ケルシーの話です。
時系列で言うと四章序盤、ミーシャを葬ってロドスに帰還した後になります。
短めなのでおまけ付きです。
「Mon3tr───」
彼女の背中から現れたそれは、瞬く間に私を捕らえ無力化しうるだけの能力を有していた。
皮膚を突き破り、さながら宿主を乗り捨てる寄生虫の如く顕現したそれの体長は優に3mを超えている。
その鋭利に研ぎ澄まされた前肢を向けられ、一切の行動を封じられる。
「今一度問おう」
"それ"の宿主である女性は問う。
毅然とした、ある意味ではいつも通りに。
それでいてどこか悲し気に。
「君は、否───
お前は誰だ?」
その内面を推し量る事は、今の私には難しすぎた。
◇
無抵抗の意を示すために両手を挙げる。敵対の意思がないことだけは伝えなければならないし、こんなところで死ぬわけにもいかない。
「話せば長くなる、お互いに少し頭を冷やして仕切り直すのはどうだろうか」
「......それは先の質問に対する返答次第だ。お前がロドスに仇なす存在であるなら、この場で然るべき対応を取る必要がある」
「そうだな───」
私がするべきことは保身ではなく、一時的なものでも彼女の信頼を勝ち取ることだ。
嘘も方便もいらない。ただ、私が何者であるかを正直に語るのみ。
「今の私はロドスのドクターだ。それだけは断言できる」
「......そうか」
彼女の返答はそれだけであった。それ以上は不要とでも言わんばかりに背を向けると、ついてこいとだけ言って場所を変えることを私に伝えた。
事の発端は、今回の小規模な作戦における私の不用意な行動だった。
一人の新人オペレーターがスムーズに撤退できず部隊から孤立してしまう事態が起き、指揮官であるにも拘らず私は混成種───便宜上私はそう呼称している───の力を用いて反射的にその場へ向かってしまったのだ。
そして帰艦後、何故か初対面の時点で私がドクターでないという確信を持っていたワルファリンに"検査"を受けていたところ、その会話をケルシーに聞かれてしまったというのが今回の経緯だ。
「───よってお前はテラの外、別惑星或いは別世界の者であるという認識に間違いはないか」
「その通りだ」
洗いざらい、とはいかないもののケルシーには私の来歴の大半を伝えた。
何度か質問を挟み、時には意図して喋らなかった点について指摘される感覚は大学の論文発表を思い出すものであった。
「私から質問しても構わないか?」
「構わない」
「......ドクターは、元は人間だったのだろうか」
一瞬瞑目し、彼女はため息交じりに答えた。
「人間という言葉の定義にもよるが、テラに存在する
「ではもう一つ───ドクターもまた、私と同様に
「......」
「その沈黙は肯定と受け取っても構わないか?」
「好きにしろ」
何があったか、それはある程度察しが付く。
古参オペレーターから聞くドクターの話は非常に優秀な指揮官としてのものばかりだ。人を忘れた戦闘機械だの何だの言われてはいたが、そこには少なからず尊敬の意が込められていた。
そして彼は同時に優秀な源石研究者でもあった。そんな彼が感染するとすれば人為的、もっと限定するのであれば自ら───
「何故、あの新人オペレーターの元へ向かった。突出していたとはいえ付近のオペレーターの救援は十分に間に合う距離、少ないとはいえお前がリスクを負うほどの事では無かった筈だ」
「まだ子供だったからだ。───子供が傷つけられることが正しい筈がない、それだけだ」
「───本当に、よく似ているな」
時間を取らせたなと、彼女は立ち上がる。医療部の長として私以上に時間が無いのは彼女の方だろうに。
とはいえ、私はまだ一つ伝えていない事がある。
「
ある男が沼の近くで雷に打たれて死に、また同時に沼は化学的に変質し男と全く同一の存在を生み出した」
「───その男と沼の変質に伴って生まれた存在は別物であるが、それに気付く者は居ないと。
つまりお前はそれであると?」
「ああ。私はこの記憶の全てが本物であると証明できない、だからあそこで
今の私はロドスのドクターだ。それこそが
「......そうか」
今度こそ彼女は部屋を後にする。
緊張が解け一息ついた私に、彼女はらしくもない一言を添えて。
───精々励め、ドクター。
「ああ、言われるまでも無い」
もう二度と過ちを繰り返してなるものかと、決意を新たにする。
たとえ二度目など無くとも、あの日々を忘れないようにと。
───数日後、落雷の観測者が目の前に現れるとも知らずに。
◇おまけ
「───総員、特殊戦闘待機。全オペレーターは後方にて防衛線を構築しろ」
「ドクター、
「ケルシー、それはできない」
見上げるは、3mを優に超える体躯を持つ"生ける伝説"。レユニオン幹部のうち、唯一脅威度を最高の5に定められた勝利の権化。
ウルサスの英雄、戦争の化身、感染者の盾、そして───
彼女の、父親。
「我々は証明しなければならない。ロドスの何たるかを、感染者の盾である彼らに。
───その行く先に在る希望を」
「......やめろ。速やかにその場を離脱するんだ、ドクター!!」
「一時的に全指揮権を譲渡する、どうすべきかは貴女が一番理解しているだろう?」
懐から取り出すは錠剤型に成形した源石───ではない。
都市すら滅ぼしうる濃縮液化活性源石。それを一息で呷り、私はそれに成る。
「指揮は任せる───ケルシー」
フードを脱ぎ去り、フルフェイスマスクを剥ぎ取る。
ドローンを通して見てみれば、私の体はこれまでにないほどの変質を遂げていることが見て取れた。
頭の回転はまるで、思考が複数に分割されていると錯覚するほどだ。情報収集や援護に用いるドローン数十基を操作してなお私自身も戦闘に参加できるだろう。
光輪はその数を二つに増やし二重反転プロペラの如く高速回転し甲高い悲鳴を上げている。左手に握った白銀の拳銃は内包するエネルギーを無理やり押さえつけて明滅し、その放出先を求めるかのように銃口から白煙を零す。
実体化し数倍の大きさを得た翼、湾曲して伸びた角、左半身を覆う鱗。
そして、右手に握った飾り気のない無骨な大剣。
敵味方問わず、異形と化した私の姿に一歩後ずさりする。
彼もまた、その特徴的な仮面の下で目を剥いているのが見て取れた。
докторとして。そしてドクターとして。
エレーナに報いなければならない。彼女の起こした奇跡を目に焼き付けて。
フロストノヴァに応えなければならない。彼女の怒りと懊悩を拾い集めて。
そして
「行くぞ、パトリオット!!」
「来い!!」
貫き抉る一条の閃光と、覆い喰らい尽くす闇。
混成種と成った私の、最初で最後の"全力"で行う戦闘。
飲み屋の片隅で一言ずつ語り合うような、互いの心の裡を静かに晒し合うような。
殺し合いと呼ぶには感傷的すぎる戦いは、その火蓋を切った。
ロドスによる脅威度一覧
5 パトリオット
4 タルラ フロストノヴァ
3 その他幹部
2 エリート
1 通常モブ
強さは 5>全力ドクター>4>Mon3tr>3>通常ドクター くらいです
ぶっちゃけその他の幹部がMon3trにタイマンで勝てる未来が見えぬ
あと感想お願いします(定期
次に書く短編の登場人物とか
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アーミヤ
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パトリオット
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ホルハイヤ
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Friston-3
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モスティマ
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グレイディーア
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歳陣営
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シャイニング
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ロサ
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医療部モブ