結界内の世界 クリスタル・ヒル最上階
「本当に繋がったのか?」
エドモンが訝しそうにフラットを見る。
「はい!ただ、藤丸君の無線は少し特殊だったので誰に繋がるか分からないんですよ」
『場合によって敵にも繋がる可能性があると?』
「それは無いです。この無線に記録された誰かにランダムでかかるだけなので」
藤丸はスピーカーモードにし、見知らぬ相手からのアプローチを待つ事にした。
どれくらいかかるかと考える暇もなく無線から低い声が発せられた。
『…何者だ』
「あれっ!?先生!俺です!俺オレ!!」
『その声…フラットか!?まさかお前も…なんだ、何処からかけている!?』
即席の『祭壇』に置かれたカルデア支給の無線から響くのは困惑した男性の声だった。
「あ、先生!連絡が遅くなってすみませんでした。ええと、なんだろ、夢の中にいるような感じというか…」
『何?まさか寝落ちで論文書いてたのか!?だからいつになっても卒業出来ないんだぞ!』
「わわっ!?何の話ですか!違いますよ!ええっと…そう、結界。結界の中にいるんですよ!」
『…?待て、ちょっと待て!落ち着いて最初から話せ』
生徒を叱る普段の声に戻った男━━
危機的状況だからこそ最高の講義が受けられることを理解していたからだ。
そして、その講義の先には現状を打開する策があることも。
『なるほど。事態は把握した』
「先生。これは一体どういう状況なのですか?」
『それについての仮説は既に立ててある。それを披露する前に、藤丸君と話がしたい。それも個別で』
時計塔のロードから発せられた言葉を受けフラットは疑問を持つことなく無線を藤丸へ渡す。
スピーカーモードを切り耳に軽く当てる。
「藤丸です」
『よし。すまないが私の言葉に何となく合わせるように応答してくれ、
最後の言葉を受け、藤丸は確信した。
この無線は時計塔では無くカルデアへ繋がっていると。
諸葛孔明、別名『エルメロイⅡ世』。
擬似サーヴァントとして召喚され、様々な戦闘でサポートとして活躍し過労死寸前まで使われたこともある苦労人。
現在は
「お久しぶりです。先生」
『君との通信が途切れて半日と言った所だろう。連絡はミスマシュが行っている。話を聞く限り目立った問題も起きていないと見受けられる』
「そんな事ないですよ」
適当に話を合わせながらも心の内でほっとする。
『あまり長話すると警戒されるだろうが一つ伝えておく。フラットの思考はぶっ飛んではいるが頼りになる。それに、君も居心地いいだろう』
「…はい。ありがとうございます」
藤丸は静かに無線を外し、祭壇に戻す。
その様子を意味ありげにハンザは見ていたものの口に出すことは無かった。
『お待たせしてしまい申し訳ない。フラットの話を元にするならそこは冥界になる』
「え!?もしかして僕たちもう死んじゃってるってことになるんですか!」
「それは絶対に違うよ。きっと概念の話なんだと思う」
藤丸はフラットの早とちりを静止する。
冥界そのものに行った経験があるからこそ断言出来る。
『その通りだ。推測が混じってしまうがそこは繰岡椿という少女の精神と魔術回路を起点にしているのだろう。そこで暴れている魔獣…いや神獣か?かのケルベロスがそこで活性化したのなら、そこは冥界の「相」を持っている』
「照応、みたいな話?」
『さっきフラットが話した『夢の中のようだ』と表現していたのは的を得ている。夢と死後の世界が繋がる考えはよくある。今回は繰岡椿の夢を触媒に擬似的な冥界を形成した可能性が高い』
すると、それまで黙っていたハンザが問い掛ける。
「ふむ…私の立場から『死後の世界』の多様性について語れないが、つまり…実在の街を鏡写しにしたと?」
『現実と相似する冥府はいくらでもある。ファラオや皇帝といった墳墓は、彼らが生きた空間そのものを冥府に送り込む儀式のひとつだ。そして、今回は生者が暮らした世界そのものを作り出したならそのサーヴァントはシステムのように淡々と命令を熟すのだろう。くわえて、ケルベロスを取り組んだのなら今も進化をしている途中なのだろう』
「進化する…まさか再臨?」
『……ともかく、その英霊は恐らく【死】の概念そのものだ。ハデスやヘラ、ネルガルやエレシュキガルのような冥界神そのもの。前者は根底から無理だが後者なら呼びようはあるが高条件だ』
まるで最初から黒板に書かれた結論を読み上げるかのように孔明は流暢な調子で自分が目にしていない結界の様子を語る。
「しかし、先生。そんな凄い存在なのにどうして僕らは何もされていないんですか?」
フラットが疑問を挟む。
この世界には多少なりとも人はいたものの、洗脳されたかのように意思を感じない動きであった。
警戒してフラットとハンザは防御策を、エドモンは藤丸への精神攻撃に備え入る用意していたが一向に来る気配は無い。
『何か差があるに違いない。洗脳の方法など山のようにありすぎるが、何故そうしないのかは推測できる』
「はい!ホワイダニットですね!先生お決まりの!」
「ほう、『
ハンザの言葉に一瞬口篭りながら、孔明は咳払いをしてから答える。
『よしてくれ。過去に得た経験を使い分析しているだけだ。それに、
「サーヴァントごと取り込むのなら敵意の差と言ったところか」
「かなりマスターの子気にしてたらからね。吸血鬼も通しちゃうとなれば危害を加えるその瞬間までは保留にされているのかも」
『なるほど。マスターを襲うのは得策とは言えないな。となれば、少女と交渉し外の世界へ導く…という手もあるがマスターとしての自覚があるかも分からない上、サーヴァントが何もなく会わせる保証がない』
「サーヴァントと話をするのは?」
「無理だろうね。何考えてるのかすら分からないくらい人格そのものが欠けてる」
オベロンの持つ妖精眼ですらそのサーヴァントの真意が見えない事を悟り藤丸は警戒を強めた。
かつて星を喰らう存在と対峙した時に感じた恐怖が今なお残っているからだ。
『冥界に連なる存在であるのなら、結界内に逃げ場は無い。だが、外に繋がったとなれば君たちへの注視が外れている事になる。その部屋に死体があるのなら外の世界と繋がる要因とも考えられるがどうだ?』
「えーっと、祭壇に使った物も含めてメソポタミアっぽいです」
『…ッ!なるほど、あの英霊の工房か。外から直接干渉するのは本来自殺行為に当たるが今なら行けるな。彼は何らかの理由で本来の出力が出せないようだ。そのお陰で侵入も容易いらしい』
その言葉を聞き、藤丸はある事に気づいた。
「マシュが近くにいる…?」
この部屋に来てから安心感を強く感じていた。
それが外の世界と同じ場所にサーヴァントがいるのなら納得はする。
『そういう事か…藤丸君。賭けではあるがこの結界を触媒に召喚が出来ないか?』
「何だと…?」
Ⅱ世の発言にハンザの目が大きく開かれる。
今の口ぶりは明らかに藤丸の異質性を知った上での発言。
サーヴァントを複数召喚し平然といられる時点で時計塔では封印指定の域になる。
(何故、野放しにしているんだ…)
魔術師は根源に至るためにはどのような手段を持ちえない為、あえて保護せずにいるのか。
それとも自力で魔術師を払い除け生きてきたのか。
(聖杯戦争の参加者であったならば真っ先に倒していたな…)
「はい。分かりました」
藤丸は床に書かれた魔法陣の真ん中に立ち右手を伸ばす。
魔術師としての素質が無いため、詠唱をしても召喚は出来ない。
使用するのは藤丸が紡いだ縁とこの状況。
簡易召喚であれば前者のみだが長期に渡る場合は触媒となりうるものが必要。
そして、全てを集め応じさせる最後のピースが現実の世界で輝き出す。
クリスタル・ヒル最上階スイートルーム
エルキドゥが魔力を上げて数分後。
マシュの持つ盾の霊体化が突如解け、淡い光を放ち始める。
「これは…英霊召喚!?」
「マスターが何かやらかすつもりね」
「まだ呼ぶのですか?これ以上は体が持たないと思いますが…」
「大丈夫デス!何とかなりますから!」
ティーネは手をとめずにマシュの盾を見ていた。
(あれが触媒?警察隊のように宝具の武器を使用している…?)
「サーヴァント、召喚されます!」
そして眩い光が世界の壁を越えてスイートルームを照らしだした。
その存在は結界内のスイートルームに姿を現した。
長身の男はゆっくりと部屋の様子を舐め回すように見る。
髪についた鈴が鳴り、怪しい雰囲気を醸し出す。
「ははぁ、これはこれは…」
「マジかよ」
「よりによって貴様か…」
オベロンとエドモンは予想外の人選に困惑気味であった。
それは藤丸も同じ感情が出ている。
「なんで、お前が…」
「ンンン〜。お前とは失礼ですな、マスター。危険だと察知し召喚に応じたのですよ。さて、皆々様…」
男は胡散臭い笑みを周りに向け挨拶代わりにその名を告げた。
「拙僧はアルターエゴ。真名を、『蘆屋道満』と申すもの。マスターの命を受け馳せ参じました。この縁、どうかお忘れないよう…」
一気に参戦キャラを増やすスタイル。
本編読んだ時に「ここ絶対孔明にしよ」と思っていました。
このタイミングでコメントに来ていた質問に答えさせていただきます。
本編のカルデアには全サーヴァントが召喚されている前提です。
つまり、新参のサムレム組もいますしこの先も増えていきます。
ただ、オーディールコール組はグレーゾーンなので出ないと思っててください。
回答遅くなって本当に申し訳ございません!
お詫びに人気サーヴァントをぶち込ませていただきました。
イベントに出た瞬間即黒幕判定を受ける陰陽師!どーまん!!
どう絡むのかお楽しみに!
雑談タイム(省略版)
サムレムコラボ最高…
伊織タケが救われただけで尊いのに、地右衛門…
正雪先生、幸せに。
そして伯爵、貴様は道満のように鏖殺する。