クリスタル・ヒル ロビー
藤丸を失ったカルデアは救出の手がかりを探すため、クリスタル・ヒルへ出向いていた。
ティアマトが滞在していた森の守り人であるエルキドゥが気にする素振りを見せていたとの話を聞き、マスター不在の中向かった。
さらにアルクによると莫大な量の霊脈がこのホテルに流れているとのこと。
「高級と呼ばれるだけありますね。太閤の茶室もこれ程煌びやかだったのでしょう」
「全て人工的な輝きとは言っても綺麗なのは事実ね」
「この匂い、間違いなくトウモロコシ…マシュさんすぐ戻るので!」
「ダメですよ!」
『全く、貴様の食い意地もどうにかならんのか 』
『帰ったらたんと食べさせてあげる。今はマスターのために我慢して』
現代風の衣装を持つマシュ・天草・アルク・ククルカンが表向きに動き、ドラコーとティアマトは霊体化し潜伏している。
エレベーター横にはセキュリティの観点から乗る前に部屋のカードキーをかざす必要がある。
「アルクさん。カードを」
「オッケー。ちょっと待ってね」
手を広げると淡い光と共にカードキーを手元に作り上げた。
彼女の宝具『
自然のものなら無条件に、人工物なら持ち運べる程度なら再現可能。
しかも、投影魔術とは異なり本物と同じ強度を維持できる。
「ありがとうございます。後は…」
天草は受け取ったカードキーに魔術を込める。
「電子製品に魔術なんて使えるのですか?」
「えぇ。ハッキングと同じ要領で行えば可能です」
「現代魔術ってやつ?あれだけは模倣できないんだよね〜」
スキャナーにかざすとエレベーターランプがゆっくりと降りてきた。
『まさかその手の魔術も使えるとは』
「監督役は魔術について広く知識を得ていなければ行けません。一番手っ取り早いのが自ら習得するのだけだったので」
高い音と共にドアが開きそのまま中へ入る。
内側には開閉ボタン以外無く、そのまま目的のフロアーまで運んでくれるシステムだった。
『変だ…このシステムが導入され始めるのが2016年からだ。幾らカジノで儲かっているとしても早すぎる…』
マシュの持つ予備の無線からダ・ヴィンチちゃんが疑問を投げかける。
「それにデザインも現代的です。未来の技術が流れている?」
『クリプターとやらが関わったなら話は別だが無いのだろう』
「この世界の未来を変えて何の得が…」
「皆さんそろそろ着きます。臨戦態勢を」
その言葉と共にドラコーとティアマトが姿を現す。
エレベーターの向かう先は最上階の一つ下層。
フロア全てが部屋のスイートルームだが、アルケイデスの一撃で損壊し、一般の人が規制されている。
やや高い音ともにドアが開くと中は薄暗いものの、赤い絨毯が引かれた廊下が真っ直ぐ伸びていた。
同時に感じる濃厚な魔力。
この上で何かしらの儀式が行われているのは確実だった。
「行きましょう。トラップが敷かれていますが強行突破で」
「なら通りやすくすれば良い」
ドラコーが一歩前に立つと右手を横に振り払う。
すると、赤黒い閃光が廊下を飛んでいった。
壁や床に当たると小規模な爆発を起こし、小さな瓦礫を散らばらせる。
「今度はなんだよっ!!」
影から現れたのは複数の黒服。
ここを守るよう言われている魔術師であるのは間違いない。
「アイツら…クラス不明のサーヴァントか!マスター不在なのになんで動けるんだよっ!!」
「そんな…短期間でまた現れるなんて!」
「あちゃ~…バレてますね」
マスター不在という大きな事実が筒抜けになっていた。
「これはお話必要じゃない?」
「それは上の人に聞くべきでしょう」
「では、このまま進みます!」
盾を前に出したマシュがオルテナウスのモーターで廊下を滑るように突っ切る。
呪霊や炎が襲うものの天草の黒鍵や物理攻撃で無効化されていく。
ほんの少し前に先客による無断訪問により解除された術式を再構築したばかりの出来事。
英霊を相手にするなと組織の上層部より言われており、その流れを黒服達は食い止める気すらなかった。
最上階 スイートルーム
「おや、もう来たんだね」
開けっ放しの扉の先にいたのは街のネオンの光に照らされたエルキドゥだった。
「エルキドゥさん…」
「その言い方だとそっちにも僕がいるんだね」
カルデアの存在を見透かしたかのような発言にマシュの表示が少し強ばる。
ティアマトが遠回しに話したものの、少ない情報で推測出来るのは神霊故の勘。
部屋にいた黒服十数名は意味も現状も理解出来ずただ構えるのみ。
そして、エルキドゥの横にはギルガメッシュ王が横たわりティーネが手をかざし魔力を流し続けていた。
「貴方がこの霊脈の中心ね」
「…それがあなた方となんの関係がありますか」
意識のみ傾け、目線はギルガメッシュに向けられていた。
「霊脈を辿った答えを知りたかっただけよ。あなたの無駄な行為を咎めるつもりは無いわ」
「今、なんと言いました…」
一言目とは違い、怒りがのったように低い声を放つ。
それを気にせずアルクは再度答える。
「無駄と言ったのよ。霊脈全てを注ぎ込んでも根本的な解決にならない。毒抜きしたとしても失った魔力を即座に補填することは難しい。それに、そのような事をして貴方自身がもたないのは分かってるでしょ」
言わなくても分かっていることをアルクは敢えて口に出す。
エルキドゥも同じなのか黙って見ていた。
「知っています…これが無駄なことなど痛いほど…でも…私は何も出来ていない。いや、何もしなかった…!」
零れた怒りの矛先はアルクでは無くティーネ自身だった。
「マスターならサーヴァントの近くでサポートをする…それを、私はしなかった…!」
聖杯戦争で生き残る為にはマスターとサーヴァントの相性は大きく関わる。
主従関係ではあるものの、道具では無く一人の人間として扱う考えは魔術師には無い。
ティーネの場合、ギルガメッシュに心酔して魔術師の考えを失ってしまった。
「何故、あなた方のマスターは前に立てるのですか…力も知恵も無い平凡な彼が…」
「…先輩はお人好しなんです」
マシュが武装を解き、ティーネの横に座り手を重ねる。
霊脈を流す媒体と化した肉体から熱は無く、死人のような冷たさが伝わる。
「世界の運命を背負わされたからでは無く、傷つく人がいたら助けてあげたい。そんな我儘をずっと押し通してきたんです」
藤丸は助けられる人がいるのならどんな危険でも飛び込んできた。
それが英雄と言われたとしても奢ることなく、『平凡』であり続けた。
そしてサーヴァントを友人と思い分け隔てなく接する。
その過程で生まれた軌跡をマシュは近くで見てきた。
だからこそ『彼』への問答で人類に絶望せず、その命を賭けられた。
「今は離れてますけど不安には思っていません。先輩は、どんな状況でも帰ってくるんですから」
「……無茶苦茶ですね」
「同感です。こちらから関われないような場所でも平然と戻りますから」
「それに、新しい英霊付きでね」
「…待て、何故余を見る。違う、断じて違うぞ!あれに関してだけは余は悪くないもん!!」
「へぇ~。無理やり引きずり込んでよく言えますね~」
「寂しがり屋だから仕方ない。母は理解してるから気にしないぞ」
「君たちは本当に面白いね」
エルキドゥも微笑み部屋の緊張が少しほどかれる。
ただ、ほぐれたのは当事者のみで黒服たちは何故笑えるのか理解出来ず唖然としていた。
「我が王はどうなっているのですか。ヒュドラの毒だけならここまで昏睡になることはありません」
ティーネは少しづつ魔術師の側面の思考に切り替えながら問いかける。
「その通り。ギルガメッシュ王は二つの毒に侵されている。ああ、もう一つは毒というより呪いかな」
「あのやけに綺麗な光がですか?」
機械仕掛けの巨大な何かの後方から放たれた七色の光が捻れ曲がり、ドリルのようにギルガメッシュの腹部を貫いた。
マスターであるティーネはもちろん、カルデアもその光景は見ていた。
「あれは神々の加護だよ。まぁ、人という種に対しては呪いに変わるけどね。ギルの身体を穿った光は『疫病』を祖とする呪いだね」
「疫病…?」
「今は水蛇の猛毒と拮抗しているおかげで広がらずに済んでいるよ」
「つまり、人のみに感染する死のウィルスですか」
「当世風に言えばそうなるね。もちろん今の処置を止める必要は無いよ。僕の見立てでは、ギルガメッシュが退去すれば毒と呪いも同時に消える。それに、ここにあるのは『彼』では無く古代の人間の亡骸だからね」
見立てに過ぎないとしても、ギルガメッシュの霊器そのものは失われた事を意味していた。
「でも、今の状態で言っても君たちは害としか見なさないと思う。全てはあの邪神のせいなんだけど」
「邪神…イシュタル神の事ですか」
「そうか、既に彼女から聞いていたのか」
「うん。隠し事はダメだから」
「待ってください…神が聖杯戦争に召喚されたのですか…?神を呼ぶなんて不可能なのに…」
「あれは世界に染み付いた影っ…」
エルキドゥが突如話を切り、部屋をぐるりと見渡す。
「誰か…見てるね」
その言葉を聞き、黒服は周りを忙しなく観察しティーネは魔力を使い探知を始める。
しかしここにいる者以外の反応を感じ取ることが出来なかった。
「これは…世界の裏側からか?」
「やっぱりそうなのね」
アルクは納得したように頷く。
「貴方のお墨付きが貰えたから言うけど、十中八九ウチのマスターの仕業ね」
閉じられた世界 クリスタル・ヒル 最上階
フラットに導かれるようにたどり着いた。
「やっぱり、この部屋が一番『壁が薄い』ように見えるんですよね!」
「ふむ…それにしてもここはなんだ?魔術工房にしては豪華すぎるが」
「置いてあるのはメソポタミア辺りの物…暇すぎて自分の庭の飾り付けでもしたか」
「誰か知ってるの?」
「まぁね。けど、あんまり触ると怒られるかも…」
とある湖の騎士がバレンタインのお返しにいただいた剣を偶々見られてしまい一触即発と化した記憶がある。
その時はエルキドゥとマシュの説得で抑えられた。
『だからと言って何もしない訳にはいかないだろう』
ジャックに言われフラットは部屋の真ん中へ立つ。
「この魔法陣を使えば…でも、あとひと押しが足りないような…」
「ひと押しとは?」
「この世界の波形と現実世界の波形を合わせればポータル的なものが出来るんじゃないかなって」
魔術的知識のない藤丸からすればフラットの話すことがゲームのプレイ実況にしか聞こえない。
「こっちから念じてみたら?誰かしら拾ってくれるかもね」
オベロンに言われ通信を起動し念じ始める。
「なるほど。これが君たちのマスターなんだね」
部屋の一点を見つめるエルキドゥ。
当然そこには影も形も無い。
「運命力…なのかしらね」
「人と星では見る目が違うのか。のぉ、彗星」
「え?私にはさっぱりですけど?」
「感性の差ですかね」
すると、どこからか現れた銀狼がエルキドゥの足を顔で撫でる。
「…分かったよ。いつも通り、道具として動くよ」
裾から銀色の鎖を無数に伸ばし、四方を囲うように張り巡らせる。
「何をッ!?」
手を止めることはなくともティーネはエルキドゥへの警戒を強める。
それはカルデアも同じだった。
そんな両者に対し敵対意識が無いように手を挙げ告げた。
「これは君たちへの攻撃でも、護るものでも無い。この世界で言うなら『
閉じられた世界
「あれ!?」
フラットが驚いた声をあげ、皆の視線が集まる。
「どうした?何か問題か?」
ハンザの問いかけに首を傾げながら回答する。
「いえ、問題っていうか…解決したような…」
「ホントに通じたの、かな?」
「さすがマスター。世界から好まれているとはね」
嫌味のようにオベロンが語る。
「後は…藤丸君、少し手借りるね!」
フラットが藤丸の手を引っ張り魔法陣の中へ連れ込む。
『何をする気だ』
「この中で一番外の波形と合うのが藤丸君なんです。だからこっち側の電波塔になってくれれば、携帯が繋がるはず」
「貴様…」
「エドモン、大丈夫」
殺気を放つエドモンを静止する。
僅か数時間の関係であるが、藤丸はフラットを信頼していた。
そんなマスターと英霊同士の会話を横目に、ハンザは街の様子を最上階から眺めている。
「こうして見ると、普通の街にしか見えないが…やはり、閉ざされた世界というのは確かなようだな」
街の彼方先には黒い靄が生き物のようにうねっていた。
「やはり、世界の再現には限度があるのか。もし可能なら魔術の範疇を超えているか」
肩を竦めながら物静かな街の様子を観察していると、シスターの一人が足早に近づいてきた。
「ハンザ」
「どうした?」
「あっちの方、何かおかしい」
淡々と話すシスターの言葉にハンザが目を向けると
残る三人のシスターも同じ方角を見ていた。
「何かあったのか」
「…ハンザ神父、動きがありました」
眼帯をつけた丁寧な口調のシスターに示された場所を見ると黒い土煙が街の中からあがっていた。
その中に輝く爆炎と光。
病院と教会で繰り広げられた光景にそっくりだった。
やがて、一際眩い輝きが生まれるのと同時に土煙から大きな何かが仰け反るのが見えた。
「あれは…」
黒い弓兵、アルケイデスが使役していたケルベロスだった。
「倒されたと思ったが…取り込まれたのか?」
「いや、あれも模倣さ。ただ生まれが似ていたから本物に近いってだけ」
いつの間にかオベロンがハンザの隣に立っていた。
「知っているのか?」
「全てがって訳じゃない。召喚されたのがここだからアレの機嫌取りくらいのコツは教えられるよ。でも、君には必要無いか」
「なんだと?」
「この世界に害虫が混ざった。もちろん僕も見方によれば害虫だけどもっと酷い。私欲のままに壊し快感を得る魔性の存在さ」
「…なるほどな」
ハンザは眼帯を外し、目標を探す。
眼帯の下から現れたのは、魔術的な処理を施された水晶の内部に、生物的なものから機械的なもの、果ては電子的なものに至るまで様々な種類の魔術礼装を仕込まれた義眼型の魔術礼装だった。
「どんな姿だ」
「小さな男の子。彼女とサーヴァントは騙されていたけどどす黒いアレだけは完全に消しきれなかったよ」
カメラのピントを合わせるような音をたてながらビルを観察し始める。
あの戦闘を良い位置で眺める奴と捉え、屋上周辺を念入りに調べる。
「あれか…」
それは一棟のビルの屋上に隠れる気もなく立っていた。
吸血種、ジェスター・カルトゥーレ。
オベロンの助言通りホテルでハンザと対峙した青年の姿では無く、少年の姿で楽しそうに見ていた。
あの巨獣を操っている可能性は無くなったものの、何をしでかすか分からない。
「装備を整えろ。こちらにいる間にあの吸血鬼を叩く」
「あの子供が、例の吸血鬼?」
「操られているだけか、その英霊が間違えただけでは」
シスターから訝しむように指摘されたオベロンは肩をすくめる。
「いや、彼の指摘は正しい。あれは俺たちの思考の裏をついているだけだ」
ハンザは小さく首を振る。
生半可な魔術や吸血鬼の特性による変装や偽装なら『代行者』は見破ることが出来る。
しかし、今のジェスターは魂そのものを入れ替えたかのような状態。
ハンザは改めてジェスターを侮れない『敵』と認識した上で断言する。
「それに、魂が変わったとしてもあの歪んだ笑みは変わらんさ」
意気込んだ瞬間、背後から明るい声が響き渡った。
「繋がったぁ!凄いよ藤丸君!!」
ハンザ達が振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべたフラットが魔法陣の真ん中に立つ藤丸の手を取りながら小躍りしている。
フラットの手にはカルデアより支給された無線機が握られていた。
特異点という壁すら超えて繋がれる無線機を魔力により届く距離を拡大させ、外部との連絡を可能にした。
つまりは、内と外の魔力が繋がり結界の壁にに僅かながら穴が穿かれたことを意味する。
それは、フラット達にとっては『外への足がかり』に過ぎないが、拮抗状態を崩すには事足りていた。
それが蟻の一穴だろうと運命は虚しく転がり始める。
一度振られたダイスは目が出るまで止まる事の無いように。
新年あけましておめでとうごさいます!
(遅い挨拶)
休みながら書いていたのでかなり遅くなりました!
アルクの宝具の解釈変更に頭を抱えながら「なんとでもなれぇ!」の精神でやりました。
うん、これは怒られてもぐうの音も出ない。
そして藤丸の主人公適正感。
ゲームでも似たようなシーンあったからヨシ!
雑談タイム
ヤマタケ皆さん引けましたか?
私は100連してZeroでした。
そろそろサムレムコラボも来るので撤退して逸れセイバー引きます。
来なければアリア狙いです。
そして、福袋。
ドラコーがハブられたことにより一点狙いが出来ました。
結果は、ティアマトママ(宝具2)とククルカンでした。
まさか自らの小説を触媒にして引いたら来るとは思わんて…
2枚抜き&推し引きしたので過去一満足です。
さぁて…サムレムやりますか。