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小鳥の囀りが遠くから聞こえる中、藤丸はゆっくりと目を覚ました。
先程までいた大通りでは無く、カジノの目の前だった。
ゆっくりと起き上がり体を軽く動かす。
痛みはなく大きな怪我も無く、魔術礼装も正常に動いている。
「ここは…」
周りには人がおらず、一人置いていかれたような状態であった。
しかし、孤独になったのはその一瞬だけだった。
「来たか。共犯者」
「その声は…!!」
声の方を向くと、黒い外套に身を包んだ男が建物に写る影のように立っていた。
「エドモン!」
アヴェンジャー、巌窟王。
またの名をエドモン・ダンテス。
監獄塔での出来事以降、サーヴァントとして仕えるのみならず彼の内に蓄積される悪意を排斥する役割を担っている。
「どこ行ってたの?心配したんだから」
「何者かの妨害によって弾かれ合流が困難だった。ならばそれを利用し、俺なりに動いていただけだ」
「エドモンなら問題無いとは思ったけど夢くらいには来てよ」
「へぇ〜。僕の登場は悪夢だったのかな?」
白い煙とともに現れたのはプリテンダー、オベロン。
厚手の旅人衣装を着ており、肩には蛾のブランカが止まっている。
「ゲッ」
「うわぁ、辛辣〜。自分で呼んどいてその対応とか傷つくな〜。ここで殺っちゃおっか?」
「そこまでにしておけ。貴様がここの危険性を理解しているだろう」
「もちろんさ。でも今なら大丈夫だよ。何せかなりの量を取り込んだんだから」
オベロンの目線の先にいたのは大量のゴーストやグールだった。
フラフラと揺れながらもこちらへ確実に歩みを進める。
「あれはちょっとした防衛機能といった感じ。無害ならまだしも君みたいな厄介者をある程度無害化したいんだろうね」
「倒すべきなの?」
「倒せばここの主に知られる。だが、動くことが出来ないのなら倒す価値はある」
二人の意見を聞き、藤丸は決断を下す。
「分かった。二人とも、やろう!」
「いいねぇ〜。それでこそマスターだよ!」
「クハハッ!よかろう!!」
二人は藤丸の前に背を向けるように立ち構える。
明確な敵意を感じ取ったのかエネミー群が攻撃を仕掛けてくる。
エドモンは黒い霧のように見えるほどの凄まじい速さで青黒い炎を放ち、オベロンは使役する虫たちを使い舞うように翻弄し倒していく。
藤丸にとって個人と戦うよりも慣れている戦況。
二騎で立ち向かうには多い量を見事に倒しきった。
「お疲れ様。無事で良かったよ」
「当然だろう。この程度で我が恩讐は止まることは無い」
「ウォーミングアップにはちょうどいいや。なーんにも出来なくて暇だったんだよね〜」
「…そろそろ教えてくれないかな。ここはどこなのかを」
「いやだなぁ〜。前来たじゃないか。忘れたの?」
「まさか…あの夢?」
オベロンが一人立ち黒い霧が広がっていた夢のもの。
藤丸は数多の英霊と契約している影響で、英霊側の夢に引き摺り込まれたり謎の特異点へ飛ばされることも多くある。
その一つと思いさほど気にする事は無かった。
「うわ、酷。人の忠告をそんな風にするんだ」
「だったらもう少し分かりやすく言ってよ。事実に嘘無いんだから」
「ハハッ。ウッッッザ」
満面の笑みを見せながら悪態をつく。
「また皆を探さないと行けないね」
「その心配は無い。この世界に俺たち以外のカルデア所属のサーヴァントは来ていない。一部のサーヴァントは魔力量が桁違いだから取り込めば自滅する恐れもあった」
「その通り。要はカロリー高いやつは余裕ある時じゃないと食べれないのと同じさ」
パスを辿って見るものの途中で黒い壁のようなものに阻まれた。
まるでこの街を覆うかのように。
古宿
取り残されたカルデア組は一旦宿へ戻っていた。
『ギ、ギルガメッシュが討たれただと!?』
通信が回復し、状況を説明するとゴルドルフ所長が驚きと焦りの声を出す。
『何かの間違いでは無いのかね!?我が死ぬと思ったか雑種!みたいなノリで復活するとか!』
「そうであって欲しかったです…」
『それにしても変ですね。宝物庫の扉が閉じるなんて』
シオンが錯乱気味の所長を押しのけ通信に入る。
「はい。戦闘の最中に全ての宝物庫を閉じて自らの優位を捨てるなんて行為は慢心の無いギルガメッシュ王では有り得ません」
『周囲の警戒も怠って居ないとすれば…彼の天敵が現れたか』
「エルキドゥの姿は無いけど近くには居たらしいわね。それでも彼が止まる理由にはならないけど」
エルキドゥの身に何かあれば激高していたに違いない。
「彼の逸話を紐解く必要がありますね」
「その必要は無い。既にその正体を見ている」
この部屋にいる者以外の声が聞こえた。
圧はあったものの敵対ではなく歌うような心地良さの籠った声だった。
「貴方は…ティアマトさん!!」
窓枠にちょこんと座っていたのはアルターエゴ、ラーヴァ/ティアマト。
カルデアに討ち取られたビーストII、その一側面を抽出した姿。
第七特異点バビロニアでの出来事をハッキリと覚えており恨みにも近い発言をするが母性が勝ってしまうことが多い。
「貴様、どこで道草を食っていた」
「弾かれてマスターの魔力を追っていたらエルキドゥの所に辿り着いて共にしてた。彼は、カルデアに召喚されたのと同じ性格だった」
「キングゥでは無いのですね」
「…そう」
キングゥ。
ティアマトがエルキドゥの亡骸に別の魂を与え蘇らせた土人形。
カルデアとギルガメッシュを幾度となく敵対してきたものの、最後はエルキドゥに残る記録に答えるようにその身を産みの親であるティアマトへ刃を向けた。
カルデアに来たティアマトも時折エルキドゥに甘える対応をするようになった。
『なら、誰がいたんだい?』
「お前たちも知っている名前だ。あの地で金星を司り、豊穣の女神として祀られる存在」
「
閉ざされた世界 カジノ
三人は無人と化したカジノを歩く。
藤丸はラスベガスが特異点トなった時に入ったことがあるからこそ異様に感じた。
頭が割れるほどの音と熱気。
人の欲望を具現化した世界を静寂が支配している。
「これがカジノってやつか。マスター、帰ったら僕やりたいから金貸して」
「借金押し付ける未来しか見えない」
「いやだなぁ〜。そんな信用ない?」
「「無い」な」
「君には言われたくないな〜。
オベロンの返しにエドモン横目で睨むように見返し終わらせた。
道中シャドウサーヴァントが現れたものの何とか対処した。
その際、オベロンに対し『こ、こんな無法がまかり通るとはっ…!!』と意味ありげな言葉を残し消えた。
借金取りの英霊は居ないがその役割をかつて担った者が立ち塞がったと思われる。
セイバー…筋肉モリモリ…太陽…
気になる要素はあったものの特に意味は無いと思い切り替えた。
「何か分かった?」
「いや。ここには無いな」
「そうだね。強いて言うならここにある物は普段と大差ないってことくらい」
オベロンはカジノで使用されるコインを指の間を縫うように動かしながら眺めていた。
「エミヤの投影と同じかな」
「ほぼ同じだ。武器となりうる物は全て劣化している」
「となると…ホテルの方へ向かった方がいいかな」
カジノに隣接するように建てられたホテル、クリスタル・ヒル。
アルケイデスが矢を打ち込み、ギルガメッシュを誘い出した場所。
「あの王様がいたところだ。何かしら残っているに違いない」
「酒の一つや二つ残ってそうだ。あ、マスターは未成年だから飲めないのか。残念」
「オベロンどうせ飲まないでしょ」
「こう見えて嗜む程度は出来るんだぞ?」
「待て。誰か来る」
エドモンが咄嗟に外套を翻し藤丸を覆い尽くす。
多少の攻撃なら外套や炎を駆使し防ぐことは可能。
「何人?」
「…4、5。多く見積っても7だ」
「かなりの人数だこと。ここはマスター差し出して逃げるかい?」
「オベロン」
「ハハッ。ウソだよ。俺が本気でやるとでも?」
雑談を交えながらも戦闘の意識を捨てていない。
英霊として最低限の役割を無理やり羽織っているからこその姿勢。
そして、スロットマシンの影から吐き出されるように襲撃者が姿を現す。
「あっ!やっと会えた!!やっほー!」
金髪の少年が疎遠だった親友と会うかのようなテンションで手を振る。
その後ろから刑務所でお世話になった神父、ハンザと数名のシスターが続いて出てきた。
「君も来ていたのか。まぁ、発生源に近いから当然か」
「しかも見たことない英霊だ!君ホント凄いよ!」
少年がエドモンの外套から顔を出した藤丸へ手を伸ばし触れようとした瞬間、その手を払うようにエドモンが邪魔をする。
「気安く触れるでは無い」
冷たく警告するような一言。
しかし、敵対の意思はなく触れること事態を否定する言葉。
「あ、ごめんなさい。国によって作法は違いますもんね」
少年は即座に頭を下げる。
あまりの切り替えの早さに藤丸は目を丸くしていた。
『私のマスターの行為に謝罪しよう。彼に悪気は無いんだ』
「その声…ジャックさん?」
『また会ったな。約束は果たせなくて申し訳ない』
少年が藤丸たちへ差し出した腕時計からジャックの声がした。
「無機物にまでもなれるとは。びっくりだよ」
「大衆によって生み出された妄言を宝具に変換する。神話よりも恐ろしい宝具とも言えるな」
『私には人殺しの力以外何も無いさ。逆に君たちの方が恐ろしく見えるが』
「こう言ってますけど本当は安心してるんですよ」
『君は本音をばらさないといけない使命でも背負ってるのかい?』
エドモンの外套から離れ姿を晒した藤丸がつられて笑った。
カドックが仲間になる前は同じ歳の人と話す機会はゼロに近い。
しかもここまで明るいとなると引っ張られるのも無理ない。
「俺は藤丸立香。印象的な自己紹介じゃないけど今はこれだけで」
「フラット・エスカルドスです!日本人ってことは冬木の聖杯戦争って見たり!?」
「いや、それは…」
藤丸が訪れた冬木は本来とは異なる聖杯戦争が行われた跡。
カルデア創設者マリスビリー・アニムスフィアがキャスターと共に聖杯を勝ち取った名残。
聖杯探索の始まりであり、藤丸の運命を決めつけた特異点。
「俺の事は気にするな。監督役を担っている以上、マスターへの肩入れも告げ口もしないからな。」
ハンザは藤丸が言いたくなさそうなのを感じとり口を挟んだ。
「つまり貴様が死にかけても気にしなくてよいと」
「もちろんだ。逆もまた然りってのも忘れるなよ」
この世界へ引き込まれる前にフラットと警察隊に一時的な協力をしていたハンザ。
(あの二人…底知れないな)
協会上で行われていたギルガメッシュとセイバーの戦闘の流れでセイバーのマスターと出会っていた。
魔術の知識がほぼゼロの普通の少女。
しかし、セイバーが宝具を連射しても息すら切らさない。
正にもう一人の藤丸立香とも言える。
唯一違うのは目的意識の高さだけだろう。
「ところで君たちはどうしてここに来たの?」
「この結界を抜ける穴を探してるんです!それで魔力の流れを辿っていったら貴方がいたんですよ」
「つまり、この結界の主犯をとっ捕まえるのかな?」
「それが出来たら苦労しませんよ。僕が探してるのは本当の穴です」
グルグルと体を動かしながら視線を移す。
「ここじゃないとなると…やっぱりあそこかなぁ…」
「あそことは?」
「横にあった高級ホテル。その最上階です」
『ならば急ぐとしよう。ここに取り込まれた者全員が味方とは限らないからな』
ジャックの懸念通り取り囲むようにグールが立っていた。
「フラット君は後ろにいて、神父さんは…」
「気にするなと言ったろ。自分の火の粉くらいは払うさ」
ハンザの言葉と共にシスターがそれぞれ異なる武器を構える。
「目標はホテル屋上。邪魔するものは全て倒せ、それでいいな」
「うん。行こう!」
それぞれの思惑を胸に目標へ突き進む。
ここから展開が2転3転していきます。
本編でも、見応えがあった覚えがありますね。
やっと合流したオベロンとエドモン!
2人とも夢セコム組なんで会わせるならここしかないと思ってました。
同時に感じたオベロンの扱い方。
めっっっっちゃ難しい!
ウソとホンネの境を曖昧にして話す事で出る胡散臭さ。
これはきのこじゃないと調理出来んすわ。
ただ、脱帽…
そして出会ってしまったフラット。
安心感しかねぇすわ。
この2人、問題児にして最強。
ちなみにカジノで対峙したトラウマ太陽野郎はCCCが元ネタです。
(さすがに分かるかな…)
ここで悲しいお知らせです。
この話が2023年最後の投稿になりそうです。
何の気なしに書き始めた本作。
約5ヶ月で265件ものお気に入りを貰えるとは思っていませんでした。
こんな駄文に付き合ってくれる読者の皆さん本当にありがとうございます!!
感想を貰う度に口角上がって「そう!その考えであってる!!」、「いい線してんねぇ…」等と思ってました。
Fake作品の二次創作が少ない上、安直なFGOコラボ。
群像劇で多くのキャラを出し、組み合わせるのは難しかったです。
人選に後悔はない、これで良かったのだ。
ちなみにカルデア臨時召喚鯖は増えます。
過労死、物静かオルタ、フェイカー……
2人は即バレですけどあと1人は分かるかな。
ヒントとしてはFGOにはいるけど他作品に出てきた鯖です。
これに関してはコメントで予想立てて欲しいです!
登場時間は…さほど長くないかなと。
年末まで2週間もない状況。
クリスマスイベが終われば年末特番からのお正月福袋。
うん早い。
散財も程々にしないと死ぬなこりゃ。
それにしてもFakeアニメまだぁ〜?
多分本作合流するのは6話辺りと勝手に考察。(1クール想定)
もし、アニメ化されたらまたこの小説を一から読むと面白いかもですね。
あとがきが長くなりましたがここで終わりにします。
それでは皆さんよいお年を!
そして新年の福袋が上手く行きますように!
来いっ、ドラコー!ククルカン!!