大通り
教会と道路、視界に映る場所で激しい戦いが行われていた。
セイバーとギルガメッシュ、カルデアとアルケイデス。
神話を再現していると思えるような光景が広がる。
藤丸はアルケイデスを警戒しながらもセイバーの声に目を向けてしまう。
「エクス───カリバー!!!」
眩い光を剣に纏い振るうもギルガメッシュは無数の盾を展開し霧散させる。
彼が何度も口にする宝具。
カルデアにいれば何度も聞く言葉。
星の聖剣を引き抜き騎士の時代を作った王。
となれば真名は自ずと分かる。
(でも、本当にアルトリアなの?)
男のアーサー王はカルデアに存在している。
別の世界からマーリンによって導かれた騎士王。
彼の目的は何れ顕現するビーストⅥを倒すこと。
今の彼の立ち振る舞い、行動がこれまで会ってきたアーサー王と当てはまらない。
とはいえ顔は同じでも『真逆のメンタルを持つ村娘』がいる以上否定も出来ない。
「今は…」
再びアルケイデスへ視線を戻す。
攻防を入れ替えながらの戦闘。
ジャックの宝具を奪った事により戦闘そのものにも変化が生まれた。
弓を多用した格闘だったものが五体を使ったアクロバティックなスタイルに変わった。
ヘラクレスの肉体と変わらないとすれば掠めただけでも致命傷になる。
そして何より、警官隊の持つ宝具が意味をなしていない。
「クソッ…ここまで効かないか!」
庇ってくれた警官を見て意識を戻したのか戦闘に参加してくれた。
不意打ちや死角からの攻撃を行いヘイトを集める立ち回りをしてくれたが避ける必要も無いのかその体で受け止めるだけだった。
「完全に舐められてるな…」
「彼のサーヴァントがいなければ押しとどめることすら無理だった…」
後ろからの賞賛に答えず礼装によるバックアップに徹する。
緊急回避を付与させ被弾を抑えるように動かす。
「…集中しているところ失礼します」
横に一人の女性が並び立った。
「少し試したいことがあります。貴方のサーヴァントには害はないので安心してください」
腰に着けたベルトから小さなガラス製の試験管を取り出す。
中には桃色の液体が入っているのが見えた。
藤丸は黙って頷き了承しバレないように空間を空ける。
女性は試験管を弓兵が着地するポイントに投げ放ち、掘りこんだ特殊な彫刻のリボルバーで狙い撃った。
試験管が割れると液体と同じ色の靄が弓兵を包む。
「今のは魔力感知を阻害する煙です。物理的な視覚も塞ぐので一時的とはいえど足は止まるはずです」
「…小癪な真似を」
アルケイデスは翼をはためかせ靄を消し飛ばした。
「やはりですか。彼は警戒をしているのです」
「警戒?」
「はい。私たちと貴方…いえ、この地に集まった全てにです」
突然現れたギルガメッシュとセイバー。
こちらに刃を向けない保証は無い。
アサシンの姿もあり、他に潜んでいる可能性も捨てきれない。
それを理解しているアルケイデスはたとえ警官とはいえ迂闊に攻撃は出来ずサーヴァント達に対しても深手を負わせるまでには至っていない。
「今なら病院へ何名か送れますよ」
「この状態だからこそ手が付けられないんです。それを崩せば彼を本気にさせて…」
土煙が舞う中を一つの影が駆ける。
「よせ!やめるんだ!!」
ほんの一瞬ではあったものの、自分たちと同じ制服だったのが見え口々に制止の言葉を発する。
実際、アルケイデスもその姿を確認し無謀な突撃と判した。
宝具の効果はネメアの獅子の加護で防ぎ、拳での攻撃は余程の魔力が込められていない限りかすり傷にも至らない。
弓を持てば両手が塞がり他の英霊の攻撃へ対処が出来なくなる。
ならば、最初に殺した警官のように腕を払う一撃で倒すまでと判断した。
アルケイデスは腕に力を込め、対処できるよう身構えたその時。
体の動きがほんのわずかに止まった。
(何…?)
英霊の攻撃にしては弱いと判断し、警官たちの方を見る。
そこにはが中指と人差し指を伸ばし、狙い撃つような姿勢で立っていた。
(行動不能の魔術か。だが…ッ!)
マスターを認識していたにも関わらず向かっている警官から目を逸らさなかった。
いや、逸らすことが出来なかった。
それは彼が持つ『心眼』が発動した結果。
本能ではなく、これまで積み上げてきた技能、経験、果ては鍛え上げられた五体とその血肉が逸らすのを拒絶した。
今、警戒すべきは英霊では無く目の前に迫る一人の警官である。
彼が積み上げてきた全てが、そう告げていた。
戦いの余波で破壊され炎上する車の火でその姿が照らされる。
「何…?」
それは紛れもなく、彼が病院の入口まで吹き飛ばした男の顔だった。
「おおおおおおぉぉぁぁあああ!!」
雄叫びをあげながら大地を蹴る。
その速さは先程とは見違えるほどだった。
アルケイデスの腕が届く前に、砲弾のような勢いで鼻先に膝蹴りを食らわせた。
「ジョ…ジョン!?」
警官たちが驚きの声を上げた。
藤丸自身もあの状況から復活するとは思えなかった。
「これが魔術師…」
「違います。彼は回路はありますが刻印は受け継がれていません。特別なものを与えられたとは聞きましたが一体何が…」
女性も表情を変え見ていた。
あのヘラクレスに生身の人間が届いた、その事実を受け止めながら。
ジョンの参戦により戦況は再び混乱した。
カルデア組は邪魔にならないよう距離を置く。
「ヒューッ!いい蹴りですね!!」
ククルカンは面白そうに手を叩く。
アルケイデスは後ろに吹き飛ばされるも空中で姿勢を整え、足から着地をする。
しかし、着地よりも先に背後に回っていたジョンがその足を払い除ける。
「あの大英雄を後ろに下がらせるなんて…彼は何者なんでしょうか…」
「アイツ。確か死徒に腕を持ってかれた奴か」
「そうね。今の彼速さは同等だけど右手の攻撃を一度もしてないわ」
徒手空拳を使いながら戦うも右手はバランスを取るためだけに使われている。
恐らく義手が備え付けてあると見て取れる。
「義手の宝具…」
マシュの頭によぎったのは円卓の騎士ベディヴィエール。
彼はエクスカリバーをマーリンによって義手へ組み変え宝具として使用している。
(それに近いものを彼は持っている…)
「貴様…!」
アルケイデスが叫ぶのと同時にジョンの右手が暗く輝き、手の甲が変形し、小さな刃が現れた。
刃には黒い液体がついており、滴っていた。
「あれは、ヒュドラの毒…!!」
天草がその正体を口にする。
同時にアルケイデスが全力で後方に下がった。
「ヒュドラだと?そんなものが何故ここにある」
「毒物を扱う魔術師はいても神代のものを持つなんて…」
「持っている魔術師はこの世には存在します。ここで見るとは思わなかったが…」
「けど、彼には大きなダメージになるわ。毒物としてじゃなく究極の弱点としてね」
ヘラクレスの最後は服にすり込まれたヒュドラの毒を全身に触れさせてしまい、激痛の末生きたまま火葬された。
神話の存在からすれば自分の最後ほど恐ろしいものは無い。
そんな特攻兵器を見せられて怖気づく大英雄では無かった。
教会の屋根が一際輝きはじめた。
ギルガメッシュのようなただの光ではなく生命の輝きに近いもの。
弓兵は逆光の中、黒い体を更に黒く染め告げる。
「私を殺せる手段を持つ者よ。貴様を、敵と認めよう」
警官隊は即座に陣形を整えジョンを援護する姿勢を取る。
弓兵に唯一対抗出来る力を持つ彼をサポートするしか勝機は無かった。
それでも弓兵を越えることは難しいだろう。
ジョンの身体能力が上がったとはいえ、本気には届かない。
(彼のフォローがあっても押し切れるかどうか…)
署長の右腕とも言えるヴェラ・レヴィットが指示をしながらも焦りを感じていた。
病院の中に誰も送れておらず、繰岡椿の様態やサーヴァントの状況を把握出来ていない。
そんな中、弓兵の背後に一人の警官がいるのが見えた。
この状況で動ける警官はジョン以外いない。
となればあの姿は間違いなくバーサーカー、ジャック・ザ・リッパーの変身した姿。
音もなくと影が二つ、六つと増えていき、十六もの警官となった。
その姿を見ることなくアルケイデスは翼を蠢めかせ、迫り来る警官を切り捨てる。
「…まだ、動けるのか」
感心と呆れが混ざった声を出しながらジョンの攻撃を弓を交え対処する。
「奪ったばかりの力をそう上手く使える。私ですら考えつかなかったぞ」
「笑止」
先程のキレも無く、姿も老若男女様々だった。
統一する余裕が無いのか分からないがその光景は悪魔を打ち倒す民衆のよう。
武器すら持たずその両手を体へ絡みつけてくる。
「む…?」
夜の闇を更に呑み込むような漆黒の闇が周りを包む。
それが魔術と気づき、義手の警官と弓で応戦しながらも意識を周囲に巡らせた。
すると、ある一点が歪んでいるのを感じ取る。
一般の魔術師なら気づくはずもないがアルケイデスなら即座に分かるほど雑な幻術だった。
「魔術師め。穴蔵から出てきたか」
同時に行動の意味も見抜く。
これは目眩しに過ぎない。
神代の魔術師ならまだしも人間であるならこの体に傷一つ付けられないのは理解しているはず。
バズディロッドの話ではバーサーカーのマスターは時計塔と言われる魔術の総本山の鬼才と言われている。
(それでも現在を生きるのなら恐れるに足らず)
「…啄め」
軽く呟かれた言葉は、重々しい呪いとなって周りに溢れる。
弓を大きく横に振り二人を無理やり後退させる。
その隙を見て複数の矢をつがえ放つ。
矢はみるみる姿を変え、青銅の翼を生やす戦鳥となり歪みに向かって襲いかかる。
「うひぁあ!?ーーぷ、ぷぷ
慌てて魔術の障壁を築きながら、風の流れを乱し鳥の襲撃を避ける青年。
だが、竜巻のような風に煽られる鳥たちの合間を縫う形で、アルケイデスの鋭い弓矢が青年の鳩尾を貫く。
「マスターッ!!」
「フラット!!」
バーサーカーと警官がそれぞれ名を叫ぶ。
アルケイデスは自らの一矢で討ち滅ぼしたことを確信しながらも油断はしなかった。
魔術師に刻まれた魔術刻印が本人の意思とは無関係に作動し、致命傷を癒し蘇生させるかもしれない。
その暇を与えないよう、肉体そのものを破壊すべく第二第三の矢を放ち、体勢を直した鳥たちも黒い影のように襲いかかっていた。
だが、攻撃が当たる前に青年の体が霧のように薄らぎ始めた。
「何…?」
一瞬幻術を疑うも、自らの宝具の一部である鳥から敵を貫いた感覚を受け取っている。
だが、現実は異なり死体が英霊のように消えていく。
その光景に意識を取られ、疑念に傾いたほんの数秒。
僅かな時間で彼は複雑怪奇な術式を完成させていた。
『ーーー
足元に横たわるバーサーカーの死骸から倒した覚えのない個体が姿を現し、手と口を動かし瞬時に発動させる。
宝具による召喚をしようとつがえた矢が爆散し、異型と化した肉体をよろめかせる。
(馬鹿な…)
英霊となりその血や神経が魔力回路となったからこそ理解出来た。
宝具起動のための魔力の流れを無理やりショートされたのだ。
だが、それは始まりに過ぎなかった。
「むぅッ…!」
体勢を立て直そうとした所で体に更なる異変が起こる。
宝具の流れを皮切りに、体のあちこちで魔力が炸裂する。
羽や角が弾け飛び、分厚い皮が一部剥がれ飛ぶ。
やがて心臓の部分に火花が集まり一際激しく爆発した。
臓器も消し飛び普通の英霊なら致命傷有り得る。
そう、普通が通じる相手ならば。
「…させんッ!!」
気合いの声と共に、アルケイデスは震脚のように道路を踏みしめ魔力の暴走を地面に流す。
アスファルトだけではなくその下の地面すらもめくれ上がらせ水道管が露出、破裂する。
大英雄だからこそできる力技。
その肉体のみで四肢が爆散するのを阻止した。
戦闘前は綺麗に舗装されていた道路も、ただの地面となり病院以外の建物は半壊している状況。
それでもアルケイデスの肉体に与えられたダメージの方が深刻だった。
(迂闊だったか…)
現代の魔術は通用しないという慢心が起こした失態。
己の肉体で対魔力が最も薄い部分、そしてバーサーカーの宝具運用に伴う魔力の流れ。
その全てを見抜かれ、回路を混乱させる術式を流し込まれた。
しかも見様見真似で。
「この距離まで近づかなきゃ、無理でしたよ」
バーサーカーの群れの中から安堵の声が聞こえた。
周囲の骸や先ほど貫いた死体もゆらぎ始める。
あの死体も、マスターに化けたバーサーカーであった。
状況が積み重ねられ、アルケイデスの心眼が鈍る。
その刹那の揺らぎが、彼に大きな隙を与えることになる。
雄叫びのような声がアルケイデスの鼓膜を震わす。
それが、ジョンと呼ばれる警官が放った渾身の一撃の合図だった。
反応した時には遅く、彼は懐に潜り込んでいた。
瞬間的に音速を超える一撃。
衝撃波が放たれ瓦礫とバーサーカーのマスターを吹き飛ばす。
トスリ、とその勢いが嘘のような軽い衝撃が脇腹からする。
音速を超えた宝具による攻撃としてもアルケイデスの肉体にはそれがせいぜいだった。
事実短剣は根元から折れ、ジョンも勢いのまま数メートル転がる。
だが、それで充分だった。
短剣に擦り込まれたヒュドラの毒。
本来なら致命傷に過ぎない毒がアルケイデスの霊基を蝕む。
『ーー
自らの作戦が完了するのを見届け術式を締める言葉を告げる。
原作に沿った展開になりましたがこれがベストでしょ!
観戦になるのは良くないと思い最強スキル『ガンド』をぶち込みました。
え?最終決戦礼装なのにガンド?
それは言うな。こちらのご都合だ。
ゲームの都合でワンターン行動不能だと思うので実際に人類悪とか神霊に決めたら一瞬なんだろなと考えてます。
ここをFGOで表現するなら耐久戦になるかなと。
というか、道中のザコ敵ってどう入れればいいんだ?
きのこは『意味のある戦闘を入れる』って言ってたから真似してるけど入る余地無いでしょ。
一つ確定で入れられるシーンはありますけどそこから先が続かない。
実に難しい…
ここからは感謝の報告です。
まずは、お気に入りが200件に到達しました!
ここまで伸びるとは正直思わずびっくりしてます。
駄文を応援してくれている事に感謝しつつ、このコラボを完走すべく務めていきます。
そして、誤字報告をして頂いた楓流さん、攻例萎さん、汽水域さん。
本当にありがとうございます!
誤字報告もこれまでされたこと無かったのでただただ感謝してます!
極力誤字が無くなるよう添削に添削を重ねて頑張ります!