夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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道場破り

「させませんっ!」

 

伸びる腕を盾で真正面から防ぐ。

シンプルな対応だが間に合うか微妙なタイミングだった。

藤丸は確かに恐怖を感じたがマシュなら何とかしてくれると信じていた。

それが経験によるものなのか信頼なのかなど関係ない。

必ず来るという確信、それだけで充分だった。

 

「な、に…!?」

 

防がれたことに驚きを隠せない。

この宝具は触れば即死だが必中では無い。

それを補うために速度をあげたが見事に対処された。

だが女性はその驚きすら越える発言を聞くことになる。

 

「無事ですか先輩!!」

 

「ありがとうマシュ!それにしても今の宝具…」

 

「はい。呪腕さんの宝具と似ています」

 

「!!」

 

次の手を考えようとしていた思考が止まる。

その名前は今の魔術師が知っているはずがない。

ましてやさん付け出来る存在などいてはならない。

 

「何故その名を知っている…」

 

戦闘を続けることよりも疑問を払拭することに務める。

もしかしたら同胞がマスターとして現れた可能性が出てきたからだ。

3体のサーヴァントは警戒しながらも女性を見る。

 

「呪腕さんはかつて俺と共に戦ってくれたんだ。ここには連れて来れなかったけど…」

 

「…信仰している訳では無いのか」

 

「そういう事じゃないんだ。ごめん」

 

先代の山の翁も異教徒と手を組んだ事例がある。

だが彼はマスター、共闘では無く使役したのだろう。

本来なら処すべき事案ではあるが彼からはこれまで出会った魔術師とは異なる雰囲気を感じた。

その口ぶりから友として接したかのような気持ちにさせられた。

 

「…汝の名は」

 

「藤丸立香」

 

本来なら名前を名乗るなんて戦士として戦う以外自殺行為に等しい。

それを抵抗無く言える藤丸はお人好しにも程があるんだろう。

 

「これも天命か…ならば」

 

女性は藤丸の前に膝をつき頭を下げる。

それは彼女が生前信仰した者以外にはしなかった行為。

 

「汝を真のマスターとして我が願望に力を貸してほしい。先代に認められた手腕を私に示していただきたい」

 

「ならば問おう。貴様の願望とやらはなんなのだ」

 

「聖杯戦争そのものの破壊。魔術師共のくだらない願いのために先代が使い捨てらている。私はそれが許せない」

 

「勝手に使われるのは良くないですね。せめて了承得てからやらないと!」

 

「少し黙ってろ」

 

「俺たちが参加したのはこの聖杯戦争を止めることなんだ。破壊出来るかは分からない。それでも力を貸してほしい」

 

藤丸も女性と同じ視点に合うよう膝をつく。

 

(つくづく命知らずのマスターよな…)

 

さっきまで殺しあっていたのにも関わらず手を取り合おうとしている。

ドラコー自身も藤丸を巻き込んで助けてもらった身だからこそ人の良さは痛いほど分かる。

 

「その願い、しかと心得た。汝の願いは我が夢。共に戦い抜く事を誓おう」

 

藤丸の右手に刻まれた令呪が赤く光る。

 

「早速だけど君の名前を聞かせて欲しい」

 

「私に名前など無い。アサシンと呼べばいい」

 

「アサシンさんはこの街で起こってることについて教えていただけませんか」

 

「私の知っていることなら」

 

 

 

召喚されたのは薄暗い教会ような場所。

周りにはスーツを着込んだ複数の男が立ち足元に書かれた陣を取り囲むように立っていた。

アサシンは淡々と目の前に立つ男に問答しマスターと認めた瞬間心臓を潰した。

取り巻きも蝿を払うように殺し外に出た。

途中砂漠の方でこの世の終わりとでも言えるくらいの爆発が何度も起こった。

あれはまさに神の災いそのもの。

遠巻きながらもその衝撃はアサシンの霊器を震わせた。

 

「神の災いですか…」

 

再び大通りを歩きながら話を進める。

アサシンだけ霊体化し周囲の警戒を頼んでいる。

 

『アサシンの言った通り砂漠に巨大な穴が空いている。ガス爆発で処理しているらしいけど魔力がまだ大気中に残ってるよ』

 

藤丸たちが到着したのがいつなのか分からないが魔力が残る程ならどれだけの力がぶつかったのか想像出来ない。

 

「そこに行けば何か分かるのではないでしょうか?」

 

『残念だけど周辺を警察が封鎖してるよ』

 

「ちょうどいいじゃないですか!ここの偉い人に頼んで入れてもらえばいいんですよ!」

 

「もう少し現実的な話をしろ。別の意味で頭が痛くなるぞ…」

 

5人がたどり着いたのは警察署だった。

情報収集もあるがここにパスの繋がっているサーヴァントがいる。

今回は本当のパスで間違いない。

 

『待て』

 

霊体化したままアサシンが静止してきた。

 

「どうしました?」

 

『この警察署、魔術的な結界が張られている。それも幾重にも重ねられて』

 

藤丸からしたら建物が大きい警察署にしか見えない。

 

「中には入れないのか?」

 

『通常の入口だけ結界が薄い。あそこで振り分けているんだろう』

 

しかしパスはこの先に繋がっている。

憶測に過ぎないが捕まっている可能性が高まってきた。

 

「私たちを置いていったとしてもマスターなのはすぐ気づかれてしまいます」

 

「これって…道場破りが出来るんじゃない!?私やってみたかったんです!!」

 

ククルカンが人一倍目を輝かせ飛び跳ねている。

彼女にとっての行動規範は弱肉強食。

強い者が生き残る獣の掟。

警察署全体が強い者と捉えているからこそ興奮してるんだろう。

 

「それはさすがにやり過ぎでは…」

 

「いや、それが適切かもしれん」

 

「ドラコー?」

 

大きな右手を顎に添え警察署をジッと見つめる。

 

「アサシンよ。この結界を破れるか」

 

『私一人なら容易いが全員となると難しい』

 

その回答を聞いた途端、口角が一気に上がった。

まるでイタズラを閃いた子供のように。

 

「マスター。余の道楽に付き合って見ないか? 」

 

 

スノーフィールド警察署所長のオーランド・リーブスは早歩きでロビーへ向かっていた。

彼の右腕とも呼べる精鋭「二十八人の怪物(クラン・カラティン)」の1人から思いもよらない報告を受けた。

 

『右手に赤いアザのある少年が警察署で道を聞いている』

 

聖杯戦争に参加出来る魔術師なら結界の気配を感じ取れるはず。

それでもここに来たのは無策か、陽動か。

セイバーのマスターへ尋問するのを取りやめ、その者の顔を拝むため歩みを早める。

3階まで吹き抜けになったロビーに到着すると眼帯の神父とアジア系の少年がソファに座りマップを見ながら話をしていた。

 

「なるほど…ここがおすすめのお店なんですね!」

 

「あぁ。俺の見立てじゃ辛さは文句ないと押しとくよ」

 

「お前たち。何者だ」

 

報告にあったのは少年の方だけ。

神父が同伴なんて聞いていない。

 

「ハンザ・セルバンテス。スノーフィールド中央教会から派遣された監督役だ。多くは語らなくても分かるだろ?」

 

「何の事だ。私はその少年に用があるだけだ」

 

「隠すつもり無いんだな。まぁアンタも堂々と晒す時点でどうかと思うが」

 

2人の大人に睨まれる藤丸。

 

「えへへ…すみません」

 

「悪いが君、応接室へ来てくれないか。そこで話をしよう」

 

「だったら俺も同伴しないとな」

 

「監督役を名乗るなら首を突っ込みすぎだ。彼の身柄は我々が保護する」

 

「保護ねぇ…俺もマスターを保護する立場なんだが。それに情報に無いなら尚更な」

 

2人の会話に藤丸はついていけてない。

そもそもこの神父ともたまたま会って話していただけ。

 

『俺もこの街に来たばかりなんだ。お互い話しながら深めていこう』

 

と半ば無理やりといった形で話込まれた。

だがそれで注意が引けたなら充分。

 

「なら心配しなくてもいい。冬木のような二の舞は犯さない。大人しく祈りを捧げていてくれ」

 

「言われなくても教会に帰るさ。君との会話が終わればな」

 

軽口を依然たたきながら話すハンザに署長が告げる。

 

「それと祈る場所は教会じゃない。今、この場でだ」

 

「ほう?」

 

「情報に無いマスターだと言ったな。我々の知らない何かまで掴んでいるのか。それを聞くまで君たちを返すつもりは無い」

 

「旅先にはいつも寝慣れた枕を持っていく質でね。一旦出直していいか?」

 

「ハンザ・セルバンテスと言ったな。お前はミスを犯した」

 

こんな状況でもジョークを絶やさないハンザの言葉を無視し淡々と述べる。

 

「このロビーが既に私の臓腑の中とは思わなかったのか?」

 

冷ややかな声と共に放たれた言葉を聞きハンザと藤丸は気づいた。

周りにいた一般人がいなくなり見慣れない服装の警官がぞろぞろと出てきた。

その歩き方からただの警官では無いのは読み取れた。

 

「…俺の罪状はなんだ?」

 

「少年の身柄引き受けを妨害した。立派な威力業務妨害だ」

 

「話のネタにされて悲しくないのか?」

 

「俺は別に…」

 

徐々に警官達が2人に歩み寄っていく。

 

「聖堂教会を敵に回すのは得策じゃないと思うが?俺自身何もする気は無いが一方的な暴力は関係にヒビが入る」

 

「同感だ。だから君と友好的に情報を共有したいと思っている」

 

言葉とは裏腹に緊張感が増している。

お互い冷たい目と挑発的な笑みを浮かべ合う。

一触即発かと思われたその時…

署長の携帯が鳴り響き、硬直した空気が一瞬緩む。

顰め面をしながらも神父を警戒したまま電話に出る。

 

『元気かぁ兄弟!!』

 

「用は後にしろ。取り込み中だ」

 

契約しているキャスターの声を聞きあっさり放つ。

今すぐ切りたいと思っていたが次の言葉でその考えは消える。

 

『今すぐそこから逃げろ兄弟。もしくは全力で迎え撃つ準備しとけ』

 

「何…?どういう事だ」

 

『さぁなぁ!!全て教えたらつまらないだろ?だから1つだけ教えてやる。見かけだけで相手を測るなってことだ。それじゃせいぜい頑張れよ!!』

 

そういい残し一方的に切られた。

 

「全く扱いづらい男だ…」

 

眉をひそめながらもキャスターの発言を無下に出来なかった。

キャスターの持つ情報は一定の信ぴょう性がある。

問題はその情報を毎回解かなければならないこと。

今は拮抗状態を保てているので考える時間は…

その瞬間、署長の全身の血管が震え上がる感覚が走った。

正確には魔術回路が危険を察知した。

 

(結界が破られた!?しかしこの反応は!!)

 

警察署に張られた結界は他の魔術師への圧力でもあり挑発でもある。

普通なら気づかれず侵入しマスターだけを襲う。

しかし今回感じたのは真逆の行為が行われた事を指していた。

 

「案外やるな」

 

ニヤリと面白そうに笑いながらハンザは藤丸を見る。

 

「まさか…自分から囮に…!?」

 

気づくのが一手遅かった。

建物内の電気が消え署長たちを暗黒の闇が包み込んだ。




アサシンがなかまになった!

ということで現地サバにしました。
もしコラボしたら配布枠になるだろうと考え契約させちゃいました。
まぁコラボ作品の展開はかなりサクサクしてるのでじゃんじゃん進みます。

追記
8周年の福袋は呼延灼、ディスティニーはスペイシュでした。
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