夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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宙と空の境

中央病院 とある病室

月明かりに照らされ、青く光る病室。

心拍を図る音も点滴が垂れ落ちる音もない静かな世界に1人の王が降り立つ。

王は周囲を一通り見渡すと白いベットに視線を止めた。

そこに眠る者はおらず、しっかりと端が伸ばされシワひとつ無い。

指で滑らかになぞるものの冷たい感触が伝わるだけだが、王には充分だった。

 

「共に行ったのですね」

 

『ソレ』は自らの意思で彼女と混ざった訳では無い。

拒否をするのなら彼女の身体を蝕み殺すことも出来た。

この病室に同胞の気配は無いという事は彼女を殺さなかった事実を指し示す。

 

「ありがとうございます、異なる世界で生まれた同胞。貴方達が残した生命を私は肯定します」

 

王は宣言とも捉えられる言葉を残し闇夜に消えていった。

 

 

 

同時刻。

 

「あれっ!!」

 

藤丸が反射的に指を差すと、こちらへ向かってくる集団がいた。

見慣れた顔達と合流すべく背の低いビルへ降り立つ。

 

「無事でしたか!?」

 

「うん。レムレムしてただけだよ」

 

「またそれ?ほんと寝癖の悪いマスターよね」

 

「ここまでの護衛ありがとうございました。アヴェンジャー」

 

「影として着いてきただけだ」

 

「あれ?1人足りないけど…」

 

「野暮用だ。気にするな」

 

「あの、そちらの方は…?」

 

マシュが少し離れた位置に立つセイバーとアヤカに話を振る。

 

「俺はセイバー、真名をリチャード一世。彼女はマスターのアヤカ。一時的に同盟を結ばせてもらっている。しかし…これがアンタの軍か。ハハッ、全員サーヴァントとは驚いたな!」

 

「リチャード一世!獅子心王の名を持つ優秀な騎士!第三回十字軍に参加したイングランド王!そして、大のアーサー王のファン!!」

 

真名1つ晒しただけで情報を即座に開示したマシュにアヤカは驚きと焦りを覚えていた。

英霊とは生前の逸話や人生を元に召喚される。

その中で死因が明らかにされている者はそれすらも再現されてしまう。

正に防ぎようのない致命的な弱点であるにも関わらず、セイバーは最も恐ろしい相手に告げてしまった。

 

「セイバー!?それ言っていいの!!」

 

「ん?俺の名はこの戦の前に宣言したはずだ。それに、この反応からしてあの時には居なかったと見受けられる」

 

「あ……」

 

オペラハウスで召喚された後、セイバーは街のど真ん中で堂々と真名を口にした。

殆どのマスター及び魔術師がその光景を見ていたであろうにマシュの反応は初見そのものだった。

 

「別に後から参戦したから敵だとは決めつけないからな。アヤカを助けてくれた恩人を背後から刺すような無礼はアーサー王が許さないだろう」

 

「本当にアーサー王が好きなんですね」

 

「もちろんだとも!かの騎士王の物語を今すぐ話したいところだが上で起こっているあれを見届ける必要があるな」

 

「それってずっと鳴ってる雷のこと?」

 

「あれが雷等で済ませるものか。木偶人形め、作れるとは言え未来を見すぎであろう」

 

ドラコーが悪態をつきながら空を睨む。

 

「……何あれ?」

 

藤丸が素っ頓狂な声を上げる。

エルキドゥの戦い方は宝具民の叡智(エイジ・オブ・バビロン)によって作成された古代武器による物量と本人の膨大な魔力放出量。

それを理解していたからこそエルキドゥの周りに生えた武器があまりにも新鮮だった。

 

「高射砲…?」

 

並のビルに届くほどの長さをもつ8つの砲身。

天へ伸びる姿はかつてバビロニアでビーストⅡ防衛のために用意されたディンギルを彷彿とさせる。

 

「これは驚きました…神秘の薄れた武器すら作り上げるとは」

 

「この大地に眠る鉱石から作られたのなら作れるのね。カルデアでやらないのは王様の影響かもね」

 

そして砲身の先に見える小さな人の形。

 

「……フラット君」

 

はっきりと見えないがフラット・エスカルドスであったのは理解している。

そして彼の思考は深淵に消えたことも。

 

「あの英霊と正面から戦えるとは。あの少年、何者だ……」

 

間もなく狙いを定めた高射砲が火を噴く。

過剰戦力とも取れる砲撃をあれはただ受け止めているように見えた。

それを見越していたのか連射速度が上がっていく。

爆発音と衝突音が鳴り止まず花火を大量に打ち上げているのかと思うほどだった。

藤丸達はその戦いに介入する隙もなく見上げるしかなかった。

 

 

空では的確に防御する少年と数で押し込むエルキドゥが火花を散らしていた。

普通の高射砲では有り得ないほどの連射速度を出しながらも、少年の身体に傷どころか怯みすら与えられていない。

それは少年の影から形成された孔雀のような紋様だ。

神代の力に対抗出来ている時点で反則級の魔術であるのは間違いない。

 

「なるほど……仮初めの存在なのに、ここまで星に根を下ろせるのか」

 

淡々とした調子で呟く少年。

 

「参考になる。もう少し見せてくれ」

 

弾幕のリズムを理解し始め、呼吸を整えながら魔力を練り上げる。

弾の隙間を縫いながら攻撃する術式に切り替えようとした刹那、爆炎の中から高濃度の魔力を身にまとったエルキドゥが真下から迫ってくる。

幾つもの鎖を寄せ集めドリルのような姿で撃ち上げてきたのだ。

 

「その動きも……視えていたよ」

 

鬼気迫る中でも淡々とした調子の少年は、エルキドゥ本体に向かってカウンターの形で魔力を撃った。

ただただ破壊のみに特化した魔力の塊。

エルキドゥが避ければ背後のクリスタル・ヒルが跡形も無くなる程の魔力を撃てるのは魔術の秘匿を考えていないからこそであろう。

そもそも特異点において秘匿する必要があるのかは別問題になる。

 

「僕も視えていたよ。()()()()ってことはね」

 

エルキドゥの眼は少年をしっかりと捉えていたが、気配は別の者を感じていた。

刹那、少年から放たれた魔力が横から突っ込んできた光とぶつかり消滅する。

空気を震わすほどの衝撃波が2人を飲み込む中、エルキドゥはその存在をしっかりと認識した。

 

「……はは」

 

少年は光の正体を感覚的に理解し嗤った。

 

「ああ。フラットにも見せたかったな。きっと大はしゃぎしてたろうし」

 

そこに浮かぶのは淡く銀と緑に輝くククルカン。

瞬間加速は音速を越えていたにも関わらずソニックブームを起こすことなく戦場に舞い戻った規格外。

 

「よしっ!ギリギリセーフってところですね!」

 

「君が来なくても僕の鎖で守っていたけど。それでもありがとう」

 

ふわりとククルカンの横に並び感謝の言葉を告げる。

 

「性能一筋の貴方にそれを言われるとこそばゆいです」

 

「その口ぶりから察するに別の僕と面識あったかい?」

 

「勘の良さは健在ですね。ですが今は思い出よりも比べ合いの方がいいでしょうね!」

 

エルキドゥに提案し終わった途端、少年の懐へ一瞬にして移動する。

即座に腹部へ魔力を集め防御璧のように展開する。

1枚1枚は薄いものの、何重にも重ねることにより衝撃を分散させる狙いだった。

 

「とぅっ!!」

 

ククルカンは構わず防御壁に蹴りをぶつける。

衝撃で数枚が割れたものの力の大部分を殺しきれている。

しかしククルカンの取りたかった行動は破るためではなかった。

魔力を巧みに纏い空気抵抗を無くし、ぐんぐんと上昇させる。

先程までハッキリ見えていたクリスタル・ヒルも街を照らす明かりの一つになるほどの高さまであげると少年から距離を取る。

 

「……なんの真似だ」

 

「決まってるじゃないですか。星を守るためです!」

「は?」

 

自信満々に答えるククルカンに呆れた超えをあげる。

先程まで纏っていた魔力からはこの星とは異なる起源であるのは視えていたし、ここが造られたのも理解している。

 

「私はこの星に生きる物すべてが美しく尊いと思ってます。だからこそ大切にするのは当然です!」

 

「君はサーヴァントだろ。ならばマスターのために生きるのが道理なはずだ」

 

「それもあります。でも、守りたいものが多いのは悪いことではありません。それに貴方も私からすれば守るべき物ですよ!」

 

「………?あ……う、うん?」

 

「そこは感謝すべきだと思うよ」

 

2人に平行して上昇していたエルキドゥが代わりに答える。

 

「僕も彼女と同意見だ 。どのような形であれ産まれたんだ。ならば祝福してあげないと」

 

「………ありがとう?」

 

反射的に感謝をと述べたものの、臨戦態勢は溶けていない。

それはエルキドゥとククルカンも同様でいつでも仕掛けられてもいいように魔力をみなぎらせていた。

 

「今さらだけど、君のことはなんて呼ぶべきかな?」

 

周囲の空間がいつの間にか暗くなり、星が瞬き始める。

日が急に沈んだ訳では無いのを3人は理解している。

少年はそれまで胡乱げだった目に、ほんの僅かにフラットが持ち合わせていた好奇の目を向け答える。

 

「……ティア。ティア・エスカルドス。僕の友達がつけてくれた名前だ。他に名乗るつものは無い」

 

地上から数キロメール。

成層圏を越え中間圏にまで至る場所にて少年、ティア・エスカルドスは告げた。

単なる自己紹介に過ぎないが纏った魔力が増幅するのを感じるに宣戦布告と言えるだろう。

 

「ーーー改変開始(チートオン)

 

高濃度の魔力を循環させている魔術式が太陽の光すらねじ曲げ空間を歪ませ、1つの魔法陣として仕上げる。

一方で、光を吸収する漆黒の影もまた別の魔術式を作り、多重構造の魔法陣を少年の周りに形成する。

まるで空を魔法陣で埋めつくさんとするようだった。

一般人がこの光景を見ればオーロラが形成されていると、魔術師からすれば魔力が爆発したと思うだろう。

 

 

「あれって……」

 

藤丸はティアの作る魔法陣を見て思い出す光景があった。

ギリシャ異聞帯の果てで待ち受けていたクリプターのリーダー、キリシュタリア・ヴォーダイムが放った大儀式『|冠位指定/人理保障天球《グランドオーダー/アニマ・アニムスフィア)》』。

あの空を覆い尽くす魔法陣の数は藤丸の中に刻まれた敗北の記憶に深く残されていた。

もし、あの時と同じ規模だとすればこの街などひとたまりもない。

 

「ねぇ、逃げた方がいいんじゃないの!?」

 

「それは賛成だが勧めないぞ。あれが落ちる前に逃げたとしても間に合わないからな」

 

「……そっか、狙いは私だもんね。って納得出来るわけないでしょ!」

 

セイバーの身体を激しく揺するアヤカ。

その様子を笑っていたセイバーだが、肩をぽんと叩くと視線を藤丸へ向ける。

 

「あんたなら止めれるんだろ?」

 

「止めれるんじゃないよ。止めるだよ」

 

藤丸は魔法陣を見上げながらも逸らすことは無かった。

何故ならあの先にいるのはーーーーー。

 

 

ティアの周りには歪な形を作る球が幾つも形成され始めていた。

 

「……それも、人が作り出したものだね」

 

「えっと、なんですかあれ?」

 

この場に似つかない発言にエルキドゥは優しく答える。

 

 

「人が星の呪縛から逃れるために使い捨てた力さ」

 

「つまり…航行エンジンってことですか!?なんて贅沢!」

 

「君の思うそれが星の彼方からやってきた神の事なら似てるね」

 

2人は簡単な会話を止め己の魔力を爆発的に、解放し迎撃の準備をする。

それが宝具開放の予兆であるのを見越していたのか、隙を与えんとばかりにティアはその魔術を発動させるべく力ある言葉を吐き出した。

 

空洞異譚/忘却は祝祭に至れり(ア・クロックワーク・アバドーン)!」

 

音速を超えた大質量を持つ複数の『月』が、エルキドゥ・ククルカン目掛けて落下していく。

空気摩擦を無くす魔術がかけられているのか、燃え尽きず減速することも無くレールガンのように超高速で打ち出される。

この短時間で対処など間に合うはずがない。

エルキドゥの体内に爆発的な魔力の増加を感知したものの、全てを壊すことは不可能。

そんな中、

 

「マヤパン、パーーーーンチ!!」

 

真名解放でもなんでも無い掛け声と共に繰り出される魔力のこもった拳。

押し返すどころか押されて当然とも思える質量の差。

それをククルカンは拳1つでひっくり返した。

触れた月はまたたきの間に当事者達の目の前から消えた。

 

「ああ、そういう事ですね。ならっ!!」

 

理解した言葉を放った後、ククルカンは落下していく凶星を打ち砕く銀色の彗星となった。

音速で落ちるなら光速で凌駕する。

同条件でただの魔力の塊が落ちればククルカンでも一つ一つ対処に時間がかかり全てを壊すことは不可能だ。

ティアが犯した過ちは簡単なことであり、分かっていたとしても確証の無い事実。

不敵な笑みを浮かべ楽しそうに星を壊す彼女が()()()()()()()()()()()()()()()()()宿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

衝突したエネルギーが分散されたことよって花火が咲いたかのように黒い空を彩っていく。

ティアの大魔術はこうして美しく打ち砕かれた。

だが、その全てを壊した訳では無い。

派手に見せたのは本命を隠すためであり、最大の一手は既に放たれていた。

この街を壊すのは藤丸とアヤカを確実に消すためであり、エルキドゥとククルカンはただの障害に過ぎない。

魔術により隠蔽された星が地上へ向けて落ちていく。

完全なステルスにより見ただけではある事すら分からない。

しかし、エルキドゥの『気配感知』がそれをハッキリと捉えた。

破壊された星に込められた魔力が空に散らばったことによりその形が不自然な空間として明らかとなってしまった。

 

「ーーーー『人よ、神を繋ぎとめよう(エヌマ・エリシュ)』!」

 

即座に宝具を解放し、自らの身体を鎖に変化させドリルのように突き進む。

それを阻止しようとティアの魔術が放たれたものの、直撃コースををズラす程度。

結果として星の前半分を削り取るように当たり砕ける。

後半分は質量の低下により軌道がズレ、西へ落下していく。

欠けたとはいえ込められた原子崩壊の魔術式と込められた魔力は健在。

半径数キロに生きる全生命を巻き込み消滅した後、爆風により表面だけではなく龍脈、更にはマグマだまりを刺激し消滅する。

街に落ちなくとも人類の方向性を強制的に決めるような一撃であり、特異点であっても大規模な破壊現象は聖杯を回収しても復元が難しい。

つまり、この星が落ちた時点で汎人類史の敗北は確定し新たな異聞帯となる。

 

 

ーーーー筈だった。

 

 

西の方角に渦巻く積乱雲がティアの目に引っかかる。

単に雲の見上げるほどの大きさが気になるのではなく『その中に潜む何か』であった。

元から何かいるのは知っていたが、この状況で何かが出来るわけが無いと思い重要視していなかった。

だからこそ、積乱雲から宙に伸びる2本のトルネードと角が見えた時僅かに目を開いたのだ。

明らかに物理法則を無視した動きは凶星を絡め取るように蠢く。

そして灰色の雲の隙間から見える琥珀色の一部が雷に反射し煌めきながら、星を粉々に砕いていった。

人理の消滅は意図せず阻止されたものの、それは善意によってでは無い。

ただの『本能』による防衛、その程度の行為にすぎない。




長らくお待たせしました。
どう話を転がそうかと悩み書いて消して……の繰り返し。
やっと話がまとまったと思い見直すとククルカンメイン話になってました。
椿の寄生したアレには確定で絡ませる前提でしたので尺は取るつもりでした。
いやぁ、ORT便利すぎ…笑

雑談タイム
人生初のFGOフェス行ってきました!
色んなアトラクションや他マスターとの交流等日常では味わえない経験を得られました。
同じ好きを通じて出会えた縁に感謝を。
参加したのは初日だけでしたが、見てきましたよ…
シエルついにムーンキャンサーで参戦!!
またエクストラクラスかよぉーーー!!!
匂わせたらガチできちゃったよ!
ルール通りだと参戦せないと行けないでしょ!
頭が痛くなるとはこういう事か…
そしてスペース・エレちゃん。
水着実装は分かる、めっちゃ分かる。
皆期待してたしイラスト可愛い。
でもビーストクラスってなんだよぉ!?
異聞帯のビーストかと思ったらスペースかよ!
畜生!引けたからいいけどよぉ!!(自分語り)
ちなみに福袋はヤマトタケル、デスティニーはモンテ・クリストとすり抜け雷帝でした。
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