夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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外野席

スノーフィールド市警 署長室

病院前の混戦から丸1日開けたスノーフィールド。

大通りの騒動は砂漠で発生した爆発の余波と流したもののガス会社が聖杯戦争終結まで持たないと判断され、テロリストの仕掛けた爆弾による攻撃とされた。

犯人が見つかっていないことも合わせて報道された事により街を歩く人数は減っている。

そんな中、一人の男が広い部屋で呟く。

 

「英雄王、ギルガメッシュが討たれたか…」

 

ティーネ陣営の監視をしていた部下からの報告を確認し、オーランド・リーヴは眉を顰める。

夕べ、この部屋で自ら行っていた魔力の観測でも同じ結論が出された。

 

「普通に考えれば、最も厄介な敵が消えた…と喜ぶべきか」

 

言葉とは裏腹に、署長の表情は険しい。

強敵と共に二十名程の部下も同時に失ったからだ。

別働隊として時間差で送った部下は魔力の奔流に飲まれることは無かったものの痛手には変わらない。

それに全員の遺体が発見されれば次の手を打つことも可能ではあるものの、消えたとなれば話は別だ。

発生時刻、生き残ったカメラ映像を確認すると薄いスモッグが雪崩のように押し寄せていた。

このスモッグが魔力を帯びているなら魔術師やサーヴァントにはもっと色濃く見えていただろう。

 

(誰が、どのようにしてやったなど考えるな。優先すべきは『ホワイ・ダニット(何故それをした)』かだ。マスターは恐らく繰岡椿だが、彼女は昏睡状態。サーヴァントの記憶が流れ込む事があるとファルデウスから聞いている。待て、その逆ならどうだ…マスターの深層心理をサーヴァントが読み取り行動したとするなら…)

 

「よう」

 

署長の思考にブレーキをかけるかのように声が聞こえた。

目を向けると自らのサーヴァントであるキャスター、アレクサンドル・デュマ・ぺールの姿があった。

 

「何故、君がここにいる」

 

「なぁに、ちょいとばかし手伝いをしてきてな」

 

「手伝い?」

 

訝しむ署長に、デュマが言った。

 

「悪いな、兄弟。この手伝いはアンタには知られたく無かったのさ。仲良しな兄弟よりも少し亀裂があった方が長続きするだろ?」

 

「待て、何の話しをしている」

 

嫌な予感を感じながら尋ねると、来客用のソファに深く座り飄々とした調子で答える。

 

「ま、気まぐれで後方座席を選んどいて正解だったな。最前列は迫力あるが今頃飲まれてだろな。まぁ、警官隊のフォローをするならそれが正解なんだろうが」

 

「…!?現場にいたのか!そんな指示出した覚えはないぞ!!」

 

「ああ、指示は出しちゃいないな。これで食い違っていたら小説でいえばどっちかが犯人になる所だったぜ」

 

「…!君は、自分の立場が分かっているのか!警官隊や私ならまだしも、英霊である君がやられればこちらの陣営は終わるんだぞ?」

 

静かな怒りをデュマへ向けるものの、その感情を肩を竦めるだけで流し当たり前のように話す。

 

「終わりはしねぇさ。そろそろマスターを失った宙ぶらりんのサーヴァントも出てくるはずだ。そいつらと再契約すればまだ踊れるだろうさ」

 

「そんな仮定の話で誤魔化すつもりか」

 

「分かってねぇな。これはお前が始めた戦争だろ。勝手に終わるとか言うなって話だ」

 

「…!」

 

デュマの言葉を聞き、数度深呼吸をし精神を整える。

終わった後にいたのは、一切の怒りや焦燥を消し去ったいつもと変わらない署長の姿だった。

 

「…そうだな、愚問がすぎた。たとえ私たちや君が倒れこちらの陣営が敗北したとしても、終わりなどと判ずるべきでは無いな」

 

「ハハ!あんたのそういう一瞬にして切り替えるところ、好きだぜ」

 

「褒め言葉として受け取るが…状況は何も変わらないぞ」

 

「なら、俺からいいニュースをやろう。警官隊のやつら、まだ無事だぞ」

 

「!」

 

目を僅かに見開いた署長に、デュマは楽しげに口角を上げながら続ける。

 

「俺が調理した武具の気配を感じる。キャスターの端くれだが、『ある』『ない』くらいの感覚はある。とは言ってもありはするが歩いて探せるかと言われればない…ってとこか」

 

「だが、武具の気配があるからと言って生きてる証拠にはならん」

 

「少なくともジョンは生きてるな」

 

「何故確信できる」

 

「兄弟には教えてねぇ防具があるからな。後で教えてやるから今は聞かなかったことにしてくれ」

 

「……分かった。今は部下の安否が先だ」

 

納得は出来なかったものの、署長は現在の問題に改めて目を向けた。

 

「ここでは無いところとなれば…固有結界か?」

 

「固有結界…心象風景で自分だけの世界を作って外の奴らを見境なくぶち込むアレだろ?」

 

「君の認識は些か雑だが、完全に否定する程では無い。英霊の宝具であるのは間違いないがこうも長時間に渡り大人数を拘束する事などできまい」

 

それが可能なのは膨大な魔力を持ち、常時供給出来る環境。

そんな芸当出来る相手は1人しかいない。

彼の周りを魔力の流れで監視したものの、ジャミングされたかのように直ぐに途切れる。

まるでこちらが見ているのが分かっているかのような手際の良さだった。

 

「しっかしこの聖杯戦争は面白いな。軽く外を回るだけで色んな出会いがある。こんなのが毎日起こるとなれば厄介だが、月一なら歓迎するな」

 

「こんな争いを月一でやればこの星が持たない」

 

「星と言えばあのガキのサーヴァントと話してきたぞ」

 

「待て。彼とそのサーヴァントとの接触は絶対にするなと言ったはずだ」

 

署長は事前にフラットと藤丸への接触を禁止する旨をデュマに伝えてあった。

二人とも好戦的では無いにしても、驚異であったからだ。

前者は自ら警察署に訪れ、繰岡椿の保護を提案してきた。

 

「もちろん知ってたさ。けどな、せっかく友人が訪れてきたんだ。敵だろうと招いちまうだろ」

 

「あの工房に招いたのか。警戒心が無さすぎるな」

 

「どうせアイツらと真正面からぶつかっても吹き飛ばされるのは目に見えてるだろうが」

 

「……それで、何を聞き出した」

 

「何もねぇよ。ただの世間話だ」

 

「相手の情報を得ずに世間話か。君らしいと言えば…」

 

情報がないと判断しようとしたものの、遅れてある言葉が引っかかった。

 

「君が招いたサーヴァントの事を『友人』と言った。それは私のような契約上の兄弟と同じ意味か?」

 

その質問を待っていたと言わんばかりに頬をつり上げ答える。

 

「違うな。生前の友人って奴さ。見た目は変わっちまってたがあの炎は消えてなかった。だから俺は再開の宴を開くために招いた」

 

「その者の名は何だ。クラスは分からずとも真名さえ分かれば対策の仕様はある」

 

「言えばフェアじゃねぇが、ヒントをやる。あんたが答えを言っても俺は正解とも不正解とも言わない約束ならな」

 

「構わない。合っていたとしても彼をどうにか出来る訳では無いからな」

 

その答えを聞きデュマは背もたれに頭を起き、天井を眺めた。

少しの沈黙の後、彼の者のヒントを告げた。

 

「フランスを恩讐の炎で魅了したキザ男。知名度だけ上げさせてなんも教えてくれないチキン野郎さ」

 

 

 

スノーフィールド上空 空中工房

 

「みぃつけた」

 

現実の街の遙か上空。

聖杯が再現した空のギリギリに浮く巨大な飛行船の中でフランチェスカは恍惚とした笑みを浮かべながら呟いた。

 

「やっと、やーっと穴が開いたよ。壁が分かればこっちから開けちゃう手もあったけど中々見つからなくて大変だったよ。そうだ!穴を開けてくれた人にはノーベル賞あげようっと!」

 

「何ソレ?」

 

キャスターで現界した自分自身の問に対し足をばたつかせながら愉しそうに答える。

 

「私の役にたった人にノーベル賞の賞金をプレゼントしちゃうの!受け取る側も私も懐痛めないからwin-win!まぁ、ノーベル財団が損するけどそこは些事って事で!」

 

「いや、まず『ノーベル賞』ってところから着いていけてないけど」

 

「あれ?聖杯から与えられてないの?」

 

「明らかに聖杯戦争とは関係ない言葉だから与えられてないかもね。()()()()()聖杯戦争なら変わるだろうけど」

 

高級ブランドのチョコを頬張りながら言うプレラーティー少年に対し、フランチェスカは興味ありげに目を向けた。

 

「んー。冬木の人は何処まで知ってたのかな。王様くらいならテーブルマナーとか法律なら理解してそうだけど。ねぇねぇ、この携帯の機種分かる? 」

 

「全く分からないね。携帯そのものの使い方は分かるけど何処が作ってるまでは教えられてないと思う」

 

「そっか、んー。ほかの英霊もそうなのかな。あ、あの子達は違うか」

 

チャンネルを忙しなく変えるとクリスタル・ホテルで話すカルデア組が映された。

 

「マスター君だけあっち側か〜。野垂れ死んでないかな?それもそれで情けなくていいけど!」

 

「話聞く限り死ななさそうだよ。あれどう考えても世界から生かされてない?」

 

「そうなんだよ〜。第五次の時南極にいたんだけど()()()()()()()()()()()()()()()()()。あの欠片使ったせいで捻れたのかな。それなら彼がキャスターとして呼ばれてないから別の理由かも?」

 

「柄でもないことしてるとお楽しみが消えちゃうよ」

 

「おっと。いけないいけない〜」

 

眉間に皺を寄せた表情から一変し、目を輝かせながら自らの指を宙でなぞると、いくつかの鏡が浮び上がる。

そこに移るのは現在、結界に囚われた各陣営の過去の姿だった。

聖杯戦争で英霊を召喚した時点から、フランチェスカは全員を監視していた。

 

「閉じられた世界の中で、一番気になるのは…獅子心王君かなー。アインツベルンが成功させたものの皮を拝借したんだからアルトちゃんが来ると思ったのに。もしかして、前々回出てた時の気配察して来ちゃった?」

 

既にセイバーの正体に確信を持っていたフランチェスカは、鏡に映し出されたセイバーの姿を見て舌なめずりをする。

 

「あぁ、いいよね。過去の栄光に照らされて何倍にも輝く姿。まさに王様らしい王様だよ」

 

「内蔵疼いてるでしょ」

 

「もちろん!ジャンヌちゃんやジル程じゃあないけどそれにすっごく近いもの感じるの!こう、キラキラしててばぁーってしてるの!分かるよね!!」

 

好きなアイドルを語るかのように語彙力を失いながら腕をブンブン振るフランチェスカ。

 

「言葉にしなくても分かるよ。その気持ちもこれから大好きな王様に何しようとしているのかも」

 

「だったら一緒に来てくれる?幻術なら君の方が上だからさ」

 

「いいとも。結界の中だけでいいかい?」

 

「うん。こっちでやるとファルデウス君からのクレーム対応しないといけないしね!」

 

何かを企むかのように語り合う少年少女。

姿だけは若い2人だったが、その内に蠢くものは魔物と大差ない程黒く濁っていた。




今回は署長とフランチェスカ目線の話でした。
フランチェスカパートにはオリジナル展開要素を組み込ませていただきました。
本編コラボでもオリ展開込なのでオッケー!


雑談タイム
サムレムコラボ開幕!!
コラボ小説書いてる身からすればとても参考になる展開でしたね。
複数の陣営のカルデアへの評価・対応。
思ってた通りで安心しましたけど表現力が違いました。
少し参考にして書いていきたいですね。
ガチャは逸れセイバー待ちなので十連で撤退ですね。
まぁ、正雪先生の第一再臨見て欲しくなったのは別の話。
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