夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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死徒

フランソワ・プレラーティーが聖杯戦争の魅力に取り憑かれたのは第四次聖杯戦争であった。

時計塔のロードが惨殺され、無関係の戦闘機二機が失われる異常事態が重なり聖堂教会が秘匿に頭を抱えたいわく付きの事案。

異質とは言え興味を引くどころかその執念に驚くほどだった。

そこに知り合いの姿を見るまでは。

当時プレラーティーは時計塔の天文科ロード、マリスビリー・アニムスフィアが聖杯と思しき物を発見したと聞き、南極でその妨害の準備をしていた。

その途中で聖杯戦争が行われるとの連絡を受け、遠見の儀式を使い息抜きがてらに見ていた。

そこでキャスターのクラスで現界した『ブルターニュの貴族騎士』ジル・ド・レェを見てしまい、彼は着の身着のまま冬木へ向かった。

おかげで前者の依頼を放棄した上、介入する余地も無く聖杯が破壊され盟友の顔を拝むことは叶わなかった。

数年後に行われた第五次聖杯戦争も御三家の老人に直接妨害され、その時の肉体を破棄するまで追い込まれたからだ。

プレラーティーはそれから聖杯戦争を自らプロデュースしようと第五次前に用意をしていたはずだった。

冬木の大災害と言われた大火災の跡地から回収した泥、■■■■が作り上げた聖杯の欠片等をかき集めシナリオを作り上げていた。

ところが夢中になっていたばかりに疲労からか気を失い意識を戻すと、この偽りの聖杯戦争が出来上がっていた。

仕組みを見ても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ファルデウスがやってくれたと思い少しアレンジを加え開催した。

彼女の願いはただ一つ。

自分と同じ憧れの光を穢した果てに何が残るのか。

それを確認するためにプレラーティー達は夢へ落ちていく。

現れたモノがどれだけ醜かろうと、痛々しかろうと、憐れであろうと。

自分たちはそれを『人間の形』として愛すると心に強く決めながら。

 

 

閉ざされた世界 クリスタル・ヒル最上階

部屋の中に突如黒い煙のような異形が無数に立ち上がった。

 

「この反応…シャドウサーヴァントに近いね」

 

「それにかなりのやり手と見受けられますな」

 

「ッ…!邪魔だ!!」

 

異形の首をアサシンの短刀がかき切る。

鮮血も無く分かれた頭と胴体が倒れ込みながら消えていく。

 

「分かってるだろうがこの世界がある限りそいつらは無限に湧く。あぁ、私は例外でね。彼とは違って信頼されているからな」

 

ジェスターはオベロンを見て嘲笑う。

その気になれば誰でも騙せるが、マスターがこの世界に確実にやってくると嫌でも理解してしまったため妖精國のように手を回していた。

 

「あっそ。あの子の幸せを利用して信頼得るやつには言われたくないけどな」

 

「さて、このまま高みの見物と…何?」

 

窓の方に目線を向けたジェスターは一瞬目を疑った。

しかし、それが真実でもあり嘘でもあることを瞬時に理解した。

 

「ちぃ!幻術使いか!余計な真似を!!」

 

異形の影に対応しながら藤丸は外の様子を見る。

 

「あれは、お菓子…?」

 

なんと空から雨ではなく菓子包みが降ってきていたのだ。

 

『菓子だと…そうか……冥界の中で異質であるケルベロスの特性を利用したのか…。しかし、どのような系統の魔術にせよ、広範囲にそんな馬鹿げた状況を引き起こしたのはサーヴァントという可能性が大きい』

 

孔明は困惑しながらも状況を理解し見解を述べる。

ジェスターは想定外の邪魔者に対し苛立ちを感じつつも思索を巡らせる。

 

(あの犬に死体を複数食べさせれば本来の神獣としての力を取り戻せる筈……。この儀式と土地の魔力リソースによるが、上位クラスのサーヴァントと同等になれるかもしれん)

 

自分のすべきことを決め、再び口角をあげる。

 

「せっかくここまでしたのだからな。少しお膳立てをしてやらないとな」

 

「貴様、何を…!」

 

窓から入ってきた異形を切り裂きながらアサシンが叫ぶ。

 

「簡単な事さ。交差点にいる警察隊を皆殺しにして、ケルベロスの胃の中に無理やりねじ込む。それだけだ」

 

「そんな事ッ…!!」

 

アサシンが駆け出そうとしても、ゆく手を阻むように黒い靄が立ち塞がる。

 

「言っておくがこの世界はサーヴァントを優先的に狙っているようだから気をつけろよ?そちらにおられる、かの高名な殺人鬼殿もね」

 

フラットのつけている腕時計に向かって言うジェスター。

その言葉に敬愛の気持ちも混ざっていたが、それに気づいたのはジャック本人だけだった。

 

『…忠告には感謝しよう』

 

自分の存在がバレていた事に心中で舌打ちを打ちながら、念話でフラットに話しかける。

 

(どうする、フラット)

 

(んー…あとちょっとです)

 

バーサーカー陣営の念話の内容を知らずに、ジェスターは恍惚とした表情でアサシンへ挑発を続けていた。

 

「フフ、私があの警察隊を殺すのは気になるのか?君だって彼らと敵対してたじゃないか。それなのに、私が彼らの命を弄びケルベロスがパワーアップするのを嫌がる。おかしいと思わないか?」

 

「……貴様の好きにさせない。それだけだ」

 

「それだけ?いいや、違うね!君は警官隊やその憎き少年と共に戦う過程でそれなりに敬意を払っているのだろう?ああ、分かるさ。君の思うことはなんだって分かる。だが、君は魔術師を、人間の本質を分かっていない」

 

「黙れ!」

 

隠し持っていたダガーを投擲するも、先程と同じくジェスターの身体をすり抜け、ここに存在しないことを再認識する結果となった。

 

「人間は合理主義の塊、その中でも魔術師は度の越えた究極の合理主義者だ。どうしようと最後には繰岡椿を殺す道を選ぶさ。でも、これが正しいんだよアサシン。この結界世界の暴走は直ぐに外の、()()()スノーフィールドを侵食する!英霊として召喚されたのなら世界が望む道を選ぶに違いない!たった一人の少女を殺すことでこの汎人類史は崩壊を免れる!」

 

(こいつ、この世界が特異点なのを理解しているのか?)

 

エドモンはジェスターの言動の中にある真実に疑問を抱いた。

これまでの特異点・異聞帯では、聖杯の所持者やクリプターが特異点という概念を意識してきていた。

それを上位の吸血鬼が知りえている事に引っかかった。

 

(奴は自力でこの世界の仕組みを気づいた上で言っているのか。それともただの脅しか。だが、()()()()()()()()()()()()()。後は使うタイミングだけだ)

 

ジェスターを問い詰めるにしても、今は脱出を優先すべく思考を止める。

その間にもジェスターは饒舌に話を進め、アサシンは苦虫を噛み潰したような怒りを見せていた。

 

「おい屍」

 

そんな2人だけの世界になりかけていた空気を、全く気にすることなくハンザが口を挟む。

 

「…なんだ、代行者。今良いところなんだ。邪魔をするな」

 

苛立たしげに言うジェスターに、ハンザは構わずに続ける。

 

「お前は、前に警察署で人理を否定すると言ったな。死徒は人類史を穢すためにあると」

 

「なんだ?そんな当たり前の事、代行者の貴様ならよく理解していると思うが」

 

「ならば人類史の一部たる、アサシンを否定はしないのか?確かに穢してはいるが、それは否定からの貶めでは無い。お前は彼女に魅せられたから否定は出来なかった。だからこそ、その歪んだ情欲で彼女を穢し尽くし、堕としめようとしている。違うか?」

 

「……何が言いたい」

 

顔から表情を消したジェスターの問いを返すことも無く、装備していた黒鍵を分体へ投げつける。

その問いに答えることなく、エドモンが口を開いた。

 

「貴様の幼稚な考えは醜悪極まりないな。ジェスター・カルトゥーレ。いや、()()()()

 

「ーーーーーーーー」

 

刹那、ジェスターの時間が止まった。

その一瞬の空白を縫う形で、フラットが魔術を発動させる。

 

「干渉開始!」

 

次の瞬間、フラットから放たれた魔力が部屋の四隅に潜んでいたシスターの礼装に向かって走り、共鳴し、魔力の流れを造る。

最後にハンザが投げた黒鍵に反応し、一つの魔術が発動した。

 

「がぁッ!?……なッ……ぐァァ!!」

 

今までの余裕の表情が嘘のように、全身をピクリと震わせ、苦悶の表情を浮かべていた。

アサシンはジェスターに苦痛を与えたフラットの魔術よりも、エドモンの『ドロテア』という言葉で止まったことに驚いていた。

膝をついたジェスターはアサシンではなくエドモンを目を血走らせながら睨んでいた。

 

「貴様ら…何を…」

 

「まずは貴様から話せ」

 

「はいっ!貴方が分体って言ったので魔力の流れを辿って本体を攻撃しました!」

 

あっけらかんと言うフラットに、ジェスターは苦悶の表情を変えずに言う。

 

「莫迦な!俺のはただの分け身では……」

 

「もちろん分かってますよ!心臓とかじゃなくて概念の核を持っているんですよね!それを身体の中で歯車みたいに、いやジャグリングかな?ともかく思考を核ごとに切り替えてこっちを惑わしたって事です!いやあ、そのパターンを見切るのに時間かかっちゃって大変でした…」

 

初めてジェスターの表情が苦痛から驚愕へ塗り変わった。

 

「見分けた…?この短期間で…!?貴様、何者だ…魔術師の所業では…いや、あの傭兵といい何故分かる……。流石は聖杯戦争…一筋縄では行かないということか…!」

 

苦痛を噛み締めながら笑みを零すも目に籠った怒りはエドモンに向けられたままだった。

 

「そのような事はどうでもいい…今重要なのは貴様だ、英霊」

 

「俺が何かしたか。ただ貴様の名を闇より放っただけだが」

 

「惚けるな!!何故……あの名を……知っている…」

 

憎しみと動揺が入り交じった声で叫ぶジェスターに巌窟王は不敵な笑みを放つ。

 

「何故、だと…?クハ、クハハハハハハハハ!!!これは滑稽だな!我が復讐を、その炎をその身に受けて尚!そのような戯れ言が言えるな!!」

 

巌窟王の目にあったのは怒りと憎しみだった。

あまりの変化にフラットはビクつき、ハンザは警戒を強める。

 

「復讐…そうか、そういう事か!あぁ、思い出したぞ!!世界の誰しもが知る復讐劇!死徒をも殺す恩讐の炎!岩窟より出てし秘蹟!!よもやこのような舞台で会うとはな!!」

 

ジェスターは血反吐を吐くのかと言わんばかりに言葉を紡ぎ、その名を告げた。

 

「巌窟王、モンテ・クリスト伯爵!!」

 

「監獄にて捨てた名を放つか…吸血鬼風情が!!」




皆さんおまたせしました。
リアルが忙しい上に、イド開幕とイベント事が多くて大変でした。
イド、クリア出来ましたか?
想定外の結末にしばらく混乱したと共に2部が終わるという現実を実感しました。

雑談が先に来てしまいましたがここからは小説内容についてちょっと話します。
本編だとジェスターの真名をバラした人(?)は違いますがここで出すのは場違いと考え、吸血鬼と因縁のあるエドモンにしました。
CDドラマ内の設定のため出しても分かるかと思ったらイドにて示唆されたので「よし使える!」と思い載せました。
改めての案内ですが時系列は『奏章プロローグ』後です。
この意味が分かると安心するのと虚しさがあるかなと。
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