エドモンが名を呼ばれたことに呼応するように蒼い炎を纏いジェスターを睨む。
「あの時の私はこの魂達を持ちえていない生まれたての存在だった。そんな私を貴様は嘲け、笑い捨て業火で焼いたのだったな」
「生まれて初めての瀕死を与えられたのなら光栄だ。だが、二度は与えぬ!!」
炎をビーム状にしてジェスターを襲うも、満身創痍だったとは思えない跳躍で避ける。
爆発と共にホテルの外壁が吹き飛び外から風が入ってくる。
「分け身であるなら切り捨てるかと思ったが」
「本来ならそうするさ。だがその炎を浴びる訳には行かないからな。一つ教えておくがお前が撃ちたければ撃つといいがこのホテルがもつかな?」
余裕のある表情でジェスターがエドモンを挑発する。
無表情に近い顔を向けながらも身を焦がす炎の勢いは止めなかった。
「そこの吸血鬼殿。少しよろしいでしょうか?」
そんな2人の間に入ったのは道満だった。
「なんだ。これ以上水を差すようならその口を縫い合わせるぞ」
「実に恐ろしいですな。ですが拙僧、貴方のことに興味がありまして」
目を閉じにこやかな表情のまま周りへ聞こえるかのようにジェスターへ言葉を述べる。
「死徒は人類史を穢す存在と述べました。自らの悪意で命を弄び、狂信によって命を愛する。その観点であるならその言葉は間違っていないでしょう。ですが……」
言葉を止めゆっくりと目を開く。
薄ら開いた目から漏れていたのは甘美な悪意だった。
「そのあり方は死徒では無いのでは?」
「なんだと…?」
「人類史の影である英霊の1人を好みながらそのものを破壊する。あまりにも都合がよすぎると思いまして。愛のために死徒としての立ち位置を封印すると言った方がまだ良かったですな」
「一サーヴァントが偉そうに言うな」
ジェスターの感情を弄ぶ言い方をする道満に明らかな苛立ちを向ける。
「はい、ですがご安心を。今のは代弁というものでして。こちらの方から先に受けておりました。世界と世界を繋ぐのも苦労しますな」
五芒星が空に描かれると真ん中に黒い渦が歪み現れる。
『まさか私の人格のみをこちらに呼び寄せるとはな』
声の主はゆっくりと渦の中からドアを抜けるかのように姿を見せた。
白を基調とし金色の装飾を施したドレス。
美しい金髪に飲み込まれそうな程の紅眼。
「アルク……いや、姫…?」
「及第点の反応だな。もう少しその名を述べていたなら帰っていたところだ」
「ーーーーーーは」
現れたサーヴァントを見てジェスターは言葉を失った。
死徒であるなら反射的に理解出来る覇気。
アラヤの力が強まった世界においても存在し続ける伝説。
「何故…何故、貴方がここにいるのですか!月のーーー」
「口を慎め。痴れ者が」
ジェスターの口が開いたまま膝を着く。
魔術すら行使していないただの言葉で、彼の身体は氷漬けにされたかのように一切のブレがなく見ている。
「あのお転婆を見て勘づか無いのも仕方ないが怪しむ素振りはするだろう。貴様、本当に死徒か?」
「ッ…!」
「……なるほどな。言いつけは守る程度には知性があるのか。ならば今の返答に答えなくても良い。所詮有象無象の1つ。私の記憶に入れるほどの価値は無いのだからな」
自らを上位と称していたジェスターにとって姫の言葉は上位どころか死徒として見なされていなかった。
姫は視線をジェスターからハンザの方に向ける。
「あとの始末は頼むぞ、代行者。こういう小物は図に乗らせて狩りとるのが効率的ではあるが」
「心配は要らない、ここで奴の息の根を止めるからな。貴方は元の世界へ戻られるといい」
「そうか。ならそのようにさせてもらおう」
ドレスを翻し道満の繋げた五芒星の中へ向かっていく。
数歩で入れる位置でふと足を止め、藤丸へ顔を合わせる。
「外法に勝てるのは外法だけだ。貴様には正道を逸脱する覚悟はあるか」
「え…?」
「精々励むといい」
振り返ることなく五芒星の中へ消え、静かに門は閉じた。
姫が居なくなった後ジェスターは項垂れた。
「えっと……かなりショック受けてますけど謝るなら早めの方がいいですよ。藤丸君経由ならきっと理解してくれますしお互い悔いが無くなりますよ!」
フォローにすらならない言葉をかけるフラット。
ハンザはこの分体に抵抗する気力は無いと判断し、シスター達にジェスチャーで指示を出す。
「悔いを残したくなければ教会宛に懺悔を残せ。これから本体を討ちに行かせてもらう」
(あれが魔物達の首魁の1人か。私が如何に万全だとしても敵わないだろう…味方であるのが奇跡、と言わざるを得ないな)
アサシンは分体に構う必要は無いと考え、繰岡椿のいる場所へ向かおうとした。
だが、それに立ち塞ぐかのように、割れた窓が巨大な黒い影で覆われる。
煙のような魔術でもケルベロスでもない、純粋な『死』の象徴。
漆黒の炎によって焼かれ炭化した全身骨格。
特徴的なのはその大きさがビルに匹敵するほどの高さを持っていたことだろう。
「うわぁ!巨大なオバケ!?」
フラットが小学生のような驚きを見せる中、ジェスターがゆっくりと立ち上がる。
「今度は吸血鬼のオバケ!?」
更に驚くフラット。
ジャックは腕時計の形のまま、訝しげに声を上げた。
『術は効いていると思ったが…』
エドモンの攻撃を避けれる体力はあったものの、姫からの言葉で戦意を失ったと思っていたからだ。
各々が警戒する中、下を向いていたジェスターだがーーー
「……フフ」
零れたのは、小さな笑み。
「そうか………私は死徒のあり方を捨てられたか」
幽鬼のような青ざめた顔をしながらも、どこか狂気に満ちた顔をしていた。
「ようやく分かったよ…愛しのアサシンよ」
不気味なものを感じとったアサシンは眉をひそめる。
豹変した時こそ最も警戒すべきなのはこれまでの経験が語っていた。
「教団のためとその身を汚し続けたにも関わらず捨てられた君と、死徒として人を食い潰した生そのものを否定された私。なるほどなるほど!!これこそか君の見ていた景色か!私は魂で理解したよ!やはり我々が出会うのは運命だったか!」
「警察沙汰になってとち狂ったストーカーまがいな事を言うな」
うんざりした顔のハンザだが、ジェスターに構っている暇は無い。
彼は巨大な髑髏に目を向け、撃退すべきか脱出すべきか考えていた。
すると、派手な衝撃がビルを襲う。
「!?」
何が起こったのかは即座に理解出来た。
巨大な骸骨がその腕を振り上げ、ビルを殴りつけたのだ。
「おお!まさかここまでやるとはな!流石は夢と死を礎にする世界だ。悪夢に果てなど無いと言わんばかりだ!」
「道満!?術効いてないよ!!」
「ンンン……どうやら主導権を奪われたようです。死に最も近い存在であり恐怖の象徴となれば分が悪かったかと。道満不覚」
召喚していたチェルノボーグも部屋の闇に溶けるように消えかけていた。
カルデアが焦る中ジェスターは更にテンションを上げ、全身を襲う苦痛すら乗り越えて笑い続ける。
「良いでしょう、『原初の一』よ!私の身をもって証明して見せよう!愛しのアサシンと共に聖杯をこの手に掴み、その力を持って、蜘蛛を起こし人類そのものを滅ぼそう!そして人理最後の一人となったアサシンの前で私は人類を肯定する身に戻ろう!!」
「なんか支離滅裂になってません!?術式強くしすぎたかも……」
困惑するフラットの叫びにハンザが答える。
「安心したまえ、最初からこいつはこんな感じだった」
「だが蜘蛛を起こすのは見逃せぬな」
「え、そこですか?蜘蛛って南米に眠っている噂でしたよね。本当にいたら今頃人類滅んでますよ!」
フラットの純粋な答えに藤丸は引きつった顔で頷く。
まさか亜種とは言え二度も倒した上、本体では無いがサーヴァントとしてこの特異点に連れているとは誰も思わないだろう。
迷っている間にも2体目の髑髏が現れビルを壊そうと腕を振るう。
「この街が心配か?それに関しては安心したまえ。この夢の主が望めば直ぐ元に戻る。ビルだけの話だが……あぁ、可哀想に、君がここに来てしまったばかりに心を許した者たちが目の前で死に絶える訳だ!」
「貴様…!」
唸るアサシンと心地よさそうに目を細めるジェスター。
「あわわっ、まずいまずい。祭壇が!」
度重なる揺れに耐えきれず、フラットの作り上げた簡易な祭壇が崩れ落ちる。
繋げていた無線は床に出来た裂け目へ消えた。
「仕方ありませぬ。拙僧の全てを使いほんのわずかですがこの部屋をもたせましょう。ゆえにマスター、ここでお別れです」
「道満…」
「言ってやりなよマスター。着いてこなくて心底良かったって」
「失礼極まりませんぞ。そも元よりこの世界のみにしか現界出来ぬ身。短い間とは承知の上」
すると道満の袖から鳥の群のように溢れ出る護符。
意思を持つかのように壁に貼り付き描かれた一つ目が赤く光る。
「ささっ。拙僧に構わず進まれよ。遠く星の彼方より見守っておりますぞ」
「それは勘弁」
「ンンンン〜〜〜〜」
フラットとハンザ達は部屋の中に何故か置いてあったパラシュートを使い、藤丸はエドモンに抱えられながら部屋から出ていった。
短くなりましたが道満退場回でした。
元々簡易召喚レベルの客演だったので問題ないかと!
そして今話のみの登場だったのが第1再臨アルク。
ジェスターのメンタルを壊す代役が出来るのは彼女しかいないと考え、道満と紐付けて出しました。
無理やりなのは分かってますがこれしか無かった!
雑談タイム
まほよFGOコラボ来たァ!!
散財確定で腹を括るしかねぇ!
Fake9巻ヤバいっすね。
てか、FGO世界線が認知されてるしサーヴァント出てくるから毎度驚かされますね。
藤丸ってホント何者ナンデスカ。