幼女戦記 〜ターニャの家族を添えて〜   作:焼け野原主任

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どもども、焼け野原主任であります。
今回はデグ様とアーデルハイトの絡みも書きました。

ではどうぞ


第8話、軍大学2

皆様おはようございます、ターニャ・デグレチャフ十一歳、こう見えても立派な大学生であります。

今現在は、いつの間にやら私のベッドに入り込んで目の前ですぅすぅと寝息を立てている我が弟の可愛い顔に不覚にもちょっと悶々としてしまったところです。

「ほら。アーデルハイト、起きなさい」

 

「ん〜、あと五分〜」

 

「起きろ」

 

「ふぁ〜い」

 

ここは帝国の保養地として名高いマインネーンの温泉地、古来より湯治場として有名な温泉街で万年雪を戴く峻嶺が見下ろしています。

旅行?いえいえ、ただの旅行じゃありません、大学の野外学習になります。

大学と言っても、帝国の未来を担う士官に参謀教育を施す軍大学であり、戦時下にある母なる帝国は、有能な参謀が喉から手が出るほど欲しいという台所事情があります。

 

こんな風情のある保養地で、観光がてら温泉に浸かれたらどんなに嬉しいことか。

 

というか、なぜ家族とはいえ年下の異性と同じ部屋で生活せねばならんのですか。

自分のこんな貧相な体で弟の性癖が歪まないか姉は心配です。

 

「姉さん、姉さん」

 

「どうしたアーデルハイト…ッ!?」

 

「むぎゅ〜」

 

いつの間にか自分の体に抱きついているアーデルハイトがいた、お前寝ぼけてるのかっておいそんな可愛い寝ぼけ顔で抱きつくな私は今ほぼ下着なんだぞてかお前もほぼ同じ格好じゃないかその顔とその服装で抱きついて姉の性癖をぶち壊す気かお前はやめろぉ!!

 

「っ///…早く準備しないとマズいぞ、流石に遅れるのはいただけない」

 

「了解で〜す」

 

我々は早々と着替えて装備を持ち集合場所へ向かう。

そこには、もう残酷としか声のかけようがなかった。

 

「総員おこーし!!」

 

ザザ、ガピーとハウリングした拡声器で総員おこしをかける教官。

流石に寝起きにこの音は辛い。

そして、こういう時はこの身に感謝してしまう。

帝国において魔導士云々以前に存在していた数少ない女性士官は皇族だった。それを前提に作成された軍規は皇女とそのお付きの実質的な軍務奉仕を目的としたものらしい。

 

単純なのはこの行軍中の宿泊時、男性士官が塹壕で寝泊まりする中、女性士官は保養地などの使用が許されたという。

ちなみに弟は本来目の前にいる男性士官候補生と一緒に塹壕に寝泊まりするはずだったが教官の良心(上からの圧力)で私と一緒に寝泊まりする事になった。

 

我々だけ雨風凌げる地にいて恨まれて私の評価に差し障ったら元も子もない、弟と一緒に白湯運びぐらい手伝うか。

 

「どうぞ」

 

「ああ、ありがとう(何と仲間思いな…)」

 

「(女神だ…)」

 

「ウーガ大尉もどうぞ、温まりますよ」

 

「ああ、すまない中尉、誠にありがとう、流石に疲れが出て来た様でな」

 

席次を争うウーガ大尉…、疲れているならリタイアしたまえ…!

 

「(自分も疲れているだろうに…なんて献身的な子らだ)」

 

この参謀旅行の目的は単純明快。思考が鈍る極限環境下でも冷静な作戦立案ができるかどうかだ。

疲れはてた参謀が出した作戦など大抵が碌でも無い物ばかりだ、だからこそ、軍大学の教官連中は実戦経験豊富かつ演算宝珠の補助がある私らをいくら女性士官だからって優遇していては意味がない。と行ったところか。

 

だからといって!重い荷物を背負わせ、この山を行軍させるこれは児童虐待ではないのか!?古書めいた軍規表に女性士官に重い荷物を背負わせるべからずという文言がなければこれは問題ないということか。

クソッタレ、この軍規を作った奴はサディストに違いない!

 

と、少し行軍した所で教官が止まる。

 

「ヴィクトール、あそこの丘陵に敵が防衛火点を構築した。貴様は速やかに大隊を前線させねばならない」

 

「突破は困難です。速やかな進軍には迂回を提言します」

 

「ならば、自分でやってみせたまえ」

 

「は?」

 

「この峻厳な地形で!迂回できるというなら自分でやって見せろというのだ!この大馬鹿モンが!地形を読めと言っているだろう!」

 

なるほど、どうやら行軍の効果は覿面なようだ。ヴィクトール中尉とて普段のコンディションであればこんなことは言うまい。

 

「さてデグレチャフ両中尉、貴官らならばどうする?」

 

うわこっちに来たし弟も巻き込まれた!あとで何か奢れよヴィクトール!

 

「ん…重砲、ないし爆撃機の支援はあるのでしょうか?」

 

「ある物とするがない時のプランも言いたまえ」

 

「は、で有れば爆撃機か重砲により徹底的に敵陣地を叩き、疲弊した所で歩兵による制圧を行います」

 

「ない場合、第一案として大きく後退し別の稜線沿いに進軍します」

 

「ふむ、では時間的余裕が無い場合」

 

えぇ…。

 

「…第二案として魔導士と歩兵の散兵戦術を採用します。魔導士で火点を潰し、歩兵をその援護に回します。ある程度の損害は覚悟せねばなりませんが突破は可能です」

 

「よろしい、では歩兵のみで突破せねばならない場合」

 

な…、いつの間にか手持ちのコマが歩兵だけになっていた。

 

「野営したくなければどちらかが早めに答えを出すのだな」

 

くっそぉ…、嵌められた…。

 

姉さん、僕がいいこと思いつきましたよ。

 

お?まじか頼んだ。

 

でも、多分言いたいことは姉さんと一緒ですよ

 

「教官殿、自分が思うに突破は不可能に思えます」

 

あ、やっぱアーデルハイトもそう思うか

 

「それは自分も同意です。参謀の職質とは何か、任務に立ち戻り与えられた義務を考え不可能であると」

 

「小官らは職務により具申いたします」

 

我らながら素晴らしい責任回避!無理だということを自分の敢闘精神の欠陥でなく職責に起因させてしまうのだ!いかにサラリーマン的な回答!どうだ私らは後方向けの人材だろう!

 

この極限環境下で選択肢を奪ってなおこの理性的な回答!なんて実戦向きなんだ!

 

「その職務とは実行可能な最善を追求することが必要です!ただ悪戯に兵の死骸を積み上げることは!最もいむべき事であります!」

 

これで!教官殿の考課表に覚えめでたく後方でエリートコースだ!

 

「…了解、記録しておこう」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

場所は変わって、帝都ベルンの参謀本部

そこでは、帝国の参謀たちが今次の戦局を元に次なる作戦を考えていた

 

「西方方面軍の情勢は悪化にようやく歯止めがかかりました」

 

「戦域戦況といたしましては依然としてやや押し込まれた状態ではあります」

 

「ですが、大陸軍主力の集結・再編成は完了しました」

 

フランソワの侵略に対し帝国軍西方方面軍はしぶとく粘ってみせていた。

ライン工業地帯への進軍は断固阻止、無論、前線の戦力は満身創痍、帝都の戦力までもかき集めて逐次投入という手段を使ってまで耐え忍んだ。

 

「…実際、なんとか間に合わせる事が出来たという程度であります、大陸軍の展開が早かったとはいえ、際どいタイミングであったと判断いたします」

 

それが意味するところは兵站線の圧迫、また内戦戦略の限界であった。

 

「やはり、即応できる部隊の増強が課題だと、戦務としては勧告せざるを得ません」

 

ゼートゥーアがいい終わり、次にルーデルドルフが口を開く

 

「作戦局としても、任意に使える戦力に機動性および一定の戦力を与える事に賛成です」

 

「その上戦務としては二正面作戦前提の国防戦略研究を提言いたします」

 

それに、一人の将校が反応し

 

「研究そのものには反対ではないが、しかし、実際作戦上二正面作戦は避けねばならんだろう」

 

各方面軍を防衛にあて、攻勢には大陸軍を使う、という戦い方では限界があると帝国参謀本部は気付いていた。

なれど、当然のことながら兵力の分散投入は軍事戦略上忌むべき行為であり、もう一方の敵を全力で潰し、その後もう一方の敵に当たると言う内戦戦略の金科玉条として帝国の参謀本部内に根を張っていた。

 

「その通りです、備えあれば憂いなしという点には同意しますが、作戦局としては如何にして二正面を避けるかに重点が置くべきかと」

 

「だがまぁゼートゥーア准将の意見もわかる、だが帝国の地政学的要因も考慮しなければ」

 

将校が合意を示しつつ、反論を唱えるも

 

「否定はできません、だが現状での大規模な軍管区の再編および再集結は困難、何か代案で妙案は?」

 

ルーデルドルフの問いにゼートゥーアが答え

 

「ならば戦務としては即応軍の創設を提言したい、戦域機動の改善によって必要な時に必要な所へ展開可能な部隊が必要なのだ」

 

「まぁ作戦局としても同意は可能だ、だが規模によると言わざるを得ないがね」

 

二人の茶番じみた問答を聞いていた戦略課の将校は

 

「(いささか茶番じみているな。だが即応軍の創設は兼ねてからの提案であった。特にゼートゥーア准将を中心とした戦務参謀は強硬に主張している。確信に至る何かがあったと考えるが…もしくは別の…、たとえばそう)従来、大陸軍がその即応軍の役割を担うと考えられてきたが実際はこの有様。西方軍がライン戦線で英雄的な活躍をしなければルールゥ工業地帯は陥落し、我々はフランソワで講和会議の条文を欠かせられていたかもしれない」

 

そう、そしてもう一つの懸念。

 

「このまま西方軍と大陸軍にて叙勲が埋まってしえば組織的公平性に欠く、そのため東方軍を中心に編成し軍功や練度のバランスを撮りたいと、そういうことかね?」

 

「さようそれもある。その為戦略機動の実験を兼ねて師団規模で試したいのだが」

 

「規模が大きすぎる!東方方面軍の戦力予備は二個師団しかないのだぞ!」

 

「東方方面軍と南方方面軍から分散して抽出してはどうか」

 

「それは北方が片付いてからの話だ」

 

各課の各将校から様々な反論が噴出し始める。

だが、それすら思い通りのような眼差しでゼートゥーアは話し始める。

 

「_____では一つ、実験的な要素を試したい」

 

「航空魔導士の大隊と軽戦車を主体とし自動車化された大隊の両方を中央の即応軍司令部管轄下に置くと言うのは如何だろうか?」

 

「ふむ、例の「即応航空魔導および軽装甲自動車化大隊構想」か私としては賛成だが」

 

「魔導大隊と装甲大隊をわざわざ引き抜くと?」

 

「航空魔導師や自動車化部隊であれば輸送力、展開力が早い」

 

「…わかった、実験的に認めよう、ただ参謀本部直轄という扱いでだ、師団規模での即応軍司令部の設置は見送るものとするが…」

 

その中、一人の編成課の将校が手を挙げる。

 

「少し、いいですかな?」

 

彼はアドルフ・フォン・ビッケンバウワー少将。帝国軍参謀本部編成課長を務める、編成および軍の戦力を司っている。

 

「どうしたビッケンバウワー少将」

 

「いや、さっきの話を聴きながら編成を思い出していてな、それだったら魔導と戦車の混成にはなるが連隊での運用がベストではないかね?」

 

「ほう?」

 

「何、東方と南方の戦略予備を確認したら航空魔導士と自動車化装甲戦力合わせ連隊規模は今後の戦略機動の影響なく余裕で賄えるのでな」

 

「つまり、少将殿はさっきの構想を「自動車化混成航空魔導連隊構想」にシフトしろ、と言いたいのですか?」

 

「さよう、これは私見が入るのだが確かに航空魔導師の進軍力や展開力に追いつくには装甲車やバイクで自動車化された部隊である必要があるだろう。だが両方とも新興的な兵種だ、ならばその二つを合わせることで思わぬ活躍を見せるかもしれんぞ」

 

「わかった、少将殿がそこまでいうならそうしよう。では先ほどの大隊構想は連隊としての方向にシフトしておいてくれ。どちらにしろ、師団規模の即応軍司令部は見送るが混成連隊の戦果次第だろう」

 

「では、次の議題に移りますが…」

 

ゼートゥーア准将は考えていた。

嬉しくもあるが少し面倒な誤算がまさかここで出るとは思わなかったからだ

 

デグレチャフ君、どうやら君らの望みは少しばかり違った形で叶いそうだ。

だが、約束は守れそうだぞ。

 

To Be continued…




お読みいただきありがとう御座います。

今の所、とりあえず漫画の12巻分までのストーリーはできておりますがそこから先は未定です。
感想や高評価してくださると作者のモチベが上がります

幕間ネタ

  • ターニャとアーデルハイトのイチャラブ
  • アーデルハイトとバートリー少尉
  • 総統閣下シリーズ
  • 連隊各中隊長ズの何か
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