ありふれないヤンキーコンビは世界最高 作:MUGEN&RUDE好き
雫と別れて家の前まで来ていた楓士雄。今日の晩飯何かなー などと考えていると、雫から電話が掛かってきた。
「? さっき会ったばっかなのにな‥」
何の用だろう‥ と思い通話に出る。
「もしもし?」
『‥‥花岡楓士雄だな?』
「‥‥あ?」
聞こえてきたのは雫の声ではない。全く知らない男の声だった。
「誰だ?」
「そうだな‥強いて言えば、この前お前にやられた連中のリーダーってとこか?子分をやられたからにはちょいとお礼参りしなくちゃいけねぇからな。」
それを聞いて楓士雄はこの間ハジメに絡んでいた不良達のことを思い出した。
「なんでお前がシズっちの携帯‥‥‥っ! テメェまさか!?」
「あぁそのまさかだよ。お前がこの女と親そうにしてるのを子分達が確認済みだからな。」
楓士雄の嫌な予感は当たってしまったようだ。雫はあの後この男たちに拉致されたのだ。
「テメェ、シズっちは関係ねぇだろうが!!」
「それはそうだが保険さ。この女を返して欲しけりゃ河川敷の廃倉庫に来い。もちろん1人でな。」
「あぁ上等だ。今すぐ行ってやっから首洗って待ってろ。」
そうして電話を切った楓士雄は買ったものを入れていたレジ袋をその場に放り捨てて全速力で走っていった。家まで送って行っていれば。自分がもっと注意していれば。あまりに突然だったとは言え自分の能天気さを悔やみ、ただ雫の無事を願って走り続ける。
『頼む‥‥!無事でいてくれ!』
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〜河川敷の廃倉庫〜
「流石ッスねアニキ。人質をとってこんな簡単に誘い出せるなんて。」
「まぁな。」
そこには手足と口を縛られて動けずにいる雫。そして以前楓士雄にやられた5人組をはじめ、ガラの悪い連中が約30人ほどたむろしており、その内の1人がアニキと呼んだ頬に傷のある男に話しかけていた。
「しかしえらく上玉な女じゃねぇか。ねぇもらっちゃダメっすかアニキ?」
「バーカまだダメだ。まずここに来たアイツをボコしてウチのチームの配下にするよう勧誘する。それに抵抗する様ならこの女をアイツの目の前で好きにすりゃ良い‥‥‥そうすりゃアイツがよほど強情でもない限り必ず従うってわけさ。」
「マジっすかアニキ‥‥天才じゃないっすか!」
そんな身の毛のよだつ会話をすぐそばで聞いていた雫は顔を青ざめていた。今にも泣きそうになるが必死に堪えている。
すると
バァン!!
倉庫の扉が大きな音を立てて吹っ飛んだ。
全員が驚いて扉の方を見ると‥‥‥
楓士雄が険しい表情で現れた。
「シズっち!!」
楓士雄が雫の方を見て叫ぶ。幸いにも怪我はしてないようだが、縛られて怯えた顔でこちらを見ていた。
「待ってたぜ。しっかりケジメはつけさせて貰おうか。」
「そりゃこっちのセリフだ‥‥‥ 一回死んで反省しろ。」
リーダーの男と楓士雄が一言交わし、彼らの間に緊張がはしる。そして
「やれぇーー!!」
下っ端の1人の掛け声を合図に、戦いが始まった。
下っ端達がバットや鉄パイプを手に、楓士雄めがけてなだれ込むように襲ってくる。もちろん楓士雄は武器など使わず、素手で応戦する。
「どけぇ!」
ガン! ドカッ! バキッ! ドゴン!
楓士雄は大事な仲間である雫を危険な目に遭わせてしまった悔しさと、そんな目に遭わせた不良達への怒りで、30対1という圧倒的に不利な状況にも関わらず、そんなのお構いなしとばかりに下っ端達を蹴散らしていく。
数の暴力で封殺する算段だったリーダーの男は、予想以上の楓士雄の強さに苦虫を噛み潰したような顔をして焦り出す。
そして最悪な行動を起こす。
「そこまでだぁ!」
リーダーの男が楓士雄に向かって言い放つ。
すでに半分以上倒している楓士雄が何事かと振り返って見ると、そこではリーダーの男が割れた瓶の破片を手にし、雫の顔に当てていた。
「ハハ‥それ以上動いてみろ。お前の大事なこの女に傷がつくぜ?」
「っ!!‥‥テメェふざけんな!オレとテメェらのケンカだろ‥‥!?」
バリィン!
楓士雄がそう言い張ったと思った瞬間、突然後頭部に鋭い痛みと衝撃が走った。隙をついた下っ端の1人が楓士雄の頭を瓶で思い切り殴りつけたのだ。
「お前と俺らのケンカ?関係ないね。勝てば良いんだよ勝てば。」
リーダーの男はそう言って下卑た笑みを浮かべる。そして
「おいお前ら。せっかくだ、お返ししてやれ。」
「へへへ‥ありがとうございますリーダー。」
「よくもやってくれたなぁおい!」
下っ端達にやり返すよう命令するリーダーと、嬉々としてそれを行う下っ端達。
雫を人質に取られ、手が出せずに殴られまくる楓士雄。なんとか耐え忍んでいるものの、その痛々しい光景はとても見るに耐えない。
そして雫は、目の前で痛めつけられている楓士雄の姿を見て堪えきれずにとうとう涙を流していた。
『楓士雄君‥‥!』
どうにもできないこの状況で、雫の心は疲弊し切っていた。
だが、そんな状況でも尚、楓士雄は諦めてはいなかった。
その理由が‥‥
バァン!!
突然リーダーの男の近くにあった扉が蹴破られた。そしてそこに居たのは‥‥‥司だった。
「オラァッ!」
「なん‥‥ごふぁっ!?」
不意をつかれたリーダーの男は司が繰り出した拳に反応できず、思い切り吹っ飛ばされた。
いきなり現れた司に雫は困惑していたが、楓士雄は待ってましたとばかりに笑った。
「ッへへへ。流石司だな。待ちくたびれたぜ?」
「ホンットにお前はいつもいつも‥‥。晩飯の時間通りに家に来ないなんてらしくねぇと思ってたらお前んとこのおばさんからお前が帰って来ないって聞いてな。しらみ潰しに探してみりゃこのザマかよ。」
「しょうがねえじゃねぇか‥この状況見りゃわかるだろ?」
「まぁそりゃそうだが‥‥」
あまりにも自然にいつも通りのやり取りをする2人にその他の人間は呆気に取られるが、
「な、舐めんじゃねぇ! 1人増えたから何だってんだ!」
下っ端の1人が声を上げ、残りの下っ端達が襲いかかって来る。しかし‥
ゴッ!
「おいおい‥何オレを倒した気になってんだ?」
身体の至る所にアザができ、出血もしている楓士雄。しかし彼はこれまで数々の修羅場を潜り抜けてきた百戦錬磨の喧嘩師。彼の言う通りこの程度では倒すことはできない。しかも先程はあくまで雫を人質に取られていたから一方的に攻撃できただけであり、雫が解放された今、もう楓士雄を止められる者はいない‥‥
「そんじゃあ‥‥お返しのお返しだっ!」
ドンッ! バギッ! ゴッ! ドカァン!
あっという間に残っていた下っ端達をまとめて倒した楓士雄。
ようやく終わった‥と思い雫のところへ向かう為振り向くと、司に吹っ飛ばされたリーダーの男が立ち上がっており、
「ちくしょぉっ!オラァァッ!」
「ッッ!?」
後ろから雫にに襲い掛かろうとしていた。
無論楓士雄がそんな事をさせるはずも無く
「ウラァッ!!」
ドゴォッ!! ガッシャァァン!
楓士雄がリーダーの男目掛けて全力で向かって行き、男の顔面に渾身のストレートお見舞いした。
(男子校生にしては)小柄な身体からは想像できない威力のパンチを喰らって吹き飛ばされ、はるか後方のガラクタの山に思い切り突っ込んだ男は完全に意識を失った。
こうして楓士雄は駆け付けた司の助けを借りてなんとか全員を倒し、警察に突き出す為その場にあったロープで不良達をとっ捕まえた。
そして雫は
「ぐすっ、ごめんなさい‥私のせいで楓士雄君が‥‥」
学校で見る彼女とはかけ離れた様子で、涙を流しながら楓士雄に謝っていた。
「だーから、シズっちのせいじゃないって言ってるだろ?こんなの昔っからずっとだし怪我すんのもいつものことだから別に良いっつーの。」
「でも‥」
ビシッ!
言い方は悪いがしつこく謝ってばかりの雫に痺れを切らした楓士雄は、彼女の額に強烈なデコピンをお見舞いした。
「痛っ!?ちょっと何すんのよ!?」
「お前が謝ってばっかで聞かねぇからだろ‥。あのなぁシズっち。お前自分ばっかり背負いすぎなんだよ。」
「‥‥え?」
楓士雄の言葉の意味が分からず呆然とする雫。
「人間1人じゃ何もできねーんだよ。困ったら誰かを頼る、誰かが困ってたら助ける、そんなの当たり前のことだろ?もうちょっとオレらのこと頼ってくれても良いんじゃねぇか?」
優しい顔でそう語る楓士雄に、雫は色々な感情が込み上げてきてまたも泣きそうになる。
すると今度は司が
「大体こういう時は、謝る他に言わなきゃいけないことあんじゃねぇのか?」
司のその言葉に一瞬考え込んだ雫はハッと気づき、涙を拭きながら
「うん‥‥。助けてくれてありがとう。」
雫のお礼に2人は顔を見合わせて笑う。
「しっかしここでもこういう連中っているもんなんだな‥もうケンカはしないもんだと思ってたのに。」
「相変わらず昔からモテモテだなお前は。」
「だから嬉しくねーわこんなモテ方!」
実は昔から毎日のようにチンピラに絡まれてばかりだった楓士雄。そしてそれを面白がってからかう司。そんないつも通りのやり取りに戻る2人を見て笑顔を取り戻す雫。
『あぁ、そっか。もっと頼って良いんだ‥‥。』
今まで多くの厄介ごとや責任を抱え込み、1人でなんとかしなければいけないという考えが染み付いていた雫にとって、今回の一件で2人の、もとい楓士雄の存在がとても大きく見えた。
何でもないように自分と仲良くしてくれただけで無く、女の子らしくではなく自分らしくで良いと言ってくれて、ボロボロになっても助けてくれた。単純な性格で悪く言えばバカだが、こんなに信頼できると感じたのはそれこそ香織以来だろうか。
「ふふっ‥‥改めてありがとう2人とも。この恩は忘れないわ。私に出来ることがあったら何でも言ってちょうだい。」
「っんとによー。いいっつってんのに大袈裟なんだってシズっちは。」
「あっ、じゃあ‥コイツの勉強見てくんね?」
お礼を言って恩を返そうとする雫に楓士雄は気にするなと断るが、司がいきなり楓士雄の勉強の面倒を見て欲しいと言ってきた。
「えっ?いやでも司に教えてもらってるし‥‥」
「俺だけじゃ教えられる限界あるだろ?どうせならと思ってな。」
「なるほど、わかったわ。任せてちょうだい。」
「そ、そんな〜‥‥‥」
こうして、楓士雄と司、そして雫はさらに信頼を深める事となった。
尚、後日学校で先生や光輝に絡まれて問い詰められたのは言うまでも無い。
長々とお付き合いありがとうございました。
ようやく次回から原作スタートです。