夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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英霊たちの宴

アルケイデスの一撃を真正面から受け吹き飛んだマシュの元へ藤丸らはかけ寄る。

 

「マシュ!」

 

「…ッ!先、輩っ…」

 

瓦礫の中に寄りかかるように倒れていた。

息をたえだえにして肩を抑えている。

 

「失礼」

 

天草は横に膝をつき肩に優しく触れる。

青色の淡い粒子が傷の回りに漂い集まっていく。

 

「痛みは取りました。これまで通りとは行きませんが戦闘は可能です」

 

「ありがとうございます、天草さん。アルクェイドさんとドラコーさんは?」

 

「足止めしてもらってます。まぁあの二人が倒されるのは有り得ませんから!」

 

よろよろと立ち上がるもしっかりと瓦礫を踏み盾を握る。

 

「それにしても彼とても強くなってますよ。私と対峙した時の数百倍くらい魔力溜め込んでます」

 

「ジャックさんの宝具を取り込んだから…」

 

「しかし、宝具とは手札のようなものです。それが増えたとしても魔力量そのものをあげる理由には繋がらない。そうなれば…」

 

天草は顎に手を置き考えていた。

ヘラクレスは神より与えられた十二の試練を乗り越えそれを宝具とした。

先程の宝具は試練で得た力を神から奪い取った事から昇格したもの。

その維持すら大量の魔力が必要。

それを維持するにはユスティーツァのような器持ちかカルデアのような外部からの魔力接続のみ。

 

「マスターが魔力炉を持っている?」

 

「えぇ。それも聖杯由来のものかも知れません」

 

「泥ですね。ドラコーさんも同じと言っていました」

 

何度も聖杯を炉心に組み込んだ敵と戦ってきた。

どれも厄介なスキルを持ちカルデアを苦しめた。

 

「早めに倒さないと」

 

「倒すのは賛成ですけど勝算無くないですか。私の宝具で燃やすのものありますけど奪われたらアレが目覚めますよ」

 

考えたくない事をククルカンが告げる。

 

「とにかく今は合流を…」

 

「くは…クハハハハ!フハハハハ!!」

 

聞き慣れてしまった高笑が外から響く。

カルデアには何人か独特な笑い方をするサーヴァントがいるがこの笑い声は間違うことは無い。

 

「来たんですね…王様が…」

 

外に出てみると教会の鐘楼に立ち、通りを見下ろしていた。

この状況を見たとしても英雄王の余裕は崩れていなかった。

 

「何やら珍妙な景色が生まれていると思って来てみれば、中々面白そうではないか。貴様、道化の素質があるのかもしれんぞ」

 

その言葉でこれまでの戦闘が筒抜けだった事を知る。

そもそもギルガメッシュ王には千里眼があり大抵の事は見られている。

 

「来たか、強き王よ」

 

アルケイデスはニヤリと笑い、躊躇うことなく弓を抜く。

そして宝具より新たな使いを召喚しようとした時、更なるイレギュラーが割り込んできた。

 

「おーい。どういう状況だコレ?」

 

のんびりとした声が教会の影から3人が現れる。

先頭を行くのは赤毛混じりの金髪を風になびかせた騎士と童顔の少年、そしてアサシンだった。

 

「隠密作戦って話じゃ無かったのか?」

 

「状況が変わった。それだけだ」

 

「そうか。それは仕方ない」

 

普通に話す2人をアルケイデスは警戒し、ギルガメッシュは興味が無いのか黙っている。

 

「お前たち…何者だ」

 

誰も聞いてこないのに痺れを切らしアルケイデスの前にいたドラコーが話しかける。

 

「ん?あぁ、アンタらか。警察署ではお世話になった。と言っても一方的だけどな」

 

「名乗れと言っているのだ。意味の無い感謝などされても嬉しくなどない」

 

「それは失礼した。オレは見ての通りセイバーだ。で、こっちは…」

 

「…シグマ」

 

「だとさ。彼女は言わなくてもいいだろう。これで充分だろ?女帝」

 

混沌を極めつつあるこの空間。

運命の糸は容易く集まり捻れていく。

 

そしてここにもその糸に絡まれに行くサーヴァントがいた。

 

「夜風が心地いい。こいつは最高のエンターテインメントが拝めそうだ」

 

初めて外へ出るのにも関わらず迷うことなく大通りの方へ歩くキャスター。

この外出は署長は知らない。

そんなことを止めるほど彼は暇ではないからだ。

部下の被害と事態の急変を受けその対応にあたっているからだ。

 

「よし。ここら辺でいい」

 

全体を遥か遠くから眺める場所で止まり、いつもと変わらない笑みを浮かべる。

そしていつの間にか持っていたスクロールを静かに開く。

 

「役者が勇気を見せるんだ。俺もそれに答えなきゃな」

 

そして、ある人物へ静かなエールを送る。

 

「驚き役で終わらせねぇよ。真に英雄になる資格を持つのはお前らだ」

 

独り言を呟きながら彼はスクロールにスラスラと物語を書き綴る。

 

「…銃士達よ、風車に挑め(マスケティアーズ・マスカレイド)。さぁて、どっちの推しがかっこよく舞えるか。勝負だ」

 

彼は自分でもどのような出来になるかは分からないがそれでも筆は止まらない。

例外達の宴の幕は第2幕へと移ろうとしていた。

 

 

セイバーと名乗った青年は戦況を軽く確認する。

 

「おいおい、参ったな。サーヴァントってのは悪魔すらも呼べるのか」

 

驚きの表情をしてるもののここが自分の居場所と言わんばかりの自然体だった。

 

「冬木の聖杯戦争では反英雄が召喚されたらしい。雇い主の話だと条件があえば呼べる」

 

「なるほど。まぁ、妖精も喚べるんだからな。会えるなら久しぶりに見たいがそんな余裕のある相手でも無さそうだ」

 

彼の口から放たれる言葉一つ一つに突っかかりたいのを抑え藤丸はその一挙手を見る。

悪魔となった英霊を見た後、チラリと頭上を見上げる。

 

「上にいる、あの派手な英霊もな」

 

派手な英霊、ギルガメッシュはその言葉に対し不機嫌そうに口を開く。

 

「身の程を弁えろ。雑種。誰の許しを得て我を見上げる」

 

不遜。

キャスターの王と初対面した時も同じ圧を感じた。

こちらが特異点修復の為に来たと言うも、全てを見切っていながらも用は無いと言わんばかりの対応だった。

それはギルガメッシュ王からの分かりにくい歓迎ではあったが。

キャスターは丸くなっているがアーチャーの王は聖晶石のようなトンガリ具合。

態度を弁えれば丸くなり、1度でも間違えればその命を突き刺す。

千里眼持ちとはいえ気分屋みたいなものだからだ。

「俺の心に許可を取った。君を見下ろすことは出来なくても見上げることに値する英雄と見たぞ。物言いからすると王の類だ。立つだけで尊敬に値する存在は中々見れない。だからこそ身の程を弁えた上で今日、この場に立てた事に感謝する」

 

「雑種め。その程度の眼で我を値踏みしたつもりか。そもそも貴様に対し何一つ許しを与えておらんわ」

 

表情を変えずに、背後が明るくなり門が複数展開される。

 

「疾く失せよ」

 

高速で剣や斧の形をした宝具がセイバーに向かって放たれる。

 

「失せろってこの世からか!ハハッ!君は面白いな!!」

 

新しい玩具を見つけた子供のように笑い宝具の雨を縫うように避ける。

時には自前の剣で弾き返す事もあったがその姿は正に神速の域に到達している。

 

「なぁ!この剣すごいな!持つだけで万軍の味方を得たようなものだ!それに装飾も美しい!目立たずも煌びやか、なのに邪魔にならない!!まさか他のもそうなのか…!あぁ、ここは尊敬を表して言おう!これ…何本かあるなら俺にくれないか!」

 

「!!??」

 

マシュが明らかに困惑と焦りの声を短く吐く。

マスターとして認められたならまだしも敵としてその宝物に触れる。

それが如何に愚かな行為なのかは本能で理解している。

 

「そこまで嬲られて尚その戯言を吐き捨てるとはな。雑種ッ!」

 

僅かに眉をひそめ、ギルガメッシュは口を開く。

 

「とはいえ、輝きに眼を奪われるほどでは無いのは褒めよう。特別に我が宝物の錆になるのを許す。光栄に思え」

 

言い終わると同時に再装填された数十もの武具がセイバーを襲う。

一度避け、舞った瓦礫を使い飛ぶように駆け上がる。

その姿を見てあるサーヴァントを思い出す。

ライダー、牛若丸。

彼女が行う高速移動の元となったのが『八艘飛び』。

逸話が昇格し常時行える宝具で、僅かな空間でも渡り移動が出来る。

同じようにセイバーも中に浮いた瓦礫を軽々跳ね敵へ攻撃をする。

 

「申し訳ないが俺の望みは錆になることじゃぁ無い」

 

「ほう…」

 

「その華美な鎧についた小さな傷跡さ」

 

迫る『一撃必殺の攻撃』を空中で方向を転換させ避けた。

瓦礫による移動変更では無く空中そのものを蹴る2段ジャンプのようなもの。

 

「魔術を使ったのね。でも、発動したように見えない…」

 

「マスターの力。と言うには都合良すぎますね」

 

教会の屋根にたどり着き遂にセイバーとギルガメッシュ王は対峙した。

 

「そろそろこちらも動くとするか。のぉ、狂犬」

 

2人の戦闘に思わず目を奪われていたが戦況は変わっていない。

アルケイデスは見上げていた顔をこちらに向ける。

 

「ふむ…貴様らに詫びる必要があるな。敵対しながらも別の敵に目を向けたことを」

 

「いえいえ!私たちも見とれていたのでお相子…モゴッ!?」

 

「はいはい。ちょっと静かにしましょうね」

 

「…貴様はこの状況でも退かぬか」

 

ドラコーの問いかけに首を縦にして答える。

 

「貴様らに守るものがあるように、私にも奪うものがある。それを分かる必要も共鳴する必要も無い。どちらにせよ我が道を阻む壁に過ぎない」

 

アルケイデスにとって敵も味方もいない。

自分に宿る復讐のためならどんな手も使う。

バーサーカーの彼とは全く違う存在だった。

 

「私がこれから成すのは、道理も知らぬ幼子を屠り去ることだ。それが出来れば貴様らに要は無い。それでも尚、見ず知らずの子供を守るために自分の命を捧げられるか」

 

藤丸だけではなくこの場に集まる警官隊を試す言い方。

威圧的ではあったものの手にした弓を強く握っただけ。

サーヴァントですらも吹き飛ぶ一撃を放つ豪腕を軽く振るだけで死人が出るのは確実。

手数はあってもその高みに届くかは別。

警官隊の方を見ると足が震え、涙を目に貯め、歯を鳴らしていた。

明らかな恐怖がそこにあった。

 

「…それでも俺は戦うよ」

 

「ほぅ。魔力を持たないマスターよ、貴様こそ逃げないのか」

 

「力が無い事を恥じるつもりは無い。でも、それが逃げる理由にはならない」

 

手に力を強く込め答える。

この使命は偶々だとしても、それが藤丸にとって走り出す理由になる。

例えどんなにくだらなくても。

 

「…勇敢だな。人の子よ。奴もこのような目をしていたのかもしれん…そして憐れよな」

 

空気が破裂した音と共に目の前が黒くなる。

目を閉じた訳でも無く巨体が眼前に現れた。

 

「なっ!?」

 

「先輩っ!!」

 

明確な死が身構えること無く襲いかかる。

本能的に目を瞑り更に暗くなる。

横に勢いよく飛ばされると共に果物が握りつぶされる音が耳に響く。

だが死の衝撃はそれだけで終わった。

恐る恐る目を開けるとアルケイデスの大木のような足が見えた。

 

「マスターさんから離れなさい!!」

 

足が視界から消えると見慣れた足が映る。

同時に体にツタが巻き付き一気に距離を取られた。

 

「手粗でごめんなさい。あと、感謝は彼にしてね」

 

「彼…?」

 

アルクの視線の先には病院の入口が原型を留めぬほど破壊されていた。

そこに警官隊が数名近づき瓦礫を退かしている。

 

「そこまでするとは…恐れ入った」

 

その言葉で何が起こったのか理解出来た。

警官隊の誰かに助けられその死を与えてしまった。

 

「同じ手は使えぬな。真っ向からその信念ごと消し去ろう」

 

「その前に貴方をノックアウトさせます!」

 

「前に出すぎるな。やつの弓は飾りでは無いからな」

 

「私が彼を動かします。先程と同じく頼めますか。アルクェイドさん」

 

「もちろん。手抜き無しでやるわよ」

 

「先輩…繋ぎましょう。彼の犠牲を無駄にしない為にも!」

 

ギルガメッシュとセイバーが交戦する元で漆黒の悪魔とカルデアの戦いが再び切られようとしていた。

 

⚫⚫⚫⚫にて

警官隊の1人であるジョンは薄暗いホールのようなの所にいた。

何処からか音楽が流れている。

今の時代ハイレゾ音源が主流になっているからライブさながらの音質が何時でも聞ける。

だが、何処かノイズが混ざっており聞にくいものの懐かしさを感じた。

 

「ここは…?」

 

目が慣れて来たのか段々情報が入ってくるようになった。

薄暗さを感じたのは電気ではなく大きめの長テーブルに置かれた1本の燭台の炎のみだったから。

 

「俺は確か…」

 

思い出そうとしてもロックがかけられたように出てこない。

それでもここにはいなかった事だけは理解出来た。

テーブルの反対側には大柄の男が座りワインを嗜んでいた。

 

「あの…ここはどこで…」

 

ジョンはその男に近づき話しかけようとしたが途中でやめた。

何故ならそれは自分がよく知る人物だったから。

 

「もうここがバレちまったのか」

 

「え…デュ…キャスターさん!?」

 

警察署長と手を組み、宝具を提供したあのキャスターだった。

 

「あの…何で俺ここに。他の皆は…」

 

そこでもう1つ気づいてしまった。

キャスターの目は自分では無くその先の暗闇に向けられていた事を。

同時に肩を叩こうとした手がスルリと抜ける。

まるで幽霊になったかのように。

 

「え…?」

 

これまで不思議なことは何度も経験してきたが自分自身が体験するとは思わず困惑している。

 

「警戒するな。ここは俺の工房だが追い返すつもりはねぇよ。むしろ大歓迎な方だ!」

 

ボウッと背後が発火したように一瞬青く光った。

勢いよく振り向くと暗闇に青い炎が揺らめいでいた。

 

「歓迎とは…そんなに恩讐の炎に殺されたいのか」

 

暗闇の奥底から響くような声が聞こえる。

 

「まさか!エンディングを迎えず死ぬのは作家として最悪のジョークだ。それにお前も殺りに来た訳じゃねぇだろ?」

 

ニヤニヤと笑いながら炎に向かって話す。

 

「…何用だ」

 

「そう焦んなって!まずは座れよ。せっかくの対面だ。お互い積もる話もあるだろ?」

 

「相変わらずお前は騒がしいな」

 

「そういうあんたもクールすぎるんだよ。なぁ、伯爵。いや…」

 

一際大きくニヤけると彼の核心となる名を告げる。

 

「エドモン・ダンテス。なんならモンテ・クリスト伯って呼んでもいいぜ?」




遂に現れたあのサーヴァント!
クラス不明!敵か味方かも分からない!
一体ナニモンナンデス!!(定型文)

これで全クラス揃いましたね。
本編ではまだ未開示なので言及はしませんけど人選どうでしょうか。
やっぱりお前か!といい意味で期待通りだと嬉しいです。
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