昔日の巷塵   作:湊咍人

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かなり短いです。

あと赤バーありがとうございます。よく仕組みとかわかってないのであれですけどめっちゃ嬉しいです(小並感


エピローグ

 

 ????日目

 

 我々が鉱石病に感染した場合、一体何が起こるのか。

 学術的興味による探求心などではなく、それは最悪の想定として備えておかなければならない事象だ。

 爆発的感染拡大だけは、何としても避けなければならない。

 

 仮説は大きく分けて五つ。Infectionの頭文字Iを取って、I-1からI-5までが想定されている。

 

 I-1 感染せず発症もしない───何も起きないという仮説

 I-2 感染しないが発症する───感染は起こさないものの影響を受けるという仮説

 I-3 感染するが発症しない───感染するが影響はないという仮説

 I-4 感染し発症する──────感染し少女と同様に鉱石病を発症するという仮説

 

 そして、五つ目

 

 I-5 感染し変質する──────感染し源石自体あるいは身体に想定外の変化が齎されるという仮説

 

 少女の遺伝情報に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことにより有力となった説。

 

 共通の祖先を持つと推定される各種族において他生物を思わせる器官が発現している理由としては、やはり源石が筆頭に挙げられる。人間は収斂進化の結果とは到底言えはしないが、ここまで一定の方向性を持って特徴が現れる変化が起きるものか?

 

 クマ、ウサギ、ネコ、ウマ、オオカミ。そして天使と悪魔といった特徴を有する存在に、人間は自然に進化しうるものなのか?源石こそが、テラの人々を変質させているのではないか?

 

 源石を一切保有していない、真っ白なキャンバスのような我々が感染した時に何が起きる?

 

 源石とは何だ?どこから来て、どこに向かう?

 

 そもそも───

 

「私は何故、未だに思考できている?」

 

 ”我思う故に我在り”と先人は言った。

 つまり自我こそが人間の本質であり自意識こそが主体の証明であることは事実ではあるものの、如何せん肉体無しで思考できるほど人間はファンタジーな存在ではない。つまり肉体に対し致命的な損傷を自らの手で与えた私には思考する権利などありはしない筈なのだが。

 

「落ち着け、状況を把握しろ」

 

 そう、5W1Hだ。順番に把握していこう。

 

「When───ここが死後の世界、或いはそれに準ずるものであるとするのであれば20XX年以降であることは確定か?いや、あの子の実例もあるし時間遡行くらいしててもおかしくはないな」

「Where───いや、全く分からないな。重力も感じない、真っ暗と思っていたが全体がうっすらと輝いてはいる......」

「Who───私は私だ。記憶の欠落もないし、体にも問題は───角が無い?感染以前の状態に戻っているのか......?」

 

 あの時、確かに私には───

 

「いや、どちらでもいい話か。しかし死後の世界というのは味気ないものだな、地獄の方がいくらかマシだ」

 

 

 

 人は死ぬとどうなるのか。

 

 その議題は楽園証明と同義で、無意味で無価値な問であると切り捨てていた。

 死んだ人間は思考できない、ただ無に還るだけだと。

 

 だが、私は今こうして自我を保っている。

 

 顎から脳を撃ち抜いて生きているとは考えにくい。あの時私は完璧に脳の中心を捉えたはずで、万が一生きているとしてもここまで明瞭な意識を維持できる訳がない。

 私が短い生涯を捧げた科学を信じるのであれば、ここは非科学的で説明のしようがない死後の世界ということになる。

 

 しかし、だ。

 

「まず間違いなく、地獄行きだと思っていたんだが」

 

 無知は悪でないが罪であるように、無力もまた罪である。

 何も為しえず自ら命を絶った私には地獄がお似合いだと。

 

 ......いや、そうでもないか。

 

 地獄で罰を受け続けるというのもまた、私には赦されない。それは思考の放棄であり、苦悩からの逃避だ。そうしてただ受動的に罰を受けるだけで私の罪を償えるとは思えない。

 天国はどうだろうか。永遠に赦され続けるというのはある意味で私にとって最大の罰であるかもしれないが、それだけは勘弁願いたい。私に対する罰としてはこの上なく有効ではあるものの、罪を償うという行為からかけ離れすぎている。

 

 ───ただ、このまま消えるのは。

 犯した罪すら忘れて無に還る事だけは─── 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず目に入ったのは、あの子と同じ形をした耳。

 そして、不安と焦燥に揺らめく大きな青い瞳であった。

 

「ドクター......手を───」

 

 次に目に留まったのは、数年に渡って観察し続けた結果見慣れてしまった体表にて黒光りする悪魔。周囲を見渡せば明らかに別文明の産物であると確信できる正体不明の機器が立ち並んでおり、私の体はそこに寝かされているのだと理解した。

 

 頭部の違和感。角を根元から切り落とした跡のような感触を、無秩序に伸びた髪の中から感じた。あの時鱗のような組織が現れていた部位は不気味に思えるほど白く染まっており、本来の皮膚が失われていることが一目で分かる有様であった。

 輝く翼も光輪も見当たらず、尾骶骨の辺りには何かが「足りない」感覚。どうやらこの体の本来の持ち主は色々と削ぎ落してきたらしい。

 

 そうして理解した。ここがどこで、私にどのような判決が下されたのか。

 

 

 

 ここは、煉獄だ。

 

 

 

 私に与えられたのは救いでも罰でも休息でもない。苦悩する権利、選択する責任、あるいは贖罪の機会であった。

 私は、再び罪を重ねるであろうか。或いは、あの少女と胸を張って再会できる大人となれるだろうか。

 

今はまだ、分からない。

 

 

 

「───君の、名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姐さん───もしかして、泣いてるんですか?」

「......分かるのか」

「そりゃ、そこそこ長い付き合いですし

 悪夢でも見たんですか?」

 

 いや───

 

 

 

「幸せな夢を見たんだ。......ただ、それだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





・女性
・ウルサス出身
・銀髪
・感染者
・十一歳で感染
・小動物のような耳
・低い体温
・灰色の瞳
・味覚異常
・対象を凍結させられるアーツ
・いたずら好き
 
 さて、少女の名前は一体何だったのでしょうかね......(すっとぼけ
 実は「結」のラストで名前が出ていたんですよね。気付いてくださったハムエカさんありがとうございます。帰り道で感想を見て作者は満面の笑みを浮かべていました。

 これにて本編完結です。
 プロットでは転移→感染→仲良死→happyしか考えてないふわふわ具合でしたが何とか終わらせることが出来て一安心です。今後はちまちまIFストーリーとかを書く予定です。

ところで全然関係ないんですけど、四章のボスって第二形態で睡眠耐性を失うらしいですね。眠るように死んだからかな?いやそれなら六章か(笑)

次に書く短編の登場人物とか

  • アーミヤ
  • パトリオット
  • ホルハイヤ
  • Friston-3
  • モスティマ
  • グレイディーア
  • 歳陣営
  • シャイニング
  • ロサ
  • 医療部モブ
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