夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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出会うべくして出会う

アサシンは結界を破った後メインと非常用電源の配電盤を宝具を元に探し次々と停止させる。

ドラコーが提示した道楽は『藤丸を囮に警察署の戦力を分析しタイミングを見て突入した後サーヴァントを回収する』だった。

結界を通った時点でサーヴァントの有無は筒抜け。

ならば連れていかず無防備なのを晒す。

普通の電話なら探知されることなく中の様子を声で判断できる。

タイミングを見て起動させ中の様子を伺い結界を力任せに壊し突入する。

その役割を担ったのはアサシンと…

 

「いやっほーー!!」

 

上擦った声が吹き抜けとなったロビーへ隕石のように降り立つ。

ズシンと重たい音が警察署内に響き渡る。

暗闇と言えどとんでもないものが来たのだと警官は直感で感じる。

まるで小さな隕石が落ちてきたような感覚。

 

「うわっ暗すぎますって!これじゃフェアじゃないで…」

 

突然ロビー全体が明るくなる。

見ると制服姿の警官が光魔法を照明の位置に合わせる形で展開していた。

 

「やっぱりこうじゃないと!彼女には申し訳ないですが私にはこっちの方が合ってマース!」

 

「何…!?」

 

目の前にいたのは巨大なクレーターの真ん中に立つ1人の女性。

髪は銀と緑だが宝石のような輝き、服は太ももあたりが見えるカウボーイ風。

聖杯戦争に参加するマスターならサーヴァントの姿を直視すればクラス位は予測出来る。

なのに目の前に立つサーヴァントのクラスが分からない。

ルーラーやアヴェンジャーというエクストラクラスもあるがこの聖杯戦争では現状召喚されない。

署長は冷静に指示を送りサーヴァントと藤丸の周りを囲む。

 

「君の覚悟には恐れ入った。まさか自ら乗り込むとはこちらも思わない。だが、我々を侮ったな」

 

警官から殺意は見られない。

抵抗の意図を無くす算段だろう。

だが手に持つ武器から何か不思議な気配を感じ取れた。

 

「ただの人と思ったのが間違いだ」

 

サーヴァントも値踏みをするように警官の武器と顔をマジマジと見ている。

 

(本当に聖杯戦争に参加してるのか?)

 

藤丸も焦ることなく署長の顔をずっと見ている。

その目からは歳相応のものとは思えない色をしていた。

まるで幾つもの戦場を渡り歩いた戦士のような強い色だった。

 

藤丸は静かに覚悟を決め口から少し空気を吸い込む。

 

「アサシン!!」

 

腹の底からロビー全体へ響く声をあげる。

ククルカンはやや不服そうだったけど今は我慢してもらうしかない。

合図を静かに待っていたアサシンが照明から飛び降り狙いを定める。

 

「…狂想閃影(ザバーニーヤ)…」

 

刹那、アサシンの顔を覆うフードの隙間から闇が広がった。

 

「!!」

 

署長はアサシンから伸びた闇が自分に迫り来るのを見て、即座に飛び退る。

その闇は署長のいた場所を薄皮はぐように地面を抉った。

闇はロビー各所に広がり警官達に襲いかかっていた。

広がりが早く守ることで精一杯のようだった。

そして藤丸の周りを蛇のようにうねっている。

迫り伸びてくる闇に対し腰につけた日本刀を抜き取る。

艶めかしい輝きを刀身から放ち、鋭い刀鳴り共に闇を斬り裂く。

手応えをハッキリと感じハラリと闇が床に落ちる。

 

(これは、頭髪か…?)

 

髪を変幻自在に変える宝具。

ただ伸ばすだけではなく刃となるほどまで変化させた。

しかし、タネが分かればそれ相応の対応が可能だ。

アサシン1人であれば…

 

「とうーー!!」

 

ククルカンが署長の上を取り飛び蹴りをする。

高速に近い蹴りを魔術で身体強化をかけ避ける。

落下してきたのと同じくクレーターが床に出来上がる。

 

「色々見てましたけど試合相手を貴方に決めました!」

 

本来サーヴァントと魔術師では勝負にならない。

この『宝具』が無ければの話だが。

 

「恐れるな。ロビーを破壊しても構わん。各員、アサシンを抑えろ」

 

左手で懐から銃を取り出し天井に向かって撃ち放つ。

この弾は通常の弾頭では無くある術式を起動させる呪文が込められている。

天井に当たるのと同時にロビー全体の結界が一時的に強化される。

これは秘匿用の結界でどれだけやっても外に音が漏れることはない。

展開と共にアサシンと藤丸に数体の魔獣と数十もの悪霊が襲いかかる。

特にマスターに対しては多めの悪霊を放った。

 

「マスターさん!!」

 

「君の相手は私だろ」

 

ククルカンに冷たい目を向ける。

少し前にハンザの方を見たがカウンターに置いてあるサーバーからコーヒーを紙コップに注いでいた。

 

「そうですね。それにマスターさんはこんな事で倒れませんから!」

 

花が咲くような笑みを署長に向ける。

そこで改めてククルカンの話の違和感に気づいた。

 

(彼はサーヴァントを2体使役してるのか…!?)

 

警官たちと交戦しているアサシンと目の前に立つサーヴァント。

後者が神代にいたキャスターなら枠があれば召喚そのものは可能だ。

だが肉体派のキャスターなど聞いたことが無かった。

藤丸に対する感情が焦りへと変わる。

 

「では…行きます!!」

 

ドンッと空気が圧縮されたような拳が発射された。

武術のへったくりも無い拳。

迎え撃つは上位の存在を倒すために練り上げられた外法紛いの武の力。

異なる力が今、激しくぶつかり合う。

 

藤丸はマジマジと状況を見ていた。

アサシンは複数の宝具を使い自分を守りながら戦ってくれている。

悪霊と霊獣は奇妙な歌で惑わし警官と戦わせ行動をにぶらせ、ククルカンは警察署長とタイマンしている。

本来この騒動に紛れ移動したかったが悪霊や数名の警官に防がれ動けない。

神父はコーヒーを優雅に飲んでいるから攻撃はしてこないはず。

静かに携帯のスピーカーを3度爪で叩く。

目的はサーヴァントの回収であってここで争うのは副次的な理由。

それに自分の都合を押し付けるのは嫌だ。

 

『合図を送れ。飲みたければ別だがな』

 

「来るよ!!」

 

その声を聞き、ククルカンは署長と距離を取り壁を稲妻のように駆け上がる。

アサシンも髪を使い藤丸を上に飛びあげ2階の廊下へ着地した。

 

「逃げたぞ!追え!!」

 

銃を持った警官が藤丸に狙いを定めた時、入口方向の結界から地響きが聞こえた。

 

「おいおい…!!」

 

ハンザは即座に理解しコーヒーを投げ捨てカウンターの上に飛び乗る。

結界にヒビが入り砕け散る。

そこから黒い泥が壁を突き壊すよう勢いよく中へ流れ込み1階を埋め尽くす。

ただ津波のようなでは無く成人男性の膝までの高さではあった。

「何だこれ!」

 

「足が…上がらない…!!」

 

泥は結界内に流れ込み終わるとコンクリートのように固くなった。

 

「どうだ。汚濁に足を取られた心地は」

 

入口から現れたのはドラコーとマシュ。

ドラコー本人はノリノリだったが『そこにいる全員を堕とせば良かろう』と言っていたから藤丸は少し冷や汗をかいていた。

 

「無事ですか先輩!」

 

「大丈夫だよ!こっちで探しとくから皆をよろしくね!!」

 

1人パスを追い藤丸は警察署内を走る。

だんだんと繋がりが強くなるのを感じる。

 

(この先に誰かがいる…)

 

足を止めることなく目的地へ向かっていく。

それもある青年の声で止まってしまうが。

 

 

ロビーでは4騎のサーヴァントが集まっていた。

 

「皆さんありがとうございました」

 

「いいのいいの!まぁ、出来たらもう少しやりたかったですけどね!」

 

「本気で遊ばれたらここが持たぬ。さてと…」

 

ドラコーは足を固められた署長の元へ行く。

銃と刀を握り表情を変えず幼子を見下ろす。

 

「貴様の太刀筋は少し拝見させてもらった。人の身でよくそこまで行けたものだ」

 

「サーヴァントを越えるには限界まで強くならなければならない。とは言え人の域を越えるつもりは無いが」

 

「人のまま逸話を越えるか。何とも無謀で愚かな考えよな。だが、その執念には興味がある」

 

2人とも黙って顔を見つめあっていた。

単に見てるのでは無くその奥にある願いを探るように。

 

 

「そこの桃色のお嬢さん。ちょっといいかい?」

 

「私ですか?」

 

固まった泥の上に立ち再びコーヒーを飲んでいるハンザがマシュを呼んだ。

 

「アンタサーヴァントか?」

 

「はい…一応は…」

 

「失礼な事だったら詫びるが何か混ざってるだろ」

 

「!!」

 

マシュは驚きを隠せなかった。

この体に宿るのは英霊ギャラハットの残滓。

オルテナウスという器で補強し擬似的に使えている。

これまで神霊の域のサーヴァントには見極められていたが普通の神父に当てられたのは初めてだった。

 

「おっと、当てすぎたか。今の話は俺の中に閉まっておくから気にするな」

 

「何で分かったんですか…?」

 

「何となくだ。人の心を見抜くのが仕事ってのもあるが」

 

軽口を言いながらもマシュの事を黙っていると約束してくれた。

監督役として得た情報は秘匿するのは当たり前の行為ではあるが。

 

「それにしても莫大な魔力だな。こんだけ動かしても息切れ1つかかないとは。心臓に聖杯まんま移植してるのか?」

 

「そんな訳無いです。先輩は普通の…」

 

「いやはや!実に素晴らしい!!」

 

煩いくらいの拍手と妙なテンションがロビーに響く。

 

「何者だ?」

 

署長が呼びかけるも反響してるせいか何処にいるのか分からないが検討はつく。

この結界に出来た唯一の穴。

暗闇となった廊下から浮き出るように1人の青年が現れた。

 

「外から観察していたが、素晴らしい。実に素晴らしい戦いだった」

 

「…何者だ」

 

署長に代わりドラコーが同じ問いをかける。

それでも無視し、朗々と語る。

 

「まさか人の身で英霊に立ち向かうとは恐れ入った!どのような経緯でその宝具を手に入れたか些か気になるが今はいい。勇敢にも立ち向かいそれなりの成果を出した!それがいい!!」

 

青年のテンションが浮いているにも関わらず気にする素振りもなく泥の上を歩く。

署長は話を聞きながらもその姿を見定めていた。

あの少年1人でここにいる全員の魔力を与えるのは不可能。

ましてやアサシンは宝具を連発し、謎のサーヴァントは光のような早さで移動をした。

それだけでもかなりの消費量なのに走る気力が残っている。

となれば彼が肩代わりもしくは共闘してるのが筋。

疑問は誰と契約しているか。

そう思い見たが全員困惑した顔をしている。

 

(なら奴は一体何者なんだ…)

 

すると泥が瘡蓋のように剥がれ落ち自由となった。

警官たちもなぜ解放されたのか分からないが青年に向け武器を構える。

 

「なんの真似だ」

 

「…」

 

ドラコーは署長の問いに答えず青年を黙って見ている。

青年の近くにたまたまいた警官が恐る恐る近づき、動きを封じようと短刀の宝具を向ける。

 

「しかし、だ」

 

青年は邪魔と言わんばかりに左手で払い除ける。

払い除けただけ。

なのに警官の右手首から先が獣に食われたように歪な形となり無くなっていた。

 

「な…え…?」

 

「困るんだよ。そんな英雄みたいな死に方は」

 

笑みをしたまま左手に持った何かを掲げる。

それは短刀を持った人の右手だった。

 

「が…ああぁ!?ああああああ!!!」

 

「ハハハッ!!いい悲鳴だが在り来りの反応だな。他を切れば音色が変わるか?」

 

「そこまでだ!」

 

自由に動けるようになり警官たちが青年を取り囲む。

 

「第二班までは囲み残りは英霊を見張れ!」

 

意識を青年に向け床に仕組んだ魔術式から悪霊と魔獣を召喚しけしかける。

使い魔たちが様々な奇声を発しながら襲いかかるが。

 

「キイキイ騒ぐな。気持ち悪い」

 

笑みを絶やさず右手をフワリと振ると水風船が破裂したように使い魔が破裂する。

 

「なっ…」

 

常識を覆す事態に言葉が詰まる。

魔術を使用した痕跡もなく、青年の圧に押しつぶされたようにしか考えつかない。

さらに青年は警官の右手を軽く握る。

すると一瞬にして血液を抜かれ干からび、砂となって短刀を残し消えた。

残った短刀を摘み口へ滑らす。

ボリボリとクッキーを砕くように腹の中へ収めていった。

 

「この味…やはり宝具か。人に過ぎた道具ではあるが」

 

ペロリと赤い舌を出し口の周りを舐める。

警官はおろかサーヴァントも2階から事態を見ていた藤丸すらも絶句していた。

青年は人でも英霊でもない、それがハッキリ分かったからだ。

静寂の中、エンドロールを迎えた役者のように片手をあげアサシンに向かってお辞儀をする。

 

「自己紹介が遅れたね、我が愛しの君よ」

 

「…? 」

 

記憶を探ってもこんな気色の悪い男と会ったことは無い。

 

「私はジェスター・カルトゥーレ、マスターとして君の存在を肯定し、人ならざる死徒として君の全てを奪い去る者だ」




アサシン無双をしながらもカルデア組を活躍させる…
相手はどうしたら…
ん?署長が手ぶらじゃん。
ならぶつけるしかねぇよなぁ!!
戦闘狂を!
手加減90パーセントなのでこれでOK!
そしてラストに来ましたFateおなじみヤベェやつ。
何がやばいかはお楽しみに。
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