ありふれないヤンキーコンビは世界最高   作:MUGEN&RUDE好き

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ほとんど原作通りなので、その辺は全然読み飛ばして頂いても構いません


原作突入編
6話


月曜日。

 

 ハジメは、いつものように始業チャイムがなるギリギリに登校し、徹夜でふらつく体でなんとか踏ん張り教室の扉を開けた。

 

 その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらを頂戴する。女子生徒も友好的な表情をする者はいない。無関心ならまだいい方で、あからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる。

 

『ハァ‥まぁそうだよな‥』

 

 ハジメ自身こういった事は前からで、ある意味いつもの事だったので極力意識しないように自席へ向かうハジメ。しかし、毎度のことながらちょっかいを出してくる者がいる。

 

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

 言わずもがな檜山率いる小悪党組4人だ。ハジメが1人でいるタイミングを見計らってここぞとばかりに罵って馬鹿にしてくる。

 

 対するハジメはと言うと、「よくもまぁ懲りないなぁ」などとむしろ関心(もちろん本心では無い)する様な面持ちでいた。

 

 するとそこに声をかけてくる人物がいた。

 

「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 

 ご存知クラスのマドンナ、香織だ。

 

 香織が自身の事を好きという事にハジメは未だ気付いてない。その為ほぼ毎日この有様なのでハジメとしては「勘弁してください‥」と言わんばかりだった。

 

 ハジメが会話を切り上げるタイミングを図っていると、三人の男女が近寄って来た。

 

「南雲君。おはよう。毎日大変ね」

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

 唯一ハジメに挨拶した雫。些か臭いセリフで香織に声をかけた光輝。そして光輝と仲の良い幼馴染の龍太郎。

 

 この3人に香織を合わせた4人は幼馴染であると同時に、内3人は非常に高い人気を誇っているため言わばクラスの中心に位置する一派を形成している。

 

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

 雫達に挨拶を返し、苦笑いするハジメ。「てめぇ、なに勝手に八重樫さんと話してんだ? アァ!?」という言葉より明瞭な視線がグサグサ刺さる。雫も香織に負けないくらい人気が高い。

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

 

 光輝がハジメに忠告する。光輝の目にもやはり、ハジメは香織の厚意を無下にする不真面目な生徒として映っているようだ。

 

 ハジメとしては決してそんな事を言われる筋合いはないのだが、下手に反論すれば大変な目に遭うのは想像に難く無いので

 

「いや〜、アハハ‥‥」

 

と言う風に大人しく笑ってやり過ごそうとする。が、今日も変わらず我らが女神は無自覚に爆弾を落とす。

 

「? 光輝くん、なに言ってるの? 私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

 

 ざわっと教室が騒がしくなる。男子達はギリッと歯を鳴らし呪い殺さんばかりにハジメを睨み、檜山達四人組に至っては昼休みにハジメを連れて行く場所の検討を始めている。

 

「え? ……ああ、ホント、香織は優しいよな」

 

 相変わらずのご都合主義っぷりにほとほと呆れると同時に、

 

「……ごめんなさいね? 二人共悪気はないのだけど……」

 

 この場で最も人間関係や各人の心情を把握している雫が、こっそりハジメに謝罪する。ハジメはやはり「仕方ない」と肩を竦めて苦笑いするのだった。

 

 こんな風に朝からあまり良いとは言えない目に遭っていたハジメ。

 

 そんな時、そろりそろりと香織達に気を取られているハジメの背後にニヤニヤしながら忍び寄る人影。そして‥‥

 

 

 

 

「バァッッ!!」

「ウワッ!?」

 

 背後から突然驚かされてイスから転げ落ちそうになるハジメだが、何とか踏ん張ってそんな惨めな姿を晒す事は防いだ。

 

「よぉハジメンおはよーさん!今日も元気か?アッハハハハ!」

「楓士雄くん‥むしろ心臓止まりかけたんだけど‥?」

 

 こちらもまたいつもの調子で挨拶を交わす楓士雄に不満そうな顔をしてぼやくハジメ。そして、

 

「その顔色‥お前また昨日遅くまで起きてたな南雲。無理に直せとは言わねえけど、後々苦労すんのはお前だぞ?」

 

 楓士雄に続いて声をかけた司。流石と言うかハジメが徹夜したこともお見通しであった。

 

「オメーまた徹夜かよ?ちゃんと寝ねーと元気出ねーぞ?」

「分かってるよ‥でも母さんの方の締め切り近くて‥」

「あー‥」

 

 司の発言を聞いて苦言を呈する楓士雄だが、ハジメの母が描いているマンガの締め切りが近かった事を聞くと納得する。

 

 実は2人も何度かハジメの家にお邪魔したことがあり、その際にハジメと親の仕事現場を見た事があるのだが、なかなかに過酷な状況だったのを覚えているためそれなら仕方ないと心に収まった。

 

「あっ。おはよう楓士雄くん、司くん。」

「おはよう2人とも。相変わらず仲良しね。」

 

 3人のやり取りを見て楓士雄達に挨拶する香織と雫。

 

「おおーカオリン!シズっち!おはよう!」

「おはよう。つーか仲の良さに関してはお前ら人のこと言えねーだろ。」

 

 2人に気づいて元気よく挨拶を返す楓士雄と、雫の発言にこっちのセリフだと言わんばかりの司。

 

と言うのも、香織・雫コンビと楓士雄・司コンビには

 

・幼馴染であり親友

・1人は天真爛漫で割と考えなしな突撃系(主に香織と楓士雄)

・もう1人はそのストッパーを担う冷静なクール系(主に雫と司)

 

と言う様に多くの共通点があるため、お互いに何かとシンパシーを感じているのだ。

 

「あー確かに。カオリンとシズっちってほぼカップルみてーなモンだからな〜w」

「「そ、そんな事ないよ(わよ)!!」」

「息ピッタリじゃねーか。」

 

 そんなこんなでこの4人もかなり仲良くなり、クラスではハジメを加えた5人でいる事も度々あるのだ。

 

 ところがそこへ水を差す輩が約1名‥

 

「おい!俺たちの事は無視か?全員に挨拶するのは人として当然のことだろう?」

 

 光輝だ。元鬼邪高と言う事で楓士雄と司には当たりが強く、いつもの様に何かしら口実を作っては彼らに突っかかっていた。

 

「あ‥‥アハハ、わりーな光輝。おはよーさん。」

「いやオメーも挨拶してねーだろうが。どの口が言ってやがんだ?」

「何だと?」

 

 苦笑いしつつも挨拶を返す楓士雄に対し司はあからさまに喧嘩腰な返しをする。

 

 楓士雄は光輝に対しては、文句を言われながらも「悪気は無いんだしなー」と言う風に、全く気にならない訳では無いがある程度は受け入れている。

 

 ところが司の方はと言うと、あまりにも歪んだ正義感とご都合主義が気に入らないやら呆れるやらでいつもこの様に言い合いになってしまう。

 

 そんな2人を雫や楓士雄がどうにか諌めているタイミングで始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。教室の空気のおかしさには慣れてしまったのか何事もないように朝の連絡事項を伝える。そして、いつものようにハジメが夢の世界に旅立ち、当然のように授業が開始された。

 

 そんなハジメを見て香織が微笑み、楓士雄、司、雫はいつも通りだなと苦笑いし、男子達は舌打ちを、女子達は軽蔑の視線を向けるのだった。

 

 

   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 昼休みに入り、目を覚ましたハジメは手っ取り早く昼食を済ませようとゼリーを取り出して一気に飲む。

 

 そして再び寝ようと頭を伏せたところに声がかかる。

 

「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」

 

 再び不穏な空気が教室を満たし始める中、ハジメは心の裡うちで悲鳴を上げる。いや、もう本当になしてわっちに構うんですか? と意味不明な方言が思わず飛び出しそうになった。

 

 ハジメは抵抗を試みる。

 

「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」

 

 そう言って、ミイラのように中身を吸い取られたお昼のパッケージをヒラヒラと見せる。断るのも「何様だ!」と思われそうだが、お昼休憩の間ずっと針のむしろよりは幾分マシだ。

 

 しかし、その程度の抵抗など意味をなさないとばかり女神は追撃をかける。

 

「えっ! お昼それだけなの? ダメだよ、ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」

 

(もう勘弁して下さい! 気づいて! 周りの空気に気づいて!)

 

 刻一刻と増していく圧力に、ハジメが冷や汗を流していると購買にパンを買いに行っていた楓士雄と司が帰って来た。ハジメは2人に向かって必死に「助けてくれ!」と目で訴えた。

 

のだが‥‥

 

「おーカオリンの弁当!一緒に食うのか?」

「貰っとけよ。どうせお前メシちょっとしか済ませてねーんだろ?」

 

 2人揃って裏切られた‥

 

 そりゃ2人にとっては周りの空気などどうって事無いだろうがハジメにとってはあるのだ。勘弁してください‥‥と言いたくなるこの状況で今のハジメにとっての救世主が現れた。光輝達だ。

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

 

 爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く光輝にキョトンとする香織。少々鈍感というか天然が入っている彼女には、光輝のイケメンスマイルやセリフも効果がないようだ。

 

「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」

 

 素で聞き返す香織に思わず雫と楓士雄、司が「「「ブフッ」」」と一斉に吹き出した。光輝は困ったように笑いながらあれこれ話しているが、結局、ハジメの席に学校一有名な四人組と二人組が集まっている事実に変わりはなく視線の圧力は弱まらない。

 

 深い溜息を吐きながらハジメは内心で愚痴った。

 

(もういっそ、こいつら異世界召喚とかされないかな? どう見てもこの四人組、そういう何かに巻き込まれそうな雰囲気ありありだろうに‥‥‥楓士雄君と司君も明らかにそう言うことに巻き込まれるタイプだし、どこかの世界の神か姫か巫女か誰でもいいので召喚してくれませんか~~)

 

 現実逃避のため異世界に電波を飛ばすハジメ。いつも通り苦笑いでお茶を濁して退散するかと腰を上げかけたところで……

 

 凍りついた。

 

 ハジメの目の前、光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学きかがく模様が現れたからだ。その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様――俗に言う魔法陣らしきものを注視する。

 

 その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 

 自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

 

 数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。

 

 この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。

 

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