夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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終末の産声

「どうまん…?日本の方ですか?それにしては派手なような…」

 

「俺も聞いたことがないな。それにアルターエゴというクラスもな」

 

フラットとハンザから簡単な評価を受け、道満は袖で口を覆い笑う。

 

「左様ですか。異邦の地とはいえ名を知らぬのは致し方なのない事」

 

「僕が言うのもなんだけどどの面下げて言ってるの?」

 

「そのように言うものでは無いですよ。で、どのような状況なのか教えていただけますか?」

 

藤丸は大きめの溜息をつき、説明する。

 

「なるほど…ならば解決出来るでしょう」

 

「ホント!?」

 

「えぇ。ただし、拙僧ではありませんが」

 

道満は血の気のない白い手で空に五芒星を素早く描く。

すると道満の後ろに伸びた影が泡立つように揺らぐと中から手が、体が這い上がる。

 

「大陰神、チェルノボーグ。その名を聞けば分かるのでは。ロード」

 

『そうか、チェルノボーグ!スラヴ神話で冥界や死の神と呼ばれる存在!』

 

「まさか、これを見越して…」

 

「そんな訳ないだろう。この世界の根本を考えれば納得の人選だ」

 

メソポタミアの神器と冥界の概念を組み合わせればエレシュキガルを召喚することは容易。

しかし、この特異点の性質『エクストラクラスのみ』があり呼べるサーヴァントが限られる。

 

「これより結界の主導権をチェルノボーグへ移行するよう侵食を始め…」

 

道満が儀式を行おうとした瞬間、硝子張りの壁面の一つが粉々に割れ、外から一つの影が飛び込んでくる。

 

「うわわっ!?」

 

『どうしたフラット!』

 

スピーカーから慌てた声が聞こえる。

ハンザは飛び散る硝子片を高速で振るう両腕で綺麗に払い除け、侵入者に向かって言った。

 

「おっと…君もこちらに来ていたのか」

 

「役人の詰所で見た顔だな。…異邦の司祭か」

 

現れたアサシンはハンザをジロリと睨んだ後、後回しと言わんばかりに周囲を見渡し、藤丸が右手に令呪が刻まれたフラットといるのを見つける。

普通のサーヴァントならマスターに害をくわえようとしていると思い攻撃を仕掛ける。

今のアサシンは藤丸のお人好しぶりを理解していた為、構えるだけで済んでいた。

 

「…問おう」

 

「え、あ…!もしかして藤丸君のサーヴァント!?」

 

「合ってるけどちょっと違うかな」

 

「貴様も、聖杯を求める魔術師の一人か…?」

 

アサシンの問いかけに一瞬キョトンとした後、少し考えた後に答えた。

 

「うーん、どうなんでしょう。最初はかっこいいと思ったからですけど今は…俺のサーヴァントの人が困っているからそれを聖杯で解決したいなって。あ、藤丸君はどうする?」

 

「俺は聖杯を保護するだけだよ。一歩間違えれば世界そのものを歪めちゃうから」

 

「…分かった。もし、僕が聖杯を手に入れられたら藤丸君に渡すよ。ジャックさんが良くなれば充分だからね」

 

目を細めながらやり取りを聞いていた。

 

「…本当に魔術師なのか?」

 

フラットの表情から嘘や挑発の様子は見受けられない。

 

(本気で譲る気なのか…?)

 

魔術師らしからぬ思考は藤丸と同じと考え、その横に立つ道満へ意識を移す。

 

「そこの貴方。拙僧のマスターがお世話になっているようで…」

 

「サーヴァントか。何をするつもりだ」

 

「この結界に空いた繋がりを広げるために主導権をこちらへ移すのです。時間は…数分と言ったところですな」

 

「何…?この世界を作ったサーヴァントはどうなる?」

 

「ふむ、式神を通じて得た情報を合わせるならば…結界の拮抗が長引けば命が危ういかと」

 

「「「!!!???」」」

 

アサシン、フラット、藤丸は目を見開き道満を見る。

 

「道満!?そんなの聞いてない!!」

 

「えぇ。言っておりませんから」

 

「マスター。今すぐ宝具の許可を」

 

アサシンが殺気ついた顔で道満を睨みつける。

自分たちが助かるために無垢な命を捨てる行為は彼女の信念と相反する。

それが、マスターのサーヴァントだとしても。

 

「あの子の命を使い潰すのなら私は貴様を殺す。命を救える道があるのなら見逃して…」

 

「それは無理だよ、お姉ちゃん」

 

「!」

 

全員が声の方向に眼を向ける。

そこには黒い靄があり、不自然な動きをしながら人の形を作り出す。

 

「そんな道はね、椿ちゃんの作った世界には存在しないんだよ」

 

現れたのは幼さの残る小柄な少年。

だが、その身体に纏う禍々しさは、見た目通りの存在では無いのを指し示す。

その姿を見たハンザは、わざとらしく舌打ちをしてから口角を上げた。

 

「これはこれは、ホテルや警察署のようにコソコソしなくていいのか?自ら種明かしするとは余程の余裕があるんだな」

 

「さっき観られた気配を感じとったからねぇ。それに君を警戒してるんだよ、代行者。二度も同じでは通じさせない。それに…」

 

クツクツと嫌らしそうに笑った後、ハンザからアサシンへ目線を移すと心酔しきった表情で言葉を紡ぐ。

 

「早くアサシンのお姉ちゃんの感情を近くで観たかったから……ね?」

 

彼、吸血鬼、ジェスター・カルトゥーレが言い終わる頃にはアサシンの手刀は首元へ迫っていた。

空間を滑るように伸ばされた刃は狂うことなくジェスターの首を斬り裂いたのだが、手応えが全く無かった。

 

「!?」

 

霧のように宙に溶けた少年の体が、少し離れた場所で再構成される。

そこには少年の姿では無く、警察署で見た青年の姿で立っていた。

 

「まさか敵である君の前に馬鹿正直に来ると思ったのか?本来ならそうしたいところだし、心が通じあったことに歓喜している!がこんな所で使い潰すのは本意では無いし、まやかしを使うのは断腸の思いだ。理解してくれないか?」

 

陶酔と悲しみを織り交ぜた声でジェスターは発言した。

 

「アイツの発言今のところ全部本当かよ。つくづく気持ち悪い」

 

「同感だな。消し炭にしたい気分だ」

 

元悪役達の総評等耳に入っていないかのようにジェスターはアサシンに向け舞台挨拶のように手を大きく広げ深々とお辞儀をする。

その瞬間、彼の背後で世界が捻れた。

 

(ここ)ハ】 【死ノ道(なり)】 【冥府(なり)】 【黄泉路(よみじ)(なり)】 【其ハ裁キ】 【其ハ福音】 【永遠ノ安寧(なり)】 【苦シミ(なり)

 

声は四方から聞こえ、この結界そのものが叫んでいるかのようだった。

 

「なんだ、これ…」

 

「ンン…これは少々不味いかと。こちらの企みが感知されたようです。反応が早くて道満びっくり」

 

「もしかして、侵食しちゃったんですか?」

 

「えぇ。試しにと言うやつです」

 

「貴様ッ…!」

 

アサシンは一層殺意の炎を燃やす。

 

「ハハハッ!いいねぇ!敵とはいえ愛しのアサシンに怒りの表情を見させてくれたこと感謝する!」

 

他人事のようにジェスターは嘲笑う。

そんな間にも感情の無い声は空間を震わせ続ける。

 

【我ハ剣】 【我ハ獣】 【我ハ渇キ】 【我ハ飢餓】 【我ハ死ヲ運ブ者】 【我ハ死ヲ奏デル者】 【我ハ死】【我ハ死】【死】【死】【死】

 

「クソ陰陽師。コイツもシナリオ通りか?」

 

「はて。計画とは己の内側に潜めておくのが正しいと思われますが」

 

「あっそ。しっかし、ここまで姿現すとかよっぽど嫌なんだろな」

 

『この物言い…あれがサーヴァントになっているのか!?』

 

孔明は何かを察知したのか焦りの声をスピーカーから響かせる。

ハンザも一つの推論へたどり着いたのか重々しい声でその名を告げる。

 

「まさか、死の具現化…終末の四騎士蒼き死の担い手(ペイルライダー)か…?」

 

「終末の四騎士…?」

 

「世界の終焉を告げる存在と思えばいい。幻霊に近い存在だが顕現出来るとはな」

 

幻霊は英霊よりも格下の霊的存在。

英霊として現れることは可能であれど肉体を持たない。

それを魔神柱バアルが英霊を幻霊と融合させることで呼び出せるシステムを作り上げた。

モリアーティやへシアン、模倣ではあるがネモが該当する。

 

「さすがカルデア。引き出しは多くあるようだな」

 

「何をした…」

 

「ん?あぁ、勘違いしないで欲しいがこれは私が行っていることじゃあ無い。ただ、私は友として背中を押しただけさ」

 

「背中を押した…?一体彼女に何をした!!」

「別に何も?」

 

吠えるアサシンに対し、口元をいやらしく歪めながらジェスターは告げる。

それこそ愛での告白のように、感情を込め、相手の一挙手一投足を窺いながら。

 

「私はただ、彼女の背中を押しただけさ」

 

「子供が子供らしく、壮大な夢を追いかけるようにね」

 

 

閉ざされた世界 上空

ペイルライダーの声が響く世界に二滴の雫が空より下垂れる。

外部からはもちろん、内部から外へ出ようとすると堂々巡りをするよう作られた世界に例外が発生した。

それは無害でありながらも厄害である影が世界の壁を侵食し、自由落下している。

 

「いいね…いいよこの世界!騙しがいがあるよ!!」

 

手を繋いで落ちるプレラーティーとフランチェスカ。

二人の落下速度は上がるどころか急激に緩やかになり、最終的に空中にフワリと浮かび上がった。

花の魔術師に匹敵するクラスの幻術を用い、世界の物理法則そのものを騙す反則一歩手前の技であった。

 

「あはは!楽だね!やっぱり夢が基盤になってるね!」

 

プレラーティーの言葉にフランチェスカがにやけながら忠告する。

 

「でも気をつけなきゃダメだよ?夢が基盤って事は、見てる子次第でなんでも出来ちゃうからね!」

 

眼下に見えるのは夜のように暗くなった街。

ネオンの光もなくさながらゴーストタウンのようだった。

そんな街を見下ろしながらフランチェスカはイベントを心待ちにする子供のような顔で笑う。

 

「まだ生きてるといいねぇ、獅子心王!アーサー王の大ファン君!」

 

最後のセリフは二人合わせて同時に吹き出した。

 

「君が絶望しないか、あるいは怒りに囚われるか。楽しみで仕方ないよ!!」




エレちゃん以外で冥界で呼べそうなサーヴァントを考えた時、真っ先に思いついたのが道満でした。
チェルノボーグは平安京だとあんまり活躍薄目だったのでどの程度力があるのか分からないので好都合かなと。
ちなみにここにいるメンバーですが、
エドモン→魔術王直轄の手下(空の境界コラボ)
オベロン→藤丸を騙し続けた妖精國のラスボス
道満→異星の神の使徒ととして色々やらかした
と図らずとも盛大な敵対ムーブかましてた奴らでした。
お前らどの面下げているんだよ。
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