ありふれないヤンキーコンビは世界最高 作:MUGEN&RUDE好き
1話
鬼邪高校
それは、各地から札付きのワル共が集まることで有名な全国屈指の超極悪不良高校である。
全日制と定時制に分かれており、特に定時はいわゆる
そして全日も定時の面々にこそ及ばないものの、そこらのヤンキーやチンピラ達とは一線を画す実力者達が跋扈している。
全派閥の中で最多の人数で構成されており、2年の大型ルーキー中越大、中岡昌平が率いている
「中・中一派」
抜群のコンビネーションを武器に暴れ回る狂犬コンビ、3年の西川泰志と横山清史が率いている
「泰清一派」
構成人数がなんとたった3人でありながら、かつて全日制でアタマを張っていた3年の辻・芝マンコンビと全日制最強の男、3年の轟洋介で構成された
「轟一派」
そして少数ながらも腕自慢の精鋭が集い、かつて泰志、清史、辻、芝マンと一緒に住んでいた「絶望団地」で彼らと何度も戦ってきた頭脳派の実力者、3年の高城司が率いている
「司一派」
この4つの派閥が布陣を敷く、正に群雄割拠の全日では絶えず衝突が繰り返されていた。
しかしそんな中、1人の男が鬼邪高校にやって来た。
その男の名前は花岡楓士雄。
高城司の幼い頃からの相棒であり、中学の時に祖父が体調を崩したことで田舎の実家に引越してしまっていたのだ。彼は絶望団地に住んでいた者達からも一目置かれており、特に泰清とは司と共に何度も戦っている因縁の仲だ。
そして楓士雄がやって来たことをきっかけに、全日の面々の関係は大きく変化した。
ある時はギャングチーム「キドラ」の陰謀により、戸亜留市の不良校である「鳳仙学園」と全面衝突してしまう。
そして真相を知った後、家族を助ける為キドラに所属していた楓士雄の幼馴染である前川新太を救うべく、そして落とし前をつけるべく鳳仙と共闘し勝利。
リーダーの上田佐智雄を始めとした鳳仙の面々とお互いにより絆を深める結果となった。
またある時はかつての幼馴染で楓士雄に強い執着を見せる坂田基晃が帰って来て一悶着起きたが、その発端となった彼の過去を知って和解。
さらに交通事故に遭い記憶喪失になってしまった幼馴染の桐原誠司を救うため奔走。幼馴染達の絆により無事に記憶を取り戻すことが出来た。
そして鬼邪高の看板を狙う「3校連合」との戦い。攫われた司を救いだすべく鳳仙、そして新たに友達となった「鈴蘭男子高校」最強の男ラオウこと岬麻理央達と共に戦いを制し、更なる友情を育むこととなった。
こうして数々の戦いを共にし乗り越えることで、かつていがみ合っていた全日の生徒達も楓士雄のことをリーダーとして認め、強く結束していく事となった。
基本は単純だが一本気で真っ直ぐな心の持ち主であり、周囲を惹きつけて誰とでも仲良くなる魅力やリーダーシップも持ち合わせている楓士雄。
楓士雄とは対照的に、冷静な頭脳派で、熱い思いを秘めつつも、常に全体を俯瞰で眺めている司。
そんな2人に、これから予想だにしない大冒険が待ち構えていることを、彼らはまだ知らない‥
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜鬼邪高校正門前〜
「ホ、ホントに転校しちゃうんすか?楓士雄さん、司さん。」
悲しそうな声でそう2人に話しているのは2人の幼馴染であり1つ年下の情報通であるジャム男だ。幼い頃から2人に付き従っていて、ジャムパンが好きすぎて団地の幼馴染や仲間達からはそう呼ばれている。
「しょーがねえだろ?母ちゃんと司んとこの親御さんが同じタイミングで同じところに転勤するって決まっちまったしよ。」
そう答えたのはジャム男の兄貴分であり幼馴染の花岡楓士雄。彼らの親は同じところで働いているのだが、幸か不幸かそれぞれが同じ街に転勤して働く事になってしまったのだ。
「んな心配することねーよ。転勤つっても短期間の一時的なもんだ。大体半年、長引いても1年ちょっとで帰って来れるからよ。」
悲しそうな表情をするジャム男にそう言い聞かせるのは幼馴染の高城司。ジャム男がずっと2人を慕って来たからこそ離れてしまう寂しさを2人はちゃんと分かっている。
「そーそー!それに引越すのもすぐそこの隣町だしな。オレらも暇あったら帰って来るしお前らもこっちに遊びに来りゃ良いだろ!」
そう言って明るく振る舞う楓士雄にジャム男も少しは安心した様だ。
「‥‥えへへ、そうっすね!じゃあまたみんなも誘って遊びに行っていいっすか?」
「いや、全員は来んなよ‥訳分かんねえことになんだろ‥」
元気を取り戻してそう言うジャム男に、濃すぎるメンツを思い浮かべて少し渋る司。そして3人で笑い合う。この3人は小さい頃からずっと変わらずこうして支え合って来たのだ。
「お前もいつまでも俺達に甘えてばっかじゃなくて、1人でなんとかできるようになってみろ。」
「い、いやいや甘えてばっかなんてことはないっすよ!‥‥‥多分」
「ホントかお前ー?寂しいんじゃねーのかー?」
「痛たたた!痛いっすよ楓士雄さん!」
楓士雄にヘッドロックを決められてジタバタもがくジャム男。
確かに普段のこんなやりとりが出来なくなるのは寂しいが、ジャム男だって彼らを信頼しているのだ。もうみっともなく縋りつく様な事はしない。
「‥じゃあ楓士雄さん、司さん。向こうでも頑張って下さいね。」
「おう!!」
「ああ。」
最後に3人で挨拶を交わし、2人が去って行く。
『まぁあの2人のことですし、どうせまたすぐに会えますよね!』
そんな事を思い浮かべてながらジャム男は2人を見送った。
それが叶わぬ願いになってしまうなど知らずに‥‥‥
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ー3日後ー
引越しのおおまかな段取りを済ませ、フリーになった2人は土曜日ということもあり、引越してきた街をぶらりと散策することにした。
「しっかし楽しみだなー次の学校!どんな奴がいんのかなー?」
「それも良いけど、勉強の事忘れんなよ」
「ゔっ‥余計な事言うなよ‥‥」
見ての通り楓士雄は勉強ができない。と言うよりはして来ていない。喧嘩ばかりで勉強しなくても良かったあの環境のせいと言うのもあるが、転校する学校はちゃんとした学力を必要とする為そんな言い訳は通じない。
そこで頭の良い司にみっちり勉強を教えてもらい、なんとか赤点は回避できるレベルにまでしてもらったのだ。
「せっかく転校して来ても学力不足ですぐ落とされちゃたまんねえからな。」
「いや、流石にテストの時とかはちゃんとやるって‥‥」
そんな風に軽口を叩き合っていると、
「テメェ鬱陶しいんだよさっきから!!」
近くからそんな荒ぶった声が聞こえてきた。
「なんだ?」
「行ってみるか」
2人が声の聞こえた方へ向かう。そこで目にしたのは
いかにも不良と言った風貌の5人と杖をついて荷物を持ったおばあさん、そして
その間で不良達に向かって土下座をしている1人の男子だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
彼の名前は南雲ハジメ。どこにでもいる様な普通の高校生だ。唯一の特徴といえばいわゆるオタクだと言うことくらいだろう。
ゲーム会社の社長である父と漫画家の母を持ち、小さい頃からバイトでとして両親の元で働いていた事もあってそういった技術は既に即戦力レベル。「趣味の合間に人生」をモットーにしているだけあって非常にマイペースな性格だが、困っている人は見捨てない優しさも持っている。
現に今も道端で不良に絡まれていたお婆さんを助ける為、間に入って不良達に土下座をしていた。
「さっきから鬱陶しいんだよテメェ!!」
「そのばあさんがオレらにぶつかってきたんだろ!」
そう言ってまくし立てる不良達。それでも引かないハジメに痺れを切らし、今にも殴りかかろうとしたその時‥
「おい!!」
それがハジメと彼らが出会った瞬間だった。
「大の男が寄ってたかってなーにやってんだ?」
「ああ?」
楓士雄が挑発するように声をかけると不良達が反応した。
「うっせーな、テメーにゃ関係ねーだろ!」
「どっか行ってろこの
ビシィッ(何かがひび割れる音)
なんとも不幸なことに、この男は楓士雄に対し言ってはいけないことを言ってしまった。
楓士雄は自身の身長にコンプレックスを持っており、「小さい」「チビ」と言った言葉に敏感なのだ。
「あーあ‥‥おいお前ら。死んだぞ」
これから起こることを察した司は、そんな警告とも同情とも取れる言葉を放つ。
そして案の定キレた楓士雄が不敵な笑みを浮かべながら悠々と近づいて行き、
ドガッ!
と不良の1人を容赦無くぶん殴った。
「テ、テメェ!」
「何しやがんだコラァ!」
他の不良達が怒って襲いかかって来るが相手が悪すぎた。
かつて鬼邪高校でアタマを張っていた楓士雄のケンカの強さは相当なものでありそんじょそこらのヤンキーやチンピラが敵う相手では無い。
バキッ! ドゴッ! ガン! ドカッ!
やはりと言うべきか流石と言うべきか、あっという間にノシてしまった。
「もうこんな真似すんじゃねーぞ!」
「「「す、すいませんでしたー!!」」」
不良達に釘を刺して追っ払った楓士雄はハジメに声をかける。
「おい、大丈夫だったか?」
「あ、ありがとうございます。」
戸惑いながらもお礼を言うハジメ。そしてその後お婆さんからもうお礼を言われ、楓士雄が「気ぃつけてなー」と言いながら3人で見送った。
「あ、そう言や名前言ってなかったな。オレ花岡楓士雄!よろしく!」
「高城司だ。」
「えっと、南雲ハジメです。」
そしてその場の流れで3人は自己紹介を交わし、楓士雄達が引越してきたことや転校する学校がハジメの通っている学校だということなどを話していた。
「いやーしっかし、この街で初めての友達がハジメンで良かったぜー。」
「ハ、ハジメン??」
「わりーな。コイツこんなやつなんだよ。」
「いやこんなってなんだよ!」
楓士雄は親しい相手のことをあだ名で呼ぶ癖があり、名付ける度に当事者達を困惑させている。ちなみに司のことはあだ名で呼ばないのは、小さい頃からの付き合いで親しい友と言うよりも特別な『相棒』だかららしい。
「ていうか‥友達?」
「ん?おう。」
「いや、僕たち今会ったばっかりだよ?それにこんな弱っちい僕となんて‥‥」
ハジメは自信なさげにそう言う。決して嫌と言うわけではないが、強くて優しい楓士雄と司に対して自分の様な奴が友達だなんて烏滸がましいのではないかと少し気後れしてしまう。
ところが‥
「何がだよ?」
「‥‥‥えっ?」
「お前は弱くなんかねーだろ。」
あっけらかんと返す楓士雄にまたも戸惑うハジメ。
「だ、だって土下座してたんだよ?あんなみっともない格好して‥」
「ばあさん助ける為だったんだろ?それのどこがみっともねーんだよ?」
「‥っ!」
ハジメは楓士雄の言葉にハッとして言いよどむ。
「ケンカや腕っぷしが強い奴はやられたらやり返せばすむ話だ。でもお前は自分が弱いことを分かってて、それでもアイツらに立ち向かった。あのばあさんを助ける為に。」
司もハジメにそう語りかける。
力で勝つ事が全てでは無い。自分がどんなに弱く、どんなに傷ついても相手のことを思いやることができる。これも立派な強さだ。
「ケンカもしたことねー弱いやつが自分より強いやつに立ち向かうのってメチャクチャ勇気のいる事だと思うし、普通なら見て見ぬ振りする様なやつがほとんどだ。でもお前は違った。だからあん時お前を見て何となく思ったんだよ。『コイツとはきっと良い友達になれる』ってな。」
楓士雄は直感で相手がどんな人間か、また相手がどんな事を考えているかをだいたい理解することができる。いわゆる第六感というやつだろう。
ハジメの考えなど杞憂に過ぎなかった。彼らはちゃんとハジメの本質を理解してくれていたのだ。
「あとさ、俺らが住んでた地元の団地にお前とそっくりの幼馴染がいたんだ。ジャム男ってやつなんだけどよ。」
「ジャ、ジャム男?」
「おう、ガキの頃からジャムパンばっか食ってっから皆そう呼んでんだ。おもしれーだろ?」
続けて楓士雄がジャム男の事について語る。司も「そうだな」と頷きながら彼の事について話し始める。
「俺はジャム男とは楓士雄よりもほんの少し長い付き合いでな、気持ちもケンカも弱くて毎日のようにイジメられてた。その癖していざって時の根性は一丁前でよ、弱いくせによく荒事に首突っ込んで行ってたな。そんなアイツがなんか面白くて、いつの間にかイジメから助け出してよく一緒に過ごす様になった。」
ジャム男とはまだ別れて数日しか経っていないのだが、何とも言えない懐かしさに包まれ、3人でのんびり過ごしたり、一緒に喧嘩しに行ったり、そんな思い出をつらつらと語っていった。
「‥スゴイなぁ、弱くてもそんな風にできるなんて。僕はとてもじゃないけどできないや‥」
彼らの思い出話を聞いていたハジメは、少しばかりジャム男の事が羨ましく思いそんな事を口にする。
「いやお前さっきの事もう忘れたのかよ?お前だって根性出してあの不良どもに立ち向かったじゃねぇか。」
楓士雄のツッコミにハジメは「いや、あれは‥‥」と言葉を濁す。
そもそも楓士雄と司は先程のハジメを見た時、無意識のうちに彼の行動をジャム男と重ねていた。彼と同じものを感じたからこそ、2人はハジメの事を気に入っていて助け出したと言ってもいい。
「お前だって強ぇよ。だから、もっと胸はろうぜっ!」
バシッ!
「いたっ!?」
楓士雄に思い切り背中を叩かれて涙目になるハジメ。しかし、もうさっきまでの暗い雰囲気は無くなっていた。
「‥そっか‥‥うん。ありがとう楓士雄君、司君。じゃあまたね。」
「おうよ!また明日な!」
「気いつけて帰れよ。」
こうして3人は仲を深め、明日また会う約束をして互いの帰路についた。
詰め込み過ぎたかも‥‥
改めて素人作品ですがどうか温かい目でお付き合いください