係争地付近にこれでもかと言わんばかりの強固な防御陣地を組み立て、帝国の進軍を阻んでいた。
「現状、戦略レベルで見れば我々は優位に進んでいる。だが、局所的に敗北しているところが見つかる」
「そのために、高機動かつ高火力な我々が敵防御陣地を連続的に吹き飛ばすと言うわけですか」
「そうだ、今現在その場しのぎの解決策にすぎないが、敵防御陣地を150ミリ以上の重砲や列車砲を持ってして徹底的に破壊することで解決しているがそれでは進軍に遅れが出てしまう」
僕は別にその方法でいいじゃないかと思ったがどうやら、北方方面軍は速度重視で侵攻したいらしい。
だとすると確かに我々のような機動力のいい航空魔導士をJu87の様な急降下爆撃機として使うのは理にかなっている。
「そして遂に、先程言ったエルムフルトの防衛線で進軍が止まってしまった。この障害は早急に取り除かれなければならない」
「どうやら中央の方々はここノルデンに大きな力をかけているようでな。主力をよこしてきた」
そう…、まぁ今度はフランソワも宣戦布告して来たからさぁ大変、楽しくない二正面作戦の始まりだ!
今回、なぜ自分もライン戦線に投入されなかったのかは謎ですが、まぁ姉さんのことです。ちゃんとやってくれているでしょう!
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「ハックシュン!」
「どうした?デグレチャフ少尉」
「いえ、ノルデンに行った私の弟がどうやら噂しているようです」
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「中隊長殿、我々の補給状況はどうなっているでしょうか」
「まぁまぁと行ったところか、本来ライン方面に向かうべき車両がこちらに来ているから今現在はまだ良好だが」
「ラインに持っていかれたら厳しくなると」
これはつまり、将来的に内線戦略が破綻しかかることを意味している。
どうやら内線戦略を破綻させない為にも、早期に協商連合とのケリをつけたいようだ。
「そのため、ノロノロと進軍してラインの補給を破綻させない為にも上は多少無理矢理にでも防衛戦を突破するをすることにした」
「少尉、一応言っておくが言うは易しの典型例だぞ、相手は強固に固めた防御陣地による遅滞戦術を展開している。正直、いくら突破しようをしてもさせない様に作られている、結構な損害は前提で動かなければならないだろう」
それはそうだ、あの陣地を損害なく突破するのは難しい、マジノ線の様に迂回できればまだ希望はあるが相手は均等に展開している。迂回の見込みはないだろう。
「我々は軍人です、我々は上がやれと言ったことに従い、完遂するのみであります」
「(ふむ、只の子供ではないな。この態度、この意気。やはり銀翼突撃賞保持者かつ、士官学校で憲兵の異名を持つ彼だ)」
「よろしい、では本題に入らせてもらおう」
「少尉殿、椅子です」
「ありがとう」
「我々一〇五重攻撃魔導中隊は敵陣地突破の先鋒として抜擢されている。この部隊はこの作戦の突破の主軸だ、貴官の奮戦に期待しよう」
「はっ!祖国のため!獅子奮迅たる働きを見せましょう!」
「(ふむ、最前線とわかった瞬間生き生きとし始めたな、やはり白銀の弟、そして銀狼か)」
「(こんな子供が…、悲しいな…)」
「(自分ももっと頑張らねば)」
先鋒なら最前線配備!戦果を上げて姉と一緒に後方へ行くぞ!!!!
「中隊長殿、私の出撃地は後方でしょうか」
「(やはり後方では不満か!)喜べ少尉、最前線だ」
「光栄であります!」
「貴官ならばそう答えると思った!案ずるな、我々も貴官の支援をする!」
前線で敵中突破!戦果を上げる良いチャンスだが危険もそれ相応たる危険も付きまとう。
生き残ることも考えつついくか。
「では、敵中突破をしつつその後は味方地上軍を援護ですか」
「そうなるな、我々の目的は味方の損耗を減らし敵のヘイトを此方に誘引することだ」
「そうなると味方の損耗はかなり激しいようですね」
「(戦略レベルでの分析も可能、やはり有能だな)」
「少尉、これが貴官の小隊となる」
「はっ、拝見いたします」
いくつか見てみるが…、正直使い物になるとは思わない。
「当方面軍は協商との戦闘で疲弊したことによる基幹要員の消耗にフランソワ参戦による人材不足で自小隊には未経験の新兵が補充されると聞きましたが…」
「訓練未習の新兵とし認識を修正した方がよろしいのでないでしょうか…」
幕間ネタ
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ターニャとアーデルハイトのイチャラブ
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アーデルハイトとバートリー少尉
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総統閣下シリーズ
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連隊各中隊長ズの何か